「外注か内製か」——この問いは、経営判断の皮を被った組織設計の問題だ。
記事制作を外注するか内製するか。この相談、月に3回は受ける。そしてだいたいの場合、聞いてくる人はすでに答えを持っている。外注したい人は「内製は大変そうだから」と言い、内製したい人は「外注は品質が不安だから」と言う。
でもね、どっちも半分だけ正しくて、半分ズレてる。
私はWriters-hubで記事制作の外注を請け負う側であり、同時にクライアントの社内体制づくりを支援する側でもある。つまり外注先と内製支援者の両方の席に座っている。この立場だから言えることがある——「外注 vs 内製」は二択じゃない。組み合わせ方の設計だ。
コストで比較する——見えない原価を見落とすな
コスト比較は「記事単価」の話だと思われがちだけど、それは氷山の一角にすぎない。
外注の場合、1記事あたりの制作費は明確に見える。5万円なら5万円。でもそこにディレクションコストが乗る。要件の伝達、修正指示、品質チェック、フィードバック——これが社内担当者の工数として月に10〜20時間食われる。ここを計算に入れていない会社がびっくりするほど多い。
内製の場合、記事単価は「ゼロ」に見える。社員が書くんだから追加費用なし……と思いたい気持ちはわかる。でも実態は違う。その社員の本来業務の機会損失、ライティングスキルの育成コスト、品質のばらつきを吸収するレビュー工数。全部積むと、1記事あたり外注より高くつくケースは珍しくない。
悪い判断: 「外注費を削減するために内製化する」(見えない原価を無視) 良い判断: 「記事単価+ディレクション工数+機会損失の総コストで比較する」
ここ、大事。安い方を選ぶんじゃない。総コストが透明な方を選ぶんだ。
品質で比較する——「誰の品質基準」かを決めろ
品質の議論は、基準を決めずに始めると永遠に終わらない。
あるクライアントに「外注記事の品質が低い」と相談されたことがある。読んでみたら、正直、悪くない記事だった。SEOの基本は押さえてるし、情報の正確性も問題ない。じゃあ何が不満なのか深掘りしたら、「うちの会社の"トーン"じゃない」——これだった。
つまり品質には2層ある。情報品質(正確性・網羅性・構造)とブランド品質(トーン・世界観・読者との距離感)だ。
外注が強いのは情報品質。プロのライターは構成力がある。SEOの定石も知っている。ただし、ブランド品質は外から持ち込めない。あなたの会社が何を大切にしていて、どんな言葉を使い、どんな言葉を使わないか——これは内側の人間にしかわからない。
逆に内製が強いのはブランド品質。社員は会社の空気を吸っているから、トーンは自然と合う。ただし情報品質——特に検索エンジンを意識した構造設計は、訓練なしにはできない。
(ここで「じゃあ両方やればいいじゃん」と思った方、正解。問題は"どう"両方やるかだ)
スピードで比較する——立ち上がりと巡航を分けて考える
スピードには2つの時間軸がある。立ち上がり速度と巡航速度だ。
外注は立ち上がりが速い。契約して、ブリーフを渡せば、来月から記事が出てくる。でも巡航速度には天井がある。外注先のリソースに依存するし、修正のラリーが入ると1記事に2〜3週間かかることもある。
内製は立ち上がりが遅い。人を採用するか、既存社員を育成するか。どちらにしても3〜6ヶ月は「投資期間」だ。でも一度回り始めると巡航速度は速い。社内で完結するからラリーがない。「これ、ちょっと直して」が30分で終わる。
ここでよくある失敗パターンがある。
立ち上がりの遅さに耐えられず内製を諦める。3ヶ月やって「成果が出ない」と外注に切り替える。でも3ヶ月で内製体制が完成するわけがない。これは種を蒔いて1週間で「芽が出ない」と別の種を買いに行くようなものだ。
じゃあ、どう判断するか——3つの問いで決める
フレームワークは複雑にしない方がいい。以下の3つの問いに答えれば、方針は決まる。
問い1: あなたの会社にとって記事コンテンツは「コア業務」か「支援業務」か?
コア業務なら内製を軸にする。メディア企業、コンテンツマーケが事業の中心にある会社。ここは自社で品質をコントロールできなければ致命的だ。
支援業務なら外注を軸にする。記事はあくまでリード獲得の手段で、プロダクト開発が本業の会社。限られた社員の時間を記事に使うのは最適配分じゃない。
問い2: 社内に「編集できる人」がいるか?
これもめちゃくちゃ大事。外注するにしても内製するにしても、編集者不在の記事制作は破綻する。外注なら品質チェックができない。内製なら品質が上がらない。
編集できる人がいないなら、まずそこから。外注する場合は編集機能ごと外注する。内製する場合は編集者を先に採用する。
問い3: 月に何本必要か?
月4本以下なら外注の方が効率的。体制構築のコストを記事数で割ると、内製は割に合わない。
月8本以上なら内製の比率を上げた方がいい。外注だけで月8本を品質維持しながら回すと、ディレクションコストが膨らんで、結局もう1人雇えるくらいの金額になる。
月5〜7本はグレーゾーン。ここは問い1と問い2の答え次第。
結論——「100%外注」も「100%内製」も最適解じゃない
私が見てきた限り、うまくいっている会社の多くは外注7:内製3か、逆に内製7:外注3の混合型だ。100%どちらかに振り切っている会社で、記事制作が長期的にうまく回っているケースは少ない。
外注で記事の本数を確保しつつ、内製でブランドの核になるコンテンツを作る。あるいは内製を基盤にしつつ、専門性の高い記事や繁忙期のバッファを外注で補う。
「外注 vs 内製」を考える時間があったら、「何を外注して、何を内製するか」の仕分けに時間を使った方がいい。それが、両方の席に座ってきた私の、正直な結論だ。
(まあ、外注先がこれを言うのは営業的にはマイナスなんだけどね。でも本当のことだから仕方ない)

