プロンプトの作り方を調べると、役割を与える、条件を具体的に書く、といったコツが並びます。書かれていることはどれも正しく、実際に効果もあります。ところが、そのとおりに書いてみても思ったものが返ってこない。ここで止まってしまう方は少なくありません。
つまずきの多くは、プロンプトを「一度で書き上げる文章」として捉えているところから生まれています。実務で機能しているプロンプトは、たいてい一発で書かれたものではありません。決めて、並べて、試して直して、残す。作業を工程に分けて組み立てられています。
本記事では、AIを組み込んだ記事制作を日常的に行っている制作会社の立場から、プロンプトを作る4つの工程を順に説明します。あわせて、目的別の型の使い分け、出力がずれたときに直す場所の見分け方、AI自身にプロンプトを書かせる方法までを扱います。
- プロンプトを作る4つの工程と、それぞれで決めること
- 借りてきたテンプレートが自分の業務では効かない理由
- 深津式やゴールシークなど代表的な型の違いと、選ぶ基準
- 出力がずれたとき、どこを直すといちばん早く直るか
- 作ったプロンプトを、翌週も同じ品質で使える形に残す条件
プロンプトの作り方は4つの工程に分けると迷わない
同じ生成AIに、同じような依頼をしているのに、返ってくる答えの質が人によって違う。この差はモデルの性能ではなく、指示文に含まれている条件の数で生まれています。生成AIは学習した文章をもとに、次に来る可能性の高い言葉を選び続けて回答を組み立てます。条件が少なければ、選ばれるのは誰にとっても無難な言葉でしょう。
だからといって、条件を思いつくまま書き足していけばよいわけでもありません。長く書いたのに精度が上がらないプロンプトには、条件どうしが矛盾していたり、材料と指示が混ざって読み取れなくなっていたりする例が多く見られます。書きながら考えると、こうした崩れに自分で気づけません。
そこで、作る作業を4つに分けます。決める、並べる、試して直す、残す。どこでつまずいたのかが分かれば、直す場所も絞れるようになります。

工程に分けると、もうひとつ良いことがあります。3つめの「試して直す」から2つめへ戻るのが正常な動きだと分かるため、一度で決まらないことに落胆しなくなります。
成果物の用途と読み手、人間が決めるべき判断、渡せる材料、出力の形。この4つを、書き始める前に自分の側で確定させます。
決めた内容を、前提・材料・指示・条件の4ブロックに置きます。順番と区切りをそろえておくと、抜けが目で見つかります。
1回目の出力を読み、ずれた箇所を1つに絞って、対応する場所だけを直します。全文の書き直しはしません。
使えた形を保存し、次回は材料だけ差し替えて使います。ここまでやって、はじめてプロンプトを作ったといえます。
とはいえ、すべての依頼をこの手順で作る必要はありません。年に1回しか発生しない調べ物であれば、会話の中で追加質問を重ねたほうが早く終わります。テンプレート化する価値があるのは、月に何度も繰り返す業務だけです。
プロンプトを整える技術は「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれますが、プログラミングの知識は必要ありません。求められるのは、業務の中身を条件として言葉にする力です。その業務をよく知っている人ほど、良いプロンプトを作れる材料をすでに持っているといえます。
関連記事:生成AIのビジネス活用完全ガイド|企業の活用事例と導入ポイントを徹底解説
工程1 書き始める前に4つを自分で決める
プロンプトが埋まらない原因は、文章力ではなく、決まっていない事柄が残っている点にあります。先に4つを確定させてください。
- 用途と読み手(何に使う成果物で、誰が読むのか)
- 人間が持つ判断(主張、方針、やらないこと)
- AIに渡せる材料(既存の資料、仕様、社内の呼び名、過去の文章)
- 出力の形(分量、構造、文体、使ってほしくない表現)
このうち、いちばん見落とされるのが2つめです。「読みやすい社内報を書いて」と頼んだとき、何を読ませたいのか、どんな印象を残したいのかを決めているのは書き手であって、AIではありません。決めていない部分は、AIが世の中の平均で埋めます。返ってきた文章がどこかで読んだことのある内容に見えるのは、その埋め合わせが働いた結果でしょう。
3つめの材料も同じです。AIは自社の商品仕様も、社内で使っている略語も、去年の反応が良かった資料の傾向も知りません。「うちの会社らしく」と頼んで一般的な会社らしさが返ってくるのは、判断の材料が渡っていないためです。
4つを埋めようとして手が止まったとき、足りないのは指示の書き方ではありません。埋められない欄があるなら、足りないのは指示ではなく判断です。その場合はプロンプトから離れ、関係者に確認するほうが早く進みます。
毎回ここまで決めてから書くのは、正直しんどいのですが。
編集部
毎回は決めません。同じ業務なら、決める内容の大半は前回と同じです。変わるのは材料と、その回の目的くらい。だから4工程の最後で保存しておくことに意味があります。
関連記事:システムプロンプトとは?書き方の型と出力がブレるときの直し方
工程2 決めたことを4つのブロックに並べる
決めた内容をそのまま書き並べると、材料と指示が混ざって読み取りにくいプロンプトになります。置き場所を先に決めておくと、後から見直すときの手がかりにもなるでしょう。
- 前提:どんな立場で答えるか、何のために、誰が読むのか
- 材料:参照してほしい資料、仕様、既存の文章
- 指示:やってほしいことを1文で言い切る
- 条件:分量と構造、禁止する表現、出す前の自己点検
実務で効くのは、材料の扱い方です。資料をそのまま貼ると数百字から数千字になり、そのなかに指示が埋もれます。長い材料を渡すときは引用符やコードの記号で囲って区切り、材料の前に短く指示を置いたうえで、材料の後ろにもう一度、出力条件を書き添えてください。材料を長く貼るときは、指示文を材料の前と後ろの両方に置きます。手間は1行ぶんですが、指示の取りこぼしがはっきり減ります。

条件のブロックに置く自己点検は、効き目のわりに知られていません。「出力する前に、上の条件をすべて満たしているか確認し、満たしていなければ書き直してから出してください」と一文添えるだけで、文字数超過や見出し構成の崩れはかなり減ります。
実際の書き分けを見てみましょう。よくある依頼文はこの一行です。
展示会の案内文を書いて。同じ依頼を4ブロックに並べ直すと、次のようになります。
あなたは製造業向けの販促文を担当するコピーライターです。
目的は、既存取引先に展示会へ足を運んでもらうことです。
読み手は工場の生産管理担当者で、導入の判断はしますが技術者ではありません。
以下の【材料】をもとに、メールで送る案内文の本文を作ってください。
【材料】
"""
(展示会の日時と会場、出展する製品名、今回の目玉となる展示内容、
昨年の来場者からの反応をここに貼る)
"""
出力条件
・400字前後、冒頭に来場のメリットを1文で置く
・見出しは付けず、段落は3つ
・禁止:革新的、業界初など根拠を示せない形容
・出力前に文字数と禁止表現を点検し、外れていれば直してから出す長く見えるかもしれません。ただ、この数行を書く時間と、返ってきた文章を読んで指示を出し直す往復の時間を比べると、前者のほうが短く済みます。
関連記事:AIプロンプトの書き方を基礎から解説|精度を上げる5つの要素と目的別の例文
目的別に型を使い分ける
プロンプトの型として名前がついているものは、4ブロックの並べ方を用途に寄せた変形だと捉えると理解しやすくなります。代表的な4つを比べてみましょう。
| 書き方の特徴 | 向いている場面 | 準備の重さ | |
|---|---|---|---|
| 深津式 | 命令書、制約条件、入力文、出力形式を見出しで区切る | 作りたい成果物が決まっている | 中 |
| ゴールシーク | 目標だけ伝え、必要な条件をAIに質問させて詰める | 前提が固まっていない、要件を洗い出したい | 軽 |
| 例示(Few-shot) | 入力と出力の組を2つか3つ見せてから本題を渡す | 文体や書式をそろえたい、分類させたい | 重 |
| 段階分割 | 調査、構成、執筆のように工程を分けて順に渡す | 長い成果物、途中で方向を確認したい | 中 |
深津式は、日本で最も広く使われている型でしょう。見出しで区切るため、どこに何を書くか迷わず、他の人が読んでも直しやすいという利点があります。作りたいものが決まっているなら、まずここから始めるのが無難です。
一方、ゴールシークは書き手の準備が軽くて済みます。「この目標を達成するために必要な情報を、私に質問してください」と伝えると、AIが不足している条件を聞いてきます。工程1で欄が埋まらなかったときの、埋め方の相談相手として使うと有効でしょう。
例示は準備の手間が最も重いものの、効果が読みやすい型です。文体や書式の要求は、説明を10行足すより、望ましい出力を1つ貼るほうが早く伝わります。過去に社内で評価された文章が手元にあるなら、それを例として渡してみてください。
なお、ツールごとの得意不得意や推奨される書き方は、提供元が公式の手引きとして公開しています。個別のテクニックを追うより、一次情報にあたるほうが確実です。

※ 出典:OpenAI「Prompt engineering」
工程3 ずれた場所を切り分けて直す
1回目の出力を見て、なんとなく物足りないから書き直す。この進め方が、いちばん時間を使います。読むときは良し悪しで評価せず、どの種類のずれが起きたのかを1つに絞ってください。種類ごとに、直すべき場所は決まっています。
出力に現れた症状 | 起きている原因 | 直すブロック |
|---|---|---|
一般論に寄る、どこかで読んだ内容になる | 自社の材料が渡っていない | 材料 |
事実が怪しい、存在しない数値が入る | AIが知らない情報を推測で埋めた | 材料と条件 |
文字数や構成が指定どおりにならない | 条件が判定できる形になっていない | 条件 |
文体やトーンが合わない | 望ましい形を説明だけで伝えている | 材料(例示を追加) |
話が長く、要点がぼやける | 1回の依頼に工程を詰め込みすぎ | 指示(分割する) |
同じ指示なのに毎回結果が違う | 出力の形が緩く指定されている | 条件 |
表のとおり、多くのずれは材料と条件の不足で起きています。言い回しを変えて投げ直しても直らないのは、原因が言葉づかいの側にないためです。全文を書き直す前に、ずれた種類を1つに絞ってください

もうひとつ、精度を測るうえで効く工夫があります。1案だけ出させると、良いのか悪いのか判断する基準がありません。同じプロンプトで2案から3案を出させ、並べて比べてみてください。どれも同じように物足りないなら原因はプロンプトの側にあり、1つだけ良いものが混じるなら条件の指定が緩いと判断できます。
プロンプトをどれだけ整えても、出力に含まれる内容の正しさは保証されません。数値、固有名詞、法令や制度に関する記述は、公開前に一次情報で確認する工程を人間の側に残してください。作り方を磨くことと、事実確認を省くことは別の話です。
自分ひとりで直せるようになったあと、次に出てくるのは「同じことをメンバー全員ができるか」という問題でしょう。
プロンプトの直し方が、担当者ひとりの技能で止まっていませんか
ずれの切り分けは、慣れれば数分で終わります。難しいのはその先でしょう。業務ごとにどの条件を決めておくべきかを整理し、メンバーが同じ判断をできる状態にするには、個人の慣れとは別の手当てが要ります。Writers-hubでは、業務ごとのプロンプト設計から社内での定着までを伴走で支援しています。
工程4 次に使える形にして残す
ここまでの3工程で出力が安定したなら、最後に保存します。ただし、テキストファイルへ貼り付けて終わりにすると、数週間後には誰も開かなくなるでしょう。使われ続けるプロンプトには、いくつか共通する条件があります。
- ツール別ではなく、業務の工程名で保存する(構成案づくり用、議事録要約用など)
- 差し替える箇所を【 】で囲い、埋め忘れが目で見えるようにする
- 改良版としてコピーを増やさず、1本を直し続ける
- 最後に使った日付を書き添える
1つめの保存単位は、意外と成否を分けます。「ChatGPT用プロンプト集」という名前でまとめてしまうと、業務中に思い出せません。作業の名前で保存しておけば、その作業に入った瞬間に開かれます。
4つめの日付は、モデルの入れ替わりに備えるためです。生成AIは更新のたびに得意な指示の書き方が変わり、以前は必要だった細かい指定が不要になったり、逆に効かなくなったりします。半年前に作ったまま使い続けているプロンプトが急に振るわなくなったとき、いつ作ったものかが分かれば原因を切り分けられるでしょう。
保存の判断は頻度で決めてください。月に1回も使わない依頼をテンプレート化しても、次に開くころには前提が変わっています。まずは週に何度も発生している作業を1つ選び、そこだけ整えるほうが確実に効きます。
繰り返しの多い業務ほど、プロンプトを整える効果は大きくなります。裏を返せば、毎回同じ指示を打ち直している作業が残っているなら、そこはまだ手作業のままだといえるでしょう。
毎回同じ指示を打ち直している作業が、まだ社内に残っていませんか
プロンプトの保存は入り口で、その先には、決まった手順をAIに任せて人が確認だけ行う形が控えています。Writers-hubでは、繰り返し発生している業務を洗い出し、どこから自動化すると効果が出るかの設計から支援しています。
プロンプトを作るプロンプトはどこまで使えるか
「プロンプトを作るプロンプト」という言い方で、AI自身に指示文を書かせる方法が知られています。ゼロから書くのが負担なら、下書きを作らせるのは合理的な選択でしょう。ただし、任せきりにすると別の問題が出てきます。
- 自分では思いつかなかった条件を、質問の形で提示してくれる
- 白紙から書き出す負担が減り、着手が早くなる
- 条件の書き方や語彙の選び方を、実例として学べる
- 自社の材料は結局こちらが渡すしかなく、そこは省けない
- 出力が長くなりがちで、条件どうしが矛盾していても気づきにくい
- なぜその指示が必要かの理由が残らず、後から直せなくなる
実際に使うときは、次のように頼むと扱いやすくなります。
これから、私が生成AIに出す指示文を一緒に作ってください。
まず、私がやりたいことをうかがいます。
私がやりたいこと:(ここに1文で書く)
不足している条件があれば、一度に3つまで質問してください。
私が答えたら、質問を繰り返し、必要な条件がそろった時点で
前提・材料・指示・条件の4つに分けた指示文を出力してください。
説明は不要です。指示文だけを出してください。質問を一度に3つまでと制限しているのは、10個まとめて聞かれると答える気力が続かないためです。作らせたあとは、必ず自分で読んで削ってください。AIが書いたプロンプトには、あってもなくても変わらない条件が混ざっています。
AIに作らせたプロンプトのほうが、自分で書いたものより整って見えます。それでも自分で書く意味はありますか。
編集部
整って見えるのと、効くのは別です。自分で一度組み立てておくと、出力がずれたときにどこを触ればよいか分かります。作らせるのは下書きまで、削るのは自分。この分担がいちばん早いと感じています。
プロンプトの作り方についてよくある質問
現場で受けることの多い質問を、4つにまとめます。
長さの目安はありません。判断に必要な条件が入っていれば短くても構いませんし、材料が多い業務なら自然と長くなるでしょう。避けたいのは、不安から似た指示を重ねて書くことです。同じことを別の言い方で二度書くと、条件が矛盾して精度が落ちる場合があります。
生成AIは更新のたびに挙動が変わるため、モデル側の変化が原因である場合があります。まず、材料と条件を変えずに同じ指示を投げ直し、出力の傾向を確かめてください。細かい言い回しの指定を外すと戻ることもあります。プロンプトに最後に使った日付を残しておくと、切り分けが早くなります。
今週すでにAIへ投げた依頼のうち、思ったものが返ってこなかったものを1つ選び、前提・材料・指示・条件の4ブロックに並べ直してみてください。新しい業務で試すより、結果を知っている依頼で比べるほうが、どの条件が効いたのか判断できます。
利用しているサービスの契約形態と設定によって扱いが変わるため、一律には判断できません。入力内容が学習に使われるかどうかの設定、法人向けプランの有無、社内で定めた機密区分の3点を確認してください。判断がつかない情報は、固有名詞や数値を伏せた形で渡す方法もあります。
まとめ
プロンプトの作り方は、優れた言い回しを探す作業ではありません。決める、並べる、試して直す、残す。この4工程を回すことで、返ってくる答えのばらつきが小さくなっていきます。
工程1では用途と読み手、人間が持つ判断、渡せる材料、出力の形を確定させます。工程2では前提・材料・指示・条件の4ブロックに並べ、長い材料を挟む形で指示を置いてください。工程3では出力の症状から直すブロックを特定し、全文の書き直しを避けます。工程4で保存して、次回は材料だけ差し替える。
作れたかどうかの判定は、1回の出力の出来では測れません。同じ指示が来週も同じ品質を返すかが、作れたかどうかの目安です。ここを基準に置くと、テクニックを追いかける必要が減り、決めるべきことを決める作業に集中できます。
合同会社Writers-hubは、AIを組み込んだ記事制作を日々行っている制作会社です。業務ごとのプロンプト設計と社内定着の支援、繰り返し業務の自動化設計、AIを活用した記事制作の代行を行っています。どの業務から手をつけるか決めきれない段階でも構いません。
自社のどの業務からAIを入れると効果が出るか、判断がつかないとき
4工程そのものは共通でも、どの業務から着手すると成果が出やすいかは、体制や扱う情報によって変わります。現状をうかがったうえで、着手の順番と進め方をご提案します。








