先日、すめしさんと記事制作のコストの話をしていた時、こう言われた。
「記事1本5万円が高いって言われるけど、5万円でやってる側は何でそれが高いと思われてるか分かってないんだよ」
これ、めちゃくちゃ大事。記事制作のコストが高い問題は、ほぼ全部「工数のブラックボックス化」から来ている。発注側は「文字単価」で見ているけど、実態は文字単価じゃなくて工数の山だ。山が見えていないと、削るところも見えない。
今日は、自分が Writers-hub の中で記事制作の工数分解をやり直した時に見えてきたことを、できる限り具体的に書く。
記事制作のコストは「文字単価」じゃない、「工数の山」だ
記事制作は『見えない冷蔵庫の在庫管理』に似ている。中身を全部出して並べるまで、何が腐っているか、何が重複買いされているかは絶対に分からない。
外注相場をざっくり並べると、こうなる。
- ブログ・コラム記事(3,000字): 2,400〜6,000円(文字単価0.8〜2円)
- SEO記事: 6,000〜18,000円(文字単価2〜6円)
- 専門記事(医療・法律・IT): 15,000〜30,000円以上
- 制作代行会社に丸投げ: 30,000〜60,000円以上(ディレクション費10〜20%が上乗せ)
ここ、大事。同じ「3,000字の記事」でも、相場が10倍違う。なぜか。中身の工数が違うから。文字単価で議論している時点で、実は議論の前提が壊れている(壊れていることに気づきにくいのが厄介)。
工数分解 — 7:3の法則を正しく理解する
プロの現場では「準備が7〜8割、執筆が2〜3割」と言われている。これ、知らない人が多い。
具体的な工数比率はこうだ。
- 企画・調査(20〜30%): ターゲット設定、KW選定、競合調査、ニーズ分析
- 構成案作成(40〜50%): 見出し設計、各項目の要旨メモ ← ここで品質の8割が決まる
- 執筆(20〜30%): 構成案にそって肉付け
- 編集・校正・入稿(約10%): ファクトチェック、トンマナ調整、CMS入稿
「執筆」は工数の2〜3割しかない。にもかかわらず、外注先には「執筆込み」で全部まとめて投げる発注が多い。これが高くなる元凶——構成までを丸投げしているから、ライターは構成からやることになって、その分の工数が単価に乗る。
つまりこういうことだ。「全部やってもらう」は「全部の工数を払う」と同義だよ。
コスト削減ポイント1: 構成までを内製化する
これが最大のレバーだ。構成は『記事の設計図』であって、ここを外に出すと家1軒丸ごと注文住宅で頼むのと同じになる。
具体的にやることは3つ。
- 狙うKWと検索意図を社内で確定する(ここはAIでも代替可だが最後の判断は人間)
- 見出し(H2/H3)と各セクションの要旨を箇条書きで書く(500字程度の構成メモ)
- その構成メモを添えて、ライターには「執筆だけ」を依頼する
ここで重要なのは、構成メモに「書いてほしい結論」と「書いてほしくない論調」まで含めること。これがないと、ライターは結局自分で構成を組み直すから、結果として丸投げと同じになる。
私の経験で言うと、構成メモを2,000字くらい仕込んでおくと、文字単価1円のライターでも文字単価3円の品質が出る。差額の2円は構成側に乗っているはずのコストだったわけで、内製化することで取り戻している(取り戻している、というのが正確で、別に「節約」しているわけじゃない)。
コスト削減ポイント2: AIを「下書き専用」として割り切る
AIライティングを「全部書かせる装置」だと思っている人がまだ多い。違う。AIは『下書き専用の超高速アシスタント』だ。
実例ベースの数値を出すと、こうなる。
- 従来: ゼロから3,000字の記事を書くと 3〜8時間
- AI下書き活用: 構成メモ→AI下書き→人間が編集 で 30〜60分
- コスト換算: ツール利用料を按分すると、下書き1本あたり 約130円〜
ただし、ここで罠がある。AI下書きをそのまま出すとスロップ(読めるけど価値ゼロの文章)が量産される。AIに任せていいのは「文章の骨組みを文章化する作業」までで、固有の体験・固有の数値・固有の判断は絶対にAIに書かせちゃダメだ(書かせると検索エンジン的にも読者的にも刺さらない記事ができあがる、これは経験で何度も確認済み)。
正しい使い方の悪い例→良い例で並べると、こんな感じ。
❌ 悪い例: 「記事制作のコスト削減について2,000字で書いて」とAIに丸投げ ✅ 良い例: 構成メモ+過去の自社事例3つ+具体的な数値を渡して「下書きを書いて」と指示
差額のクオリティは、ほぼゼロから無限大くらい違う。
コスト削減ポイント3: 編集者を「独自情報の混入係」に振り直す
編集者の役割を「誤字脱字チェック」だと思っている発注先、多い。これ、もったいない。
AIが下書きを量産する時代の編集者の本当の仕事は、こう変わる。
- ファクトチェック(一次情報の出典確認)
- 独自の経験談・数値の追記(ここがAIには絶対できない)
- トンマナ調整(社のスタイルに揃える)
- CMS入稿と公開設定
ここ、めちゃくちゃ大事。AIが書いた下書き+編集者の独自情報追記 という分業にすると、記事のオリジナリティが担保されつつ、執筆工数だけ劇的に削れる。
私が見てきた実例だと、この分業に切り替えた某オウンドメディアは、更新頻度を倍増させながら全体コストを半減させた。これは奇跡じゃなくて、単に「人間がやるべき仕事」と「機械にやらせていい仕事」を仕分けただけだ(仕分けて初めて、両者の境界線が見えるようになる、という順番なんだけどね)。
やってはいけないこと: 全工程まとめて値切る
ここまで読んで「じゃあ全部の工程で単価を下げよう」と思った方、ちょっと待ってほしい。
それ、ほぼ確実に失敗する。
工数を分解せずに「全体を値切る」発注は、しわ寄せが必ずどこかに行く。たいていは「企画・構成」が削られて、執筆だけが残る。結果、検索意図を外した記事が量産されて、どれだけ書いても順位が上がらない、CVが取れない、という状態になる(これ、私が過去に何度も見てきたパターン)。
正しい削り方は「工程を見直して、工程ごとに最適な担い手に振り分ける」だ。安くする、じゃない。配置を変える、が正解。
設計思想で言うとこうなる: 「コスト削減」は単価交渉じゃなくて工程再設計だ。 単価交渉で削れるのは数%、工程再設計で削れるのは50%。桁が違う。
結論: 高いのは単価じゃなくて「見えない工数」
最後にまとめると、こうなる。
- 記事制作のコストが高い理由は文字単価じゃなくて、見えない工数(特に企画・構成)が外注に乗っているから
- 構成までを内製化すれば、ライター単価1円で3円の品質が出る
- AIは下書き専用と割り切る。固有情報は人間が混入させる
- 編集者の役割を「校正」から「独自情報の追記」に振り直す
- 全工程まとめて値切るのは禁じ手。工程ごとに最適な担い手に振り分けるのが正解
明日からすぐ使えるアクションを1つだけ挙げるなら、「次の発注の前に、500字でいいから構成メモを書いてみる」。これだけで、外注先からの記事の納品品質が変わるはず。書けない場合は、それは構成を発注先に依存していたということだから、内製化の余地がそこにある(耳が痛い人もいると思うけど、これは事実)。
全部完璧にやる必要はない。1工程だけでも内製に戻すと、ボトルネックが見えてくる。見えれば削れる。見えなければ、ずっと「文字単価が高い」と言い続けることになる。それはそれで、別の意味で心配だけどね。

