「返ってきた文章が思っていたものと違うのは、指示の書き方が悪いからだろう。よくできたテンプレートを探してコピーすれば済むはずだ」。社内で使う見積書や議事録のひな形が、書式さえ配れば誰でも同じ形の書類を作れるものとして機能してきたため、プロンプトのテンプレートも文言さえ揃えれば結果が揃うと受け取られやすくなっています。
しかし、生成AIを日々の記事制作に組み込んで使ってきた弊社の立場から言えるのは、公開されている型がそのまま使えない原因は書き方の巧拙ではなく、判断のもとになる材料の欄が埋まっていないことにある、ということです。前提と依頼と出力形式は、同じ業務であれば毎回同じ内容で足ります。入れ替わるのは材料だけなので、コピーしたあとにその欄へ自社の実物を入れるところまでが、使えるテンプレートにするための作業です。
本記事では、指示を組み立てる4つのブロックと、調査資料の要約や問い合わせの分類といった業務別のテンプレートから、使う生成AIを乗り換えたときに壊れる箇所や自社の業務に合わせる3つの手順まで、記事制作会社の視点で順を追ってお伝えします。
- 生成AIのプロンプトテンプレートを構成する4つのブロックと、空欄の決め方
- 調査要約、問い合わせ分類、手順書、告知文、画像生成の業務別テンプレート
- 文章生成と画像生成で、テンプレートの構造がどう変わるのか
- ChatGPTからGeminiなどへ乗り換えたとき、テンプレートのどこが壊れるのか
- 公開テンプレートを自社の業務に合わせて直す3つの手順
プロンプトテンプレートは、指示の4ブロックで組み立てる
生成AIのプロンプトテンプレートとは、AIに送る指示文のうち毎回変わらない部分をあらかじめ書いておき、変わる部分だけを空欄にした指示の下書きです。空欄を埋めれば、誰が使っても同じ構造の依頼が出来上がります。
構成としては、前提、依頼、材料、出力形式の4つのブロックに分かれます。テンプレートを見比べると細かい違いはありますが、機能している型はこの4つを備えていることがほとんどでしょう。
ブロック | 書く内容 | 抜けたときに起きること |
|---|---|---|
前提 | 読み手、使う場面、AIに担わせる立場 | 一般論に寄り、社内では使えない文章になる |
依頼 | やってほしい作業を動詞で1つ | 複数の作業が混ざり、どれも中途半端になる |
材料 | 判断のもとになる事実、数値、原文 | 足りない部分をAIが自分で埋めて創作する |
出力形式 | 表か箇条書きか、字数、項目立て | 毎回レイアウトが変わり、手直しが増える |
この4つのうち、どこを空欄にするかがテンプレートの本体です。決めるべきは文言ではなく、毎回差し替える項目のほうです。前提と依頼と出力形式は、同じ業務であれば毎回同じ内容で足ります。中身が入れ替わるのは材料の欄だけです。つまり空欄にすべきは材料であって、残る3つは最初に書き切ってしまってよい部分でしょう。

とはいえ、実際にコピーして試した方からは、埋める場所が分からないという声をよくいただきます。
公開されているテンプレートをそのままコピペしたのに、思っていた文章になりませんでした。何が足りないのでしょうか。
編集部
足りないのは材料であることがほとんどです。公開テンプレートは前提と出力形式は書かれていますが、材料の欄は空のまま配布されます。そこへ自社の事実を入れずに送ると、AIは一般的な事例で埋めてしまいます。まず、その業務でいつも参照している資料やメモを1つ選び、材料の欄に丸ごと貼り付けてから試してみてください。文言を直すのはその後で構いません。
材料を先に入れるという順番には、副産物があります。貼り付ける資料を探す過程で、その業務がどの情報に依存しているのかが目に見える形で残るためです。空欄が決まるというのは、業務の入力が決まるということでもあります。
OpenAIが公開している設計の考え方でも、指示を具体的にすること、参照させる情報を与えること、複雑な作業を分けることが挙げられています。4ブロックは、この考え方を日本語の業務指示として書きやすい形に並べ直したものだとお考えください。
※ 参考として、開発元が公開している設計の解説を挙げます。英語表記のため、日本語での運用にはそのまま当てはまらない部分もあります。

関連記事:生成AIのビジネス活用完全ガイド|企業の活用事例と導入ポイントを徹底解説
業務別のプロンプトテンプレート
ここからは、そのままコピーして使える形でテンプレートを並べます。全角の【 】が空欄です。自社の言葉に置き換えてからお使いください。
調査資料を読み込んで要点を整理する
社外のレポートや長い議事録を読む前に、判断に効く部分だけを抜き出す使い方です。要約との違いは、読み手と用途を先に指定している点にあります。
# 前提
読み手は【例:営業部の課長】で、業界の基礎知識はあるが本資料は未読。
用途は【例:来期の商品企画を進めるかどうかの判断】。
# 依頼
以下の資料を読み、用途に関係する部分だけを抜き出して整理してください。
# 出力形式
1. 結論(3行以内)
2. 判断に効く事実(5点まで。数値は資料内の記載箇所を添える)
3. 資料内で推測にとどまっている記述
4. この資料だけでは分からないこと
# 条件
事実と、資料の書き手の意見を混ぜないでください。
資料に書かれていない情報は補わないでください。
# 資料
【本文を貼り付け】最後の「この資料だけでは分からないこと」を出力形式に入れておくと、調べ足りない論点が毎回そろって出てきます。要約だけを頼むと、AIは書かれていることの中で話を閉じてしまうためです。
問い合わせやアンケートを分類する
自由記述の回答や問い合わせ履歴を、傾向がわかる単位にまとめる使い方です。件数の扱いを条件に書いておかないと、数え漏れが起きます。
# 依頼
以下のデータを分類し、件数の多い順に並べてください。
# 分類のルール
分類軸は【例:問い合わせの内容】。カテゴリは10個以内に収める。
どれにも入らないものは「その他」に置き、原文をそのまま残す。
1件が複数に該当する場合は、主たる1つにだけ入れる。
# 出力形式
表(カテゴリ名/件数/代表的な原文を3件/想定される原因)
# 条件
原文の言い換えや要約はしないでください。
カテゴリごとの件数を合計し、入力件数と一致することを最後に確認してください。
# データ
【1件1行で貼り付け】代表的な原文をそのまま残させると、分類の妥当性を人が確認できます。カテゴリ名だけを受け取ると、分け方が納得できるかどうかを判断する材料が残りません。
業務の手順書を作る
引き継ぎや新任者向けの資料を、担当者の頭の中にある手順から起こす使い方です。書かれていない操作を補わせない指定が効きます。
# 前提
【例:総務】の業務を、初めて担当する人へ引き継ぐ場面。
読み手は【例:入社1年目・この業務は未経験】。
# 依頼
以下のメモから、【業務名】の手順書を作成してください。
# 出力形式
・目的(2行)
・実施するタイミングと所要時間
・手順(番号つき。1手順につき1操作。判断が必要な箇所は分岐として書く)
・つまずきやすい点と、その場での対処
・関係者と連絡先の欄(空欄のままでよい)
# 条件
ツール名と画面名は、メモにある表記をそのまま使ってください。
メモに書かれていない操作は補わず、「要確認」と明記してください。
# メモ
【箇条書きのメモを貼り付け】告知文とSNS投稿を作る
イベントや新サービスの案内文を、複数案そろえる使い方です。社外に出す文章のため、書かせない内容を制約として先に置きます。
# 前提
媒体は【例:自社のXアカウント】。読み手は【例:既存顧客の担当者】。
投稿の目的は【例:申込ページを開いてもらうこと】。
# 依頼
以下の素材から投稿文を3案作成し、案ごとに狙っている読み手の反応を1行添えてください。
# 制約
全角【140】字以内。絵文字は【使わない】。
確認できていない効果や、社外に出していない数値は書かないでください。
「今すぐ」「絶対」「限定」などの煽る表現は使わないでください。
# 素材
【日時、場所、申込先、伝えたい要点を貼り付け】画像を生成する
画像生成のテンプレートは、文章生成とは構造が変わります。長い散文で説明するより、要素を並べたほうが狙いどおりに出ます。被写体、背景、構図、用途、除外の5つを並べる形が扱いやすいでしょう。
【被写体】が【している動作や状態】。
背景は【場所】、時間帯は【朝・昼・夕方・夜】。
構図は【正面・俯瞰・横から】。画面内で被写体が占める割合は【約◯割】。
用途は【例:記事のアイキャッチ、横長】。画像内に文字は入れない。
入れないもの【例:人物の顔、実在する企業のロゴ、読めない文字列】除外の行は軽視されがちですが、実務ではここがいちばん効きます。生成された画像に読めない文字列が入り込む、意図しないロゴらしきものが写る、といった作り直しの多くは、除外を書いていないことが原因です。

業務別のテンプレートを一から起こすのが負担であれば、すでに公開されている実物を出発点にする方法もあります。
自治体が業務で使っているプロンプトを公開している例もあります。文書作成から広報、データ整理まで用途別に並んでおり、自社の業務に近いものを探す出発点として実用的です。ただし、そのまま使うのではなく、後述の手順で自社の前提を入れてからお使いください。
※ 出典は山形県南陽市の公開ページです。

関連記事:プロンプトテンプレートとは?業務別の例文と精度を上げる6つの要素
使う生成AIを変えると、テンプレートのどこが壊れるのか
ChatGPT、Claude、Geminiのように提供元の異なるサービスを使い分ける職場が増えました。すると、片方で作ったテンプレートをもう片方に持っていく場面が出てきます。ここで起きるのは全面的な作り直しではなく、特定のブロックだけが機能しなくなる現象です。
結論から言えば、前提と依頼と出力形式は、おおむねそのまま移せます。壊れるのは材料の渡し方と、AIの機能に頼っていた部分です。
テンプレートの部品 | 別のサービスに移したとき | 確認すること |
|---|---|---|
前提と役割の指定 | おおむねそのまま効く | 特になし |
依頼の文 | おおむねそのまま効く | 特になし |
出力形式の指定 | おおむねそのまま効く | 表の崩れ方を一度だけ見る |
制約や禁止事項 | 守られ方に差が出る | 守られなかった制約を書き足す |
長い資料の貼り付け | 一度に渡せる量が変わる | 分割して渡す必要があるか測る |
Webで調べる指示 | 機能がなければ成立しない | 検索機能の有無とプランを確認 |
画像やファイルの読み取り | 対応外だと途中で止まる | 対応している形式を確認 |
移し替えで壊れるのは、材料の渡し方と機能に頼った部分です。ここを理解しておくと、乗り換えのたびにテンプレートを一から書き直す作業がなくなります。

なお、各サービスの得意分野や上限は、提供元の更新とご契約のプランによって変わります。記事で読んだ性能差を前提にテンプレートを組むより、いま自社で使える環境で一度試して、その結果を条件の欄に書き足すほうが確実です。
関連記事:プロンプトの書き方を6要素で組み立てる|業務別の例文と出力の直し方
公開テンプレートを自社の業務に合わせる3つの手順
ここまでのテンプレートも含め、公開されている型は他社の業務を前提にしています。自社で機能させるまでには、3つの手順を通す必要があります。作業としては30分ほどで終わる内容です。
文言は一切変えず、材料の欄にだけ、その業務で実際に使っている資料やメモを丸ごと貼り付けて1回動かします。ここで出力を評価してはいけません。何が足りないかを見るための1回目です。
出力を読み、期待と違う点を1つに絞ります。内容がずれているなら前提と材料の欄を、形が崩れているなら出力形式の欄を疑ってください。原因の切り分けができれば、直す場所は自然に決まります。
条件を1行足したら、なぜ足したのかを短く添えておきます。ほかの人が使うとき、その1行を消してよいかどうかの判断がつくためです。理由のない条件は、数か月後に必ず誰かが消します。
この3手順で悩ましいのは、どこまで作り込むかという線引きでしょう。
拾ってきたテンプレートを、どこまで直せば使えるようになるのでしょうか。線引きが分かりません。
編集部
直すのをやめてよい目安は、同じ空欄の埋め方で2回続けて手直しなしの出力が出たときです。それ以上の作り込みは、精度ではなく好みの調整になっていきます。逆に3回試しても毎回ずれるなら、テンプレートの問題ではなく、その業務がまだ人の判断を必要としている可能性が高いです。次の章の内容を確認してみてください。
直す価値があるのは、月に4回以上繰り返す作業に限られます。年に数回の業務にテンプレートを作り込んでも、次に使うころには業務側の前提が変わっています。回数の少ない作業は、そのつど普通に指示を書くほうが早く終わるでしょう。
毎回ほぼ同じ指示を書き直している作業が、社内にいくつも残っていませんか
テンプレートで型にできる作業と、仕組みに載せて自動で回したほうがよい作業は分かれます。現在の業務の流れをうかがったうえで、どこから手をつけると手作業が減るのかを整理してご提案します。
テンプレートにしないほうがよい仕事
テンプレート化が向かない業務は確実に存在します。無理に型にすると、出力を確認する手間のほうが大きくなり、結局は使われなくなるでしょう。
- 前提が毎回変わる仕事。個別の顧客事情に踏み込む提案書や、条件が案件ごとに違う見積もりの説明文
- 判断そのものが成果物である仕事。採用の合否、値付け、取引の可否といった、根拠より結論に責任が伴うもの
- 材料が社外に出せない仕事。契約書の原文や個人情報を含む記録を、そのまま貼り付けなければ成立しないもの
- 年に数回しか発生しない仕事。作り込んだころには業務側の手順が変わっている
見分け方は単純です。テンプレートの空欄を書き出したときに、埋める内容が毎回まったく違うなら、それは型ではなく単なる質問の枠でしかありません。空欄に何を入れるか自体を毎回考えているうちは、テンプレートにする段階に達していないと判断してよいでしょう。
社内で配る前に決めておく3つのこと
自分ひとりで使う分には気にならなくても、社内へ配ると論点が変わります。技術の問題ではなく、運用のルールに関わる部分です。
材料の欄に何を貼ってよいかは、テンプレートの中に書いておいてください。「顧客名は伏せ字にする」「契約書の原文は貼らない」といった一行を、材料の欄の直前に置きます。別ファイルの規程に書いても、急いでいる人はテンプレートしか見ません。
2つめは、出力を誰が確認するかです。生成AIは足りない情報を黙って埋めるため、事実誤認は自然な文章の形で混ざります。社外へ出す文書と、数値を含む資料については、確認する人を決めてから配布してください。テンプレートの末尾に確認欄を1行設けておく方法が、いちばん運用として続きます。
3つめは、誰が直すかです。使っているうちに条件は増えていきます。直す担当を決めずに配ると、各自が手元でコピーを作り、少しずつ違う型が社内に散らばっていきます。
- 材料の欄に貼ってよい情報と、貼ってはいけない情報を明記した
- 出力を確認する人と、確認する範囲を決めた
- テンプレートを直す担当と、直した履歴の残し方を決めた
- どの業務で使うテンプレートなのか、ファイル名から判別できる
生成AIのプロンプトテンプレートについてよくある質問
最初は1本で構いません。週に何度も発生する業務を1つ選び、そこだけを型にしてください。3か月ほど運用して定着してから次へ広げる進め方が、結果として社内に馴染みます。最初に10本以上を整備すると、どれを使うか探す手間が生まれ、使われないまま残ります。
出発点として使う分には問題ありません。ただし、そのままでは材料の欄が空のままです。自社の資料を入れて1回動かし、ずれた箇所を1つ直すところまでを1セットとお考えください。集めるだけでは業務は変わりません。
構造が変わります。文章生成は前提と依頼と材料を文で書きますが、画像生成は被写体、背景、構図、用途、除外を並べる形が扱いやすい形式です。とくに除外の指定を省くと、読めない文字列やロゴらしきものが入り込み、作り直しの原因になります。
一度に渡す量が上限に近づいている可能性があります。資料を分割し、まず要点だけを出力させてから、その要点を材料として次の依頼を送る形に分けてください。作業を分けると、1回あたりの指示が短くなり、条件も守られやすくなります。
下書きとしては有効です。ただし、AIが書いたテンプレートには自社の前提が入りません。出来上がった型の材料の欄と制約の欄だけは、必ず自分で書き直してください。そこが自社と他社を分ける部分です。
ここまでの内容は、ひとりで試す範囲であればその日のうちに実行できます。難しくなるのは、整えた型を他の部署の人にも使ってもらう段階からでしょう。
テンプレートは用意したものの、社内で使う人が一部にとどまっていませんか
型を整えることと、使う人を増やすことは別の仕事です。どの業務から型にするかの選定、社内向けの手順づくり、勉強会の設計まで、立ち上げの段階からご一緒します。
まとめ
生成AIのプロンプトテンプレートは、前提、依頼、材料、出力形式の4ブロックで組み立てます。公開されているテンプレートが自分の仕事に合わないのは、文言の問題ではなく、材料の欄が空のまま配布されているからでした。
自社で機能させるまでの作業は、空欄に実物を入れる、ずれた箇所を1つ特定する、直した理由を書き残す、この3つです。使う生成AIを乗り換えるときも、前提と依頼と出力形式はそのまま移せます。確認が必要なのは、資料の渡し方と、検索や画像読み取りといった機能に頼っていた部分だけです。
テンプレートは、配った時点ではまだ道具になっていません。使う人が空欄を埋め、ずれを直し、その理由を書き足していく過程で、ようやく自社の業務に噛み合っていきます。まずは繰り返し回数のいちばん多い業務を1つ選び、本記事のテンプレートを1本だけ動かしてみてください。
合同会社Writers-hubでは、生成AIを日々の記事制作に組み込んで運用しています。社内でAIを使う体制づくりや、どの業務から型にすべきかの選定でお困りの際は、実務の進め方からご相談を承ります。








