コンテンツ管理ツールは「文房具」じゃなくて「役割分担表」だ。何を持つかより、誰に何をやらせるかで決まる。
「うちはNotionで全部やってます」「いや、Asanaが正義」「結局スプレッドシートに戻ってきた」——制作チームを抱えている人なら、たぶん全部聞いたことがある。私自身、いろんなチームの制作管理を手伝ってきて、どのツールも一長一短だなと痛感している。だから今日は、「Notion vs Asana vs スプレッドシート」という対立構図そのものを、一回ほぐしてみたい。結論から言うと、1つのツールで全部やろうとした時点で負けだよ。
ツールの役割は「3つの軸」で分ける
私が制作チームの管理を回す時、必ず最初にやるのは「業務を3軸に分解する」こと。
- ストック(情報の蓄積・ナレッジ化)
- フロー(進行管理・誰が何をいつまでに)
- ナンバー(数値分析・KPI集計・原稿料計算)
ここ、大事。この3軸を1つのツールに押し込もうとすると、必ずどこかが歪む。Notionで進行管理を頑張ろうとした瞬間、ガントチャートが弱くて泣く。Asanaで記事を書こうとした瞬間、エディタの貧弱さで泣く。スプレッドシートで原稿管理した瞬間、コメントの応酬で行が壊れて泣く。
——全部、私が泣いた経験です(認めます)。
Notion——制作の「第2の脳」
Notionは、ストック軸の王様だ。
ドキュメントとデータベースが地続きで設計されているから、企画メモから執筆、過去記事のアーカイブ、制作マニュアルまで、全部「同じ場所」に積んでいける。これがでかい。クリエイターって、過去に書いた何かを参照しながら次を書く生き物なので、ナレッジが繋がっていることの価値はバカにできない。
2025年からNotion AIがかなり強化されて、過去記事の検索や構成案の生成、トーン調整まで賄えるようになった。私の体感だと、特に「うちのトンマナで言うとどう書く?」みたいな質問への精度が上がっている。Findyが2025年にJiraからNotionにプロジェクト管理を移したのも、たぶんこのAI連携が決め手の一つだと思う。
ただ、Notionは「自由度が高すぎる」のが弱点でもある。データベース設計の初期コストが重い。誰かがちゃんと設計しないと、半年後にはカオスなページが量産される。これも経験です。
Asana——複雑工程の「管制塔」
Asanaは、フロー軸を捌くために生まれてきたツール。
ライター→編集→デザイナー→公開、というリレー形式の制作フロー、特に依存関係(前工程が遅れると後工程が連鎖で遅れる)の可視化はAsanaが圧倒的に強い。タイムラインビューでガントチャートが綺麗に出るし、ボトルネックも一目でわかる。
実例として、エネルギー業界のE.ON Nextは、マーケティングキャンペーンとコンテンツ制作リクエストをAsanaで一元化して、制作リクエストの処理能力を前年比465%増にしている。これ、フォームで依頼を標準化したのが効いてる。「依頼の入り口を1つに絞る」という設計判断が本質。ツールの機能じゃなくて、運用設計の勝利。
ただ、Asanaは記事そのものを書く場所じゃない。エディタは貧弱だし、ナレッジが溜まる場所でもない。「進行管理だけ」に絞って使うのが正解。
スプレッドシート——数値の最終決戦地
スプレッドシートを「古い」と言う人がいるけど、私はむしろ逆だと思っている。
PV、CVR、検索順位、原稿料の集計——「数値の最終整形と分析」は、未だにスプレッドシートが最強。Gemini連携で関数の自動生成や分析補助も強くなったし、何よりピボットテーブルで自由にスライスできる。Notionのデータベースで頑張ろうとすると、必ずどこかで限界が来る。
私が運用しているチームでは、「原稿料計算とSEO順位レポートはスプシ、それ以外はNotion」で完全に分けている。混ぜない。混ぜた瞬間、片方の良さが死ぬ。
じゃあ、どう組み合わせるか
私の推奨構成、書いておく。
軸: ストック / ツール: Notion / 用途: 企画・執筆・マニュアル・過去記事
軸: フロー(小規模) / ツール: Notion / 用途: カンバン or テーブルで進行管理
軸: フロー(大規模) / ツール: Asana / 用途: 依存関係多数・外部CR多数の時のみ切り出す
軸: ナンバー / ツール: スプレッドシート / 用途: KPI・原稿料・分析
ポイントは「フローを小規模/大規模で分ける」ところ。
5人以下の編集チームなら、進行管理もNotionで足りる。むしろAsanaを入れると、ツールが2つに分かれて情報が分散するので逆効果。10人以上、外部ライター20人以上、複雑な動画制作工程を抱える、みたいな規模になって初めてAsanaを切り出す。Asanaが自社のSEO運用に「AI Studio」を使ってブログ記事下書き生成→ローカライズ連携で月間2,000万訪問にスケールしたのも、規模が大きいからこそAsanaの真価が出る話。
——規模が小さいうちにAsanaを入れると、機能の8割を使い切れずにコストだけ払うことになる。これも私の失敗談。
「全部1ツールで」の罠
最後に、いちばん大事なこと。
「ツールを1つに統一すれば情報がまとまる」は、半分正しくて半分間違っている。情報を集約する場所と、情報を捌く場所は別だから。
ストックの場所(Notion)に、フローの状態(誰がいつ何をやってる)を全部押し込もうとすると、ストックが汚れる。フローの場所(Asana)に、ナレッジを全部置こうとすると、検索性が死ぬ。それぞれのツールが得意な軸に特化させて、間を繋ぐルールだけ作る——これが、複数ツールを運用してきて辿り着いた答え。
具体的には、Notionの記事ページに「Asanaタスクへのリンク」と「数値レポートのスプシリンク」を貼っておく。これだけで、3軸が連動する。完璧な統合は要らない。疎結合で繋がっていれば、十分回る。
全部完璧に1ツールで統合してる会社があったら、それはそれで別の意味で心配だけどね。たぶん、誰かがめちゃくちゃ無理してる。
参考リンク
- ファインディ、Notion AI を全社導入し Jira からプロジェクト管理移行(AIsmiley) (https://aismiley.co.jp/ai_news/notion-ai-introduced-to-findy/)
- E.ON Next、Asanaで制作リクエスト処理能力465%増(PR TIMES) (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000078.000060002.html)
- Asana、自社SEO運用でAI Studio活用、月間2,000万訪問にスケール(MarkeZine) (https://markezine.jp/article/detail/43977)
- 株式会社ユーザベース、Notion全社活用事例(PR TIMES) (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000108390.html)

