「記事作成の事例をいくつか見比べれば、自社でも同じように書けるようになるはずだ」。検索する担当者の多くは、そう考えて他社の完成記事を集めます。事例は出来上がった記事の形で紹介され、その会社がもともと持っていた記事の本数や他サイトからのリンクの多さといった条件までは書かれないため、構成をなぞれば再現できるように見えるからです。ところが何本か読んでも、自社の題材に置き換える段でどこから手を付けるか迷います。
しかし、キーワード選定から納品まで工程ごとに何を決めたかを残す形で記事制作を支援してきた弊社の立場から言えるのは、参考になるのは完成記事ではなく、工程の途中に残る中間成果物だということです。読者の状態をどう書いたか、構成案にどこまで答えを書き切ったか。この二つが見えれば、自社の題材に置き換えて動けます。事例記事(導入事例)のほうも、仕上がりを決めるのは書き手の文章力より取材前の設計です。
本記事では、記事作成の工程ごとに生まれる中間成果物の見本から、事例記事の取材設計、内製と外注の選び分けまで、記事制作会社の視点で順を追ってお伝えします。
- 「記事作成の事例」という言葉が指す二つの意味と、目的別の読み進め方
- 記事作成の工程で生まれる中間成果物(読者定義・構成案・リード文)の見本
- 事例記事(導入事例)で取材前に決めること、質問票の組み立て方
- 他社の事例をそのまま真似すると成果が出ない理由
- 内製・外注・内製化支援の向き不向きと選び方
まずは、記事づくりを任されたばかりの方が抱きやすい疑問から見ていきましょう。
競合の記事をいくつも保存して分析しているのですが、いざ自社で書こうとすると手が止まります。事例の集め方が足りないのでしょうか。
編集部
集める量の問題ではなく、見ている対象がずれている可能性があります。完成記事は判断の結果なので、そこから逆算しても「なぜその見出しにしたのか」は復元できません。参考にすべきは完成品ではなく、構成案や質問票といった工程の途中で作られる中間成果物のほうです。
「記事作成の事例」を探すとき、目的は二つに分かれる
同じ検索語で、まったく違うものを探している人が同居しています。ここを切り分けないまま読み進めると、必要のない情報に時間を使うことになりかねません。自分がどちらなのかを、先に決めておきましょう。

探しているのが「進め方の見本」の場合
自社ブログやオウンドメディアの担当になり、何から手をつければよいのか分からない。このタイプの方が本当に必要としているのは、完成記事ではなく工程です。キーワードを決めてから公開するまでのあいだに、どんな判断が挟まっていて、その判断が紙の上でどんな形になるのか。それが見えれば、自社の題材に置き換えて動けます。本記事の中盤で、工程ごとの中間成果物を見本として示します。
探しているのが「事例記事(導入事例)の作り方」の場合
BtoBの商材を扱っていて、顧客に取材して導入事例を出したい。あるいは制作会社から「事例記事を作りましょう」と提案されたが、中身のイメージが湧かない。このタイプの方に必要なのは、取材前に何を決めるかという設計の話です。文章のうまさよりも、聞く順番と聞く内容で仕上がりが決まります。
どちらの目的にも共通するのは、記事の良し悪しが執筆そのものより前の段階で決まるという点です。書き始めてから悩んでいる時間が長い記事は、たいてい準備の不足を執筆で埋めようとしています。
関連記事:SEO記事の書き方完全ガイド|上位表示を実現する18のテクニックと対策
記事作成の工程で、実際に生まれるもの
ここからは前者、記事づくりの進め方を見ていきます。制作の現場では、記事は一気に書き下ろされるのではなく、いくつかの中間成果物を経由して完成します。工程を順に追いましょう。
「誰が」ではなく「どんな状況で検索したか」を文章にします。属性ではなく状況を書くのがコツです。
真似るためではなく、読者がすでに知っている前提を把握するために見ます。全ページ共通の論点は前提知識です。
見出しの一覧ではなく、各見出しで答える内容まで書き切ります。ここが記事作成でもっとも時間を使う工程です。
構成案が正しければ、執筆は埋める作業に近づきます。書きながら構成を変えたくなったら、構成案に戻ります。
最初に書いたリード文は仮です。本文が固まってから、実際の中身に合わせて書き直します。
公開は終点ではなく測定の開始点。どこで読者が離脱したかを見て、その直前の段落を疑います。
工程の名前だけを並べても実感は湧きにくいため、それぞれで何が紙の上に残るのかを見ていきます。
読者の状態は、属性ではなく状況で書く
「30代の中小企業のマーケティング担当者」という書き方をよく見かけますが、これでは執筆の判断材料になりません。年齢や役職からは、その人が何を知っていて何を知らないかが導けないためです。
- 惜しい書き方 … 30代・中小企業・Web担当・SEOに関心あり
- 使える書き方 … 上司から「ブログで問い合わせを増やせ」と言われ、社内に書ける人がおらず、まず何本くらい必要なのかも分からないまま外注先を探し始めた段階
- 判断に効く点 … 本数の目安と外注費の話を求めている/SEOの用語解説は不要
状況で書けていれば、「この読者はキーワード選定の定義から知りたいだろうか」という迷いがその場で解けます。読者定義は記事のためではなく、執筆中の判断を速くするために作るもの、と考えると腑に落ちるはずです。
構成案は「見出しの一覧」ではなく「答えの一覧」
記事作成の事例として見本を求められたとき、私たちが最初に見せるのは完成記事ではなく構成案です。構成案は見出しではなく、答えを書き切るものという一点で、記事の質はほとんど決まってしまいます。
- 粗い構成案 … H2「記事作成の手順」/H3「キーワード選定」「構成案作成」「執筆」
- 使える構成案 … H2「記事作成の手順」(この記事では6工程とし、時間配分は構成案に半分と明記する)/H3「キーワード選定」(ツールの使い方は書かず、選定の判断基準3つに絞る。競合分析との順序を先に示す)
粗いほうの構成案でも記事は書けます。ただし書き手が変わるたびに中身が変わり、レビューでは「もっと具体的に」という抽象的な指摘しか出せません。答えまで書いた構成案があれば、レビューは「ここは3つと決めたのに2つしかない」という事実の確認に変わります。外注時に修正の往復が減るのは、文章力の高いライターを引いたときではなく、構成案の粒度を上げたときです。
リード文は、本文が固まってから作り直す
リード文を最初に完成させようとすると、たいてい手が止まります。まだ本文で何を書くか決まっていないのだから当然でしょう。実務では仮のリードで書き始め、本文の完成後にもう一度作り直します。
リード文でよくある失敗は、記事の要約になってしまうことです。要約を読んだ読者は本文を読む理由を失います。リード文の役割は要約ではなく、「この記事は自分の状況に向けて書かれている」と読者に判断してもらうことにあります。
具体的には、読者が置かれている状況を一文で描写し、その状況で起きがちなつまずきを一文添え、記事で扱う範囲を宣言する。この三段でおおむね機能します。本記事の冒頭も同じ組み立てです。

関連記事:ブログ記事作成の手順5工程|構成の作り方と読まれる書き方のコツ
事例記事(導入事例)を作るときに決めること
ここからは後者、事例記事そのものの作り方です。導入事例は、書き手の文章力よりも取材設計で仕上がりが決まるコンテンツになります。取材当日に頑張って挽回できる範囲は、思っているより狭いのです。
取材前に決める三つ
依頼を受けてまず確認するのは、次の三点です。ここが曖昧なまま取材に入ると、当たり障りのない感想文になります。
- この事例を読ませたい相手は、どの検討段階の人か(比較検討中なのか、社内説得の材料が欲しいのか)
- 記事を読んだあと、その人に何をしてほしいか(資料請求なのか、営業からの連絡を受け入れてもらうことなのか)
- 掲載可否のライン(社名・部署名・数字・写真のどこまで出せるか、確認は誰が行うか)
三つ目は事務的に見えますが、後工程の手戻りを最も減らします。数字が出せないと公開直前に判明して構成ごと組み直す、という事故は珍しくありません。
質問票は時系列で組み、感情の言葉を拾う
質問票の作り方には型があります。導入前・検討中・導入後という時系列に沿って並べ、各フェーズで「事実」と「そのときどう感じたか」の両方を聞く形です。事実だけを集めると製品説明になり、感想だけを集めると根拠のない称賛になります。
とくに重要なのが導入前の話です。導入前の困りごとは、当時の言葉のまま残す。取材相手はすでに課題を解決しているため、過去の困りごとを整理された言葉で語りがちですが、読者は整理される前の状態にいます。「毎週金曜の夕方に手作業で集計していた」という具体まで下ろせると、同じ状況の読者が自分のこととして読めるようになるでしょう。
- 「業務効率が課題でした」で止め、何にどれだけ時間がかかっていたかを聞かない
- 選定理由を「御社を選んだ決め手は」とだけ聞き、比較した他社や見送った理由に触れない
- 成果を「効率化できました」でまとめ、何が何に変わったのかを数えない
- 導入時のつまずきを一切書かず、順風満帆な物語にしてしまう
四つ目は意見が分かれるところですが、少しの苦労を書いたほうが読者の信頼は高まります。もちろん取材先の同意が前提であり、そこを取り付けるのも制作側の仕事です。
成果の数字が出せないときの書き方
BtoBの事例では、数字の公開が通らないことがよくあります。そのときに「効率化されました」で逃げると、記事の説得力は一気に落ちてしまう。代わりに使えるのは、比率への置き換え(3分の1に短縮)、作業単位での記述(月次の集計が1営業日から2時間に)、そして関係者の増減(3人がかりの確認が担当1人で完結)といった表現です。
数字が出ない事例でも、行動の変化は書けます。「以前は週次のミーティングで進捗を口頭共有していたが、いまは事前に各自が確認して当日は判断だけを行う」といった記述は、金額や比率が出せなくても読者に変化を伝えられます。
ここまでの内容を、取材で聞く順番として一枚に整理すると次のようになります。質問票を作るときは、この三段のどこを聞いているのかを常に意識しておくと、話が脱線しても戻ってこられます。

事例記事にせよ通常の記事にせよ、時間がかかるのは執筆の前後にある設計と確認の工程です。ここを社内だけで回そうとして止まっているなら、外部の手を借りる選択肢もあります。
構成案の粒度を上げたいが、社内に時間が取れない
記事の質を決めるのは執筆より前の工程だと分かっていても、読者定義と構成案に毎回半日かけるのは現実的ではありません。Writers-hubでは、構成案の作成から納品までを一貫して引き受けています。まずは1本だけ試したい、という相談も歓迎です。
関連記事:事例記事の書き方|導入事例の構成の型と取材で聞くべきこと
他社の事例をそのまま真似ると成果が出ない理由
ここで、冒頭の話に戻ります。事例を集めても記事が書けるようにならないのは、集め方が足りないからではありません。事例には条件が写っていないためです。
同じ構成で書かれた記事でも、サイトの被リンクの量、既存記事の本数、指名検索の多さによって順位は変わります。条件が違う事例は、そのままでは再現できないという当たり前の事実が、成功例を並べた記事では省略されがちなのです。「この構成で1位を取りました」という話には、その企業がすでに持っていた土台が含まれていません。
では、他社の記事を見る意味はないのかというと、そんなことはないでしょう。見る対象を変えればよいだけです。
- 取り出せる … 読者がその分野で当然知っている前提の範囲、見出しで使われている言葉遣い、記事に載せられている情報の型(表・手順・比較)
- 取り出せない … その順位を支えているサイト側の条件、社内でどれだけ工数をかけたか、公開後に何回直したか
前者は自社に移植できます。とくに「言葉遣い」は軽視されがちですが、業界で通じる語と一般語のどちらを使うかは、上位ページを横断して見るとかなり明確に傾向が出ます。専門語を避けすぎて読者に軽く見られる記事も、専門語を並べて読み手を選びすぎる記事も、どちらも現場ではよく起きるつまずきです。
記事作成の体制は、内製・外注・内製化支援から選ぶ
工程と型が分かっても、実行する人が必要です。ここは正解がひとつではなく、社内の状況によって答えが変わります。
| 完全に内製する | 記事制作会社へ外注する | 内製化の支援を受ける | |
|---|---|---|---|
| 立ち上がりの速さ | △ | ◎ | ○ |
| 品質の安定 | △ | ◎ | ○ |
| 社内にノウハウが残る | ◎ | △ | ◎ |
| 月あたりの本数を増やせる | × | ◎ | ○ |
| 担当者の負荷 | × | ◎ | △ |
| 向いている状況 | 書ける人が社内におり、本数が少なくてよい | 早く本数を積みたい、社内に書き手がいない | 将来は自社で回したいが、いまは型がない |
多くの企業にとって現実的なのは、外注で本数と型を先に作り、並行して社内へ移すという順序でしょう。最初から内製にこだわると、担当者一人に負荷が集まり、記事が止まったときに再開できなくなります。外注で減るのは執筆の工数だけではありません。外注で減るのは工数より、判断の往復です。何を書くかで社内が止まる時間がなくなることの効果は、見積書には表れにくいものの、実務上は大きいと感じています。
なお、生成AIを使った記事作成の事例も増えていますが、AIが担えるのは主に工程4の執筆と工程2の洗い出しです。読者の状態を決めることと、構成案で答えを決めることは、いまのところ人の判断が要ります。Googleも、制作方法ではなくコンテンツの品質を評価するという立場を示しています。

※ 出典 … Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」
本数は積みたいが、いずれは自社で書けるようにしたい
外注と内製は二者択一ではありません。制作を任せながら、構成案の作り方やレビュー基準を社内へ移していく進め方があります。いまの体制のどこから移せるか、記事の本数と担当者の状況に合わせて設計します。
記事作成の事例について、よくある質問
制作会社の実績ページや、クラウドソーシングのポートフォリオで完成記事は見られます。ただし完成記事からは工程が読み取れないため、実際に依頼を検討する段階では、制作会社に構成案のサンプルを見せてもらうほうが判断材料になります。構成案の粒度は、その会社の制作品質をよく表します。
別物として設計します。お客様の声は感想が中心の短い素材で、事例記事は導入前の状況から選定理由、導入後の変化までを追う読み物です。検討段階の読者を後押しするのは後者で、比較検討中の相手に社内説得の材料を渡す役割を持ちます。
取材が理想ですが、既存の商談メモやサポート履歴を素材にした「利用シーンの紹介」という形なら、取材なしでも作れます。その場合は事実と推測を混ぜず、社名を伏せた一般化した記述にとどめる必要があります。実在しない導入企業を作って書くことは、当然ながら避けてください。
社内に型がない状態からだと、キーワード選定と読者定義に半日、構成案に半日、執筆と推敲に1日から2日というのが目安になります。2本目以降は構成案の作り方が固まるぶん短くなり、本数を重ねるほど差が開きます。最初の1本を急がないほうが、結果的に早く進みます。
まとめ
記事作成の事例を探すとき、目的は「進め方を知りたい」と「事例記事を作りたい」に分かれます。前者であれば、見るべきは完成記事ではなく、読者の状態・構成案・リード文といった工程の中間成果物。後者であれば、取材前に読者の検討段階と掲載可否のラインを決め、質問票を時系列で組むところから始まります。
そして、どちらにも共通する落とし穴が、他社の事例をそのまま持ち込むことでした。事例には条件が写っていないため、取り出せるのは言葉遣いや情報の型までです。自社の土台に合わせて組み直す前提で見ていきましょう。
合同会社Writers-hubでは、キーワード選定と構成案の設計から記事の納品まで、工程ごとに何を決めたかを残す形で制作を進めています。事例記事の取材設計や、外注しながら社内へ型を移す進め方についても相談を受けています。
自社の記事作成を、どの工程から手をつけるか決めたい
本数を増やしたいのか、品質を安定させたいのか、社内で書ける体制を作りたいのか。目的によって最初に着手すべき工程は変わります。いまの記事本数と社内の体制をお聞きしたうえで、進め方の案をお出しします。








