「ファーストビューから課題提起、実績、料金まで並び順は決まっているのだから、そのとおりに作れば形にはなるはず」。BtoBのLPを任された担当者がこう考えるのは自然なことで、ブロックの並びを示した解説もワイヤーフレームのテンプレートも無料で手に入るためです。ところが実際に構成表を埋め始めると、どのブロックに何を書けば他社と違いが出るのかが分からず、そこで止まります。
しかし、BtoB商材の言語化から原稿制作までを引き受けてきた弊社の立場から言えるのは、成果を分けるのは並べ方ではなく、そこに何を書けるかだということです。実際に断られたときに相手が使った言葉や、導入前後で顧客の作業がどう変わったかは、社内の営業や既存の取引先からしか集められません。
本記事では、作り始める前に決めておく3つのことから、ブロックごとの材料の集め方、コンバージョンが月に数件しかない状況での改善の進め方まで、制作会社の視点で順を追ってお伝えします。
- BtoBのLPで成果が分かれる原因が構成の型ではない理由
- BtoCのLPと具体的に何が変わるのか
- 作り始める前に決めておく3つのこと
- 基本構成のブロックと、各ブロックに入れる材料の集め方
- 費用の幅が生まれる要因と、内製と外注の分かれ目
- コンバージョンが月に数件しかない状況での改善の進め方
BtoBのLPが本当に相手にしているもの
BtoCのLPは、読んだ本人がその場で買うかどうかを決めます。BtoBはそうなりません。読んでいる担当者に決裁権がないことが多く、資料請求や問い合わせをした後、社内で上司や別部署に説明する工程が挟まります。
つまり、相手は担当者ではなく、担当者の社内説明だと考えたほうが実態に合います。LPを読んだ人が「よさそうだ」と感じただけでは前に進まず、その人が自分の言葉で他人に説明できる状態になって初めて、稟議や比較検討の土俵に上がるわけです。
この前提を置くと、書くべきことの優先順位が変わります。感情に働きかけるキャッチコピーより、他社と何が違うのか、費用はどう決まるのか、導入までに社内の誰の手間がどれだけ発生するのか。説明に使える具体物のほうが先に必要になります。
広告を出す前提でLPを作っています。とにかくインパクトのあるファーストビューにしたほうがいいと言われたのですが、そういうものでしょうか。
編集部
インパクトが不要とは言いません。ただBtoBの場合、ファーストビューで求められているのは驚きより「これは自分の担当領域の話だ」という確認です。誰向けの、何を解決する商材なのかが3秒で判別できるほうが、離脱は減りやすい傾向にあります。
検討期間が長いぶん、同じ人が何度も戻ってくる
BtoBの検討は数週間から数か月に及びます。そのため、一度読んで離脱した人が、社内会議の直前にもう一度同じLPを開くという動きが起きます。
初回訪問だけを想定した作りだと、この再訪に応えられません。二度目に来た人が探しているのは、キャッチコピーではなく料金の考え方や導入までの流れ、他社との違いといった具体的な情報です。再訪時に必要な情報へすぐ到達できるかという観点で、ページ内リンクや見出しの文言を見直す価値はあります。

BtoCのLPと変わる4つの点
違いを感覚で語ると設計に落ちません。制作の判断が変わる箇所に絞って、4つの観点で並べます。
| BtoCのLP | BtoBのLP | |
|---|---|---|
| 読み手 | 購入する本人 | 担当者と、その先の決裁者 |
| コンバージョン | 購入や申し込みで完了 | 資料請求や問い合わせで、そこから商談が始まる |
| 判断の材料 | 価格と、使ったときの実感 | 導入実績、費用の根拠、社内で説明できるか |
| デザイン | 目を引く配色と大きな装飾 | 情報の読み取りやすさを優先した構成 |
表にすると当たり前に見えますが、実務でつまずくのは2行目です。BtoBのコンバージョンは売上ではなく、営業が動き出すきっかけにすぎません。ここを取り違えると、件数だけ多くて商談に至らないリードが積み上がり、営業部門から「質が悪い」と言われる状態になります。
件数を増やす設計と、質を上げる設計は逆を向く
フォームの項目を減らせば入力完了率は上がります。一方で、企業規模や導入時期といった項目を削ると、営業は電話をかける前に相手の状況を把握できません。優先順位をつけずに両方を狙うと、どちらも中途半端になります。
判断の基準はシンプルで、営業の稼働に余裕があるなら件数を、追いきれないなら質を優先するという順序です。LPの設計より前に、リードを受け取る側の体制を確認しておくと迷いが減ります。
作り始める前に決める3つのこと
ここが本記事の中心です。構成表やワイヤーフレームに手をつける前に、次の3つを言語化しておくと、後工程の差し戻しが大きく減ります。
- コンバージョンを何に置くか(資料請求、問い合わせ、無料相談、デモ依頼)
- 読み手が同時に検討している比較対象は何か(他社商材、内製、現状維持)
- 商談で断られたときに実際に言われている言葉は何か
1.コンバージョンの定義を1つに絞る
資料請求と問い合わせを並べて置くと、心理的な負担が軽いほうに流れます。多くの場合は資料請求です。それ自体は悪くありませんが、資料請求のリードは商談化まで距離があるため、営業側にフォローの仕組みがないと放置されます。
決め方としては、いまの営業体制が1か月に何件フォローできるかから逆算するのが現実的でしょう。フォロー可能な件数が少ないなら、あえて負担の重い「無料相談」に絞り、検討度の高い人だけを通す設計もあり得ます。
2.比較対象を「他社」だけにしない
競合他社を並べて優位性を書く、という発想は自然です。ただし実際の商談で最も多い競合は、他社ではなく現状維持です。「いまのやり方でも回っている」「今期は予算がない」という理由で止まるケースは珍しくありません。
だとすれば、LPで戦う相手も他社比較だけではなくなります。いま何もしないと何が起きるのか、着手を先送りした場合のコストはどこに現れるのか。ここに触れているBtoBのLPは意外と少なく、書けると差がつきやすい領域です。
3.失注の言葉を集めてから書き始める
これは制作の現場で最も効果があった準備です。営業担当に「直近で断られたときの相手の言葉を、そのまま10個教えてください」と依頼します。要約ではなく原文に近い形で集めるのがコツです。
集まった言葉は、そのままLPで先回りして答えるべき論点になります。「導入までに現場の負担が増えるのでは」「うちの規模だとオーバースペック」「担当者が辞めたら運用できない」。書くべきことの半分は失注の言葉の中にあると考えて差し支えありません。
失注理由の集め方議事録やCRMのメモを検索するより、営業担当に口頭で聞くほうが精度が上がります。記録には「予算が合わず」としか残っていない案件でも、話を聞くと「他社より高いのではなく、社内で効果を説明できなかった」という別の理由が出てくることがあります。後者なら、LPに載せるべきは値引きの根拠ではなく、効果を説明するための資料です。
材料がそろっていない状態でデザインに進むと、原稿の空欄を埋めるための確認が何度も往復し、公開までの期間が伸びます。逆に、この3つが埋まっていれば構成づくりは半日で終わることもあります。
LPに載せる言葉が社内から出てこないまま、制作だけ進んでいませんか
失注理由の聞き取りから原稿化までを社外の視点で進めると、社内では当たり前になっていた強みが言語化されます。制作体制ごと支援するサービスの内容をご覧ください。
基本構成のブロックと、各ブロックの材料
材料がそろったら構成に落とします。BtoBのLPで標準的に使われるブロックは、おおむね次の並びです。ワイヤーフレームを引くときの下敷きとしても使えます。
順番 | ブロック | 入れる材料 |
|---|---|---|
1 | ファーストビュー | 誰向けか、何が解決するか、根拠となる実績が1つ |
2 | 課題の提示 | 読み手が社内で口にしている言葉 |
3 | 解決策の提示 | 課題と1対1で対応させた機能や支援内容 |
4 | 選ばれる理由 | 他社ではなく自社である根拠を3つまで |
5 | 導入実績・事例 | 企業名、規模、導入前後で変わった業務 |
6 | 料金 | 金額そのものか、金額の決まり方 |
7 | 導入の流れ | 期間と、顧客側で発生する作業 |
8 | よくある質問 | 失注理由から逆算した論点 |
9 | クロージングとフォーム | 直前の一押しと、入力項目 |
このブロック構成はどの解説にも載っていて、検索すれば無料のワイヤーフレームも手に入ります。だからこそ、型はどこでも手に入るが、中身は自社にしかないという認識が出発点になります。以下、材料が不足しがちなブロックを補足します。

実績は、企業名を出せなくても書ける
導入事例で最初に詰まるのが、顧客の許諾です。社名を出せない案件しかない場合、実績のブロックを空欄にしてしまう例をよく見かけます。
社名がなくても、業種と従業員規模、導入前に困っていた業務、導入後に変わった作業の3点があれば事例として成立します。「従業員80名の製造業で、月末に3日かかっていた集計作業が半日になった」という記述は、社名がなくても読み手が自社に当てはめられる情報です。数値を出せない場合は、担当者の作業手順がどう変わったかを具体的に書く方法もあります。
料金は、金額を出せないなら決まり方を書く
見積もり型の商材では金額を載せられないことがあります。その場合でも、価格が何で変わるのかは書けるはずです。ユーザー数なのか、対象データ量なのか、支援の頻度なのか。
変動要因を明示するだけで、読み手は社内で概算を作れます。金額が一切わからないページは、比較検討の初期段階で候補から外れやすくなります。問い合わせてから見積もりを出す方針であっても、レンジや算定の考え方は開示しておくほうが有利に働くでしょう。
参考にする他社LPは、業種ではなく検討フェーズで探す
デザインの参考を探すとき、同業のLPばかり集める人が多いのですが、同業は商材の説明順が似ているだけで、狙っている検討フェーズが違う場合があります。すでに課題を認識している層に向けたLPと、まだ気づいていない層に向けたLPでは、必要なブロックが変わります。
事例ギャラリーを見る際は、そのLPがどの層を狙っているかを推測しながら並べ替えると、自社に近いものが見つかりやすくなります。

制作の進め方
材料と構成が決まった後の工程は、次の5段階で進みます。
前章の3つを文書にまとめ、関係者の認識を合わせます。ここで営業部門の合意を取っておかないと、公開後にリードの質をめぐって議論が起きます。
ブロックの並びと、各ブロックの見出し文言を決めます。この段階で見出しだけを読み、話の筋が通っているかを確認してください。
最も時間がかかる工程です。失注理由や事例のヒアリングが必要になるため、社内の関係者に事前に日程を確保してもらいます。
原稿が確定してから着手します。文章量が決まっていない状態でデザインを進めると、後から文字を詰め込むことになり、読みにくいページになりがちです。
フォーム送信の計測、表示速度、スマートフォンでの見え方を確認します。フォームの送信テストは、実際に営業担当のメールボックスまで届くかを確かめてください。
工程の順番でよく崩れるのが3と4です。デザインを先に進めたくなる気持ちはわかりますが、原稿が固まる前に画面を作ると、文字数の制約が先に決まってしまい、書くべきことを削る展開になります。
なお公開前の確認では、表示速度の指標も見ておくと安心です。Googleは表示や操作の快適さに関する指標を公開しており、無料の計測ツールで自社ページの数値を確認できます。

※ ページエクスペリエンスに関する説明は Google 検索セントラルの公式ドキュメントを参照しています。
費用の幅は何で決まるのか
BtoBのLP制作を外注した場合、金額はテンプレートを使った簡易な制作から、取材と撮影を含む本格的な制作まで幅があります。同じ「LP1本」でも見積もりが数倍変わるのは、含まれる作業範囲が違うためです。
金額を左右する要因は、おおむね次の4つに集約されます。
見積もりが変わる4つの要因1つ目は原稿の有無。2つ目は取材や撮影の要否。3つ目はページの長さと図版の点数。4つ目は公開後の改善支援を含めるかどうか。このうち発注側でコントロールしやすいのは1つ目です。
実務の感覚として、原稿の有無で見積もりは倍近く変わる場面は珍しくありません。構成と原稿を自社で用意できれば、制作会社に依頼する範囲はデザインと実装に絞れます。逆に、材料が何もない状態から取材と執筆までを含めて依頼すれば、その分は当然上がります。
内製と外注、どちらを選ぶか
- 社内にデザインとコーディングの担当者がいる
- 商材の説明を文章にできる人がいる
- 公開後に何度も作り替える予定がある
- 検証しながら小さく作り始めたい
- 原稿を書ける人が社内にいない
- 客観的な視点で強みを言語化してほしい
- 公開時期が決まっていて後ろにずらせない
- 複数のターゲット向けに複数本を並行して作る
判断を分けるのは予算より人です。デザインツールは安価に使えるようになりましたが、失注理由を聞き取って原稿に落とす作業だけは省略できません。社内にその時間を確保できないなら、外注したほうが結果的に早く公開できます。
制作費を抑えたいので、まず自分たちで原稿を書いてみようと思います。気をつける点はありますか。
編集部
自社で書く場合、商材への理解が深いぶん説明が細かくなりすぎる傾向があります。書き終えたら、その商材を知らない社内の別部署の人に読んでもらい、何をしてくれる会社か説明できるか確かめてみてください。そこで詰まる箇所が、読み手も詰まる箇所です。
公開後の改善は、数値だけでは進まない
ここは多くの解説記事があっさり流す部分ですが、BtoBでは最もつまずきます。理由は単純で、コンバージョン数が少ないからです。
月間のコンバージョンが数件から十数件という規模では、ABテストを回しても差が偶然の範囲に収まります。BtoBのLPはABテストで決着がつかないという前提から始めたほうが、無駄な検証に時間を使わずに済みます。
- 月に数件しかCVがない状態でABテストを走らせる
- 直帰率だけを見て「ファーストビューが悪い」と判断する
- 流入元を混ぜたまま全体のCVRで良し悪しを決める
- 商談化率を見ずにフォーム送信数だけで評価する
では何を見るのか。使えるのは次の3つです。
1つ目は、ページのどこまで読まれているかという到達率。特定のブロックで読み進めが止まっているなら、そのブロックの内容か、その直前の説明に問題があります。2つ目は、流入元別の分けた評価。広告と検索では読み手の検討度が違うため、混ぜて平均すると何も見えません。
3つ目が、実は最も効きます。商談の場で「何を見て問い合わせようと思われましたか」と聞くことです。数件のヒアリングでも、LPのどのブロックが決め手になったかは驚くほど具体的に返ってきます。数値では取れない情報が、営業の現場には毎日流れています。
商談で聞く質問の例「LPのどのあたりまで読まれましたか」「問い合わせる前に、社内で誰かに相談されましたか」「他に検討されていたのはどんな方法でしたか」。この3問で、ページの改善点と次に作るべきコンテンツの両方が見えてきます。

LP単体では、広告を止めた月に流入も止まる
もう一点、公開後に直面するのが集客の持続性です。BtoBのLPは広告からの流入を前提に作られることが多く、出稿を止めれば訪問者は消えます。
検討期間が長い商材ほど、比較検討の段階で読まれる記事やホワイトペーパーが効いてきます。LPを作った後に何を用意するかまで考えておくと、広告費の増減に左右されにくい状態に近づきます。
広告を止めた月に問い合わせがゼロになる状態から抜け出すには
LPの前段で読まれるコンテンツがあると、検討初期の見込み客と接点を持てます。SEO記事の制作を外部に任せる場合の進め方をご紹介しています。
よくある質問
文字数の正解はありません。判断基準は、想定読者が社内で説明するために必要な情報がそろっているかどうかです。検討期間が長い高額商材ほど長くなる傾向がありますが、長さそのものより、見出しだけを追って話の筋が通るかを確認してください。
顕在層向けからです。すでに課題を認識して探している人のほうが、少ない訪問数でも商談につながります。潜在層向けは書くべき内容が広くなり、成果が出るまでの期間も長くなるため、1本目には向きません。
広告を出す予定があるなら必要です。コーポレートサイトは会社全体を説明する構造になっているため、特定の商材に絞った説明の順序を作れません。ただし、広告を使わず検索からの流入だけを狙うなら、サービスページの改善が先になる場合もあります。
実績のブロックを省くのではなく、代替となる根拠を置きます。自社での運用実績、担当者の経歴や資格、対応可能な範囲を具体的に示す方法があります。無料トライアルの提供数など、開示できる数字があれば併記してください。
営業が最初の連絡で必要とする情報から逆算します。会社名と担当者名と連絡先に加え、商談の優先順位づけに使う項目を1つか2つ。それ以上は、送信後の自動返信メールや初回連絡で聞くほうが実務に合います。
まとめ
BtoBのLPで成果を分けるのは構成の順番ではなく、各ブロックに入れる材料の質でした。最後に、作り始める前に確認したい項目をまとめます。
- コンバージョンを1つに絞り、営業のフォロー体制と合わせてある
- 比較対象に「現状維持」を含めている
- 直近の失注理由を、営業から原文に近い形で集めてある
- 実績のブロックに、社名がなくても伝わる情報を用意できている
- 料金は金額か、少なくとも決まり方を書ける
- 公開後に見る指標と、商談で聞く質問を決めてある
型はどこでも手に入ります。それでも成果に差が出るのは、失注の言葉や事例の細部といった、自社の中にしかない材料を集められるかどうかで決まるためです。制作に入る前の1週間を、この材料集めに使ってみてください。
合同会社Writers-hubでは、BtoB商材の言語化から原稿制作、公開後に読まれるコンテンツの設計までを支援しています。社内の材料をどう引き出すかの段階からご相談いただけます。
材料は社内にあるはずなのに、言葉にする時間が取れないという段階ですか
現状の商材資料と失注理由を共有いただければ、LPに載せるべき論点の整理からお手伝いします。まずは状況をお聞かせください。








