GA4のコンテンツ分析は「体温計」だ。
体温を測れば熱があるかわかる。でも、どの臓器が悪いかはわからない。GA4のデフォルト設定でPVやセッション数を見ている状態は、まさにこれ。「記事が読まれている」ことはわかるけど、「どの記事がCVに貢献しているか」はわからない。
私はWriters-hubですめしさん(米山)の右腕として、クライアントのコンテンツSEOを設計・運用している。ある案件で、月間30本の記事を公開しているのにCV数が横ばいだった。クライアントに「どの記事が成果につながっていますか?」と聞かれて、「PVの多い記事はこれです」としか答えられなかった。
PVを見て満足するのは、体温計を見て治療した気になるのと同じだ。
あの時の悔しさから、GA4のイベント設計を一から見直した。結果として「記事ごとのCV貢献」が可視化できる状態を作れた。この記事では、その設計と実装の過程をそのまま共有する。
つまりこの記事は、「コンテンツの成果をPV以外で測りたいが、GA4の設定がわからない」人のためのもの。具体的には、オウンドメディアの担当者で、月次レポートに「PVが増えました」以上のことを書きたい人。3ヶ月前の私だと思ってくれればいい。
なぜデフォルトのGA4ではコンテンツの成果が見えないのか
GA4のデフォルト設定は「サイト全体の健康診断」には使えるけど、「記事単位の貢献度」を測るようにはできていない。
具体的に言うと、こういう問題が起きる。
PVランキングの罠 — PV上位の記事が、CV上位の記事とは限らない。情報収集フェーズの記事はPVが多いが、CVに直結しにくい。逆に、比較検討フェーズの記事はPVが少なくてもCV率が高い
ラストクリック偏重 — GA4のデフォルトコンバージョンは「CVが発生したセッションのランディングページ」しか見えない。3回訪問して3回目にCVした場合、1回目・2回目に読んだ記事の貢献はゼロ扱いになる
イベント未設定 — 「資料請求ボタンのクリック」「フォーム送到達」「CTAの表示」をイベントとして取っていなければ、そもそもCVの定義がない
すめしさんがよく言う。「測れないものは改善できない。でも、間違ったものを測ると間違った方向に改善する」と。PVだけで記事の良し悪しを判断すると、「PVが多い=良い記事」という誤った最適化に向かう。
STEP 1: CVイベントを設計する——何を「成果」と呼ぶか決める
ここ、一番大事。GA4の設定をいじる前に、「この記事群のゴールは何か」を定義する。
コンテンツマーケティングの場合、CVは大きく3層に分かれる。
CV層: マイクロCV / 例: CTA表示、記事内リンククリック、目次クリック / GA4イベント名(推奨): cta_view, internal_link_click
CV層: ミドルCV / 例: 資料DLボタンクリック、無料相談フォーム到達 / GA4イベント名(推奨): lead_button_click, form_start
CV層: マクロCV / 例: フォーム送信完了、購入完了 / GA4イベント名(推奨): generate_lead, purchase
多くのオウンドメディアが「マクロCVだけ」を計測している。でもそれだと、CVが少なすぎて記事ごとの差が統計的に見えない。月間CV50件のサイトで記事100本あったら、1記事あたり0.5件。これではどの記事が効いているかの判断がつかない。
だからミドルCV・マイクロCVまで計測範囲を広げる。「フォーム送信」だけじゃなく「資料DLボタンのクリック」まで拾えば、記事ごとの差が見えるようになる。
STEP 2: GTMでカスタムイベントを実装する
GA4の管理画面からもイベントは作れるけど、GTM(Googleタグマネージャー)経由の方が柔軟で管理しやすい。
例: CTAボタンのクリック計測
GTMで以下のタグを設定する。
unknown nodeトリガーの設定:
unknown nodeこれもめちゃくちゃ大事なんだけど、page_pathとarticle_titleをイベントパラメータに入れること。これがないと、「どのページで」そのCTAがクリックされたかがわからない。イベントは飛ぶけど記事との紐付けができない——これ、最初にやらかした(認める)。
例: 記事の読了計測(スクロール深度)
GA4にはデフォルトで「scroll」イベント(90%スクロール)があるけど、90%だけだと粗い。25%・50%・75%・100%で取る方が記事の「どこで離脱したか」がわかる。
GTMの「スクロール距離」トリガーで:
unknown nodeタグのイベントパラメータにscroll_depth({{Scroll Depth Threshold}})を入れる。
STEP 3: GA4の探索レポートで「記事×CV」を可視化する
ここからがGA4の本領。標準レポートではなく「探索」を使う。
手順: 記事別CV貢献レポートの作成
1. GA4管理画面 → 「探索」→「空白」で新規作成 2. ディメンションに追加: - ページパス+クエリ文字列(または ページタイトル) - イベント名 3. 指標に追加: - イベント数 - セッション - コンバージョン(キーイベント) 4. 「タブの設定」で: - 行: ページパス+クエリ文字列 - 列: イベント名 - 値: イベント数 5. フィルタ: ページパス+クエリ文字列 に /blog/ を含む(ブログ記事に絞る)
これで「どの記事で、どのイベントが、何回発生したか」のマトリクスが出る。
ここで見るべきは「PVに対するイベント発生率」。PVが1000でCTAクリックが3回の記事と、PVが200でCTAクリックが10回の記事。後者の方がCV貢献度は圧倒的に高い。PVだけ見ていたら、前者が「良い記事」に見えてしまう。
STEP 4: カスタムディメンションで記事属性を付与する
もう一歩進めるなら、記事に「カテゴリ」「想定検索意図」「公開日」などの属性をカスタムディメンションとして付ける。
データレイヤーで記事属性を渡す例:
unknown nodeGA4管理画面 →「カスタム定義」→「カスタムディメンションを作成」で、上記のパラメータを登録する。
これをやると、「ハウツー記事」と「比較記事」でCV率がどう違うか、「情報収集系」と「検討系」のどちらがCVに効くか——記事の「タイプ別」で成果を比較できるようになる。
(正直、ここまでやっているオウンドメディアは少ない。でもやった時の見え方が全然違う。私たちの案件で実装した時、「情報収集系はPV多いがCV率0.1%」「比較検討系はPV少ないがCV率2.8%」という差がくっきり出て、コンテンツ戦略の見直しにつながった)
コンテンツ計測の設計思想——なぜ「測る」の前に「設計」が必要なのか
ここまでの手順を並べたけど、一番伝えたいのは個別の設定方法じゃない。
「何を測るかを決めること」が、そのまま「コンテンツで何を達成したいかを決めること」と同義だということ。
GA4のイベント設計は、言い換えれば「成果の定義書」。CTAクリックを測ると決めた時点で、「この記事群のゴールはCTAクリック数の最大化」と宣言していることになる。フォーム送信を測ると決めれば、「直接CV」が目標になる。
「全部大事だから全部測る」は、「全部大事じゃない」と同義だ。
イベントを20個設定してダッシュボードを埋め尽くしても、どの数字を見て次のアクションを決めるかが曖昧なら、何も測っていないのと同じ。私たちは最終的に、クライアントごとに「見るべきイベントは3つまで」というルールを作った。これで月次レポートがシンプルになり、「次に何をすべきか」が見える状態になった。
全部やる必要はない。まずはSTEP 1の「CV層の定義」とSTEP 2の「CTAクリック計測」——この2つだけやってみてほしい。GA4のデフォルト設定に1つカスタムイベントを追加するだけで、「PVしか見えない」状態から一歩抜け出せる。
残りのステップは、最初の計測結果を見てから考えればいい。データが出てくると「ここも測りたい」が自然に湧いてくるから。まあ、測りすぎて何を見ればいいかわからなくなったら、それはそれでまたSTEP 1に戻る話だけどね。

