「既存の商品とカニバるなら、新商品の発売は見送りになりそう」。会議で企画に「カニバる」と指摘されると、担当者は企画が通らないものと受け止めがちです。社内で「カニバる」が口にされるのは、たいてい新しい商品や店舗、記事の企画に反対する場面だからです。
しかし、カニバるという指摘は、企画をやめる理由になるとは限りません。弊社はこれまで多くの企業の記事制作を担い、同じ検索語で自社の記事同士が順位を取り合う状態の見直しにも関わってきました。その経験から言えるのは、カニバるかどうかは、似ているかでなく同じ客が同じ用事で選ぶかで決まるということです。食い合いが起きても、会社全体の売上や利益が増えるなら、発売を見送る理由にはなりません。
本記事では、カニバるの意味と使い方から、食い合いが問題になる条件と確かめ方まで、記事制作の現場の視点で順を追ってお伝えします。
- カニバるは、自社の商品や店舗、記事同士が同じ客を取り合うことを指し、カニバリゼーションを略した言葉
- 取引先への資料では「カニバリゼーション」か「食い合い」と書くと、言葉を知らない相手にも通じる
- 食い合いが問題になるのは、会社全体の売上や利益が減るとき
- 記事同士の食い合いは、サーチコンソールで同じ検索語に出る自社のページを見れば確かめられる
- 食い合いを防ぐには、商品や記事ごとに「誰が、どんな用事で選ぶか」を分ける
カニバるの意味と語源
カニバるとは、自社の商品や店舗、記事同士が同じ客を取り合い、互いの売上を減らすことです。英語で「共食い」を意味するcannibalization(カニバリゼーション)を略し、「る」を付けて動詞にしたビジネス用語で、名詞では「カニバリ」と言います。
カニバるの使い方と例文
カニバるは、「AがBとカニバる」の形で、自社の2つの商品や店舗、記事が同じ客を取り合うときに使います。4つの場面での例文を表に並べました。
場面 | 例文 |
|---|---|
新商品の企画 | 低価格プランを出すと、上位プランとカニバるおそれがある |
出店 | 駅の反対側に2号店を出しても、客層が違うので1号店とはカニバらない |
広告 | 社名での検索に広告を出すと、自然検索からの訪問とカニバる |
記事 | 2本の記事が同じ検索語でカニバっているので、1本にまとめる |
カニバるは、社内の会話やチャットで使われるくだけた言い方で、言葉を知らない相手には意味が通じないことがあります。
取引先への提案書や報告書では、「カニバる」でなく「カニバリゼーション」と書くか、「食い合い」「自社競合」と言い換えてください。英語の資料では、動詞のcannibalizeか名詞のcannibalizationを使います。
カニバリが起きる4つの場面
カニバリが起きやすい場面は4つあります。どの場面でも、同じ客が同じ用事で選べるものを、自社が2つ並べています。

新商品と既存の商品
新商品が既存の商品とカニバるのは、価格や機能が近く、既存の商品の客が新商品へ乗り換えるときです。たとえば上位プランの機能を減らした低価格プランを出すと、上位プランの機能を使い切っていなかった客が低価格プランへ移ります。客1人あたりの売上は、移った客の分だけ下がるのです。
近くに出した店舗同士
同じ地域に店を増やすと、既存の店に来ていた客が新しい店へ分かれ、1店あたりの売上が下がることがあります。コンビニなどが特定の地域に集中して出店するドミナント戦略では、店同士の食い合いを見込んだうえで店を増やします。配送の効率を上げ、地域での知名度を得るためです。
自社の販売経路や広告同士
自社の通販サイトと取引先の販売店で同じ商品を売ると、客が買う場所を変えるだけで、売上の合計が増えない場合があります。
社名での検索に広告を出すと、広告がなくても自然検索から来ていた人の一部が、広告のほうをクリックします。クリックの分だけ広告費は増えても、訪問の数は増えません。競合他社が自社の社名で広告を出していないときに起きやすい食い合いです。
同じ検索語を狙う自社の記事
同じ検索語で上位を狙う記事が自社のサイトに2本以上あると、Googleが検索結果に出す記事が日によって入れ替わることがあります。入れ替わりが続くと、どちらの記事も上位に定着しにくくなります。SEOの分野で「キーワードカニバリゼーション」と呼ばれるのが、記事同士のカニバリです。
カニバるのは悪いことか
カニバること自体は悪いことではなく、問題になるのは、食い合いの後に会社全体の売上や利益が減るときです。
新商品が既存の商品とカニバると指摘されました。発売はやめたほうがよいでしょうか。
編集部
既存の商品の売上が減るおそれがあるのは、指摘のとおりです。ただ、発売をやめるかどうかは、既存の商品から移ってくる客と、新しく買う客のどちらが多いかで決まります。移ってくる客が大半なら企画を見直し、新しい客で会社全体の利益が増えるなら、発売を検討してよいはずです。
会社全体の利益が減りやすいのは、新商品の売上の大半が既存の商品から移った分のときです。売上の合計がほとんど増えないまま、新商品の開発や販促にかけた費用を回収できません。粗利の大きい商品から粗利の小さい商品へ客が移るときも、売上の合計は増えたまま、粗利の合計が減ることがあります。

反対に、他社に取られるはずだった客を自社の新商品で取れるなら、既存の商品の売上が減っても発売する判断はあり得ます。2007年にAppleが発表したiPhoneは、iPodの機能を備えた携帯電話でした。自社の人気商品と用途が重なる商品をあえて出した例として、よく挙げられます。

※ 出典:Apple Newsroom「Apple Reinvents the Phone with iPhone」(2007年1月9日)
カニバっているかの確かめ方
カニバっているかは、商品や店舗なら出す前と後の売上の合計で、Webの記事ならサーチコンソールで同じ検索語に出る自社のページで確かめます。
商品や店舗は売上と粗利の合計で比べる
商品や店舗の食い合いは、新商品を出す前と後で、既存の商品と新商品を足した売上と粗利の合計を比べて確かめます。既存の商品の売上は季節や値引きでも動くため、前の年の同じ月と比べるなど、食い合い以外の理由で動いた分を除いてください。
新商品の売上のうち既存の商品から移った分の割合はカニバリ率と呼ばれ、既存の商品の売上の減少分を新商品の売上で割って求めます。たとえば新商品が月に100万円売れ、既存の商品が月に30万円減ったなら、カニバリ率は30%で、会社全体の売上は月に70万円増えた計算です。
Webの記事はサーチコンソールで見る
記事同士の食い合いは、Googleのサーチコンソールで、1つの検索語に対して自社のどのページが表示されているかを見て確かめます。
左側のメニューの「検索パフォーマンス」から「検索結果」を開きます。
グラフの上にあるフィルタの追加から、クエリ(検索キーワード)を条件に選び、調べたい検索語を入力します。
表の「ページ」タブを開き、指定した検索語で表示された自社のURLを確かめます。URLが2つ以上あれば、期間を1か月ずつ区切り、クリック数の多いURLが月ごとに入れ替わっていないかを見ます。
クリック数の多いURLが入れ替わっていれば、記事同士が食い合っている疑いがあります。2つのURLがどちらも平均掲載順位で上位に並び続けているときは、検索した人が両方を目にしているので、直さなくてかまいません。直し方は記事のカニバリゼーション診断と解消方法で扱っています。

※ 出典:Search Console ヘルプ「検索パフォーマンス レポート(検索結果)」
カニバリを防ぐ商品と記事の分け方
カニバリを防ぐには、新しい商品や記事を出す前に、既存のものと「誰が、どんな用事で選ぶか」を並べて書き出し、重なる部分をなくします。名前や中身が似ていても、選ぶ客か用事が違えば食い合いは起きません。
商品なら、対象の客(法人か個人か、初めて買う人か買い替える人か)、使う場面、価格帯のどれかを既存の商品とずらします。対象の客も使う場面も価格帯も重なるなら、新商品を出すより既存の商品を改良するほうが、会社全体の売上は増えやすいと見ています。
記事を分ける基準は、検索した人が知りたいことです。「SEO 費用」と「SEO 料金」は、どちらも費用の目安を知りたい人が打つ検索語なので、1本の記事で答えます。「SEO 費用」と「SEO 自分で」は、外注の費用を知りたい人と自社で進める方法を知りたい人で用事が違うため、別の記事にします。

知りたいことが同じかどうかは、2つの検索語で検索し、上位10件の記事を見比べると判断できます。同じ記事の多くが両方の検索結果に並んでいれば、Googleも2つの検索語を同じ用事の検索として扱っていると考えられるためです。
次に書く記事が、公開済みの記事と同じ検索語を狙っていませんか
弊社では、書く予定の記事と公開済みの記事を検索語ごとに並べ、1本にまとめる記事と書き分ける記事を決めてから制作に入ります。サイトのURLと、次に書く予定の記事のテーマをお知らせください。
カニバるに関するよくある質問
カニバるの意味や使い分けについて、よく聞かれる質問は3つです。
カニバるは、蟹とは関係がありません。英語のcannibalizationの「カニバ」に「る」を付けた言葉なので、「蟹」の漢字は使いません。
カニバルは英語のcannibalで、人食いや、同じ種類の動物を食べる動物を指します。カニバるは、cannibalから派生したcannibalizationを略した言葉で、ビジネスでは自社の商品同士の食い合いを指します。
カニバるは、ふつう自社の商品や店舗、記事同士の食い合いに使います。他社と客を奪い合う場合は、「競合する」と言うのが一般的です。
まとめ|カニバるかは客と用事が同じかで決まる
カニバるは、自社の商品や店舗、記事同士が同じ客を取り合うことを指す言葉です。食い合うかは客と用事で決まり、問題かどうかは会社全体の利益で決まります。新商品なら出す前と後の売上と粗利の合計を、記事ならサーチコンソールで同じ検索語に出る自社のページを確かめるところから始めてください。
私たち合同会社Writers-hubは、SEO記事の制作と、書く記事を検索語ごとに決めるキーワード戦略の設計を行っています。公開済みの記事同士の食い合いを見つけ、まとめる記事と書き分ける記事を決める段階からご相談いただけます。
自社の記事同士が同じ検索語で食い合っていないか、確かめたことはありますか
サイトのURLを伺い、同じ検索語で表示が入れ替わっている記事と、まとめるか書き分けるかの案をお伝えします。相談は無料です。







