「広告を足しても注文の件数が変わらないのだから、次に直すのは商品ページしかない」。ECサイトの改善策として紹介されるのは、写真の追加や購入ボタンの位置といったページ側の手直しが中心なので、数字が動かない原因もページにあると結びつけられがちです。
しかし、ECサイトの集客と購入前の疑問に答える記事づくりを支援してきた弊社の立場から言えるのは、サイト全体のCVRを眺めている限り直す場所は決まらないということです。CVRは流入・商品ページ・カートという3つの層を通り抜けた結果の数字です。デバイスや流入経路で割って落ち込んでいる区分を見つけてから、その層に合う手を選んでも遅くはありません。
本記事では、CVRの計算式と平均1〜3%前後という目安の当てはめ方から、原因を流入・商品ページ・カートの3つの層に分ける見方、そしてCVRを上げても売上が増えない施策の見分け方まで、ECサイトの集客と記事制作を支援してきた立場で順を追ってお伝えします。
- CVRの計算式と、分母の取り方で数字が変わる仕組み
- 平均1〜3%前後という目安を自社に当てはめるときの条件
- CVRが低い原因を流入・商品ページ・カートの3つの層に分ける見方
- どの層から着手するかを離脱の位置から決める手順
- CVRが上がっても売上が増えない施策の見分け方
ECサイトのCVRは訪問のうち何件が購入に至ったかを示す
CVRはConversion Rateの略で、日本語では転換率や成約率とも呼ばれます。ECサイトの場合、コンバージョンに置かれるのはたいてい購入完了です。会員登録やメールマガジンの登録を測ることもありますが、それらは購入までの途中経過にあたるため、売上を語る場面では購入完了のCVRと分けて扱います。
やっかいなのは、同じ「CVR」という言葉で、社内の誰かは購入完了率を、別の誰かは会員登録率を指している状態が起こりうる点でしょう。指標の定義がずれたまま議論すると、改善の方向まで食い違います。
CVRの計算式は分母の取り方で数字が変わる
計算式そのものは単純で、コンバージョン数を分母で割り、100を掛けるだけです。問題は、その分母に何を置くかで数値が変わってしまうところにあります。
分母の取り方 | 計算されるもの | 数値の傾向 |
|---|---|---|
セッション数(訪問数) | 1回の訪問あたりの購入率 | 標準的な取り方で、他社の目安と比べやすい |
ユーザー数(人数) | 1人あたりの購入率 | 再訪の多いサイトほど高く出る |
ページビュー数 | 1ページ表示あたりの購入率 | 回遊の多いサイトほど低く出る |
セッション数を分母にした場合とユーザー数を分母にした場合では、同じ月の同じサイトでも数値が倍近く違うことがあります。比較検討に時間のかかる商材ほど、購入までに何度も再訪するためです。
社外の平均値と比べる前に、自社の分母がセッション数なのかユーザー数なのかを確認してください。分母が違えば、比較そのものが成立しません。
なお、セッションの区切り方はツールごとに定義が異なります。Google アナリティクスを使っているのであれば、公式ヘルプに区切りの条件が示されているので、一度目を通しておくと社内の認識を揃えやすくなるはずです。

CVRとカゴ落ち率は見ている区間が違う
CVRの周辺には似た指標がいくつもあり、混同されたまま会話が進むことがあります。3つを区間で並べてみると、それぞれが担当している範囲がはっきりします。
CTR(クリック率)が測っているのは、広告や検索結果からサイトに到達するまで。CVRが測っているのは、サイトに到達してから購入完了まで。カゴ落ち率が測っているのは、カートに商品を入れてから購入完了までの区間です。カートで落ちているのにCTRの改善に予算を割いても、離脱している場所は変わりません。
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ECサイトのCVRの平均は1〜3%前後が目安になる
一般にECサイトのCVRとして語られる水準は、おおむね1〜3%の範囲に収まります。ただ、この幅を自社の合否判定にそのまま使うと判断を誤ります。1〜3%という数字は、性質のまったく違うECサイトを全部混ぜたときの中心的な位置にすぎないからです。
※ ここで示した水準は特定の調査の平均値ではなく、EC支援の現場で目安として扱われている幅です。商材の単価、計測ツールの分母の取り方、広告流入の比率によって大きく変わります。
商材の単価と検討期間でCVRの水準は変わる
CVRを左右する要素のうち、運営側の努力ではほとんど動かせないのが商材の性質です。
商材のタイプ | CVRの傾向 | 理由 |
|---|---|---|
日用品や消耗品などの低単価で購入頻度の高い商材 | 高め | 検討期間が短く、選び間違えたときの損失が小さい |
アパレルや雑貨などの中単価の商材 | 中程度 | サイズや質感を実物で確認できない不安が残る |
家具や家電や宝飾などの高単価の商材 | 低め | 比較検討が数日から数週間に及ぶ |
定期購入やリピート前提の商材 | 高め | 既存顧客の再購入が分母に含まれる |
高単価の商材を扱うサイトのCVRが0.5%前後だったとして、それ自体は異常ではありません。同業のなかで低いのか、自社の前年と比べて落ちているのか。比べる相手さえ間違えなければ、判断の精度は上がります。
流入経路が違えばCVRも変わる
もう1つ数値を大きく動かすのが、どこから来た訪問なのかという違いです。
指名検索やメールマガジン、公式アカウントからの流入は、すでに商品や店舗を知っている人が中心のため、CVRは高く出ます。一般的なキーワードの自然検索はその中間。ディスプレイ広告やSNSの興味関心配信は、買うつもりのない段階の人にも届くので、CVRはどうしても低くなります。
ここから導かれるのは、広告を強化した月にサイト全体のCVRが下がるのは自然な現象だという事実です。数字の低下がサイトの劣化を意味するとは限りません。
広告出稿を増やした直後にCVRが下がったからといって、サイトを直す判断に進まないでください。分母の構成が変わっただけの可能性があります。
関連記事:BtoBサイトのCVRの見方と上げ方|平均値との比べ方と改善の着手順
サイト全体のCVRという1つの数字は改善に使えない
ここが本記事のいちばんの要点です。サイト全体のCVRは、性質の異なる訪問を全部まとめて平均した値であり、平均の平均からは直すべき場所が見えてきません。
うちのCVRは1.2%です。平均が2%なら、うちは半分しかないということですよね。
編集部
その1.2%は、指名検索の8%台とディスプレイ広告の0.2%台を混ぜた結果かもしれません。先に分けてから比べてください。分けた瞬間に、直すべきなのがサイトなのか広告の配信面なのかが見えてきます。
分解する軸は、多くのECサイトで共通しています。デバイス(スマートフォンとPC)、流入経路、新規とリピート、商品カテゴリ、着地したページ。この5つで割るだけでも、全体値では見えなかった落ち込みが表面に出てきます。

とりわけ見落とされがちなのが、スマートフォンとPCを分けずに見ているケースです。ECサイトの訪問はスマートフォンに大きく偏っている一方、CVR自体はPCのほうが高く出ることが珍しくありません。全体値はスマートフォン側の数値に引っ張られるため、PCで起きている変化は埋もれてしまいます。
関連記事:CV改善を実現する導線設計とは|課題別の改善策と実践的な設計手法を解説
CVRが低い原因は流入と商品ページとカートの3つの層に分かれる
分解して落ち込みの場所を特定したら、次はその原因がどこにあるかです。ECサイトの購入までの流れは3つの層に分けて考えると、原因の所在がはっきりします。

第1層は買う段階にない人を集めている
訪問者のなかに、そもそも購入する段階にない人が多く混ざっている状態です。広告のターゲティングがずれている場合もあれば、集めている検索キーワードが情報収集の段階のものに偏っている場合もあります。
検索の例で言えば、選び方を調べている段階のキーワードで来た人と、型番を指定して探している人とでは、購入までの距離がまったく違います。前者を集めながら購入完了だけをゴールに測っていれば、CVRが低く出るのは当然でしょう。第1層の問題は、ページをどれだけ直しても解消しません。
私たちが相談を受ける案件でも、商品ページの改修を何度も繰り返したうえで「それでも上がらない」という段階で持ち込まれるケースが目立ちます。開けてみると流入側の設計が原因だった、という結論に落ち着くことが少なくありません。
第2層は商品ページに判断材料が足りない
購入する気で来た人が、判断に必要な情報を得られずに離れていく状態です。実店舗であれば手に取って確かめられることが、ECサイトではすべてページ上の情報に置き換わります。
写真の点数と角度、サイズと重量、素材、使っているところがわかる画像、配送までの日数、返品と交換の条件、他の購入者のレビュー。どれか1つでも欠けていると、「わからないから今日はやめておく」という判断につながります。買わない理由の多くは、商品への不満ではなく情報の不足にあります。
第3層はカートと決済で手が止まる
買うと決めた人が、手続きの途中で離れていく状態を指します。会員登録を必須にしている、入力項目が多い、希望する決済手段がない、送料や手数料が最後の画面で初めて出てくる。原因は手続きの設計に集中しています。
この層で落ちているのは購入の意思があった人なので、1つの改修がそのまま注文件数に跳ね返ります。着手の優先順位を考えるうえで重要な性質です。
集めている検索キーワードは、購入に近い人のものになっていますか
第1層の点検は、広告の入札を触る前に「どのキーワードで来た人を購入に近い訪問とみなすか」を決めるところから始まります。合同会社Writers-hubでは、購入までの距離でキーワードを並べ替え、どの段階のコンテンツから用意するかを設計する支援を行っています。
どの層から手をつけるかは離脱が起きている位置で決める
3つの層を同時に触ると、何が効いたのか判定できなくなります。順番を決める材料になるのは、購入までの各段階の通過率です。
商品ページの閲覧、カートへの追加、レジ画面への進入、購入完了。この4点の件数を並べ、隣り合う段階の通過率を計算します。
通過率がもっとも低い区間が、いま最大の損失を出している場所です。候補を複数残さず、1つに絞ってください。
カートへの追加率が低ければ第2層、レジ画面に進んでからの完了率が低ければ第3層。閲覧そのものが購入と結びついていなければ第1層を疑います。
2週間から1か月を目安に、施策の前後で同じ区間の通過率を比べます。季節性の強い商材であれば、前年の同じ時期も並べてください。
順番の話でもう1つ添えておくと、月間のセッション数が数千に満たない段階では、CVRの小数点以下の変動に意味はほとんどありません。数件の注文の増減で0.2ポイント程度は簡単に動いてしまうからです。
訪問数が少ないうちは、CVRの改善より流入を増やすほうが売上への影響が大きくなります。判定に必要な母数が集まらない状態で施策を評価すると、効いていない施策を成功と誤認する危険があります。
CVRを上げても売上が増えない施策がある
比較記事ではあまり語られない部分に触れます。売上は、セッション数とCVRと客単価の掛け算で決まります。CVRという1つの要素だけを最大化しようとすると、残りの2つを削る施策を選んでしまうことがあるのです。

たとえば全商品の値引きは、CVRを確実に押し上げます。同時に客単価と粗利が下がるため、売上や利益まで増えるとは限りません。送料無料の基準額を下げる施策も同じ構造で、1件あたりの利益を削ってCVRを買っている状態です。広告の配信先を指名検索だけに絞ればCVRは大きく改善しますが、セッション数と新規顧客が減ります。
CVRは目的ではなく、売上を分解したときの1つの要素にすぎません。数値を追う前に、上げたCVRの分だけ何を差し出しているのかを確認する工程を挟んでください。
- サイト全体のCVRだけを目標値として設定する
- 平均値との比較だけで自社の良し悪しを判断する
- 複数の施策を同時に投入し、効果を切り分けられなくする
- 粗利を削る値引きを、CVR改善の名目で恒常化する
- 訪問数が足りない状態で小数点以下の変動を追いかける
購入前の疑問に答える記事は流入とCVRの両方に効く
第1層と第2層は、実のところ同じ材料で対処できる部分があります。購入の一歩手前で検索される疑問に答えるコンテンツです。
選び方、比較、サイズの合わせ方、手入れの方法。こうした疑問は、商品を買うと決める直前に検索されます。ここで自社サイトに来てもらえれば購入に近い訪問が増え、第1層の課題が薄まります。同じ内容を商品ページから参照できるようにしておけば、第2層の判断材料の不足も同時に埋まる形です。
商品ページの説明文をいくら長くしても、読まれる量には限界があります。判断に必要な情報を別の記事に逃がし、必要な人だけが読める状態にしておくほうが、ページの見通しを保ったまま情報量を増やせるはずです。
- 購入前に検索される疑問を、記事として用意している
- 記事から該当する商品ページへ、迷わず進める導線がある
- 商品ページからも、判断材料になる記事へ戻れる
- 記事の記載と商品の実際の仕様が食い違っていない
4つのうち欠けている項目があれば、そこが第1層と第2層をつなぐ部分の弱点です。記事を増やす前に、既存の記事と商品ページの行き来を確認するほうが先になります。
商品ページに書ききれない情報は、どこに置いていますか
選び方や比較の記事は、検索からの流入を増やしながら、購入前に残る不安を1つずつ減らします。どのテーマを何本、どの順番で用意するかの設計から、構成づくりと執筆までを、必要な工程だけ切り出して依頼できます。
ECサイトのCVRに関するよくある質問
ここまでの内容を踏まえて、実際の相談で繰り返し出てくる質問に答えます。
一律の合格ラインはありません。商材の単価と流入経路の構成で適正な水準が変わるため、他社の公開値より、自社の前年同期や施策の前後で比べるほうが判断に使えます。
流入の内訳を確認してください。広告の出稿量やキャンペーンの有無が変わっていれば、サイト側は何も変えていなくてもCVRは動きます。サイトを疑うのはその後です。
カゴ落ち率が先です。カートに商品を入れた人には購入の意思がすでにあるため、手続き側の障害を取り除いた分がそのまま注文件数に加わります。
多くの場合は正常な状態です。スマートフォンは移動中や隙間時間の閲覧が多く、その場で決済まで進む割合が下がります。同じデバイスのなかで前月比や施策の前後を比べてください。
落ちている場所を特定してからで構いません。どの段階で離脱しているかがわからないままツールを入れても、機能の一部しか使わずに終わることが多くなります。
まとめ|ECサイトのCVRは1つの数字ではなく3つの層で見る
ECサイトのCVRの平均は1〜3%前後が目安とされますが、その幅と自社の数値を突き合わせるだけでは次の一手は決まりません。デバイスや流入経路で分解し、流入・商品ページ・カートのどの層で落ちているかを特定してから、1つずつ手をつける。順番を守ることが、施策の効果を判定できる状態を保つ条件になります。
そして、CVRは売上を分解した3つの要素のうちの1つにすぎません。上げた分だけ客単価やセッション数を削っていないか、施策ごとに確認する習慣を持てば、数字の改善と売上の改善がずれにくくなるはずです。
私たち合同会社Writers-hubは、購入に近い検索キーワードの選定から、購入前の疑問に答える記事の制作までを支援しています。第1層の流入設計と第2層の情報不足は、同じ設計のなかでまとめて扱える領域です。
流入とページのどちらから直すべきか、社内で意見が分かれていませんか
数値の分解までは終えたものの、どの層から着手するか判断がつかないという段階でのご相談も承っています。現在の流入構成と扱っている商材を伺ったうえで、優先順位の見立てからご一緒します。








