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オウンドメディアの立ち上げで失敗する3パターン——目的設計の段階で勝負は決まる

3本の柱のうち2本が破損した建築設計図——目的設計の不備が立ち上げ後のメディアを支えられないことの比喩

「オウンドメディア、立ち上げ自体は半年で形になったんですよ。でも1年経って、誰も書かなくなった」——これ、私がここ数年で何度聞いたかわからないセリフです。立ち上げで失敗してるんじゃない。立ち上げる前の段階で、もう負けが決まっていた。今日はその「決まり方」を3パターンに分けて話します。

オウンドメディアって、Webサイトを作ることだと思われがちなんだけど、本当は「自社の知見を、検索される形に翻訳し続ける運用体制」のことなんですよね。サイトはただの器。器を磨いても、中身を入れる仕組みがないと水は溜まらない。

ちなみにテクロ社の調査では、BtoBオウンドメディアは約9割が成果が出る前に放置・撤退しているらしいです(※テクロ株式会社)。9割。これ、「運が悪かった」で説明できる数字じゃない。構造的な失敗パターンがあるんです。

① 目的が「なんとなく集客」になっている

これ、一番多い。

「他社がやってるから、うちもやろう」で始まるパターン。役員会で「うちもオウンドメディアを」と決まって、現場が動き出す。で、最初の打ち合わせで「目的は?」と聞くと、「リード獲得もしたいし、採用にも使いたいし、ブランディングもしたい」と返ってくる。

ここ、大事。目的が3つある状態は、目的がない状態と同じです。

なぜか。記事1本書く時、「リード獲得目的の読者」と「採用候補者」と「既存顧客」では、書く内容も読み終わった後にしてほしい行動も全部違う。3つ全部に刺そうとすると、結果的にどれにも刺さらない記事になる。BtoBで成果が出ているメディア——例えばサイボウズ式やメルカン——は、1メディア1目的に絞り込んでます(メルカンは「採用カルチャーマッチ」、サイボウズ式は「組織観のファン形成」)。

「でも複数の効果を同時に狙いたいでしょ?」と思った方。気持ちはわかる。私も最初の頃は「全部欲張れた方が予算が通りやすいですよ」と言ってた時期があった(正直、これは私の浅さです)。でもこの欲張り、最終的に「誰にも読まれない廃墟」を生むんですよ。

良い目的設計の決め方はこう。

  • 悪い例:「オウンドメディアでリード獲得・採用・ブランディングを推進する」
  • 良い例:「3年後に〇〇業界の意思決定者から最初に思い出される会社になる。そのために、業界の変化を最も早く・深く言語化するメディアを作る」

後者は、誰に向けて書くか/何を書かないか/どの記事を上に出すか——全部この一文から逆算できる。前者からは何も逆算できない。

② KPIをPVに置いた瞬間、メディアは死ぬ

これもめちゃくちゃ大事。

目的が「商談創出」なのに、KPIが「月間PV」になってるケース。よくある。なぜか。PVはわかりやすいから。経営会議で説明しやすいから。

でもね、PVと商談創出は、相関するけど因果しない。検索順位が上がってPVが10倍になっても、その流入が「自社の商材と関係ない検索意図」だったら、商談はゼロのまま増える。アクセス解析ダッシュボードはきれいに右肩上がり、でも営業は「メディアから一件も来ない」と言う——この乖離が3ヶ月続くと、社内政治的にメディアは死にます。「コストばかりかかって売上に貢献していない」と判断される。

ここで効くのが、KPIを「最終目的の手前1段」に置くという発想。

  • 悪い例:PV / セッション数 / SNSシェア数
  • 良い例:「事業課題を持つ意思決定者からの問い合わせ件数」「自社サービス紹介ページへの遷移数」「特定領域のホワイトペーパーDL数」

私がコンテンツ運用で関わる時、最初の壁打ちで毎回確認するのが「で、最終的に何が増えたら成功と言えるんですか?」という問い。これに即答できない案件は、KPI設計から作り直しになります(時間かかる、でも必要)。

ちなみにLeadGridの2025年調査だと、BtoBオウンドメディアのCVR平均は1〜5%(※LeadGrid)。広告経由のリードに比べてオウンドメディア経由のリードは受注率が約2倍高いというデータもある。つまりPVではなく「受注に近い行動の数」を測れば、メディアの真価は出る。測り方を間違えてるだけ。

③ 内製と外注を「どっちか」で考えている

最後の罠。

「オウンドメディア、内製でやるべきか外注すべきか」——これ、二者択一で議論されがちなんだけど、両方とも単独だと失敗します。

内製単独の失敗:担当者が本業(営業や広報、マーケ)と兼務する形でスタート。記事1本の制作工数って、企画2〜3時間/執筆4〜6時間/校正・入稿2〜4時間で、合計約8〜13時間かかるんですよ(※Simplique)。週1本でも月40〜50時間。本業を持ちながらこれを継続できる人は、ほぼいない。3ヶ月でストップします。

外注単独の失敗:自社の専門性を理解していない外注先に丸投げ。検索上位の他社記事をツギハギした「薄い内容」が量産される。SEOのテクニカルな部分は整っていても、「この会社じゃないと書けない一次情報」がゼロ。結果、Googleの評価も上がらないし、社内にもノウハウが残らない。1年後に「うちのメディア、何のためにあるんでしたっけ?」と振り出しに戻る。

正解はハイブリッド。役割を分けるんです。

  • 内製でやる:戦略設計/編集方針/一次情報の提供(インタビュー素材、社内データ、現場の生声)/最終チェック
  • 外注に出す:ライティング(特に汎用ノウハウ部分)/SEO構成案作成/入稿作業/画像作成

「自社にしか書けない部分」と「誰でも書ける部分」を切り分けて、後者だけ外に出す。これだと内製の工数は1本あたり2〜3時間で済むし、記事の独自性は維持される。コンテンツ制作会社で続いている関係って、だいたいこの「分担設計」をクライアントと一緒に作るのが上手いです(私が言うのも変な話だけど)。

結局、目的設計の解像度がすべて

3パターンを並べてみると、根っこは全部同じだと気づきます。目的の解像度が低いまま走り出している、これに尽きる。

目的設計が解像度高くできていれば、KPIは自動的に決まる。KPIが決まれば、内製/外注の役割分担も決まる。逆に、目的の解像度が低いまま「KPIどうします?」「内製ですか外注ですか?」と議論しても、永遠に決まらない。土台がないところに柱を立てようとしているから。

オウンドメディアの立ち上げで一番時間をかけるべきなのは、サイト構築でも記事制作でもなくて、最初の「目的設計のドキュメント1枚」です。誰に・何を伝え・最終的に何が増えたら成功か。これを社内で合意するまで、サイトを作らない方がいい。これ、本当に。

立ち上げ後に「目的を見直す」のは大変です。記事もデザインも体制も全部その目的を前提に動いてるから、後から変えると全部やり直しになる。最初の1枚を真剣に書く方が、トータルでは10倍速い。

——とはいえ、この「目的設計の1枚」を1人で書くのも、実はかなり難しいんですよね。社内の利害関係者が多いほど、合意形成のプロセス自体が事業推進力を試してくる。なので、立ち上げを検討してる方は、まず社内で「3年後にこのメディアで何が起きてたら成功か」だけを言語化するワークショップを1日やってみるのをおすすめします。それで答えが出ないなら、それは外部の壁打ち相手を入れた方がいい段階。

全部完璧にやる必要はないんだけど、目的設計だけは妥協しない方がいい。9割が撤退する世界で、生き残る側に行きたいなら。

参考リンク

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