「新商品が既存の商品とカニバっているなら、どちらかの販売を止めるしかなさそう」。会議でカニバリという言葉が出ると、止める商品を選ぶ話だと受け取る方もいるでしょう。カニバリの語源が「共食い」を意味する英語なので、起きた時点で失敗だと考えられているためです。
しかし、これまで多くの企業のサイトで、順位を奪い合う記事を整理してきた弊社の立場から言えるのは、カニバリの良し悪しは、奪い合いの有無ではなく自社全体の合計で決まるということです。2本の記事が順位を奪い合っていても、2本のクリック数の合計が1本だけだったときより増えていれば、どちらかを消す必要はありません。
本記事では、カニバリの意味と使い方から、良し悪しを見分けるカニバリ率と粗利の計算、SEOで記事どうしが奪い合っているときの確かめ方まで、検索からの集客を支援する側の目線で順を追ってお伝えします。
- カニバリはカニバリゼーション(cannibalization)の略で、同じ会社の商品や店舗、Webページどうしが同じ客を奪い合うこと
- カニバリが問題になるのは、奪われた分を差し引いた自社全体の売上や粗利が減るとき
- カニバリ率は「既存商品の売上の減少分÷新商品の売上×100」で計算し、合計は売上だけでなく粗利でも確かめる
- SEOのカニバリは、サーチコンソールで1つの検索キーワードに自社の複数のページが入れ替わって表示されているかで確かめる
カニバリの意味と語源
カニバリとは、カニバリゼーション(cannibalization)の略で、同じ会社の商品や店舗、Webページどうしが同じ客を奪い合うことです。新しく出した商品が売れた分だけ、同じ会社の既存の商品の売上が減るような状態を指します。
カニバリゼーションは、共食いを意味するカニバリズム(cannibalism)と同じ語から生まれた英語です。自社の商品が自社の商品の客を奪う様子を、共食いにたとえた言葉です。
「カニバる」の使い方と言い換え
「カニバる」は、カニバリを動詞にした会話での言い方で、「新商品が既存品とカニバる」「2つの記事がカニバっている」のように使います。
言い方 | 使う場面 |
|---|---|
カニバリ、カニバる | 社内の会議やチャット |
カニバリゼーション | 報告書や社外向けの資料 |
共食い、自社競合、食い合い | 用語に慣れていない人への説明 |
カニバリが起きる3つの場面
カニバリが起きるのは、主に商品どうし、店舗どうし、Webページどうしの3つの場面です。どの場面でも、同じ客が同じ用途で選ぶものを同じ会社が2つ以上出していることが原因です。

商品どうしのカニバリ
商品どうしのカニバリは、新しく出した商品が、同じ会社の既存の商品と客層や用途、価格帯で重なるときに起きます。たとえば既存の飲料と味も値段も近い新商品を同じ棚に並べると、新商品の売上の一部は、それまで既存の飲料を買っていた客の買い替えです。
店舗どうしのカニバリ
店舗どうしのカニバリは、同じチェーンの店舗を近くに出し、商圏(客が来る範囲)が重なったときに起きます。新しい店舗の売上が伸びても、近くの既存店の客が移っただけなら、チェーン全体の売上は店舗を増やしたほどには増えません。
実際の例では、ペッパーフードサービスが2019年11月14日、いきなり!ステーキの44店舗を退店すると発表しました。同じ年の出店計画を210店から115店に減らした後も、自社ブランド同士の競合で既存店の売上が落ち込み続けたことを理由に挙げています。
※ 出典:流通ニュース「いきなりステーキ/44店閉店「減損損失」16億8500万円計上」(2019年11月14日)
Webページどうしのカニバリ
Webページどうしのカニバリは、同じサイトの中に同じ検索キーワードに答えるページが2つ以上あり、Googleの検索結果で順位を奪い合う状態です。SEOの分野では「キーワードカニバリゼーション」とも呼ばれます。
カニバリは悪いことか
カニバリが悪いかどうかは、自社全体の合計が増えたか減ったかで決まります。既存の商品の売上が減っていても、新しい商品が新しい客から得た売上がそれを上回れば、会社全体の売上は増えています。反対に、新しい商品の客のほとんどが既存の商品からの乗り換えなら、商品を増やした分の開発費や販促費だけが残るのです。
カニバリ率の計算方法
カニバリ率は、新しい商品の売上のうち既存の商品から奪った分が占める割合で、カニバリ率(%)=既存商品の売上の減少分÷新商品の売上×100で計算します。たとえば新商品の売上が1000万円で、同じ期間に既存商品の売上が300万円減ったなら、カニバリ率は30%です。

既存商品の売上の減少には、季節の変動や競合の値下げなど、新商品と関係のない原因も混ざります。前の年の同じ時期や、新商品を置いていない店舗の売上と比べ、新商品が原因の減少分だけを数えてください。
売上でなく粗利の合計で見る理由
合計は、売上だけでなく粗利(売上から原価を引いた利益)でも確かめます。新しい商品が既存の商品より安く、1個あたりの粗利が小さい場合、売上の合計が増えていても粗利の合計は減ることがあるからです。
たとえば客1人が1個ずつ買うとして、1個あたりの粗利が500円の既存商品から、粗利200円の廉価版へ客が100人移ると、粗利は3万円減ります。廉価版で新しい客を150人以上増やさない限り、粗利の合計は元に戻りません。
新商品を出してから、既存商品の売上が2割ほど減りました。新商品の販売をやめたほうがよいでしょうか。
編集部
既存商品の減少だけを見ると、やめたくなりますね。先に、新商品と既存商品を足した粗利の合計を、発売前の同じ時期と比べてください。合計が増えていれば、やめる理由にはなりません。合計が減っているなら、新商品の対象を既存商品と重ならない客層や用途に変えられるかを考えます。
あえてカニバリを起こす戦略
カニバリは、既存の商品の売上が減ると分かっていても、あえて起こすことがあります。自社が新しい商品を出さなければ、同じ客を他社の新しい商品に取られると見込めるときです。
Appleは2007年に音楽を聴く機能を備えたiPhoneを発売し、自社のiPodと用途が重なる商品を自ら出しました。2022年5月には、音楽を持ち歩く体験はiPhoneやApple Watchなどに引き継がれたとして、iPod touchを在庫限りで販売を終えると発表しています。iPodの客がiPhoneに移っても、売上は同じ会社の中に残るのです。

※ 出典:Apple Newsroom「The music lives on」(2022年5月10日)
商品や店舗のカニバリを防ぐ方法
商品や店舗のカニバリは、出す前に、既存の商品や店舗と重なる点を4つの項目で確かめると減らせます。重なる項目が多いほど、カニバリ率が大きくなるためです。
- 客層:新しい商品を買う人の年代や職業、買う目的が、既存の商品と同じでないか
- 用途:同じ場面で、どちらか一方しか使われない商品になっていないか
- 価格帯:既存の商品と値段が近く、安いほうへ乗り換えるだけにならないか
- 商圏:新しい店舗から既存店までが近く、客が来る範囲が重なっていないか
重なる項目が見つかったら、新しい商品の対象を既存の商品が取れていない客層に変えるか、価格や容量で違いをはっきりさせます。重なりが残る場合は、テスト販売や一部の地域での先行出店でカニバリ率を測ってから、全体に広げるかを決めましょう。
SEOでのカニバリの見分け方と直し方
SEOでのカニバリは、Googleサーチコンソールで、1つのクエリ(検索された語句)に対して自社の複数のページが表示されているかを見て確かめます。複数のページが表示されているだけなら、直す必要はありません。直すのは、ページが入れ替わって表示され、クリック数の合計が減っているときです。

サーチコンソールでの確かめ方
サーチコンソールでは、検索パフォーマンスのレポートをクエリ1つに絞り込み、表示されたページの一覧を見て確かめます。
サーチコンソールの左のメニューから「検索パフォーマンス」を開き、期間が「過去3か月間」になっているかを確かめます。期間を短くすると、ページが入れ替わって表示されている様子が見えにくくなるためです。
グラフの上の「+新規」から、クエリで絞り込む条件を追加し、カニバリを疑うキーワードを入れます。
表の上の「ページ」タブに切り替え、表示回数のあるページが2つ以上あるかを確かめます。2つ以上あれば、ページごとのクリック数と掲載順位を比べてください。
ページを1つずつ絞り込みに加え、グラフで表示回数が出ている日を見ます。2つのページの表示が日によって交互になっていれば、検索結果で順位を奪い合っている状態です。
まとめるか分けるかの判断
カニバリが起きている2つのページは、答えている疑問が同じならまとめ、違うなら役割を分けます。答えている疑問が同じかどうかは、それぞれのページが狙うキーワードで検索し、上位10件に同じページが多く並ぶかで見分けます。
2つのページの状態 | 直し方 |
|---|---|
上位10件の顔ぶれが近く、同じ疑問に答えている | 情報を1つのページにまとめ、もう一方のURLから301リダイレクト(古いURLを開いた人を新しいURLへ自動で移す設定)をかける |
上位10件の顔ぶれが違い、別の疑問に答えている | タイトルと見出しで扱う疑問を分け、主に読ませたいページへ内部リンクを集める |
まとめる前に、2つのページのクリック数の合計を、2本目のページを公開する前の3か月と比べてください。合計が増えていれば、2つのページは奪い合うより、検索結果の枠を2つ取れている状態に近いはずです。
統合するときに残すURLの選び方は記事のカニバリゼーション診断と解消方法で、リダイレクトの書き方は301リダイレクトの設定方法で扱っています。
同じキーワードで、自社の記事どうしが入れ替わって表示されていませんか
弊社のSEO対策の支援は、サイトの構造と検索順位の洗い出しから始め、狙うキーワードと施策の優先順位を決める流れです。同じキーワードで表示されている記事があれば、まとめるか役割を分けるかを、クリック数の合計を見ながらご提案します。
カニバリのよくある質問
カニバリという言葉の使い方で迷いやすい点は3つあります。
カニバリは英語でcannibalization(カニバリゼーション)と言い、カニバライゼーションと表記されることもあります。動詞はcannibalize(カニバライズ)で、英語でも自社の商品どうしが売上を奪い合う意味で使う言葉です。
カニバリとカニバリズムは意味が違います。カニバリズムは人が人の肉を食べる風習や動物の共食いを指す言葉で、自社競合の意味はありません。会議や資料で自社の商品どうしの奪い合いを指すときは、カニバリかカニバリゼーションを使います。
他社に客を取られることは、一般的にはカニバリと言いません。カニバリは、同じ会社の商品や店舗、ページどうしの奪い合いに使う言葉です。他社との奪い合いは「競合」や「シェアの奪い合い」と表します。
まとめ|カニバリは起きたかより合計で判断する
カニバリは、同じ会社の商品や店舗、Webページどうしが同じ客を奪い合うことです。カニバリが起きたこと自体より、奪われた分を引いた合計が増えたかを見ます。商品や店舗なら売上と粗利の合計を、記事ならサーチコンソールで検索キーワードごとのクリック数の合計を、カニバリが起きる前と比べるところから始めてください。
私たち合同会社Writers-hubは、SEOのキーワード戦略の設計から記事の制作、公開後の効果測定までを支援する会社です。同じキーワードを狙う記事が増えてきたサイトでは、記事ごとに狙うキーワードを割り当て直すところからご相談いただけます。
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公開している記事の一覧と、検索から増やしたい問い合わせの内容を伺い、同じキーワードを狙っている記事と、まとめるか分けるかの方針をご提案します。相談は無料です。







