「順位が下がったのは、BERTアップデートに対応できていないからではないか」。そう考えて設定できる項目を探している方は多いはずです。これまでのGoogleのアルゴリズム更新が、ページ側で直すべき項目とセットで語られてきたため、名前のついた更新には必ず打ち手があるものだと受け取られやすいからです。
しかし、SEO記事の制作を請け負い、公開後の順位の動きを追ってきた弊社の立場から言えるのは、BERTは検索窓に入力された文を読み取る側の処理であり、ページ側に設定できる項目がないため直接働きかける方法がない、ということです。それでも知っておく価値があるのは、この更新で通用しなくなった書き方が、公開済みの記事にそのまま残っているからです。
本記事では、Googleが公開した導入前後の実例から、順位が動いたときの切り分けの手順、記事側で見直せる5つの点まで、記事制作の現場の視点で順を追ってお伝えします。
- BERTアップデートが検索の何を変えたのか、Googleが公開した実例での前後比較
- 「BERTで順位が落ちた」を疑う前に確認すべき切り分けの手順
- RankBrain、BERT、MUM、そして現在のAI検索が一本の線でつながっている理由
- 記事の書き方として今も有効な5つの見直し点と、逆に無効になった手法
BERTアップデートとは、検索の言葉を前後の並びごと読む変更
BERTアップデートとは、Googleが2019年10月25日に発表した、検索クエリの言語理解に関するアルゴリズムの更新です。発表したのは検索部門を統括するPandu Nayak氏で、同社は当時「過去5年間で最大の前進」と位置づけました。
BERTという名前は、Bidirectional Encoder Representations from Transformersの頭文字を取ったものです。読み方は「バート」。もともとは2018年にGoogleの研究チームが論文として公開し、オープンソースとして配布した自然言語処理の技術で、検索専用に作られたものではありません。研究成果として先に世に出ていたものを、翌年に検索へ組み込んだ、という順番になります。
技術的な核心は、文章中の単語を先頭から順番に一語ずつ処理するのではなく、その単語の前後にある語すべてとの関係から意味を判定する点にあります。Googleの説明では、この処理を可能にしているのがTransformerと呼ばれるモデル構造です。あわせて、計算量が従来のハードウェアの限界を超えるため、検索結果の配信にCloud TPUを初めて投入したことも同時に明かされました。
適用範囲は発表時点で、米国の英語検索において10件に1件のクエリでした。強調スニペットについては、機能が提供されている24か国で同時に適用されています。日本語を含む70以上の言語への拡大が告知されたのは、2019年12月のことです。
※ 出典:Google「Understanding searches better than ever before」(2019年10月25日、Pandu Nayak)

発表から年数が経った今も、この記事は公開されたまま残っています。次章で扱う導入前後の実例も、すべてこの中に書かれているものです。孫引きされた解説を読むより、原典にあたったほうが誤解が少なく済みます。

導入前と後の違いは、Googleが挙げた実例が一番わかりやすい
BERTアップデートの説明は抽象的になりがちですが、Googleは発表記事の中で、実際に検索結果が変わった例をいくつも公開しています。ここを読むと、変化の輪郭がはっきりします。
もっとも引用されるのが「2019 brazil traveler to usa need a visa」という検索です。ブラジル人が米国へ渡航する際のビザを探しているクエリですが、導入前のGoogleは向きを取り違え、米国市民がブラジルへ行く場合の結果を返していました。原因は前置詞のtoを軽い語として扱っていた点にあります。BERT導入後は、このtoが誰から誰への移動を示すかを判定できるようになりました。
もう一例、「parking on a hill with no curb」という検索も示されています。縁石のない坂道での駐車方法を知りたいクエリです。導入前はcurbという単語を重く見る一方でnoを読み落とし、縁石がある場合の駐車方法を返していました。Googleはこれを「noがこのクエリにとってどれほど決定的かを理解していなかった」と説明しています。
Googleが挙げた実例に共通するのは、いずれも前置詞や否定語といった小さな語の読み落としだという点です。単語そのものの一致では正しく処理できていたのに、語と語の関係を無視したために結果が反転していました。BERTが埋めたのはこの部分です。
日本語に置き換えて考えると、この構造はさらに身近になります。日本語で方向や対象を担うのは助詞です。「東京から大阪へ引越し 費用」と「大阪から東京へ引越し 費用」は、含まれる単語がまったく同じで、助詞の位置だけが違います。単語の一致で処理していた時代のアルゴリズムには、この二つを区別する根拠がありませんでした。
否定も同様です。「エアコンの水漏れを自分で直さないほうがよいケース」から「ない」を取り除くと、意味は反対になります。読者が求めている情報も正反対です。BERT以降のGoogleは、こうした一語の有無を読み取る前提で動いています。
Googleがこの更新を必要とした理由は、検索する側の話し方にあった
なぜ2019年のタイミングでこの投資が行われたのか。発表記事に、その背景を示す数字が書かれています。Googleが毎日受け取る検索のうち、15パーセントは過去に一度も見たことのないクエリだという記述です。
過去のログに存在しない検索が毎日この比率で発生している以上、「このクエリにはこのページ」という対応表を積み上げる方式には上限があります。初めて見る文の意味を、その場で読み取る仕組みが必要になる。BERTの導入はその要請に応えるものでした。
同じ記事の中で、Googleはもうひとつ興味深い言葉を使っています。keyword-ese、直訳すれば「キーワード語」です。検索する人が、Googleに理解してもらうために単語を並べた不自然な話し方をしてしまう現象を指しています。Googleは記事の締めくくりで、keyword-eseを手放して自然な言い方で検索してほしい、と書きました。
検索する側の話し方の話であって、書く側には関係ないのでは。
編集部
そこが分かれ目です。検索する側が単語を並べなくてよくなったということは、書く側が単語を並べて合わせにいく必要もなくなったという意味になります。実際、この時期を境に「キーワードを本文に何回入れるか」という調整の効きが目に見えて落ちました。キーワード出現率を指標に据えていた制作会社は、ここで手法の入れ替えを迫られています。
音声検索の普及も背景として挙げられることが多いのですが、Googleの発表記事そのものは音声に言及していません。長く会話的なクエリへの対応という書き方にとどまっています。長文クエリの発生源として音声入力があるのは事実でしょうが、BERTが音声のために作られたと読むのは踏み込みすぎです。
「BERTアップデートで順位が落ちた」は切り分けが先
順位下落の原因としてBERTの名前が挙がることがあります。ただ、この見立てが成立する条件はかなり限定的です。
理由は仕組みそのものにあります。BERTはクエリの側、つまり検索窓に入力された文を読み取る処理です。ページ側に入力できる設定項目が存在しないため、サイト運営者が操作できる余地がありません。Googleのランキングシステム一覧にも、BERTは「単語の組み合わせがどのように異なる意味や意図を表すかを理解するためのAIシステム」と定義されています。品質評価の基準ではなく、質問を読む装置だという位置づけです。

加えて時期の問題があります。BERTの日本語適用は2019年12月です。それ以降に起きた順位変動を全部この更新に結びつけるのは、時系列として無理があります。順位が動いたとき、確認すべき順序は次のとおりです。
- コアアップデートの公表時期と、変動が始まった日付が重なっていないか
- 変動したのが特定の記事だけか、サイト全体か(記事単位ならページ側の問題である可能性が高い)
- 対象クエリの検索結果そのものが入れ替わっていないか(意図の解釈が変わった場合は上位陣ごと入れ替わる)
- Search Consoleの表示回数は保たれたままクリック率だけが落ちていないか(この場合は順位ではなく表示面の変化)
- 技術的な事故(インデックス除外、noindexの混入、表示速度の悪化)が同時期にないか
この5点を確認しても説明がつかない場合に初めて、検索意図の読み取られ方が変わった可能性を検討します。その場合でも打ち手はBERT対策ではなく、そのクエリで今上位にあるページが何に答えているかを読み直し、自分の記事の答えの中身をそろえ直すことになります。
RankBrain、BERT、MUM、AI検索は一本の線でつながっている
BERTを単独の出来事として覚えると、その後のGoogleの動きが読めなくなります。実際には、言語理解を深める方向の積み上げが続いています。
| RankBrain | BERT | MUM | |
|---|---|---|---|
| 公表時期 | 2015年 | 2019年10月 | 2021年5月 |
| 担当する処理 | 未知のクエリの解釈 | 文中の語と語の関係から意味を判定 | 複数ステップの課題への回答 |
| 言語の扱い | 主に英語から展開 | 発表時は米国英語、同年12月に70以上の言語へ | 75言語を横断して学習 |
| 扱える情報 | テキスト | テキスト | テキストと画像 |
| 文章の生成 | しない | しない | する |
MUMは2021年5月18日に発表され、Googleはこれを「BERTの1000倍の性能」と表現しました。BERTが言語を理解するだけだったのに対し、MUMは理解に加えて生成も行います。さらに、日本語で書かれた情報を英語の検索者に届けるといった、言語をまたいだ知識の移転にも触れられています。
※ 出典:Google「MUM: A new AI milestone for understanding information」(2021年5月18日、Pandu Nayak)

この流れを一本の線として見ると、現在のAI OverviewsやAI Modeが唐突な転換ではないことがわかります。質問文をそのまま受け取り、意味を読み取り、答えを組み立てて返す。方向は2019年から変わっていません。
実務上の含意ははっきりしています。BERT時点で効かなくなった書き方は、AI検索でも同じように効きません。単語を機械的に並べたテキストは、語と語の関係を読む処理系にとって情報量が乏しいままだからです。逆に、BERT以降に有効性が上がった書き方は、そのまま今の対応にも使えます。2019年の更新をいま学ぶ価値は、ここにあります。

記事側で見直せる5つの点
ここからは、実際に原稿へ落とせる話に移ります。Googleが公開した失敗例が、いずれも助詞と否定語の読み落としだったことを思い出しながら読んでください。裏を返せば、そこを丁寧に書いた原稿が正しく読まれるということです。
「BERTアップデート 対策」のような単語の並びを、そのまま見出しに置く書き方は今も残っています。助詞を補って「BERTアップデートに対策は必要か」と自然な文にしたほうが、意味の判定材料が増えます。声に出して読んで違和感があるなら、その見出しは直す対象です。
「自分で直さないほうがよいケース」の「ない」、「初心者向け」の「向け」。文字数の都合でこうした語を削ると、意味が反転したり対象がぼやけたりします。Googleがcurbの例で読み落としていたのがまさにこの層で、現在は読み取る前提に変わりました。削ってよい語ではありません。
修飾句を重ねて主語と述語が遠くなると、係り受けの候補が増えます。人が読んでも二通りに解釈できる文は、機械にとっても同じです。一文の中で言い切る内容をひとつに絞ると、この曖昧さは自然に減ります。
語の一致で判定していた時代は、対策キーワードを繰り返す意味がありました。前後関係から意味を取る処理では、同義語や関連語が混ざっているほうが情報量が増えます。「BERTアップデート」「この更新」「2019年の変更」と自然に言い換えて構いません。
強調スニペットは発表時からBERTの適用対象でした。現在のAIの回答も、抜き出す単位は同じく段落です。見出しで問いを立てたら、直後の段落で結論を書く。解説を先に置いて結論を末尾に回す構成は、抜き出しの単位としては不利になります。
逆に、いま時間をかけても戻りが小さい作業も挙げておきます。制作の現場では、こちらを削るほうが効果が早く出ることがあります。
- キーワード出現率を目標値に合わせる調整
- 共起語ツールが出した語を本文へ機械的に差し込む作業
- 表記ゆれ対策として同じ語を全角と半角の両方で書き分ける対応
- 上位ページの見出しをそのまま並べ替えただけの構成案
- 文字数を上位平均に合わせるための説明の水増し
注意したいのは、これらが「やってはいけない」ではなく「順位への戻りが小さい」だという点です。表記の統一そのものは読み手のために必要な作業ですし、共起語の一覧も論点の抜け漏れを確認する材料としては使えます。目的を取り違えたまま作業だけ続けている状態が問題になります。

5点の見直しは、1本の記事であれば30分ほどで終わります。難しいのは判断ではなく、公開済みの記事が積み上がっているときの物量のほうです。
直す方針は決まったものの、既存記事に手を入れる時間が取れないとき
50本、100本と溜まった記事を社内の担当者だけで直そうとすると、通常の更新が止まります。Writers-hubは新規記事の制作に加えて、既存記事の書き直しも本数単位でお受けしています。どの記事から手をつけるかの優先順位づけから、ご相談いただけます。
BERTアップデートに関するよくある質問
RankBrainは2015年に公表された、過去に例のないクエリを解釈するための機械学習の仕組みです。BERTは2019年に導入され、文中の語と語の関係から意味を判定します。どちらも現在のGoogleのランキングシステム一覧に併記されており、後から来たBERTがRankBrainを置き換えたわけではありません。
用途が異なるため、どちらか一方だけが働いているという関係ではありません。Googleは2021年の発表でMUMをBERTの1000倍の性能と説明しましたが、同時にBERTもランキングシステムの一覧に残っています。段階的に役割を分担していると考えるのが実態に近いはずです。
BERTを対象にした個別の対策は成立しません。ページ側に設定できる項目がなく、クエリを読む側の処理だからです。効果があるのは、助詞や否定語を省略せずに書く、検索クエリをそのまま見出しに貼らないといった、文章そのものの見直しになります。
2019年10月の発表時点では米国の英語検索が対象で、強調スニペットのみ24か国で先行しました。日本語を含む70以上の言語への拡大が告知されたのは同年12月です。
Googleは米国の英語検索で10件に1件のクエリに影響すると説明しましたが、日本語での変動幅について公式の数値は出ていません。順位が動いた場合は、まずコアアップデートの実施時期との重なりを確認することをおすすめします。
まとめ
BERTアップデートは2019年10月に発表された、検索クエリの言語理解に関する更新でした。Googleが公開した実例が示すとおり、変わったのは前置詞や否定語といった小さな語を読み取れるかどうかという部分です。日本語に置き換えれば、助詞と否定が同じ役割を担います。
この更新に対して、ページ側でできる設定はありません。それでも学ぶ意味があるのは、BERTを境に効かなくなった手法と、効くようになった書き方が今も続いているからです。MUMを経て現在のAI検索に至るまで、Googleが進んでいる方向は一貫しています。
手を動かす順番としては、公開済みの記事の見出しを一度読み返すところからをおすすめします。検索クエリがそのまま貼られている見出し、否定語が削られた一文が見つかったなら、そこが最初の修正対象です。ここまでは社内でも進められる範囲になります。
判断が難しくなるのは、その先です。どのクエリで今どう読まれているのか、AIの回答面に何が拾われているのかまで見にいくと、自社だけで追い切れる情報量を超えてきます。
見出しの見直しまでは済んだ、その次に何を見るべきか
BERTからAI検索まで、Googleが進んでいる方向が変わっていないことは本記事で整理したとおりです。ただし自社のどの記事から、どの順番で手を入れるかは、扱う商材と現在の流入の中身によって答えが変わります。合同会社Writers-hubでは、検索結果とAIの回答の両方を確認したうえで着手順を決めるところから、SEO記事の制作と既存記事の書き直しをお受けしています。








