質問を10個ほど書き出したところで、次が出てこない。すでに書いた分も、聞いてどうするのかと問われると答えに詰まる。インタビューの質問づくりで最初に止まるのは、たいていこの場面です。
原因は発想力ではなく、着手の順番にあると考えています。質問から考え始めると、自分が思いつく範囲より外へは広がりません。先に記事の形を決めてしまえば、質問づくりは「その形を埋めるために何を聞くか」という作業に変わり、書き出す手が動くようになります。
本記事では、企業のオウンドメディアや採用サイトの取材記事を制作してきた立場から、記事の見出しから逆算して質問を作る手順を解説します。1つの論点へ何問を割り当てるか、質問が出てこないときにどこを掘るか、作った質問票をどう検算するかまで扱いました。
- 質問から考え始めると数が増えなくなる理由
- 質問文に翻訳する前に決めておく3つの材料
- 論点を質問へ変える5つの工程
- 1つの論点に3問を割り当てる組み立て方
- 質問票を相手へ送る前の検算の観点
質問は「探すもの」ではなく「記事から翻訳するもの」
インタビューの質問例をまとめた記事は数多く公開されており、抜けを防ぐ用途では役に立ちます。ただ、そこから20問ほど選んで並べただけの質問票は、他社の企画に合わせて作られた答案を借りている状態に近いといえます。
質問から考え始めると、決まった行き詰まり方をします。
- 10問前後で打ち止めになり、そこから増えない
- 似た質問が並び、聞いても同じ答えが戻ってくる
- 全部聞き終えたのに、記事の中盤を埋める材料が足りない
- 想定と違う話が出たとき、次に何を聞くか決められない
いずれも共通しているのは、1問1問が「記事のどこで使うか」と結びついていない点でしょう。逆にいえば、使い道が決まっている質問は、聞き終えた瞬間に原稿のどこへ入るかが分かります。
そこで順番を入れ替えます。質問は思いつく順に並べず、記事の見出しから逆算して作ります。書きたい記事の骨格を先に置き、その骨格を埋めるために足りない情報を並べ、それを一つずつ質問文へ置き換えていく。この置き換えの作業を、ここでは翻訳と呼びます。

翻訳という言い方をするのは、発想の勝負ではなく変換の作業だからです。素材が決まっていれば、質問文は誰が作ってもある程度そろいます。質問文そのものの良し悪しについては良い質問と悪い質問を分ける5つの差で個別に整理しました。本記事では、その前段にある組み立ての手順を扱います。
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質問へ翻訳する前に決める3つの材料
翻訳を始める前に、手元へそろえておくものが3つあります。この3つが欠けたまま質問を書き始めると、途中で必ず手が止まります。
1つ目は、記事の着地を1文で書いたものです。「読み終えた人に何を持ち帰ってほしいか」を1文へ収めます。社員インタビューであれば「入社3年目でも裁量のある仕事を任される会社だと伝わること」といった粒度になります。曖昧なままだと、質問の取捨選択の基準が最後まで定まりません。
2つ目は、読者の側で未確定になっている点です。着地が決まっても、読者がすでに納得している話を厚く聞いても記事は動きません。求職者が本当に気にしているのは、裁量があるという言葉そのものではなく、任されたときに誰がどう支えるのかという部分でしょう。
3つ目は、その相手しか答えられないことの一覧です。ここが事前リサーチの本題になります。
事前リサーチの目的は、相手の知識を先回りで身につけることではありません。公式サイトを読めば分かることを、質問票から外すために行います。設立年や事業内容を当日に尋ねてしまうと、限られた時間を削るだけでなく、調べていないという印象も残ります。
3つの材料がそろうと、聞くべきことの範囲がかなり狭まります。狭まった範囲に対して質問を作るため、1問あたりの密度が上がる。この順番を守るだけで、質問票の枚数は減り、当日の中身は濃くなります。
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論点を質問へ変える5つの工程
材料がそろったら、実際の翻訳に入ります。工程は5つです。慣れると1時間ほどで質問票の初稿ができあがります。
「読み終えた人にどうなってほしいか」を1文で書き、紙の一番上へ置きます。以降の工程で迷ったときは、この1文へ照らして判断します。
まだ取材していない段階で、記事の見出しを仮に書きます。社員インタビューなら「入社前の想像とのずれ」「任された最初の仕事」「今の役割と次にやりたいこと」といった並びです。当たっている必要はありません。
仮の見出しを1本ずつ見て、その見出しの下に書くために必要な事実を書き出します。「任された最初の仕事」であれば、時期、案件の規模、関わった人数、困った場面、相談した相手といった要素が並びます。
洗い出した事実を、そのまま聞ける形の文にします。「案件の規模」であれば「その案件は、何名で何か月ほどかけましたか」となります。ここで5W1Hを質問文の中へ埋め込んでおくと、答えが抽象へ流れにくくなります。
できた質問を見出しの順に並べ、必ず聞く本命と、時間が余ったら聞く予備へ振り分けます。本命だけで時間の7割が埋まる量に収めるのが目安になります。
5工程のうち、多くの人が飛ばしてしまうのは2番目です。取材前に見出しを書くことに抵抗があるのは分かります。話を聞く前から結論を決めているように感じるためでしょう。
ただ、仮の見出しは当てるためのものではなく、外すためのものだと考えています。取材中に「この見出しは成立しない」と分かった時点で、そこは記事の構成から落とし、代わりに出てきた話へ差し替えればよい。仮の見出しがあるから、外れたことにその場で気づけます。何も置かずに臨むと、外れたことにすら気づかず、原稿を書く段階で素材不足に直面します。

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1つの論点には3問を割り当てる
質問の総数を決めかねる場合は、論点の数から逆算する方法があります。仮の見出しが4本あるなら、1本につき3問で12問。ここへ冒頭のアイスブレイクと締めの質問を足して、本命は14問前後という計算になります。
3問という数には理由があります。1つの論点を、役割の違う3つの問いで挟むためです。
役割 | 質問の形の例 | 返ってくるもの |
|---|---|---|
開く問い | その仕事で、いちばん時間を使っている作業は何ですか | 話の入口と、相手の関心の所在 |
絞る問い | 直近で担当された案件を1つ挙げるとしたら、どれですか | 記事に書ける具体的な題材 |
確定させる問い | その案件は、何名で何か月ほどかけましたか | 原稿へそのまま置ける事実 |
開く問いだけを並べると、返ってくるのは一般論に寄ります。確定させる問いだけを並べると、事実は集まるものの話が広がりません。3つを順に置くことで、広げてから絞り、最後に数字と固有名詞を押さえる流れができます。
3問すべてを質問票に書いておくのですか。2問目以降は、その場の答えを聞いてから決めるものだと思っていました。
編集部
書いておきます。当日にその場で作ろうとすると、相手の話を聞きながら次の質問を組み立てることになり、聞くほうが手薄になります。書いたものを使わずに終わっても問題はありません。用意しておく価値は、当日に考えなくて済む点にあります。
3問セットを作っておくと、答えが薄かったときの立て直しも早くなります。開く問いで一般論が返ってきたら、絞る問いへ進めばよい。判断の材料が手元にあるため、沈黙の時間が短くなります。
質問票を毎回ゼロから作り直していませんか
仮の見出しを置く、事実を洗い出す、質問へ置き換える。工程そのものは単純でも、企画ごとに一から回すと準備に半日はかかります。Writers-hubでは、企画の設計から質問票の作成、取材、執筆までを一貫して引き受けており、社内の担当者は当日の同席と内容の確認だけで進められる形にしています。
質問が出てこないときの3つの切り口
工程どおりに進めても、特定の見出しの下だけ質問が出てこないことがあります。相手の仕事を知らない領域だと、必要な事実そのものが思い浮かびません。
そのときに使える切り口が3つあります。どれも、相手の業務知識がなくても質問の形にできるものです。
時間で割る
1つの出来事を、前・最中・後の3つへ分けて聞きます。「導入を決める前は、何で代用していましたか」「導入した週は、現場で何が起きましたか」「半年たった今、当時と変わった作業はありますか」といった形です。時系列へ沿わせるだけで、1つの論点から3問が生まれます。
比較で割る
何かと引き比べて聞きます。比較の相手は他社に限りません。以前のやり方、隣の部署、当初の想定でも成立します。「導入前と比べて、朝いちばんにやることは変わりましたか」のように、変化の前後を示してもらう形にすると、抽象語が減ります。
うまくいかなかった側から聞く
成果を尋ねる質問は用意しやすい反面、答えが優等生的になりがちです。「進めるなかで、想定と違ったのはどこでしたか」「社内で反対の意見は出ましたか」と、うまくいかなかった側から聞くと、記事で読まれる部分の素材が集まります。差し支えのある内容は掲載時に外せばよく、聞いておいて損はありません。
3つの切り口は、質問を増やすためだけの道具ではありません。同じ論点を3方向から聞くと、答えの具体度が上がります。時間で割れば場面が特定され、比較で割れば程度が言語化され、うまくいかなかった側から聞けば理由が出てきます。
用途で変わるのは、逆算のもとになるもの
工程は共通でも、1番目に置く「記事の着地」は用途ごとに違います。逆算のもとが変われば、仮に置く見出しも、そこから生まれる質問も変わります。
用途 | 逆算のもとになるもの | 最初に置く見出しの例 |
|---|---|---|
社員インタビュー | 採用で伝えたい働き方の特徴 | 入社前に思っていたことと、入ってから変わったこと |
導入事例 | 検討中の見込み客がつまずく点 | 導入前に社内で出た反対意見と、その説得の材料 |
職業インタビュー | 読者が想像できていない一日の中身 | 昨日1日の動きを時間順に追う |
顧客調査 | 検証したい仮説を1つだけ | 直近で買うかどうか迷った場面 |
見比べると分かるとおり、社員インタビューと導入事例では、そもそも読者が違います。前者の読者は応募を迷っている人、後者の読者は発注を迷っている人。迷っている中身が違えば、聞くべきことも変わってきます。
顧客調査だけは、少し性質が異なります。記事にするための取材ではなく、仮説を検証するための取材だからです。この場合の逆算のもとは記事の見出しではなく、検証したい仮説そのものになります。仮説を1つに絞り、それが正しい場合と誤っている場合で答えが変わる質問を作る。仮説を2つ以上抱えたまま臨むと、どちらも中途半端な確度で終わります。
用途別の質問例をそのまま参照したい場合は、用途別のインタビュー質問テンプレートに社員、導入事例、経営者、職業インタビューの分をまとめてあります。本記事の工程で骨格を作り、細部の言い回しをテンプレートから借りる使い方が現実的でしょう。

質問票を相手へ送る前の検算
質問が並んだ段階で、そのまま送りたくなります。ただ、送ってしまうと修正しづらくなるため、その前に一度検算を挟みます。所要は10分ほどです。
- 1問ずつ「この答えは記事のどの見出しに入るか」を言えるか
- 公式サイトや採用ページを読めば分かる質問が残っていないか
- 1つの見出しに対して、開く問いと確定させる問いの両方があるか
- 本命の質問だけで、予定時間の7割に収まる量か
- 相手の職掌の外にある質問を混ぜていないか
- 最初の質問が、相手にとって答えやすい内容になっているか
最初の項目が通らない質問は、その場では良く見えても記事に使えません。聞いてみたいという理由だけで残っている質問は、当日の時間を確実に削ります。削るのが惜しい場合は、本命から予備へ移すのが妥当な扱いになるでしょう。
4番目の7割という基準は、余白を確保するためのものです。想定より良い話が出たときに掘り下げる時間、相手が話し始めるまでの間、機材の調整。これらを見込まずに質問を詰めると、聞き切ることが目的になってしまいます。
検算までやると準備に時間がかかります。担当が複数いる場合、全員に同じ手順を求めるのは現実的でしょうか。
編集部
全員へ同じ精度を求めるより、検算の項目だけを共通の様式にするほうが定着しやすいと感じています。質問の作り方は人によって差が出ますが、出す前の確認は項目を並べておけば誰でも同じ判断ができます。まずは検算の6項目を社内の様式へ入れるところから始める形をおすすめしています。
インタビュー質問の作り方についてよくある質問
論点の数から逆算します。仮の見出しが4本なら1本につき3問で12問、これに冒頭と締めを足して14問前後が本命の目安になります。60分の取材であれば、この本命が40分ほどで収まる量かどうかを確認してください。予備は別枠で10問ほど持っておくと安心です。
送ることをおすすめします。とくに経営層や、数字を確認しないと答えられない立場の方には、事前共有が答えの精度へ直結します。ただし送るのは本命の質問だけにとどめ、深掘り用の予備は手元に残してください。すべて送ると相手が回答を用意しすぎてしまい、当日の言葉が原稿を読み上げる調子になります。
相手の情報が公開されている場合で、リサーチを含めて2時間から3時間ほどが一つの目安です。工程のうち時間がかかるのはリサーチと、仮の見出しを置くところで、質問文への置き換え自体は30分程度で終わります。初めての業界であれば、リサーチにもう1時間を見込んでおくと余裕が出ます。
事前に短い確認を1往復入れる方法があります。取材依頼のメールに「当日は3つの見出しを想定しています」と仮の構成を書き添え、方向性の可否だけ返してもらう形です。情報が取れない相手ほど、当日の1問目で経歴を確認する時間が必要になるため、その分を質問数から差し引いておいてください。
本記事の3問セットで言えば、開く問いがオープン、確定させる問いがクローズドにあたります。作り分けの基準は、答えを広げたい場面か、事実を1つ固めたい場面かという点です。オープンだけを連続させると相手の負担が大きくなるため、事実を確定させる短い問いを挟んで呼吸を整える組み方が扱いやすいと考えています。
同じ手順が使えます。記事の見出しの代わりに、レポートで書きたい項目を3つ置き、そこから逆算してください。仕事のやりがいを直接尋ねるより、昨日1日の動きや使っている道具を順に聞くほうが、レポートに書ける具体的な話が集まります。時間で割る切り口が、とくに効きます。
質問数や時間配分をさらに詰めたい場合は、当日の進行まで含めて書き出すインタビュー台本の作り方もあわせて参照してください。
取材の質を、担当者が変わっても揃えたい方へ
質問の作り方が人によって変わると、記事の出来もそのたびに変わります。Writers-hubの内製化支援では、質問票の様式づくり、検算の項目の整備、実際の取材への同席と振り返りまでを通して、社内の誰が担当しても一定の水準で取材できる状態を作っています。
まとめ
インタビュー質問の作り方でつまずくのは、多くの場合、着手の順番が原因です。質問から考え始めると、思いつく範囲で止まります。記事の着地を1文で書き、見出しを仮に置き、その見出しを埋めるために必要な事実を洗い出してから質問文へ置き換える。この順番へ変えるだけで、出てくる量も、1問あたりの密度も変わってきます。
組み立ての目安は、1つの論点につき3問。開く問い、絞る問い、確定させる問いを並べておけば、答えが薄かったときの立て直しも当日に迷いません。質問が出てこない論点は、時間で割る、比較で割る、うまくいかなかった側から聞くという3つの切り口を当ててみてください。最後に、1問ずつ「この答えは記事のどこへ入るか」を確認する検算を挟めば、質問票は送れる状態になります。
合同会社Writers-hubでは、企業のオウンドメディアや採用サイトの取材記事を、企画の設計から質問票の作成、取材、執筆、原稿確認まで一貫して支援しています。取材のたびに準備へ時間がかかっている、質問の作り方が担当者ごとに揺れているといった状況があれば、現在の進め方を伺ったうえで、どの工程から型にできるかをご提案します。
次の取材、質問票を作る前に相談してみませんか
どの見出しを仮に置くかは、記事の目的と読者が決まっていないと判断できません。無料の相談枠では、これから行う取材の目的と相手の情報を伺ったうえで、置くべき見出しの候補と、そこから逆算した質問の方向をその場で整理してお伝えしています。








