「キャッチフレーズは、言葉のセンスがある人でないと作れなさそう」。社内で案を募ると、集まった案は響きや語呂の良さで比べられることになり、言葉のセンスを競う作業に見えるためです。ところが響きで選んだ言葉は、何年か使ううちに事業の中身と合わなくなったり、社員が人に説明するときに別の言い方へ変えたりすることがあります。
しかし、キャッチフレーズは一度目を引けば役目を終える言葉ではなく、名前と一緒に何年もくり返し使う言葉です。弊社はこれまで多くの企業の記事を制作し、サービスの強みを見出しや説明文の短い言葉にまとめてきました。その経験から言えるのは、キャッチフレーズは響きより、何年たっても事実のまま言える言葉で選ぶということです。
本記事では、キャッチコピーとの違いから、作り方の手順、何年も使える1本の選び方、面接で使う自分のキャッチフレーズまで、言葉を扱う制作会社の視点で順を追ってお伝えします。
- 実務で分けるときは、名前と一緒に長くくり返し使う言葉をキャッチフレーズ、広告ごとに替える一行をキャッチコピーと呼ぶ
- キャッチフレーズは、名前を聞いた人に思い出してほしい事実を1つ選び、名前を主語にした一文から縮めて作る
- 価格・順位・「創業50年」のように年ごとに変わる言葉は入れず、変わらない言い方に直す
- 案は、1回聞いた人が翌日に言えるか、他社の名前に替えると通じなくなるかで1本に絞る
- 自分を表すキャッチフレーズは、強み1つと、面接で聞かれても話せる経験1つから作る
キャッチフレーズとキャッチコピーの違い
キャッチフレーズとキャッチコピーを実務で分けるときの違いは、同じ言葉を使い続ける期間です。国語辞典ではどちらも人の注意を引く短い宣伝の言葉と説明されており、区別せずに使っても誤りではありません。
比べる点 | キャッチフレーズ | キャッチコピー |
|---|---|---|
使う期間 | 名前と一緒に、何年も同じ言葉を使う | 広告や季節ごとに書き替える |
置く場所 | ロゴの横、名刺、看板、Webサイトの最初の画面 | 広告、チラシ、商品ページの見出し |
読んだ人にしてほしいこと | 名前と一緒に覚え、次に名前を見たときに思い出す | 広告の続きを読み、買うか問い合わせる |
使い続ける期間が違うと、作るときに確かめることも変わります。何年も使うキャッチフレーズは、事業の中身が変わらない限り事実のままか、名前と一緒に言えるかまで確かめて選びます。
広告やチラシごとに書き替えるキャッチコピーの作り方は、キャッチコピーとは?作り方の手順と名作事例に学ぶ、伝わる言葉の型が参考になるでしょう。
キャッチフレーズの作り方と5つの手順
キャッチフレーズは、名前を聞いた人に思い出してほしい事実を1つ選び、名前を主語にした一文に書いてから、短く縮めて作ります。言い回しから探し始めると、浮かんだ案を響きでしか比べられず、どれを選んでも理由を説明できないためです。

5つの手順のうち時間をかけたいのは、最初に事実を選ぶ手順です。選んだ事実は、後で書くすべての案に入ります。
客や取引先に「なぜうちを選んだのか」を聞き、返ってきた理由の中から、3年後も変わらないものを1つ選びます。1つに絞るのは、事実を2つ入れると一文が長くなり、1回聞いた人が翌日に言えなくなるからです。
社名や店名、商品名を主語にして、選んだ事実を「〇〇は、〜する会社です」の形で一文に書きます。建てた家の点検に毎年訪れる工務店なら、一文は「〇〇工務店は、建てた家を毎年点検しに来る会社です」のようになるでしょう。
一文から名前と事実を表す語を残し、言い回しの型を1つずつ当てて、10〜20の案を書きます。工務店の一文を縮めた案の1つが、「建てた後も、毎年会いに来る。」です。
案のすぐ後に名前を続けて声に出し、つかえる箇所や、名前と音がつながって聞き取りにくい箇所を直します。キャッチフレーズはCMや店頭、電話の応対で、名前と続けて耳から聞かれることがあるためです。
決めた案を検索エンジンで調べ、同業の会社が同じ言葉を使っていないかを確かめます。あわせて、独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営するJ-PlatPatの商標検索で、同じ言葉や似た言葉が登録されていないかを調べます。同じ種類の商品やサービスで他社が登録している言葉を使うと、使用をやめるよう求められるおそれがあるからです。似た登録が見つかったときに使えるかどうかは、弁理士に相談して判断します。
名前を主語にした一文は、完成したキャッチフレーズには出てきませんが、案を比べるときの基準になります。
社内で案を募って、投票で決めるのではいけませんか。
編集部
投票は、最後の2〜3案から選ぶ段階なら使えます。最初から案を募ると、人ごとに選ぶ事実が違うため、票は響きの好みで割れがちです。名前を主語にした一文を先に渡しておけば、集まる案が同じ事実の言い換えになり、どの案が事実を短く言えているかで比べられます。
キャッチフレーズの言い回しの型と実例
キャッチフレーズの言い回しの型は、名前とのつなげ方で分けると、名前を中に入れる、名前の前に置いて続けて言う、対にしてくり返す、読み手の心の声にするの4つです。
型 | 名前と一緒に長く使われている実在の言葉 | 作るときにすること |
|---|---|---|
名前を中に入れる | 「インテル入ってる」(インテル) | 社名や商品名を、一文の中の語として使う |
名前の前に置いて続けて言う | 「お、ねだん以上。」(ニトリ) | 名前の直前に置き、続けて読んで一続きに聞こえる長さにする |
対にしてくり返す | 「やめられない、とまらない」(カルビーのかっぱえびせん) | 同じ語尾の言葉を2つ並べる |
読み手の心の声にする | 「そうだ 京都、行こう。」(JR東海) | 読み手が行動を決める瞬間の言葉を、読み手の口調で書く |
4つの型のどれを使うかは、名前の長さで変わります。名前が短ければ、「インテル入ってる」のように名前を中に入れても、一文は長くなりません。名前が長い会社は、名前の前に置く短い言葉にします。長い名前を中に入れると、声に出したときに途中で息継ぎが要る長さになりやすいからです。
キャッチフレーズを1本に絞る3つの確認
10〜20の案からキャッチフレーズを1本に絞るときは、3年後も事実のままか、1回聞いた人が翌日に言えるか、他社の名前に替えると通じなくなるかの3つを確かめます。

3年後も事実のままか
案が3年後も事実のままかは、年ごとに変わる言葉が入っていないかで確かめます。次の5種類は、入れた時点では事実でも、何年か使ううちに事実でなくなる言葉です。
- 価格:「990円」「業界最安」
- 順位:「地域No.1」「売上第1位」
- 年ごとに増える数字:「創業50年」「累計10万人」
- 時間がたつと古くなる言葉:「新しい」「今話題の」
- 店舗数や商品の数:「全国30店舗」「300種類」
年ごとに変わる言葉が入った案は、外すか、年が変わっても事実のままの言い方に直します。
「創業50年」は強みなので、キャッチフレーズに入れたいのですが。
編集部
創業年で書けば入れられます。「創業50年」は翌年には51年になり、名刺や看板を毎年作り直さなければなりません。「1976年創業」なら何年たっても事実のままで、読んだ人は年数を自分で数えられるでしょう。
1回聞いた人が翌日に言えるか
1回聞いた人が翌日に言えるかは、案を知らない人に名前と続けて1回だけ読み上げ、翌日に「なんて言っていたか」を聞いて確かめます。言えなかった部分は、1回聞いただけでは覚えられなかった部分として、削るか言い換えます。翌日に聞いた言い方が案と違うときは、聞いた言い方のほうが言いやすい形になっていることがあるため、案と並べて比べましょう。
他社の名前に替えると通じなくなるか
他社の名前に替えると通じなくなるかは、案の中の名前、または案のすぐ後に続ける名前を、同業の他社の名前に入れ替えて読んで確かめます。同業のどの会社の名前に付けても通じる言葉は、名前を思い出す手がかりになりません。「お客様第一」「笑顔をお届け」のように多くの会社が使える言葉が残った案は、思い出してほしい事実を選び直し、名前を主語にした一文に入れ直します。
キャッチフレーズを置く場所と表記のそろえ方
決めたキャッチフレーズは、名前が出る場所に、同じ表記のまま名前と並べて置きます。名前と並んでいない場所では、読んだ人がキャッチフレーズと名前を結びつけられないためです。
- ロゴの横か下
- 名刺と会社案内
- 看板や店頭の掲示
- Webサイトの最初の画面
- SNSのプロフィール
- メールの署名
表記は、句読点の有無、漢字とかなの使い分け、改行の位置まで1つに決め、社内で使う人に1枚の資料で渡します。名刺は句点あり、Webサイトは句点なしのように場所ごとに表記が変わると、使う人がそのたびにどちらが正しいかを確かめることになるからです。
Webサイトでは、キャッチフレーズのすぐ下の文に、言葉の根拠を書きます。「建てた後も、毎年会いに来る。」なら、引き渡しから何年目まで、どんな点検をするのかを添えます。キャッチフレーズを見て興味を持った人は、次に言葉の根拠を探すからです。
キャッチフレーズの根拠を、Webサイトの記事で説明できていますか
キャッチフレーズで約束した事実を、点検の記録や客の声として記事にすれば、検索してきた人が根拠を確かめられます。弊社が支援するのは、キーワードの選定から記事の公開まで、御社の事実を記事にして公開し続ける体制づくりです。
自分を表すキャッチフレーズの作り方
自己紹介や面接で使う自分のキャッチフレーズも、伝えたい強みを1つ選び、強みを示す経験を1つ添えてから短く縮めて作ります。面接では、キャッチフレーズを言った後に「なぜそう言えるのか」と経験を聞かれることがあるためです。

経験には、期間や回数、短くした時間などの数字を1つ入れます。数字があれば、面接で聞かれたときに、キャッチフレーズからそのまま経験の説明へ話を進められます。強みごとに、経験と数字を言葉に縮めた例は次のとおりです。
伝えたい強み | 強みを示す経験の例 | キャッチフレーズの例 |
|---|---|---|
段取りを組む | 飲食店のアルバイトで仕込みの手順書を作り、開店前の準備を30分短くした | 準備の30分を生み出す段取り役 |
協調性 | 4人のゼミ発表で意見が割れたとき、全員の案を1枚の表にまとめて結論を出した | 4人の意見を1枚にまとめる調整役 |
継続力 | 大学の4年間、毎朝6時から30分の英語の勉強を続けた | 朝6時の30分を4年続けた継続力 |
行動力 | 部の新入部員が減った年に、自分から説明会を3回開いた | 説明会を3回開いて部員を集めた行動派 |
応募先が求める人物像に合わせて強みを選ぶのはかまいませんが、経験のない強みを書くと、面接で聞かれたときに答えられません。ひねった言い回しや語呂合わせは、面接官が意味を聞き返す手間を増やすため、強みがそのまま伝わる言い方にします。
キャッチフレーズの作り方でよくある質問
キャッチフレーズの字数に決まりはなく、生成AIは案を増やす手順で使え、作り直すのは言葉に書いた事実が変わったときです。
キャッチフレーズの字数に決まりはありません。上限の目安は、名前と続けて声に出したときに、途中で息継ぎをせずに言える長さです。名刺のロゴの横のように幅の狭い場所に置くなら、置き場所の幅で1行に収まる長さにします。
生成AIは、言い回しの型を当てて案を増やす手順で使えます。名前と、思い出してほしい事実を書いた一文を渡し、「名前の前に置く型で10案出してください」のように型を指定して頼むと、事実の入った案が出ます。生成AIの案はすでに使われている言葉に似ることがあるため、他社の使用と商標の確認は省かないでください。
キャッチフレーズを変えるのは、言葉に書いた事実が変わったときです。事業の中心が変わったときや、言葉にしたサービスをやめたときが当たります。変えるときはロゴ、名刺、看板、Webサイトをすべて差し替えるため、差し替える場所を先に書き出してから作り直しましょう。
まとめ|キャッチフレーズはくり返せる言葉で選ぶ
キャッチフレーズは響きより、何年たっても事実で名前と一緒に言える言葉で選びます。まずは客や取引先に選んだ理由を聞き、3年後も変わらない事実を1つ選んで、名前を主語にした一文に書いてみてください。案ができたら、知らない人に1回だけ読み上げ、翌日に言えるかを確かめます。
私たち合同会社Writers-hubは、企業の記事を制作する中で、サービスの強みを見出しや説明文の短い言葉にまとめてきました。キャッチフレーズを決めた後に、Webサイトの見出しや説明文をどう合わせるかからご相談いただけます。
新しいキャッチフレーズと、Webサイトの見出しが食い違っていませんか
キャッチフレーズを新しくすると、Webサイトのトップの見出しやサービスの説明に、前の言い方が残りがちです。今のサイトのURLをお知らせいただければ、キャッチフレーズと食い違う箇所と、根拠を書き足すページを一緒に洗い出します。







