チャットGPTに調べものを頼み、返ってきた答えをそのまま資料に貼ってよいものか迷う。数字や社名が入っている回答ほど、その手前で手が止まる。業務で使っている方なら、一度は経験があるはずです。
先にお伝えしておくと、正確性は性能の問題である前に、質問の種類の問題です。同じチャットGPTでも、要約や言い換えはほとんど外しません。ところが人名の生年月日や、法律の条番号、企業の売上高といった一点の事実を答えさせると、平然と間違えます。しかもその外れ方には理屈があり、指示を足しても消えない領域が残ります。
本記事では、誤りが生まれる仕組みを研究論文にあたって整理したうえで、プロンプトで改善できる範囲と、確認工程でしか埋められない範囲を分けて解説します。記事や資料を制作している立場から、実際に回している確認の順番もそのまま載せました。
- 正確性が問われる3つの場面と、それぞれ当たり外れがどう変わるか
- チャットGPTが「わからない」と言わずに答えてしまう構造的な理由
- プロンプトで上げられる正確性と、上げられない正確性の線引き
- 出力を確かめるときに見る順番と、公開前のチェック項目
- 業務で使うときに先に決めておくべき3つのルール
チャットGPTの正確性は一つの数字では答えられない
「精度は何%くらいですか」と聞かれることがあります。答えにくい質問です。正解率という形で示せるのは、正解が一つに定まる問題を大量に解かせたときの話であり、実務でチャットGPTに投げている内容の多くはそこに当てはまりません。
もう少し実態に近い言い方をすると、正確性は質問の種類ごとに別々の傾向を持ちます。使う人ごとに評価が割れるのは、性能の見方が違うからではなく、投げている質問の種類が違うからでしょう。

正確性が問われる場面は3つに分かれる
実務で使われ方を観察していると、おおむね3つに整理できます。事実を照会する使い方、文章を生成する使い方、そして推論や計算をさせる使い方。3つは外れやすさも、外れたときの気づきやすさも異なります。
| 具体例 | 外れやすさ | 誤りへの気づきやすさ | 確認にかかる手間 | |
|---|---|---|---|---|
| 事実の照会 | 人名や社名、日付、統計値、条文番号 | 高い | 低い(もっともらしく書かれる) | 大きい(一次情報に当たる必要がある) |
| 文章の生成 | 要約、言い換え、構成案、たたき台 | 低い | 高い(読めばずれに気づく) | 小さい |
| 推論と計算 | 集計、条件分岐の整理、コードの生成 | 中程度 | 中程度(検算すれば判明する) | 中程度 |
表のうち、実務で事故になるのは1行目にほぼ集中します。効いているのは外れやすさそのものではなく、その右隣の2列でしょう。文章のずれは読めばわかりますが、事実の誤りは自然な文章のなかに埋め込まれるため、確認する気がなければ通過してしまうのです。
「便利だ」と「使えない」に評価が割れる理由
チャットGPTの評価が人によって正反対になるのは、この3分類のどこを主に使っているかの違いで説明がつきます。議事録の要約や文章の整形に使っている人は精度が高いと感じ、調べものの代わりに使っている人は当てにならないと感じる。どちらの実感も、その人の使い方の範囲では正しいと言えます。
利用そのものは急速に広がっています。総務省の令和7年版情報通信白書によれば、生成AIサービスを使っている、または過去に使ったことがあると回答した個人の割合は、令和6年度調査で26.7%。前年度調査の9.1%から大きく伸びました。
※ 出典 総務省「令和7年版 情報通信白書」個人におけるAI利用の現状

企業側の調査でも、生成AIを利用しない理由や課題として「出力の正確性・信頼性」が挙げられています。裏を返せば、正確性の見極め方が決まらないまま導入の判断を保留している組織が、今も相当数あるということでしょう。

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なぜ誤るのか|「わからない」と言わずに答える仕組み
ここからが本題です。チャットGPTが誤る原因を「学習データが古いから」と説明する記事は多いのですが、それだけでは説明がつきません。最新の情報を検索させても、依然として事実は外れるからです。
2025年9月、OpenAIの研究者らが「Why Language Models Hallucinate(なぜ言語モデルはハルシネーションを起こすのか)」という論文を公開しました。この論文は、誤りが起きる原因を学習の段階と学習後の調整の段階に分けて説明しています。実務で正確性を扱うなら、押さえておく価値のある整理です。

学習データに一度しか出てこない事実は、構造的に外れる
論文が示すいちばん重要な指摘は、一度しか出てこない事実は、構造的に外れますという点です。
もう少し丁寧に見ていきましょう。言語モデルは大量の文章から言語の分布を学びます。綴りの規則のように、データのなかに繰り返し現れて法則を取り出せるものは正確に扱えます。一方、ある人物の誕生日のように、法則が存在せず、その事実がデータのなかに一度しか現れないものは、学習しても再現できません。論文は、誕生日に関する事実のうち20%が学習データに一度しか現れないのであれば、事前学習を終えた段階のモデルは誕生日の質問について少なくとも20%の割合で誤りを生成すると予想される、と述べています。
つまり誤りの一部は、学習量を増やせば消えるという性質のものではありません。データの中で一回しか語られていない事実は、確率的に当てにいくしかないのです。
論文には、著者自身の誕生日を「知っている場合のみDD-MMの形式で答えよ」と条件をつけて尋ねた例が載っています。あるオープンソースの最新モデルは、3回の試行で「03-07」「15-06」「01-01」という3つの異なる誤った日付を返しました。知っている場合のみと指定したにもかかわらず、です。
※ 出典 Kalai, A. T., Nachum, O., Vempala, S. S., Zhang, E.「Why Language Models Hallucinate」(arXiv:2509.04664、2025年9月4日)
同じ論文には、「DEEPSEEKにDはいくつ含まれるか、知っているなら数字だけ答えよ」という質問の例もあります。DeepSeek-V3は10回の独立した試行で「2」または「3」と答え、他のモデルでは「6」や「7」という答えまで出たと報告されています。数えれば1つだと確認できる問いですら、答えは揺れました。
誤りが減らないのは、評価の設計が推測を後押ししてきたから
では、学習後の調整でこの傾向をなくせないのか。論文はここに社会的な要因を見ています。
モデルの良し悪しを測るベンチマークの多くは、正解か不正解かの二択で採点します。この採点方式のもとでは、不確かなときに「わからない」と答えるモデルより、常に何かしら推測して答えるモデルのほうが高い点を取ります。理由は単純で、わからないと答えれば0点、当てずっぽうでも当たれば1点になる。論文はこの状況を、不確実性の表明が罰せられる状態が広がっている、と表現しています。

言い換えると、私たちが使っているモデルは、黙るより答えるほうが評価される環境で鍛えられてきた、ということになります。「知ったかぶりをやめてほしい」という要望が通りにくいのは、モデルの性格の問題ではなく、測り方の設計に由来する面があるわけです。
論文が提案している改善策も示唆的で、評価の指示文のなかに確信度の基準を明示すべきだ、としています。たとえば「一定の確信がある場合のみ答えよ。誤答は減点、わからないは0点」といった条件を、問題文そのものに書き込む形です。この考え方は、後述するプロンプトの工夫にもそのまま応用できます。
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誤りが出やすい質問と、出にくい質問
仕組みがわかると、どんな質問で身構えるべきかも見えてきます。制作の現場で実際に警戒しているのは、次のような質問です。
- 特定の人物や企業についての、日付・数値・肩書といった一点の事実
- 法律の条番号、規格の番号、判例名など、正確な表記が要求されるもの
- 統計値の出典と数値の組み合わせ(数値は合っていても出典が入れ替わる)
- 発表されて日が浅い出来事や、直近で改定された制度
- 書籍名、論文名、URLといった、実在の確認が必要な参照情報
反対に、確認の手間が軽くて済む質問もあります。手元にある情報を渡したうえで処理させるタイプの依頼です。
- 自分が用意した文章の要約、言い換え、構成の組み替え
- 与えた条件に沿った文案の複数出し
- 分類の観点出しや、抜けている論点の指摘
- 読み手の視点からの疑問出し
- 表記ゆれや誤字の洗い出し
2つのリストの違いは、答えの根拠がどこにあるかです。前者は根拠がモデルの内側にあり、後者は根拠がこちらの手元にあります。根拠が手元にある依頼ほど、正確性の心配は小さくなります。この線引きは、業務で任せる範囲を決めるときの基準としてそのまま使えます。
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プロンプトで上げられる正確性と、上げられない正確性
「プロンプトを工夫すれば精度は上がる」という説明はよく見かけますが、上がるのはどの部分なのかまで書かれていることは多くありません。分けて考えます。
効果が出やすいのは、判断材料を渡す指示
効果が出るのは、モデルの内側の記憶に頼らせない方向の指示です。順番に組み立てると次のようになります。
誰に向けた、何のための出力なのか。すでに決まっていること、避けたいこと。前提を書くほど、選択肢が絞られて出力が安定します。曖昧な依頼ほど、モデルは一般論で埋めにいきます。
社内資料、議事録、既存ページの文章など、根拠になるものを本文として渡します。渡した範囲で答えさせる指示を添えると、記憶からの補完が減ります。
見出しの数、字数、表の列、箇条書きの有無。形式を指定すると、埋めるべき枠が決まるため、余分な創作が入りにくくなります。
主張ごとに根拠を併記させ、確信が持てない箇所には「不確か」と明示するよう指示します。前掲の論文が評価設計で提案している考え方を、日々のプロンプトに持ち込む形です。
出力の最後に、事実確認が必要な箇所を列挙させます。確認作業の当たりをつける用途としては十分に機能します。
5つのうち、体感として差が大きいのは2番目です。渡す材料があるかどうかで、出力の質は変わります。逆に材料を渡さずに前提だけ丁寧に書いても、内側の記憶から引っ張ってくる構造は変わりません。
効果が薄いのは、態度を求める指示
一方で、あまり効かない指示もあります。「正確に答えて」という指示は、ほとんど効きません。誤った情報を出さないでください、嘘をつかないでください、といった依頼も同様です。
モデルの側に「この答えは間違っている」という自覚があって、それを隠して答えているわけではありません。もっともらしい答えを生成した結果が誤りだった、という順序です。自覚がないものに対して正確さを求めても、指示として作用する余地は限られます。
同じ理由で、「専門家として答えてください」という役割指定も、事実の正確性を直接押し上げるものではないと考えておくのが妥当でしょう。役割の指定が効くのは、語彙や説明の切り口、想定読者の設定といった文章の方向づけの部分です。事実の当たり外れとは別の軸にあります。
社内でチャットGPTを使わせたいのですが、担当者が調べものに使い始めていて、誤りが混ざったまま資料が回りそうで不安です。
編集部
プロンプトの研修より先に、使ってよい工程を決めるほうが早いです。要約や整形は任せてよく、事実の照会は必ず出典で裏を取る。この2つを社内の言葉で書き出すだけで、資料に混ざる誤りはかなり減ります。
研修でプロンプトの型を配るより、工程の線引きを先に決めたほうが効く。理由は単純で、プロンプトの巧拙は個人差が残る一方、どの工程を任せるかは組織として一度決めれば全員に同じ基準が行き渡るからです。
社内で使わせたいが、誤りが混ざったまま資料が回る状態を避けたい方へ
使ってよい工程の線引きと、確認を誰がどこで行うか。この2つが決まっていない状態で導入すると、出力をそのまま貼り付けた資料が回り始めます。Writers-hubでは、記事や資料を実際に制作している立場から、社内でAIを使うためのルールづくりと運用の型を一緒に整える支援を行っています。
出てきた答えを確かめる手順
プロンプトで詰めきれない部分は、確認工程で埋めるほかありません。制作の現場で回している順番を、そのまま書き出します。
出力を読み返し、数値、固有名詞、日付、法令名、引用に印をつけます。印がついた箇所だけが確認対象です。文章表現の良し悪しは、この段階では見ません。
官公庁の発表資料、企業のプレスリリースや公式サイト、論文そのもの。まとめ記事ではなく、発表した当事者の情報に当たります。二次情報で確認すると、誤りが連鎖している場合に気づけません。
数値が合っていても、出典が入れ替わっていることがあります。数値の一致を確認したあと、その数値がどの調査の何年時点のものかを、あらためて確認します。
社名の法人格の位置、旧社名との混同、人物の肩書。ドメイン名や通称からの推測は避け、公式サイトの表記に当たります。
確認が取れなかった記述は、書き換えるのではなく削ります。曖昧なまま残すと、後工程で誰かが事実として扱ってしまいます。
5つのうち、飛ばされやすいのは3番目です。確認すべきは、答えそのものより出典です。「経済産業省の調査によると◯%」という一文で、数値は実在するのに調査主体が別の省庁だった、という取り違えは実際に起こります。

公開前に見る5項目
社外に出る文書の場合は、確認の結果を残す形にしておくと運用が安定します。チェック項目として使えるかたちにまとめました。
- 数値のそばに、出典と時点(何年の何調査か)が書いてある
- 出典のURLを実際に開き、記載内容と一致することを確認した
- 固有名詞を公式サイトの表記と照合した
- 法令や規格の番号を、原文で確認した
- 確認が取れなかった記述は、残さず削除した
5項目に共通しているのは、書いた本人以外でも検証できる形になっている点です。文章の巧拙は人によって差が出ますが、出典の有無と一致の確認は、誰が見ても同じ判定になります。品質を個人の注意深さに預けず、確認できる形に変えておく。精度の担保は、個人の腕前ではなく工程で決まります。
事実確認まで含めた制作体制を、社内だけで組むのが難しいと感じていませんか
生成した文章を確認する工程には、書く工程と同じか、それ以上の時間がかかるでしょう。Writers-hubは、企画から執筆、事実確認、公開後の改善までを担う編集部機能として入り、社内の担当者が確認作業に追われる状態を解消する支援を行っています。現在の体制のどこに人手が足りないかを整理するところからご相談いただけます。
業務で使うなら、先に決めておく3つのこと
個人の工夫として終わらせず、組織の運用に落とすなら、決めておく項目は3つに絞れます。
1つ目は、任せる工程の範囲です。要約や整形は任せる、事実の照会は必ず裏を取る。この線を社内の言葉で書き出しておくと、判断が担当者ごとにぶれません。
2つ目は、確認の責任者です。生成した本人が確認すると、自分が書いた文章として読んでしまうため、誤りが目に入りにくくなります。可能であれば、生成した人と確認する人を分ける運用が有効でしょう。
3つ目は、確認結果の残し方です。どのURLで何を確認したのかを記録に残せば、後から指摘を受けたときに経緯を追い直せます。記録まで手が回らないうちは、出典のURLを本文の脇にメモしておくだけでも違ってくるでしょう。
決めること | 決めないまま運用した場合に起きること |
|---|---|
任せる工程の範囲 | 調べものにも使われ、誤った事実が資料に混ざる |
確認の責任者 | 生成した本人が読み流し、誤りが素通りする |
確認結果の残し方 | 指摘を受けたときに、根拠を再調査するところから始まる |
3つとも、ツールの設定ではなく運用の取り決めです。導入の可否を検討する段階で、あわせて決めておくほうが手戻りが少なくて済みます。
チャットGPTの正確性に関するよくある質問
傾向として改善は見込めますが、種類によって効きが違います。推論や計算を要する質問では差が出やすい一方、学習データに一度しか現れない一点の事実については、モデルを変えても外れる可能性が残ります。モデルの選択と確認工程は、どちらか一方では足りないと考えておくのが無難でしょう。
なくなりはしません。参照した情報源そのものが誤っている場合や、複数の情報源から要約する過程で数値と出典の対応が入れ替わる場合があります。検索を使った回答であっても、示されたURLを開いて記載内容と突き合わせる工程は必要です。
学習データの量が言語によって偏っている以上、扱う題材によって差が出る場面はあります。ただし日本の制度や国内企業の情報のように、日本語の一次情報にしか存在しない事実については、言語を変えても解決しません。言語の選択より、根拠となる資料を渡せるかどうかのほうが影響は大きいでしょう。
出典として示されたURLや論文名そのものが実在しないケースがあります。示された出典は確認の手がかりであって、確認済みの証明ではありません。必ず開いて、記載内容が主張と一致するかまで見てください。
確認が必要な箇所を洗い出させる用途では役に立ちます。一方、その真偽の判定まで任せると、誤りを誤りのまま追認する場合があります。洗い出しは任せ、判定は人が一次情報に当たる。役割を分けるのが安全です。
まとめ
チャットGPTの正確性は、ツール全体の性能として一つの数字で語れるものではありません。要約や整形のように根拠が手元にある依頼はほとんど外さない一方、学習データに一度しか現れない一点の事実は、構造的に外れる可能性が残ります。誤りが減りにくい背景には、不確かなときに黙るより推測するほうが評価されてきた測り方の設計もありました。
やるべきことは、プロンプトの表現を磨くことよりも、任せる範囲を分けることです。判断材料を渡す依頼へ寄せる。事実の照会は、出典を開いて数値と時点まで照合する。確認が取れなかった記述は削る。この3つを工程として決めておけば、資料に誤りが混ざる余地はかなり小さくなります。
合同会社Writers-hubは、記事や企業の資料を制作する立場から、生成AIを使った制作の設計と運用を支援しています。社内で使う範囲を決めたい方、事実確認まで含めた体制を整えたい方は、現状に近いところからご相談ください。
AIを使う範囲と、確認する人を、まだ決めきれていない状態ではありませんか
禁止するか全面的に任せるかの二択ではなく、工程ごとに線を引くのが現実的な落としどころでしょう。Writers-hubでは、実際に記事を制作している現場の手順をもとに、社内で使ってよい範囲の設計と、確認工程の組み立てまでご一緒します。今の使われ方を伺うところから始められます。








