ステマという言葉は誰もが知っているのに、「具体的に何が悪いのか」を人に説明しようとすると急に手が止まります。隠しているからズルい、という感覚そのものは間違っていません。ただ、そこで説明を終えてしまうと、自社の広報や記事制作のどこを直せばよいのかが見えないまま残ります。
答えは3つの層に分かれています。消費者の判断に生じる実害、景品表示法という法律上の根拠、そして発覚したときに企業が支払うコスト。この3つはばらばらの論点ではなく、上から下へつながった1本の因果です。
本記事では、ステマの定義や過去事例の網羅ではなく、「なぜ悪いのか」という因果に絞って整理しました。自社の投稿や記事が規制に触れていないか気になっている方は、判断の割れる場面を扱った後半から読んでいただいても構いません。
- ステマが悪いとされる理由を、消費者への実害・法的根拠・企業のコストという3層で説明できるようになる
- 景品表示法のどの規定に、どんな要件で違反するのか
- 内容が事実であっても違反が成立する理由と、優良誤認表示・有利誤認表示との違い
- 責任を負うのは投稿した本人か、依頼した事業者か
- 悪気なくステマになる典型パターンと、制作フローのどこで止めるか
ステマが悪い理由は、3つの層に分けると説明できる
「ステマは何が悪いのか」という問いに、「消費者をだますから」と一言で答えると、話はそこで終わってしまいます。だますという言葉には嘘をつくという含みがありますが、ステマは商品の説明が一言一句すべて事実であっても成立します。ここを押さえないと、規制の輪郭がつかめません。
悪さの中身は、次の3層に分かれています。
- 消費者側に生じる実害。広告だと知らないまま読み、判断の前提が書き換わる
- 法律上の評価。景品表示法が禁じる不当表示に該当する
- 事業者側が負うコスト。措置命令と社名の公表、取引先や媒体からの信用低下
この順番には意味があります。1の実害があるから2の法規制が生まれ、2に違反したから3の制裁が科されるという流れです。逆から遡れば、なぜ「PR」の2文字が抜けただけで行政処分の対象になりうるのかも理解できます。
ステマの本体は「隠したこと」そのものではなく、「消費者が広告として受け取る機会を奪ったこと」にあります。広告と気づけないまま読ませた時点で成立します。商品説明が事実かどうかは、成立要件に含まれていません。
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層1|広告だと気づけないまま、判断の前提が書き換わる
私たちは情報を、発信者が誰かによって重みづけを変えながら読んでいます。同じ「このサプリを飲んでから肌の調子が変わった」という一文でも、メーカーの公式広告に置かれていれば「売りたい側の言い分だろう」と割り引いて受け取ります。ところが、面識のない一般ユーザーの投稿に同じ文が置かれると、その割引はほとんど働きません。
この割引の有無こそ、ステマが壊しているものです。広告表示は、受け手に対して「これから利害関係のある主張を読む」と知らせる合図として機能しています。合図を消せば、受け手は同じ文章をより高い信頼度で読み込む。ステマとは、文章の内容を偽らずに、文章の読まれ方だけを操作する手法だといえます。
嘘をつかなくても、選択は歪む
ここで多くの方がつまずくのが、「本当に良い商品なら問題ないのでは」という疑問でしょう。商品が優れていること自体は、誰も否定しません。問題は、消費者が比較検討に使う材料の重みづけが狂う点にあります。
たとえば10件の口コミのうち3件が、実は事業者の依頼によるものだったとします。読み手はその3件を、利害関係のない第三者の評価として数えてしまう。すると、その商品がどれだけ広く支持されているかを、実際より大きく見積もることになります。個々の記述が正確でも、全体として受け取る像は事実からずれる。景品表示法が守ろうとしているのは、まさにこの「一般消費者の自主的かつ合理的な選択」です。

被害は個社では終わらない
もう一段引いて眺めると、影響は当事者の外へ広がります。ステマが横行した領域では、消費者は口コミという情報源そのものを疑い始めます。真面目にレビューを集めてきた事業者ほど、自分では何もしていないのに信頼の目減りを引き受けることになる。飲食店や化粧品の評価に対して「どうせサクラでしょう」という反応が定着していった経緯を思い出せば、この連鎖は想像しやすいはずです。
法規制の目的が「業界の健全性」といった曖昧な言葉に落ち着かないのは、この波及があるからです。表示の信頼が壊れると、正直に商売をしている側が広告費で不利を埋めることになります。
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層2|景品表示法が「不当表示」として禁じている
ここからが法的な根拠です。ステマは、2023年10月1日から景品表示法上の不当表示に位置づけられました。景品表示法の正式名称は不当景品類及び不当表示防止法といい、その目的は一般消費者による自主的かつ合理的な選択を守ることにあります。層1で述べた実害が、そのまま法目的に対応している構造です。
第5条第3号の指定告示という位置づけ
景品表示法第5条は、事業者に対して3種類の表示を禁じています。第1号が優良誤認表示、第2号が有利誤認表示、そして第3号が「内閣総理大臣が指定するもの」です。ステマはこの第3号に基づく告示によって、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」として指定されました。
つまり、ステマ規制という独立した新しい法律ができたわけではありません。既存の景品表示法に、禁止される表示の類型が1つ加わったという構造です。この理解は実務でそのまま効きます。適用のされ方も行政処分の流れも、既存の不当表示と同じ枠組みで動くからです。
内容が事実でも違反になる、という決定的な違い
第1号と第2号は、表示内容と実際との乖離を要件にしています。実際より著しく優良に見せれば優良誤認、著しく有利な取引条件に見せれば有利誤認。どちらも「盛った」ことが違反の中身です。
これに対して第3号のステマは、表示内容の真偽をまったく問いません。嘘をついていなくても違反になるという一点が、他の2類型との決定的な違いになります。
| 優良誤認表示(第5条第1号) | 有利誤認表示(第5条第2号) | ステマ(第5条第3号の指定) | |
|---|---|---|---|
| 何を問題にするか | 品質や規格の見せ方 | 価格や取引条件の見せ方 | 広告だと分からない状態 |
| 内容の真偽 | 実際より著しく優良なら違反 | 実際より著しく有利なら違反 | 真偽を問わない |
| 措置命令 | ○ | ○ | ○ |
| 課徴金 | ○ | ○ | × |
表の右列だけを見れば、ステマ規制がどれだけ特殊な立て付けかが分かります。品質を裏づける資料を揃えても、この類型の違反は防げません。
成立要件は「事業者の表示」と「判別困難性」の2つ
1つ目の要件は、その表示が事業者の表示だと評価できることです。自社の従業員による投稿はもちろん、第三者に依頼して投稿させ、事業者が内容の決定に関与したと認められる場合も含まれます。関与しているかどうかは、契約書の文言だけでなく、実際の指示のやりとりや対価の有無から判断されます。
2つ目は、一般消費者にとって、それが事業者の表示だと判別するのが難しいことです。「PR」「広告」「プロモーション」といった表記があっても、文末に大量のハッシュタグを並べてその中へ紛れ込ませたり、動画の終盤で一瞬だけ表示したりする場合は、判別が困難だと評価される余地が残ります。PR表記は、消費者が見つけられる場所になければ意味がありません。
※ 景品表示法の条文は e-Gov 法令検索で確認できます。

規制されるのは事業者であって、投稿した本人ではない
見落とされやすいのが責任の所在です。この告示が名宛人としているのは、あくまで商品やサービスを供給する事業者です。責任を問われるのは依頼した事業者であり、投稿者本人ではありません。インフルエンサーやアフィリエイターが、景品表示法違反そのものに問われることは原則としてありません。
一見すると発信者に甘い制度に映るかもしれません。しかし発注する側から見ると、意味は反転します。投稿者にPR表記の判断を委ねたところで、責任は自社へ戻ってくる。だからこそ、依頼文や契約の段階で表記のルールを固定しておく必要が出てきます。
インフルエンサーに任せていた投稿でPR表記が漏れていた場合も、うちが処分されるということですか。
編集部
はい。表示の主体は依頼した事業者だと評価されます。周知が足りなかったという説明は通りにくいため、依頼書のテンプレートに表記の文言と掲載位置まで書き込んでおくのが確実です。

層3|発覚後に支払うコストは、得られた売上と釣り合わない
3層目は、企業側が実際に負う負担です。ここを軽く見積もったまま運用している組織は、いまだに少なくありません。
行政処分は「社名が公表される処分」である
ステマが認定された場合、まず想定されるのは措置命令です。違反行為の差し止め、再発防止策の実施、一般消費者への周知徹底などが命じられます。措置命令は消費者庁から公表されるため、企業名がそのまま報道と検索結果に残ることになります。
命令に従わなかった場合には刑事罰も定められており、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されうる仕組みです。
先の表のとおり、ステマ単体では課徴金の対象になりません。売上額に応じた金銭的な制裁がない分だけ軽い、と読むのは誤りです。実務上の打撃は社名の公表を起点に、取引先の与信審査、広告媒体の掲載基準、採用応募者の下調べへと波及していきます。金銭で清算できないぶん、回復には時間がかかります。
過去の投稿は、今この瞬間も表示され続けている
もう1つ、実務で見落とされがちな論点があります。2023年10月の施行より前に公開した投稿であっても、現在も一般消費者が閲覧できる状態にあるなら、規制の対象として扱われうるという点です。表示は「行った瞬間」だけで完結せず、「されている状態」として捉えられるためだと考えられます。
過去のインフルエンサー投稿を自社のLPに転載したまま放置している。数年前のキャンペーンで集めたレビューを、商品ページへ載せ続けている。こうした状態は、新たに何も発信していなくても違反の状態が続いていることになります。新規の投稿ルールだけを整えて安心してしまう組織は、この点で足元をすくわれます。
過去に公開した記事や投稿、いま見返して自信を持てますか
公開済みのコンテンツを1本ずつ点検し、表記のルールを決め、次から同じ漏れが起きない制作フローへ落とし込む。この作業は担当者1人の片手間ではまず終わりません。合同会社Writers-hubでは、記事の制作から公開後の点検までを含めた体制づくりをご一緒しています。
悪気なくステマになる、判断が割れる3つの場面
実際に起きているステマの多くは、悪意ある工作として始まったものではありません。判断が割れる場面で、社内の誰も確認しないまま公開まで進んでしまう。ここが実務上の急所です。
商品を無償提供したあとの投稿
商品を無料で送っただけで、投稿を強制していなければ問題ない。この理解には危うさがあります。判断されるのは強制の有無ではなく、事業者が表示内容の決定に関与したと認められるかどうかだからです。
- 提供時に、投稿の有無や内容について要望を伝えた
- 投稿することを条件として商品やサービスを渡した
- 投稿前に原稿や画像の確認を求めた
- 継続的な取引関係があり、次回の依頼を示唆していた
当てはまる項目が多いほど、事業者の表示だと判断される余地は大きくなります。逆に、提供のみで内容へ一切関与せず、投稿者が自分の意思で書いた場合には、規制の対象外として整理されます。線を引いているのは金銭や物のやりとりではなく、内容への関与だと覚えておくと迷いません。
自社の社員による投稿
自社製品を社員が個人アカウントで褒める行為も、事業者の表示に当たります。所属を明かさずに投稿すれば、いわゆるなりすまし型のステマそのものです。社内チャットに「よかったら投稿してほしい」と呼びかけた履歴が残っていれば、後から釈明する材料はほとんど残りません。
社員は良かれと思って書いています。そこを責めても再発は止まらないため、投稿してよい範囲と所属明記のルールを先に配っておくほうが実効的です。
二次利用と、届いていない表記
- PR表記のある投稿を自社サイトへ転載する際、表記だけを削って掲載する
- ハッシュタグを20個並べ、その末尾に「#PR」を入れる
- 動画の最終カットで1秒だけ「プロモーションを含みます」と出す
- 「一部プロモーションを含みます」とだけ書き、どの部分が該当するか示さない
どれも表記の文字自体は存在しているのに、消費者が広告だと判別できる状態にはなっていません。判別困難性という要件は、表記があるかないかではなく、読み手に届いているかどうかで評価されると考えるほうが実態に近いといえます。とくに二次利用は、担当部署をまたぐ過程で表記が落ちやすい工程です。
制作フローのどこでステマを止めるか
ここまでの内容を、明日から動かせる形に落とします。ステマは公開の瞬間に生まれるのではなく、発注・執筆・公開・保守それぞれの工程に漏れる隙があります。工程ごとに止める場所を決めておくのが現実的です。
依頼書と契約書に、PR表記の文言・掲載位置・削除禁止を明記します。「適切に表示すること」といった裁量を残す書き方は避け、投稿の冒頭に置くところまで指定しておきます。
内容の校正と表記チェックを同じ人が同時に行うと、表記は高い確率で見落とされます。確認の観点を分け、表記だけを見る役割を置くほうが漏れません。
その投稿を後日どこへ転載する可能性があるかを、公開の時点で決めておきます。転載時も表記を維持するという前提が共有されていれば、削って貼るという事故は起きにくくなります。
半年から1年に一度、掲載中のレビューや転載済みの投稿を棚卸しします。施行前の投稿が残っていないかは、この点検で拾います。
制作そのものを外部に任せている場合でも、発注時と原稿確認の2工程は自社に残ります。裏を返せば、この2つさえ仕組みとして固めておけば、書き手が入れ替わっても表記の品質は保てるということです。

工程表そのものは、社内の担当者だけでも作れます。難しいのは、記事や投稿の本数が増えたあとも同じ精度で回し続ける部分です。
表記ルールと確認体制を、担当者の記憶に頼らない形にしたい方へ
チェックリストを配っただけでは、担当者が変わった時点で運用は元へ戻ります。誰がどの工程で何を見るかを組み込み、企画から公開後の点検までを回す設計が必要です。制作体制の立ち上げからご一緒できます。
ステマの何が悪いかに関するよくある質問
ステマそのものに直接の刑事罰が定められているわけではありません。景品表示法上の不当表示として措置命令の対象となり、その命令に従わなかった場合に刑事罰の対象となる仕組みです。
提供の事実だけで直ちに該当するわけではありません。投稿内容の決定に事業者が関与したと認められるかどうかで判断されます。投稿を条件にしていたり、内容への要望を伝えていたりする場合は、該当する可能性が高まります。
広告主が表示内容の決定に関与していると評価される場合には、対象になりえます。アフィリエイターに任せきりであっても広告主の表示だと判断される場面があるため、表記ルールの提示は必要です。
この規制が名宛人としているのは事業者であり、投稿した本人が景品表示法違反を問われることは原則としてありません。ただし社会的な信用という面では、投稿者側も無関係ではいられません。
施行日より前の投稿であっても、現在も閲覧できる状態にあるなら対象として扱われうると考えられます。過去分の棚卸しをおすすめします。
まとめ
ステマが悪い理由を、3つの層に分けて整理してきました。消費者は広告だと知らないまま判断の前提を書き換えられ、その害を防ぐために景品表示法が不当表示として禁じ、違反すれば社名の公表を伴う処分と信用の低下が続きます。感覚的な「ズルさ」ではなく、実害から制裁までが1本でつながっている話です。
実務で最も重要なのは、内容が事実であっても違反が成立するという一点でしょう。良い商品なのだから問題ないという発想は、この枠組みでは通用しません。判断されるのは商品の質ではなく、消費者が広告だと気づける状態にあったかどうかだからです。
そして責任は、投稿した人ではなく依頼した事業者に集まります。対策を個人のモラルに預けても再発は止まりません。発注書、確認体制、公開後の点検という仕組みの側に置くことが、結果として現場の負担も軽くします。
本数が増えるほど、表記の確認は誰かの記憶頼みになります
月に何本も公開する体制では、書き手ごとの解釈のばらつきが必ず出ます。表記ルールを含めた品質基準を持つ制作チームへ任せることで、確認そのものにかける時間を減らせます。合同会社Writers-hubへ、まずは現状の本数と体制をお聞かせください。








