テーマは決まっているのに、コンセプトを出してほしいと言われて手が止まる。あるいは両方を書いたつもりが、「これは同じことを言い換えているだけでは」と差し戻される。企画書やブランドの資料をつくる場面で、この2語は驚くほど頻繁につまずきの原因になります。
つまずく理由は、意味を知らないからではありません。テーマとコンセプトは、対立する概念ではなく順番に並ぶ工程だからです。並列に置いて比べようとすると、どちらの説明も抽象的になり、最後は「なんとなく違う」で終わってしまいます。
本記事では、コンテンツの企画とメディア運営を仕事にしている立場から、まず2語の関係を整理し、公的な調査データを手がかりに「なぜこれほど説明しにくいのか」を確かめます。そのうえで、目的やスローガンとの線引き、テーマからコンセプトへ落とし込む手順、決めたコンセプトが働いているかの確認方法まで順に見ていきましょう。
- テーマとコンセプトの違いを、範囲と捉え方という2つの軸で整理する方法
- 「どちらが1つで、どちらが複数か」の説明が資料ごとに食い違う理由
- 目的、ビジョン、スローガンとの線引き
- テーマからコンセプトを決めるまでの5つの手順
- 決めたコンセプトが判断に使えているかを確かめる観点
テーマとコンセプトの違いは、範囲と捉え方の違い
2語をひとことで分けるなら、テーマは「何を扱うか」、コンセプトは「それをどう捉えるか」です。扱う対象を決めるのがテーマ、決まった対象の見方を定めるのがコンセプト、と言い換えてもかまいません。
比べる観点 | テーマ | コンセプト |
|---|---|---|
答えている問い | 何を扱うか | それをどう捉えるか |
書き方の形 | 名詞や単語で足りる | 一文で書く |
決まる順番 | 先 | 後 |
変わる頻度 | 企画ごとに入れ替わる | 決めたら簡単には動かさない |
主な使いどころ | 対象の共有 | 良し悪しの判断 |
テーマは扱う範囲を決める
テーマは、その企画が何について扱うのかという範囲を示します。「働き方」「防災」「地域の食」といった具合に、名詞で置けるのが特徴でしょう。
範囲が決まると、集めるべき材料と、明らかに関係のない材料の区別がつきます。ただしテーマの役割はそこまでで、集めた材料の良し悪しまでは判断してくれません。テーマだけを聞いても何をつくるのか見えてこないのは、範囲が決まっただけの状態だからです。
コンセプトは範囲の捉え直しを一文にする
一方のコンセプトは、決まった範囲を誰に向けてどう捉え直し、何を成立させるのかを示します。名詞ひとつでは足りません。コンセプトは「誰が、どうなるための、何か」を一文で書ける状態まで具体化する必要があります。
たとえばテーマが「防災」だとして、「一人暮らしの人が、買い足しをせずに備えを始められる、備蓄の入れ替え方」まで書けたなら、それはコンセプトの粒度に届いています。聞いた時点でつくるものが想像でき、同時に「これは違う」と外せる企画も浮かぶはずです。

順番はテーマが先ですが、一方通行ではありません。コンセプトを書こうとしてうまく言葉にならないときは、テーマの範囲が広すぎるか、逆に狭すぎる場合がほとんどです。書けなければテーマの設定に戻る、という往復を前提にしておくと詰まりにくくなります。
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「1つか、複数か」で覚えると混乱する
テーマとコンセプトを調べていると、「テーマは1つ、コンセプトは複数」と書かれた資料と、「コンセプトは1つ、テーマは複数」と書かれた資料の両方に行き当たります。どちらかが誤っているわけではなく、話している階層が違うだけです。
事業やブランドの階層では、コンセプトがひとつあり、その下に季節や施策ごとのテーマが複数ぶら下がります。対して、1本の記事や1つの作品という階層では、扱うテーマが先に定まっていて、それを成立させるコンセプトの案が複数出てくる、という関係になります。
「1つか複数か」は階層によって入れ替わるため、覚える手がかりにならないということです。だからこそ、範囲と捉え方という軸で覚えたほうが安定します。
資料を読むときは、その文章が事業やブランドの階層を語っているのか、個別の企画の階層を語っているのかを先に見分けてください。同じ2語でも、上下関係の説明が逆になります。
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説明しにくい理由は、2語の浸透度の差にもある
似た顔をした2語ですが、社会に定着している度合いには相当な開きがあります。ここは感覚で語られがちな部分なので、公的な調査を見ておきましょう。
国立国語研究所の外来語定着度調査では、「テーマ」の意味が分かると答えた人が88.2%だったのに対し、「コンセプト」は40.2%でした。60歳以上に限ると、テーマが74.9%、コンセプトは14.4%まで下がります。
※ 出典:国立国語研究所「外来語定着度調査」(全国16歳以上の男女を対象、層化二段無作為抽出法による個別面接聴取、平成14年10月調査分)

調査時期が平成14年から16年にかけてと古い点は差し引いて読む必要があります。それでも、片方は8割超が意味を言えて、もう片方は4割前後という開きは無視できません。
同研究所は「外来語」言い換え提案でもコンセプトを分かりにくい外来語として取り上げ、言い換え語に「基本概念」を挙げています。手引きには、単なる概念や考えではなく「事業や開発などの基本となる、これまでになかった概念」を指して使われることが多い、という説明が添えられていました。

※ 出典:国立国語研究所「外来語」言い換え提案 第1回〜第4回 総集編(平成18年3月13日公表)
なお、同じ提案の対象語一覧に「テーマ」は含まれていません。言い換えを検討するほど分かりにくい語とは見なされていない、ということになります。
この非対称から、実務で使える示唆が2つ引き出せます。ひとつは、会議で「コンセプトは何ですか」と尋ねても、相手の頭の中の定義が自分と揃っている保証はないこと。もうひとつは、日本語のコンセプトには新しさの含みが残っているため、誰でも言えることを書くとコンセプトとして受け取られにくいという点です。
コンセプトを聞くたびに、メンバーからばらばらの粒度の答えが返ってきます。
編集部
語の理解度にこれだけ差がある以上、言葉そのものを揃えるより、聞き方を変えたほうが早いと思います。「この企画で、やらないと決めることは何ですか」と尋ねると、コンセプトに近い答えが返ってきます。ほしいのは判断に使える一文なので、呼び名にこだわらなくてかまいません。
関連記事:5W1Hとは?意味・読み方から使い方まで例文と表で解説
目的、ビジョン、スローガンとの線引き
コンセプトと取り違えられやすい言葉は、テーマだけではありません。実務では目的との混同が最も多く、次いでスローガンとの混同が続きます。それぞれ答えている問いが違うため、並べて見ると輪郭がはっきりします。
| 答えている問い | 書き方の形 | 主な読み手 | |
|---|---|---|---|
| テーマ | 何を扱うか | 名詞 | 社内と社外の両方 |
| コンセプト | どう捉え、何を成立させるか | 一文 | 主に社内 |
| 目的 | なぜやるか | 達成状態と期限 | 主に社内 |
| ビジョン | どこへ向かうか | 将来の状態 | 社内と社外の両方 |
| スローガン | どう伝えるか | 短い言い回し | 主に社外 |
「認知を広げる」はコンセプトのように語られがちですが、これは目的です。目的は達成できたかどうかを測る言葉であり、コンセプトは企画を通すか外すかを決める言葉、と役割で分けると迷いません。数値目標を書いた欄と同じ内容がコンセプト欄にも並んでいたら、片方は空欄と考えたほうが正確でしょう。

スローガンとの違いは、読み手を思い浮かべると分かりやすくなります。コンセプトは社内で判断に使う文章なので、多少長くても正確さを優先します。スローガンは社外に届ける言い回しなので、短さと覚えやすさが優先されます。同じ内容を出発点にしていても、仕上がりの形は別物になるのが自然です。
テーマからコンセプトを決める手順
順番に沿って手を動かすと、抽象論のまま止まりにくくなります。会議室で一気に決めようとせず、次の5段階に分けてみてください。
扱う対象を名詞で書き切ります。ここで「働き方改革と生産性と組織文化」のように盛り込むと、後の工程が全て曖昧になります。ひとつに絞ってください。
部署名や属性ではなく、特定の状況にいる1人まで絞り込みます。相手が複数残っていると、コンセプトの文が形容詞だらけになります。
現状の行動を、推測ではなく観察や聞き取りに基づいて書きます。この工程を飛ばすと、あとから根拠を問われたときに答えられません。
現状の中で、自社の資源で実際に変えられる部分をひとつ選びます。変えたいことではなく、変えられることを選ぶのが要点です。
「誰が、どうなるための、何か」の形で一文にします。そのうえで、その文章に照らして外せる企画を3つ挙げてみてください。
最後の工程は検算です。コンセプトを読んで却下できる企画が3つ挙がらないなら、その文章はまだテーマの言い換えにとどまっています。逆に、却下の理由を人に説明できる状態になっていれば、判断の基準として働き始めたと考えてよいでしょう。
コンセプトまでは書けた。次に何を書くかで止まっていませんか
コンセプトが定まると、扱うテーマの範囲も自然に絞られます。そこから先、検索されている言葉と自社が答えられる領域を突き合わせ、記事1本ずつの設計図に落とすところをお手伝いします。
決めたコンセプトが働いているかを確かめる
コンセプトは、決めた瞬間ではなく使われ始めてから価値が出ます。書いた文章が判断に効いているかどうかは、次のような状態が現れているかで確かめられます。
- 読んだ人が、この企画でやらないことを3つ挙げられる
- 企画の可否を、好みではなく文章と照らし合わせて説明できる
- 半年前に決めた文章が、今週の企画会議でも参照されている
- 社外に出す文言をつくるとき、元の原稿として使える
反対に、次のような兆候が出ているコンセプトは、書いてはあるものの機能していない状態です。会議で誰も参照しなくなったときは、たいていこのどれかに当てはまります。
- 誰が読んでも反対しない、当たり障りのない言い回しになっている
- 形容詞を全て外すと、何も内容が残らない
- 決めた本人以外、内容を思い出せない
- 目的や数値目標と、同じことを言っている
とくに1つ目は見落とされがちです。全員が賛成したコンセプトは、合意形成としては成功でも、判断の基準としては失敗している可能性があります。何かを選ぶ文章は、必然的に何かを捨てているはずだからです。
「上質な体験を提供する」のように、業種を入れ替えてもそのまま成立してしまう文章は、コンセプトとして働きません。自社名を消して他社の資料に貼っても違和感がないなら、書き直しの合図と受け取ってください。
オウンドメディアや記事制作での使い分け
メディア運営の現場に置き換えると、テーマは扱う領域、つまりカテゴリに相当します。対してコンセプトは、その領域に対して自社がどの立ち位置から書くのかを示す一文です。

テーマだけを決めて運用を始めたメディアは、記事が増えるほど輪郭がぼやけます。カテゴリは網羅できているのに、通して読むと誰に向けた媒体なのか分からない、という状態です。原因は書き手の力量ではなく、企画を外す基準が用意されていない点にあります。
反対に、コンセプトが一文で共有されていれば、外部のライターに依頼する場合でも判断の軸を渡せます。実際、依頼時に渡す資料へコンセプトの一文と、それに合わない企画例を2つか3つ添えるだけで、初稿の方向のずれは目に見えて減ります。
テーマは決まっているのに記事の方向がそろわないのは、コンセプトがないからでしょうか。
編集部
その可能性は高いと思います。ただ、無いのではなく、書いてはあるものの判断に使われていないだけ、という現場も同じくらい見かけます。まずは直近10本の記事を並べて、どれか1本を「これは自社では出さない」と言えるかを試してみてください。言えないなら、文章の側に手を入れる段階です。
コンセプトは決めた。運用に落とすところで止まりがちです
決めた一文を、企画の採否や執筆依頼の基準として使える形に整えるところまでが実務です。編集の観点を含めた制作体制のつくり方から、継続運用の設計までご相談いただけます。
よくある質問
打ち合わせの場で繰り返し挙がる疑問をまとめました。
テーマが先です。扱う範囲が決まっていないと、捉え方を書こうにも対象が定まりません。ただし一方通行ではなく、コンセプトが書けない場合はテーマの広さを見直す、という往復を前提にしてください。
文字数の決まりはありませんが、句点をひとつだけ使う長さに収めるのが目安です。二文以上に分かれるときは、判断の基準が複数混ざっている可能性があります。片方を目的の欄へ移すと整理できます。
階層によります。事業やブランドの単位では、ひとつのコンセプトの下に複数のテーマが並ぶのが普通です。1本の記事や1つの作品では、テーマをひとつに絞ったほうが仕上がりは安定します。
別物です。コンセプトは社内で企画の採否を判断するための文章、キャッチコピーは社外に届けるための言い回しです。コンセプトを出発点にコピーをつくることはありますが、そのまま掲出できる形とは限りません。
テーマとコンセプトの違いを、判断に使える形にしておく
ここまでを整理すると、テーマは扱う範囲を決める工程、コンセプトはその範囲をどう捉えるかを一文にする工程でした。順番はテーマが先で、書けなければテーマの設定に戻る。この往復が前提です。
「1つか複数か」という覚え方は、事業の階層と個別企画の階層で入れ替わってしまうため役に立ちません。範囲と捉え方という軸で押さえておけば、どの資料を読んでも解釈が揺れずに済むはずです。
そして、コンセプトの合否は文章の美しさでは測れません。読んだ人が却下できる企画を挙げられるか、半年後の会議でも参照されているか。判断に使われているかどうかが、唯一の確かめ方だと考えています。
まずは手元の企画書を開いて、コンセプト欄の文章から自社名を消してみてください。他社の資料に貼っても成立するなら、そこはテーマの言い換えにとどまっています。
合同会社Writers-hubでは、扱う領域の設計から、コンセプトを記事1本ずつの企画に落とし込む工程まで支援しています。言葉の整理で止まっている段階でも、運用が始まってから方向がぶれてきた段階でも、現状に合わせて入り口を選べます。
言葉の整理から、実際に出す記事の設計まで進めたい方へ
コンセプトの一文をどう定めるか、そこからどのテーマを何本ずつ扱うか。自社の状況を伺ったうえで、着手する順番から一緒に組み立てます。








