「インタビュー形式でお願いします」と依頼を受けたとき、最初に決めるべきものは何でしょうか。話し手を何人呼ぶか、聞き手を記事に登場させるか、写真をどこまで撮るか。決めることは複数あるのに、形式という一語がそれらをまとめて指してしまいます。
Webで見かける解説の多くは、インタビュー記事の形式を対談形式・一人称形式・三人称形式の3つに分けています。分類として誤りはないものの、この3分類が答えているのは「原稿を誰の声で書くか」という一つの軸だけで、制作の現場で同時に動いているもう一つの軸が抜け落ちている。
本記事では取材記事を数多く手がけてきた立場から、形式という言葉を軸ごとに分解し、それぞれの種類と向き不向き、目的から形式を絞る手順、そして取材が終わったあとに変更できる範囲までを扱います。
- 「形式」が指している2つの軸と、混同したときに消える選択肢
- 一問一答・一人称・三人称の違いと、それぞれが弱くなる場面
- 単独・対談・座談会・匿名という取材の組み方の使い分け
- 採用や導入事例など、用途別に見た形式の向き不向き
- 取材が終わったあとに形式を変えられる範囲
インタビュー形式は、2つの軸の掛け算で決まる
形式をめぐる話が噛み合わないとき、原因はたいてい軸の取り違えにあります。3分類が答えているのは「誰の声で書くか」だけで、取材そのものをどう組むかは別に決まるためです。
1つ目の軸は、取材をどう組むか
話し手を何人呼び、その場をどう作るかという軸で、単独インタビュー、対談、座談会、匿名を前提とした取材といった分かれ方をします。ここで決まるのは原稿の見え方ではなく段取りのほうで、人数が増えれば日程調整も撮影も原稿確認も増え、公開までの日数が伸びていきます。
2つ目の軸は、原稿を誰の声で書くか
質問と答えを交互に並べるのか、質問を消して話し手が語りかける形にするのか、書き手が地の文で状況を説明して発言を引用として差し込むのか。3分類が扱っているのはこちらの軸で、取材の人数とは独立に選べます。
2つを分けて考えると、選択肢は3つでは収まらない
単独インタビューを一問一答で見せることもできますし、2人の対談を三人称のルポとしてまとめることもできます。取材の組み方が4通り、人称が3通りあるなら、理屈のうえでの組み合わせは十通り以上に広がる。
問題は、実務で使われている呼び名が2つの軸をまたいでいる点にあります。「対談形式」という言葉は、質問と答えを交互に並べる書き方も、話し手が2人いる企画も指します。呼び名だけで合意すると、片方は単独取材の準備を進め、もう片方は登壇者2名の日程調整を待つ、という食い違いが起こる。防ぐには、形式名ではなく「話し手は何人か」「質問文を原稿に残すか」の2点で確認するのが確実です。

この表を一度作ってしまうと、依頼書に書くべきことがはっきりします。縦と横をそれぞれ指定すれば、形式名を使わずに合意できるためです。
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記事の人称で分かれる3つの形式
ここからは人称の軸を詳しく見ていきます。3つの違いは書き手の好みではなく、伝えたいものが人柄なのか情報なのかで決まります。
| 一問一答形式 | 一人称形式 | 三人称形式 | |
|---|---|---|---|
| 話し手の人柄の伝わりやすさ | ◎ | ○ | △ |
| 読み進めやすさ | ◎ | ○ | △ |
| 情報の整理しやすさ | △ | ○ | ◎ |
| 複数話者への対応 | ◎ | × | ○ |
| 執筆にかかる負荷の軽さ | ◎ | ○ | △ |
| 原稿確認の通りやすさ | ◎ | △ | ○ |
| 向く用途 | 社員紹介・専門家取材 | 創業の経緯・想いの発信 | 導入事例・調査レポート |
「執筆にかかる負荷の軽さ」と「原稿確認の通りやすさ」は、負担が小さいほど良い評価にしています。一問一答が採用サイトや社内報で選ばれやすいのは、この2行と人柄の行が同時に成立するためでしょう。
一問一答形式(Q&A形式・対談形式)
聞き手の質問と話し手の答えを、名前や記号を頭に置いて交互に並べる書き方を指します。話し手が1人でも成立するため、単独インタビューでこの形を選ぶ例は珍しくありません。発言をそのまま置けるぶん、言葉遣いや間合いがいちばん残る形式といえるでしょう。
弱点は情報密度です。話し言葉は書き言葉より密度が低く、同じ内容を伝えるのに文字数が膨らみます。さらに話された順番に引きずられるため、論点が行き来したまま原稿になりやすい。
現場でよく効く対処は、見出しの取り方を変えることです。質問文をそのまま見出しにすると、目次が「〜について教えてください」の羅列になり、読者は中身を想像できないままになる。見出しは質問ではなく回答側の言葉から取ると、一覧でも検索結果でも引きが出ます。
一人称形式(モノローグ形式)
質問を消し、話し手が読者に語りかける形に整えます。聞き手の存在が消えるぶん話し手の世界観に入り込ませやすく、創業の経緯や仕事への向き合い方を伝える記事に向きます。
注意すべきなのは、実際には話していない接続や補足を書き手が足す点です。事実と解釈の境目が原稿の上で見えにくくなるため、一人称形式は、確認の往復が最も長くなる傾向があります。戻りを減らすには、取材中に本人が使った語彙を書き出しておき、地の文にそれ以外の言い回しを入れない運用が有効でしょう。
三人称形式(ルポ形式)
書き手が地の文で背景や状況を説明し、発言を引用として差し込む形です。客観性が出るので、導入事例や調査レポートのように読者が判断材料として読む記事に向いています。複数の話し手を1本にまとめられる点も、実務では大きい。
ただし、取材の場で得た発言だけでは地の文が書けません。事前資料、現場で見た様子、数字の裏取りといった周辺の材料が要る。三人称で書くなら、取材の場以外の材料が要るという制約は、オンライン取材だけで済ませた場合にとくにはっきり出ます。

呼び名が媒体ごとに違う
同じ形式でも呼び名は揃っていません。一問一答形式はQ&A形式・対話体・対談形式と呼ばれ、一人称形式はモノローグ形式、三人称形式はルポ形式やルポルタージュ形式と呼ばれます。社内で長く使われてきた呼び名がある会社も多いでしょう。
呼び名で合意しようとすると、ここで一度つまずきます。確認すべきなのは名前ではなく、質問文を原稿に残すかどうかの一点です。残せば一問一答、消して語りにすれば一人称、書き手の説明を主にすれば三人称。この確認なら解釈が割れません。
社内では「インタビュー形式で」と言えば通じていたのですが、外部のライターに依頼したら想定と違う原稿が上がってきました。依頼書に何を書いておけば防げますか。
編集部
話し手の人数と、質問文を残すかどうかの2行で足ります。形式名は会社ごとに指すものが違うため、そこで合わせようとすると噛み合いません。人数が決まれば取材時間の目安が立ち、質問文の扱いが決まれば原稿の見え方も自動的に決まります。
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取材の組み方で分かれる4つのパターン
もう一つの軸である取材の組み方を見ていきます。人称と違い、こちらは決めた時点で段取りと費用が動きます。
単独インタビュー
話し手が1人の、最も基本となる形です。段取りが軽く、深掘りもしやすい。話が想定から逸れても軌道を戻しやすいため、テーマが定まっていない企画の一本目にも向きます。人称は3つとも選べるので、後から形式を変える余地も最も大きい。
対談(話し手が2人)
話し手2人が互いの発言を受けながら進める形です。立場や経験に差のある2人を組ませると、単独取材では出てこない話が引き出せます。反面、日程調整と原稿確認が人数分になり、公開までの日数は確実に伸びる。
当日の聞き手は深掘りよりも発言量の均衡と論点の管理に回ります。登壇者の組み合わせ方や整文の基準は対談ならではの論点が多く、単独取材の延長で臨むと当日に対応しきれません。
座談会(話し手が3人以上)
3人以上が同席する形で、社内では複数部署の合同企画や、同期社員を集めた記事などで使われます。1人あたりの分量が減るため、深さより多様さを見せたい企画に向く。
難しいのは読者側の負担です。話者が増えるほど誰の発言か追いにくくなり、文字だけでは像を結ばない。写真や話者アイコンで見分けをつけるか、発言の頭に短い呼称を固定するといった手当てが要ります。司会役を明確に置かないと、当日の発言量が特定の1人に寄る点も見ておきましょう。
匿名・覆面での取材
所属や氏名を伏せて話を聞く形です。人事評価や待遇、業界の慣行など、実名では語りにくいテーマで本音を引き出せます。
匿名取材で最も見落とされるのは、伏せたつもりで特定されてしまう事故です。所属部署、入社年次、担当した案件名といった要素は、単独では匿名でも組み合わせると個人が絞り込めます。公開前に、社内の人間が読んだときに誰の発言か分かってしまわないかを別の人の目で確認してください。実名で出すか匿名にするかは、人事や広報の合意を取材の前に取っておく事項です。
匿名にはもう一つ、読者側の受け取り方という問題もあります。発言の裏が取れないため、内容が具体的であるほど「本当にあった話か」という疑いを持たれやすい。匿名にする理由を記事の冒頭で説明しておくだけでも、受け取られ方は変わってくるでしょう。
単独か対談か、企画の形から決めかねているなら
話し手の人数は、伝えたいテーマと社内の事情の両方で決まります。合同会社Writers-hubでは、企画の設計から取材当日の進行、原稿化と確認対応までを一貫して支援しています。何を伝える記事かをお聞かせいただければ、取材の組み方から一緒に検討します。
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形式を絞るための4つの問い
軸と種類が整理できたところで、実際の絞り込み手順に移ります。順番に答えていくと、選択肢はおおむね1つか2つまで狭まります。
人であれば一問一答か一人称、情報であれば三人称に寄ります。ここで迷う場合はテーマが曖昧なので、先に企画を詰めるほうが早い。
採用の応募前に読むのか、稟議の材料として読むのか。判断のために読む記事ほど三人称が働き、雰囲気を知るために読む記事ほど一問一答が働きます。
短く区切って話す人か、長く一続きに語る人か。話し方と形式が合っていないと、整文の段階で無理が出ます。
一人称は確認の往復が長く、話し手が複数なら確認先も増えます。公開日が迫っているなら、往復の短い形式を選ぶ判断もあり得ます。
迷ったら、読者が読む場面から逆算するのが最も外しません。誰に何を判断してほしいかが決まれば、必要な客観性の度合いが決まり、人称は自ずと絞られるためです。
話し方から形式が決まることもある
3つ目の問いは軽視されがちですが、実務での効き目は大きい。取材前のメールや事前の電話でのやりとりから、話し手の話し方はある程度読み取れます。
短く区切って答える人は、質問と答えの往復がそのまま原稿の骨格になるため一問一答が自然に成立します。一方、一つの問いに対して背景から順に長く語る人は、質問文を残すと答えの塊が不揃いになり読みにくい。一人称に整えたほうが読みやすくなるのは後者のほうで、形式を先に固定してしまうと調整の余地がなくなります。

用途別に見た向き不向き
よく依頼のある用途について、形式との相性を整理します。あくまで出発点としての目安で、テーマや話し手によって動く余地はあります。
| 一問一答形式 | 一人称形式 | 三人称形式 | |
|---|---|---|---|
| 採用サイトの社員紹介 | ◎ | ○ | △ |
| 導入事例・お客様の声 | ○ | △ | ◎ |
| 経営者・創業の話 | △ | ◎ | ○ |
| 専門家・監修者への取材 | ◎ | △ | ○ |
| 社内報・部署紹介 | ◎ | ○ | △ |
| 調査結果のレポート | × | △ | ◎ |
採用サイトの社員紹介
応募者が知りたいのは、その会社にどんな人がいて、どんな話し方をするのかという点です。一問一答なら発言の温度がそのまま残るため、社風が言葉から伝わります。一人称に整えると文章はきれいになりますが、書き手の手が入るぶん人物像は平板になりがちでしょう。
導入事例とお客様の声
読者は検討中の企業で、稟議に使える材料を探しています。課題、検討の経緯、導入後の変化を順に整理して見せる必要があるため、地の文で構造を作れる三人称が向きます。一問一答で書くと、聞いた順に情報が並んで比較しにくくなる。
経営者と創業の話
創業の経緯や事業への考えは、本人の言葉が続くほうが伝わります。一人称に整えて語りとして読ませる構成が最も機能するのはこの用途でしょう。ただし確認の往復が長くなるため、公開日から逆算して余裕を持たせてください。
専門家や監修者への取材
読者が求めているのは知識であって語りではありません。質問と答えが明確に分かれている一問一答なら、読者は必要な問いだけを拾って読めます。専門的な内容ほど、どこに何が書いてあるかが見える形式が有利に働く。
取材が終わったあとに形式を変えられるか
取材を終えてから「やはり別の形式で」となる場面は、実際にあります。変えられるかどうかは、取材で何を集めたかで決まる。
一問一答から一人称への変更は比較的容易です。質問を消し、答えの塊をつなぎ直せば形になります。逆に一問一答から三人称に変えようとすると、地の文に書くことがなく原稿が痩せる。書き手が説明できる材料を、取材の場で集めていないためです。
形式を決めきれないまま取材日を迎えるなら、三人称でも書けるだけの材料を取っておくと選択肢が残ります。具体的には、話し手の経歴と担当範囲、テーマに関する数字や経緯、取材した場所の様子を、発言とは別にメモしておくこと。素材が余るぶんには捨てられますが、足りないぶんは後から取り直すしかありません。
つまり、取材の設計が、後から選べる形式の範囲を決めています。形式は原稿を書く段階の話に見えて、実際には取材を組む段階でおおよそ確定している、と考えたほうが実態に近い。
形式選びでつまずきやすいところ
公開後に読まれない記事や、制作の途中で止まる案件には、形式の選び方に共通した傾向があります。
- 形式を先に決めてしまい、あとから合う話し手を探している
- 見出しが質問文の羅列になり、目次から中身が想像できない
- 途中で人称が入れ替わり、誰が語っているのか分からなくなっている
- 匿名にした結果、誰の発言としても読めず内容が宙に浮いている
- 座談会で全員に均等に話させようとして、全員の話が浅くなっている
最も多いのは1つ目です。「社員インタビューを対談形式で」と先に決まり、あとから2人を探す。この順番だと組み合わせを選べないため、同じ部署の似た立場の2人になりがちで、互いに同意を重ねるだけの原稿ができあがります。話してもらいたい人を先に決めるほうが、結果は安定するでしょう。
3つ目の人称の混在は、複数人で分担執筆したときに起きやすい失敗です。前半は質問と答えを並べ、後半は書き手の説明が主になっている、といった形。書き始める前に、質問文を残すかどうかを一行で決めて共有しておけば防げます。
5つ目は座談会に特有の問題です。人数分の時間を均等に割ると1人あたりの持ち時間が短くなり、どの発言も掘り下がらない。論点ごとに主に答える人を決め、他の人は反応する側に回る設計にすると、記事に濃淡が出ます。
形式の判断を社内でできるようにしたいなら
形式の選び方、当日の進行表の型、整文の基準がそろえば、2本目以降の判断は社内で完結します。Writers-hubでは、制作を代行しながら判断基準を社内に残す進め方も提案しています。
インタビュー形式に関するよくある質問
依頼の場や社内の相談でよく出る質問を集めました。
記事の人称で分ければ一問一答形式・一人称形式・三人称形式の3種類です。ただし取材の組み方は単独・対談・座談会・匿名などに分かれ、両者は独立に選べます。組み合わせで考えると、実際の選択肢は3つより多くなります。
記事の表記としてはほぼ同じ意味で使われています。呼び名が媒体や会社によって異なるだけです。ただし対談という言葉は話し手が複数いる企画も指すため、依頼時は話し手の人数まで確認しておくと行き違いが起きません。
書けます。聞き手の質問と話し手の答えを交互に並べれば、話し手が1人でも一問一答形式として成立します。取材の人数と記事の人称は、別々に決められるものです。
決めておくほうが取材の設計をそろえられます。決めきれない場合は、三人称でも書けるだけの周辺情報を取材時に集めておくと、後から選び直せる余地が残ります。
文字だけで追える範囲は3人から4人程度です。それ以上になると誰の発言か分からなくなるため、写真や話者アイコンで見分けをつけるか、記事を分割する構成を検討してください。
まとめ
インタビュー形式という言葉は、取材をどう組むかという軸と、原稿を誰の声で書くかという軸の2つをまとめて指しています。噛み合わない議論の多くはここに原因があるため、形式名ではなく「話し手は何人か」「質問文を原稿に残すか」の2点で合意してください。
人称の選び方は、伝えたいのが人か情報か、読者がどの場面で読むか、話し手がどんな話し方をするか、確認にどれだけ日数を取れるかの4つで絞れます。人柄を見せたい記事は一問一答、語りとして読ませたい記事は一人称、判断材料として読ませたい記事は三人称。そして形式の選択肢は、取材で何を集めたかによってあらかじめ狭まっています。迷いが残るうちは、三人称でも書ける材料を取材の場で確保しておくのが安全な進め方でしょう。
合同会社Writers-hubでは、企画の設計から取材当日の進行、原稿化と確認対応までを支援しています。形式の判断基準を社内に残したい場合も、制作ごと任せたい場合も相談いただけます。
次のインタビュー企画のテーマが決まっているなら、形式の相談から始められます
どの形式が合うかは、掲載先と読者、そして話し手によって変わります。何を伝えたい記事かをお聞かせいただければ、取材の組み方と人称の選び方、当日の進行案まで提案します。








