「オウンドメディアに社長インタビューを載せたいので、取材をお願いします」。その一言で、インタビュアーという役割が突然回ってくることがあります。話を聞くだけなら誰にでもできそうに見えるものの、いざ録音を聞き返すと記事にできる材料がほとんど残っていない。取材の現場で最も多いつまずき方です。
この言葉自体は、辞書を引けば「インタビューをする側の人」の一行で説明が終わります。ただ、その一行を知っても明日の取材が変わるわけではありません。本記事では取材記事の制作を数多く手がけてきた立場から、インタビュイーとの違いといった基礎に加えて、上手い人が当日より前に何をしているのかまで踏み込みます。
- インタビュアーとインタビュイーの違いと、実務での言い換え表現
- 活躍する4つの場面と、求められるものの差
- 上手いインタビュアーが質問リストより先にやっていること
- 当日の深掘りを再現しやすくする手つきと、社内か外部かの判断基準
インタビュアーとは、インタビューを「する側」の人
インタビュアー(interviewer)とは、インタビューで質問を投げかけ、話を引き出す側の人を指します。英語のinterviewに「〜する人」を表すerが付いた形で、日本語では「インタビューア」「インタビュー者」と表記される場合もあります。意味は同じなので、表記は媒体のルールに合わせて構いません。
インタビュアーとインタビュイーの違い
対になる言葉がインタビュイー(interviewee)で、インタビューを受ける側、つまり取材対象者を指します。英語では動詞にeeが付くと「〜される人」の意味になり、employer(雇用主)とemployee(従業員)と同じ作りです。一文字で立場が入れ替わります。
面接でも同じ用語が使われ、インタビュアーが面接官、インタビュイーが応募者にあたります。取材でも面接でも、質問を出して場を進める責任を負うのはインタビュアー側です。
広報に異動したばかりで、来週いきなり社員インタビューを任されました。相手の話を引き出せる自信がないのですが、経験を積むしかない部分でしょうか。
編集部
当日の受け答えは確かに経験が効きます。ただ、出来を左右する比重が大きいのは準備のほうです。何を聞くかより先に「何が書かれた記事にしたいのか」を決めておくだけで、初回でも成立します。
「取材を受ける人」の言い換え表現
インタビュイーという言葉は、実際の社内文書ではあまり使われません。企画書や進行表では「取材対象者」「取材先」「話し手」と書かれるほうが自然です。インタビュアー側も、記事制作では「取材ライター」「聞き手」、リサーチでは「モデレーター」と呼ばれるでしょう。
インタビュアーが活躍する4つの場面
- 記事制作: 経営者や社員、顧客に取材し、オウンドメディアや採用サイトの原稿にする
- マーケティングリサーチ: 消費者にデプスインタビューを行い、商品開発の判断材料をつくる
- 採用・人事: 応募者との面接や、社員へのヒアリングを担当する
- 放送・イベント: 番組やセミナーで登壇者に話を聞き、その場で内容を引き出す
同じ肩書きでも、成果物が違えば合格ラインは変わります。記事制作なら文章として成立する材料、リサーチなら分析にかけられる発言、採用なら合否を判断できる根拠が必要です。何のために聞くのかを決めずに席に着くと、話は盛り上がったのに使える箇所がない結果になります。

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上手いインタビュアーは、質問より先に記事の形を決めている
取材のあとに「面白い話は聞けたのに、記事にまとめられない」という事態が起きます。原因は質問の数ではなく、質問と成果物のつながり方です。質問を30個用意しても、答えが記事のどこに入るかが決まっていなければ、材料は集まっても構造ができません。
質問リストの前に、記事の見出しを仮置きする
準備と聞くと質問項目を書き出す作業を思い浮かべますが、順番を逆にしたほうが結果は安定します。質問リストより先に、記事の見出しを仮置きするという進め方です。
「創業のきっかけ」「事業が変わった意思決定」「これから取り組むこと」という3本の見出しを先に決めてしまえば、それぞれを埋めるために何を聞くべきかは自動的に決まります。逆に質問から作ると、聞きたいことは網羅できても、答えの置き場所が最後まで決まりません。

仮置きした見出しは、取材中に崩れて構いません。むしろ、想定と違う話が出て構成が変わったときこそ、聞く価値のある話が出た合図だと受け取れます。骨格があるからこそ、崩れたことに気づけます。
見出しを仮置きするときは3〜5本にとどめます。細かく作り込みすぎると、想定と違う話が出たときに用意した構成を捨てるのが惜しくなり、質問を消化するだけの取材になってしまいます。
「これが聞けなければ失敗」という質問を3つ決める
用意した質問をすべて聞こうとすると、時間配分が崩れます。60分で30個の質問を持ち込むと1問あたり2分の計算になり、深掘りの余地が残りません。
そこで、リストを作ったあとに必達質問を3つだけ選びます。これが取れなければ記事が成立しないという基準で選ぶと、多くは「その判断をした理由」「具体的に何が起きたのか」「今どう考えているのか」に収まります。紙の上部に書いておけば、話が広がりすぎたときに戻る先ができるはずです。
取材の設計から原稿化まで、まとめて任せる選択肢もあります
見出しの設計と当日の進行、原稿化までを社内だけで回すには相応の時間がかかります。Writers-hubでは記事の骨格を決めるところから取材・執筆までを担当し、社内の担当者は同席するだけで進む形もつくれます。
関連記事:記事制作ガイドラインの作り方——外注ライターの品質を3倍安定させる設計術
インタビュアーに必要な5つのスキル
求められる力は大きく5つです。「何ができている状態か」まで具体化すると、自分に足りない部分が見えやすくなります。
スキル | できている状態 |
|---|---|
準備力 | 相手の経歴と直近の発信を把握し、見出しと必達質問が決まっている |
傾聴力 | 答えを最後まで聞き、次の質問より先に内容を受け止められる |
質問力 | 抽象的な答えには具体を、具体的な答えには背景を返して深さを調整できる |
構造化力 | 聞きながら、どの発言がどの見出しに入るかを判断できる |
事実確認力 | 数字や固有名詞をその場で確認し、後工程に確定した情報を渡せる |
最初の3つは多くの解説で触れられている一方、後半の2つは軽く扱われがちです。ただ、記事制作の現場で差が出るのはむしろ構造化力と事実確認力のほうだといえます。
構造化力は、聞きながら並行して考える力です。話の最中に「今の話は2つ目の見出しの根拠になる」と当たりを付けられると、取材が終わった時点で記事の骨組みはほぼできあがります。事実確認力のほうは後戻りができません。取材中に確認しなかった数字や社名は原稿の段階で問い合わせるしかなくなり、公開が一週間遅れることも珍しくないでしょう。
関連記事:記事制作ガイドラインの作り方——外注ライターの品質を3倍安定させる設計術
取材前の準備を進める順番
準備は、思いついた順に手を付けるほど抜けが出ます。次の順番で進めると、限られた時間でも必要なものがそろいます。
何のための取材で、どこに掲載される何文字くらいの記事になるのかを依頼元に確認します。掲載先が採用サイトかサービス紹介かで、聞くべきことが変わります。
経歴、担当領域、過去のインタビュー記事、SNSや社内報での発信に目を通します。すでに答えている質問を再度聞くと、調べていない相手だと伝わります。
調べた内容をもとに見出しを3〜5本置き、「この記事は結局何の話なのか」を一度言語化しておきます。
見出しごとに質問を並べ、これが取れなければ成立しないものを3つ選んで印を付けます。数をそろえるより、印の付いた質問の精度を上げるほうが効果的です。
挨拶と趣旨説明、本題、写真撮影や追加確認の時間を分けて見積もります。録音の許可取りと、公開前確認の有無も最初に伝えておきます。
準備にかける時間は、取材時間と同じかそれ以上を確保できると安心できるでしょう。
当日の進め方と、深掘りの具体的な手つき
深掘りという言葉はよく使われるものの、何をすることなのかは説明されないままになりがちです。分解すると、いくつかの再現できる動きに落ちます。
深掘りは、相手の答えの抽象度を上下に動かすこと
深掘りとは、相手の答えの抽象度を上下に動かすことだと考えると扱いやすくなります。抽象的に答えたら具体へ、具体的に答えたら背景へ、と向きを切り替えるだけです。
「お客様との信頼関係を大事にしてきました」という抽象的な答えには、下へ動かします。「直近でそれを実感した場面はありましたか」と聞けば、記事に使える固有の場面が出てきます。
逆に「毎朝7時に現場を回っています」という具体的な答えには、上へ動かします。「いつからそうしているのですか」「そこまでされる理由は何でしょうか」と聞くと、行動の背後にある判断基準が出てきます。読者が知りたいのは行動そのものより、その判断の理由のほうです。

自分がどれだけ話したかを測る
上手いかどうかを自分で判定する方法として、録音の文字起こしで発話量を数える手があります。インタビュアー側の文字数が全体の3割を超えていたら、話しすぎている可能性が高いといえます。
長くなる原因の多くは、質問への前置きです。「弊社としては〜という認識でして、その前提でお伺いしたいのですが」という枕は、答えの方向を先に狭めます。質問は短いほど相手の言葉で返り、沈黙を埋めないことも同じ効果を持ちます。
数字と固有名詞は、その場でしか確認できない
数字と固有名詞は、その場でしか確認できない情報です。売上や社員数、創業年、取引先の社名。会話では曖昧なまま流れても通じますが、記事にした瞬間に正確さが問われます。聞き取れなかった固有名詞は、その場で漢字まで確認しておきます。
録音は2系統で用意しておくと安全です。ICレコーダーとスマートフォン、あるいはオンライン会議の録画機能と手元の録音というように、別の機器で二重に記録します。取材はやり直しがきかず、機材の不調がそのまま案件の失敗になってしまいます。
インタビュアーが避けたい行動
取材でうまくいかないケースには、共通の型があります。
- 冒頭からいきなり本題に入り、相手が話す準備ができていない
- 用意した質問の消化が目的になり、出てきた話を追わない
- 「なぜですか」を連続で使い、問い詰められていると感じさせる
- 自分の仮説に合う発言だけを拾い、合わない話を流してしまう
- 分からない専門用語を分かったふりで通過し、原稿の段階で書けなくなる
- 相手の話に自分の体験談を重ね、話し手が聞き役に回ってしまう
とくに4つ目は、経験を積むほど起きやすくなります。仮説を持つこと自体は正しい進め方ですが、仮説は当日に壊れるためにあると考えておくくらいがちょうど良いバランスです。想定どおりの答えしか出なかった取材は、聞けていない可能性を疑いましょう。
インタビュアーになるには
必須の国家資格はなく、名乗った時点で仕事は始められます。入り口として多いのは、Webライターとして記事を書きながら取材案件を受けるルート、編集プロダクションや制作会社に所属するルート、リサーチ会社でモデレーターの実務を覚えるルートの3つです。求人としても、リサーチ会社の調査担当やメディアの編集・取材職、専門領域のヒアリング担当が出ています。
未経験可の募集では、取材の型が社内に用意されていることが多く、独学より習得は早くなるはずです。資格の有無より、公開されている取材記事を実績として見せられるかどうかが評価されやすい世界だといえます。
社内で取材を担当する立場なら、資格より先に自社の記事を3本続けて担当するほうが早く上達します。繰り返すと、準備のどの工程が足りていないかが自分で見えてきます。
社内で聞くか、外部のインタビュアーに任せるか
企業がインタビュー記事を作るときの選択肢は、大きく3つです。向き不向きははっきり分かれます。
| 社内担当者が兼任 | 社内にライターを育成 | 外部の取材ライターに依頼 | |
|---|---|---|---|
| 立ち上げの早さ | ◎ | × | ◎ |
| 記事の品質の安定 | △ | ○ | ◎ |
| 社内事情の理解 | ◎ | ◎ | △ |
| 担当者の工数 | × | △ | ◎ |
| 月1〜2本の費用 | ◎ | × | ○ |
| 月3本以上の費用 | ◎ | ○ | △ |
| 向くケース | 月1本以下・社内向け中心 | 記事制作を長期の事業に置ける | 品質を保って本数を出したい |
表の費用は、外部への支払いと専任者の人件費で見ています。社内担当者が取材にあてる時間は金額として表れないため、担当者の工数の行で別に見てください。
分かれ目になりやすいのは、担当者の工数と本数です。月に1本、社内報のような用途なら、事情を知っている社内担当者が聞くほうが早く、追加の支払いも発生しません。月に3本以上を継続し、社外の読者に読ませる前提になると、兼任では取材と執筆にあてる時間が本数の分だけ増え、他の業務にあてる時間がその分だけ減ります。外部に依頼した場合、支払いは本数に比例して増えますが、担当者の工数を増やさずに品質をそろえたまま本数を出せます。支払いそのものを抑えることを優先するなら社内で書き手を育てる形になり、その代わり採用と立ち上げの期間が必要になります。
外部に任せる場合の弱点である社内事情の理解は、初回に事業説明の時間を取れば大きく埋まります。むしろ、社内では当たり前になっている前提を外部の書き手が質問することで、読者が引っかかる箇所が先に見つかるでしょう。
取材記事を続けて出したいものの、担当者の手が足りていないなら
本数を増やすときにつまずきやすいのは、書く時間よりも取材と構成の設計です。Writers-hubでは取材への同席から原稿化、公開までの体制づくりまでご提案しています。
インタビュアーに関するよくある質問
質問する側がインタビュアー、答える側がインタビュイーです。erが「〜する人」、eeが「〜される人」を表すと覚えると迷いません。
必須の資格はありません。実務では資格の有無より、公開された取材記事の実績や、準備と進行の型を持っているかが評価されます。
取材時間と同じかそれ以上が目安です。相手の調査と見出しの仮置き、質問の設計に配分します。
すぐに戻さず、記事に使える話かどうかで判断します。使えない場合は「先ほどの件に戻りますが」と一言添えれば十分です。
まとめ
インタビュアーとは、質問を投げかけて話を引き出す側の人を指し、答える側のインタビュイーと対になる言葉です。記事制作、リサーチ、採用、放送と場面は広く、成果物が変われば求められる動き方も変わります。
当日の受け答えに目が向きがちな役割ですが、結果を左右する比重が大きいのは席に着く前の工程です。質問リストより先に記事の見出しを仮置きし、これが取れなければ成立しないという質問を3つ決める。2つを踏むだけで、取材後に材料が足りないという事態はかなり減ります。当日は抽象度を上下に動かして深さを調整し、数字と固有名詞をその場で確定させる。
合同会社Writers-hubでは、取材記事の設計から当日の進行、原稿化までを支援しています。社内で取材を回す型をつくりたい場合も、外部に任せたい場合もご相談いただけます。
次の取材が来週に迫っているなら、設計から一緒に確認できます
何を聞くかの前に決めておくべきことは、記事の用途によって変わります。テーマと掲載先をお聞かせいただければ、見出しの置き方と必達質問の絞り方までご提案します。








