「集計した結果を設問の順にグラフにして並べれば、報告書はでき上がる」。Googleフォームの回答画面を開くと、設問ごとのグラフが自動で作られています。そのまま資料に貼れば済むと考えて、作業に取りかかる方もいるでしょう。
しかし、調査結果を記事や資料の文章に起こす仕事を重ねてきた弊社の立場から言えるのは、アンケート結果は、決めたいことに答える順に並べ替えると伝わるということです。20問分のグラフを順に見せられた上司は、どの数字で何を決めればよいのかを、自分で探すことになります。
本記事では、回答データの点検から集計、グラフの選び方、報告書の組み立てまで、報告を受ける人が判断に使えるように、制作会社の視点で順を追ってお伝えします。
- 点検の後に集計とグラフ化を行い、数字の書き方をそろえて、決めたかったことの順に報告書へ並べる
- 集計は、全体を数える単純集計と、属性ごとの差を見るクロス集計の2つで多くの場合は足りる
- 円グラフは単一回答の1問だけ、複数回答とクロス集計は棒グラフか帯グラフで見せる
- 割合には回答者数を添え、割合の差は「%」でなく「ポイント」で書く
- 報告書は設問の順でなく、調査で決めたかったことの順に並べ、全設問の結果は後ろに付ける
アンケート結果をまとめる5つの手順
アンケート結果は、回答データの点検、集計、グラフ化、数字の文章化、報告書の組み立ての5つの手順でまとめます。

集計前に行う回答データの点検
回答データの点検とは、集計に使えない回答を見分け、残りの回答を数えられる形にそろえる作業です。国立教育政策研究所の調査ハンドブックでも、回収した調査票の点検と、回答の数値化を集計の前に置いています。
Googleフォームなどで集めた回答は、「スプレッドシートにリンク」で1行1人分の表として取り出せます。紙の調査票なら、1人分の回答を1行に、1つの設問を1列に入力します。複数回答の設問は、選択肢ごとに1列を用意し、選ばれていれば「1」、選ばれていなければ「0」と入力すると、列の合計がそのまま選んだ人数になります。
- 同じ人が2回回答していないか(メールアドレスや氏名が同じ行が2つある)
- 単一回答の設問で、複数の選択肢が選ばれていないか
- 数値の設問で、単位を取り違えた回答(「年齢」に「1980」など)がないか
- 「その他」の記入欄に、既にある選択肢と同じ内容が書かれていないか
- 自由記述の表記ゆれ(「Web」「ウェブ」「WEB」など)がそろっているか
無回答は、集計から外すか「無回答」という選択肢として数えるかを、集計の前に決めておきます。どちらを選んだかで割合の分母が変わるため、報告書の数字が合わなくなる原因になるからです。点検の前に、元のデータを別のシートに残し、集計用のシートで作業すると、判断を誤ったときに元へ戻せます。
アンケート集計の3つの方法
アンケートの集計方法は、単純集計、クロス集計、自由記述の集計の3つです。社内アンケートや顧客満足度調査のまとめであれば、単純集計で全体をつかみ、クロス集計で属性ごとの差を確かめれば、多くの場合は報告に足ります。
単純集計
単純集計は、設問ごとに各選択肢を選んだ人数と割合を数える方法で、GT集計(グランドトータル)とも呼ばれます。Googleフォームの回答画面の「概要」や、Microsoft Formsの回答画面に出るグラフは、単純集計の結果です。Excelでは、COUNTIF関数で選択肢ごとの人数を数えるか、ピボットテーブルで設問を行に置いて件数を出します。
満足度のような5段階の設問は、「満足」と「やや満足」を足した割合もあわせて出しておくと、前回の調査や部署同士を1つの数字で比べられます。足し合わせた数字を使うときは、どの選択肢を足したのかを表の注に書きます。
クロス集計
クロス集計は、年代・部署・利用期間などの属性ごとに、回答の割合を分けて数える方法です。全体では満足度が7割でも、利用して1年未満の人だけが低いといった差は、クロス集計をして初めて見えます。Excelのピボットテーブルでは、属性を行に、設問の選択肢を列に置くと作れます。

クロス集計で気をつけたいのが、回答者が少ない区分の割合です。回答者が5人の区分では、1人の回答が変わるだけで割合が20ポイント動きます。人数が少ない区分は割合を大きく扱わず、人数のまま示すか、隣の区分とまとめて数えます。社内アンケートでは、部署と年代を掛け合わせた区分が数人になると、回答者が特定されるおそれもあります。
自由記述の集計
自由記述の回答は、全件を読んでから内容の近いものをグループに分け、グループごとの件数を数えてまとめます。回答を読んだ後に分類の見出しを作るため、アフターコーディングと呼ばれます。
分類の見出しは、最初から細かく作らず、「料金」「使い方」「サポート対応」のように10個前後に収めると、件数を比べやすくなります。どれにも当てはまらない回答は「その他」に入れます。「その他」の件数が、ほかのどのグループよりも多くなるようなら、見出しを作り直します。国立教育政策研究所の調査ハンドブックは、分類を複数の人が別々に行い、結果を突き合わせる方法を勧めています。
自由記述が300件もあります。ChatGPTに分類を任せてもよいでしょうか?
編集部
分類の下書きを任せるのは有効です。ただ、AIは同じ回答でも指示の書き方で別のグループに入れることがあります。分類の見出しを先に人が決めて渡し、グループごとに数件ずつ原文と照らして、分け方がずれていないかを確かめてから件数を使ってください。社外に出さない回答でも、氏名や社員番号は消してから渡します。
報告書に載せるときは、件数の多いグループから順に並べ、各グループの代表的な回答を1〜2件そのまま引用すると、数字だけでは伝わらない理由が伝わります。
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回答の点検、表記ゆれの統一、自由記述の分類は、同じ形式のアンケートなら毎回ほぼ同じ手順になります。Writers-hubでは、繰り返し発生する集計や分類の作業を、AIと自動化の仕組みで減らす支援をしています。
見やすいグラフの選び方
アンケート結果のグラフは、設問が単一回答か複数回答か、何と何を比べたいかで選びます。国立教育政策研究所の調査ハンドブックは、円グラフを単一回答の結果を1つだけ示すのに適したグラフとしています。帯グラフは単一回答の結果を複数並べて比べるのに、棒グラフは複数回答やクロス集計の結果を示すのに適しているとされています。
| 向いている設問 | 見せたいこと | |
|---|---|---|
| 円グラフ | 単一回答の1問 | 全体の中での構成比 |
| 帯グラフ | 単一回答を属性ごとに比べる | 年代や部署による割合の違い |
| 棒グラフ | 複数回答・クロス集計 | 選ばれた割合の大小 |
| 折れ線グラフ | 同じ設問を繰り返した調査 | 前回からの推移 |
複数回答の設問を円グラフにすると、割合の合計が100%を超えるため、円の大きさと数字が合わなくなります。複数回答は棒グラフにし、選ばれた割合の大きい順に並べます。「その他」「特になし」は、割合にかかわらず最後に置きます。
5段階の満足度を属性ごとに比べるなら、帯グラフで「満足」を左端にそろえると、どの属性で満足が少ないかがひと目でわかります。グラフの横には回答者数を「(n=120)」のように添えます。グラフの題名は、「満足度」のような設問名でなく、「利用1年未満の人は満足の割合が低い」のように、読み取ってほしいことを書くと、グラフを見る前に結論が伝わります。

数字を文章で書くときの4つの決まり
報告書の文章に書く数字は、1つの報告書の中で書き方をそろえます。書き方がそろっていないと、読み手が数字を誤って受け取ったり、報告の場で数字の根拠を聞き返されたりします。
割合に添える回答者数
割合を書くときは、何人のうちの割合なのかを添えます。「満足が60%」だけでは、5人中3人なのか500人中300人なのかがわからず、読み手は数字をどこまで信じてよいか判断できません。本文では「回答者120人のうち、満足と答えた人は60%でした」と書き、グラフや表には「(n=120)」と添えます。
割合の分母の書き分け
割合の分母は、回答者全員なのか、前の設問で「利用している」と答えた人だけなのかを書き分けます。「利用している人に限って聞く設問」の割合を、全員に対する割合のように書くと、実際より多く見えます。無回答を分母に含めたかどうかも、表の注に書いておきます。
割合の差を表すポイント
割合の差は「%」でなく「ポイント」で書きます。40%から50%に増えたときに「10%増えた」と書くと、50%になったのか、40%の1.1倍の44%になったのかが読み手にはわかりません。国立教育政策研究所の調査ハンドブックも、パーセントの差をポイントで呼ぶよう示しています。
端数の丸め方
割合は、小数第1位を四捨五入して整数で書くのが一般的です。四捨五入をすると、選択肢の割合を足して99%や101%になることがありますが、計算の誤りではありません。表の注に「四捨五入のため合計が100%にならない場合があります」と書き添えれば、読み手が合計を確かめて戸惑うことを防げます。

※ 出典:国立教育政策研究所 調査ハンドブック「第VI部 調査結果のまとめ方」
決めたいことの順に並べる報告書の構成
アンケート結果の報告書は、調査票の設問の順でなく、調査で決めたかったことに答える順に並べます。報告を受ける上司や会議の参加者が知りたいのは、「来期もこの研修を続けるか」「どの機能から改善するか」といった判断の材料であり、20問分のグラフを順に見ることではないからです。
とりわけ見落とされがちなのが、全設問のグラフを本文に並べるほど、結論に使う数字が埋もれるという点です。弊社が調査データを記事にするときも、まず「この調査で言えること」を1文で書き、その1文を支える設問だけを本文に使います。残りの設問の単純集計は資料の後ろにまとめ、見たい人が確かめられる形で残します。

- 結論と提案:調査で決めたかったことへの答えと、次に取る行動
- 根拠となる集計結果:結論を支える単純集計とクロス集計のグラフと文章
- 自由記述の主な意見:グループごとの件数と、代表的な回答の引用
- 調査の概要:調査の目的、対象、方法、期間、配布数と回答数
- 全設問の集計結果:本文で使わなかった設問を含む、全設問の単純集計
調査の概要は後ろに置いても、省いてはいけません。国立教育政策研究所の調査ハンドブックは、結果の数字がどの程度信頼できるかは数字を得た方法で決まるため、目的や対象、実施時期、回収率などの方法も報告するよう示しています。報告書の各項目の書き方や考察の深め方は、調査レポートの書き方で詳しく解説しています。
顧客アンケートの結果を、社外向けの記事にも使いたいと考えていませんか
自社で集めたアンケートの結果は、他社にはない数字として、記事や資料の材料になります。社外に出すときは、回答者が特定されない形に集計し直す作業と、調査の概要の書き方が、社内向けの報告とは変わります。Writers-hubでは、調査データを読み解いて記事や資料の文章に仕上げる制作を、編集の体制ごと支援しています。
アンケート結果のまとめ方についてよくある質問
回答数が数十人以下のときは、割合より人数を主に書きます。「12人中9人が満足と回答」と書けば、1人の回答で割合が大きく動くことも読み手に伝わります。クロス集計は、区分ごとの人数がさらに少なくなるため、属性を2〜3の区分にまとめてから行います。
社内の簡単な共有であれば、そのまま使っても問題ありません。ただ、複数回答の設問も選択肢の並び順のまま表示されるため、報告書では割合の大きい順に並べ替え、回答者数と読み取ってほしいことを題名に書いたグラフを作り直すと伝わりやすくなります。
考察は、集計結果から言えることと、その結果を受けて何をするかの提案までを書きます。数字を言い換えただけの文は考察にならないため、「なぜその結果になったのか」を自由記述やクロス集計の結果で裏付けて書きます。
全件を載せる必要はありません。本文にはグループごとの件数と代表的な回答を載せ、全件の一覧は資料の後ろか別のファイルにまとめます。社外に出す場合は、回答者が特定できる記述を削ってから載せます。
まとめ|アンケート結果は決めたいことの順にまとめる
アンケート結果は、回答データの点検、単純集計とクロス集計、設問に合ったグラフ、そろえた数字の書き方を経て、調査で決めたかったことに答える順に報告書へ並べるとまとまります。グラフの数を増やすより、結論を支える数字を選んで先に見せるほうが、報告を受ける人は次の行動を決めやすくなります。
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