「有名なオウンドメディアの事例をまねれば、うちも成果が出そう」。事例を紹介するページでは、目を引く企画やデザインが先に目に入るため、見た目をそろえれば近づけると思われがちです。ところが、事例に挙がるメディアに共通するのは見た目ではありません。誰に向けて、自社のどの材料で書き、読んだ人に次に何をしてもらうかが決まっている点です。
本記事では、事例に共通する3つのポイントから、業種別の事例、自社に当てはめる手順まで、記事制作会社の視点で順を追ってお伝えします。
- 事例に共通するのは、読む人、自社にしかない材料、読んだ後の行動の3つが決まっていることです
- BtoBのIT企業と製造業の事例は、業務や技術の知識を材料に、資料のダウンロードや相談へ案内しています
- 小売と食品メーカーの事例は、商品の使い方や開発の話を材料に、買い物へつなげています
- 業種で分けた事例の中から、読む人が会社の担当者か生活者かもそろえて選ぶと、自社に当てはめやすくなります
オウンドメディアの事例に共通する3つのポイント
業種の違う9つの事例に共通するのは、読む人、記事の材料、読んだ後の行動の3つが決まっていることです。3つが決まると、どの記事を書き、記事の最後に何を置くかが決まります。

読む人を決めていること
事例のメディアは、トップページの説明文で、誰に何を届けるメディアかを示しています。ロームのTechWebは回路設計を学ぶ人に、キーエンスのマーキング学習塾はレーザーの知識を深めたい人に向けて書かれています。
読む人が決まると、記事で使う言葉の難しさと、扱わない話題が決まります。
自社にしかない材料で書くこと
事例のメディアが使う記事の材料は、他社が同じ記事を書けないものです。東海バネ工業のばね探訪は自社のばねが使われている現場への取材、メルカリのmercanは社員の仕事と考え方が材料です。
自社の材料は事業を続けるかぎり増え、更新が止まりにくくなります。mercanは2016年5月の公開から10年がたった2026年10月にも、新しい記事を出しています。
読んだ後の行動を用意していること
事例のメディアは、記事を読んだ人が次に取れる行動を、同じサイトの中に置いています。TechWebには技術資料のダウンロード、「北欧、暮らしの道具店」には商品の買い物、mercanには募集中の求人の一覧があります。
行動の置き場所があると、記事を読んだ人のうち何人が問い合わせや購入、応募に進んだかを数えられます。
BtoBのIT企業のオウンドメディア事例
BtoBのIT企業の事例は、自社製品を使う業務の知識を届けるメディアと、会社の考え方を届けるメディアに分けると、読んだ後の行動の違いが分かります。
SmartHRの「SmartHR Mag.」
SmartHR Mag.は、労務管理クラウドを提供するSmartHRが運営するメディアです。最新の人事・労務の情報や専門家の見解、人材マネジメントの実践事例を紹介しています。人事・労務の記事は、社会保険労務士や弁護士などの専門家が解説しています。
製品の機能や運用のヒントは「ケーススタディ」に分けてあり、サイトには「お役立ち資料」とメルマガ登録の入口があります。
サイボウズの「サイボウズ式」
サイボウズ式は、グループウェアを開発・提供するサイボウズのメディアです。製品の機能ではなく、会社や組織のあり方、多様な働き方や生き方を題材にしています。記事のタグには、チームワークやマネジメント、人事制度などが並びます。
サイトにはイベントの案内や書籍の「サイボウズ式ブックス」もあり、製品を比べる前の段階の人に、会社の考え方を知ってもらう作りです。
BtoBのオウンドメディアで見込み客を集める設計は、BtoBオウンドメディアの成功事例で詳しく扱っています。
製造業のオウンドメディア事例
製造業の3社の事例は、どれも自社の製品の技術や、製品が使われている現場を記事の材料にしています。ロームとキーエンスは技術者が学ぶための記事を、東海バネ工業は納入先の現場を取材した記事を出しています。
ロームの「TechWeb」
TechWebは、半導体・電子部品メーカーのロームが運営する、回路設計を学べるサイトです。回路設計の基礎知識や技術情報、設計情報を公開しています。記事は、トランジスタやダイオード、電源IC、モーターなどのデバイスごとに分かれています。
サイトのメニューには、ウェビナーと技術資料のダウンロードが並びます。海外の技術者に向けて、英語や中国語、韓国語のページも用意しています。
キーエンスの「マーキング学習塾」
マーキング学習塾は、キーエンスが運営するレーザーマーキングの活用情報サイトです。レーザーの原理や規格、安全対策の基礎知識から、導入事例までを紹介しています。サイトは、これからレーザーの知識を深めたい人と、今使っているレーザーで他にできることを探す人に向けて作られています。
導入事例は、自動車や電子部品、食品・薬品などの業界別に分かれています。サイトの上部には、資料のダウンロードと問い合わせの入口があります。
東海バネ工業の「ばね探訪」
ばね探訪は、東海バネ工業のばねが使われているモノづくりの現場を取材したレポートです。東海バネ工業は、ばねを1個から作るオーダーメイドのばねメーカーです。取材先には、三菱重工業の高砂製作所や、東日本旅客鉄道の大宮総合車両センターがあります。
納入先の現場を伝える記事は、製品の仕様書には書けない使われ方を見せられます。同じような設備を持つ会社の担当者は、記事の現場を自社の用途に置き換えて読めます。
小売と食品メーカーのオウンドメディア事例
小売と食品メーカーの3社の事例は、生活者に向けて、商品の使い方や開発の話を材料にしています。「北欧、暮らしの道具店」とアマノ食堂は、記事の先に買い物の入口を用意しています。
クラシコムの「北欧、暮らしの道具店」
北欧、暮らしの道具店は、2007年にビンテージの北欧食器の専門ECサイトとして始まりました。今は世界中のセレクト商品やオリジナル商品に加え、Web記事やオリジナルのドキュメンタリー、ドラマ、ポッドキャストまで届けています。
記事と商品は同じサイトにあり、サイト内の検索も商品と記事を切り替えて使えます。
カインズの「となりのカインズさん」
となりのカインズさんは、ホームセンターのカインズが2020年6月に開設したWebメディアです。店舗のスタッフ、お客様、取引先のメーカー、クリエイターや研究者が、それぞれの立場から発信しています。話題は、DIYやペット、ガーデニング、掃除、収納などのくらしづくりです。
カインズは開設の理由として、扱う商品の分野ごとに専門的な知識がたまっているのに、発信する場がなかったことを挙げています。
扱う商品の分野が多い小売の会社は、売り場のスタッフや取引先のメーカーにも書き手に加わってもらうと、分野ごとに詳しい人が記事を書けます。
アサヒグループ食品の「アマノ食堂」
アマノ食堂は、アサヒグループ食品のフリーズドライ食品「アマノフーズ」のWebマガジンで、2025年に10年目を迎えました。食材の豆知識や料理家のレシピ、開発秘話を発信しています。
アマノ食堂のページには、「公式通販」と「オンラインでのご購入はこちら」の2か所に、公式通販への入口があります。
採用に使うオウンドメディアの事例
採用に使うオウンドメディアの事例には、メルカリのmercanがあります。mercanは今、メルカリの採用サイトの中で、ミッションを軸に働く人の思いやカルチャーを発信しています。
採用サイトの中にあるため、記事を読んだ人はそのまま募集中の求人の一覧へ進めます。読む人は転職を考える人で、材料は社員の仕事と考え方です。社員のいる会社なら業種を問わず同じ材料で始められる点が、採用の事例の特徴です。
社員を紹介する記事は、公開前に本人と人事の担当者が内容を確かめる手順を決めてから始めます。社外に出してよい情報かどうかを、記事ごとに判断するためです。
採用のオウンドメディアの始め方と運用の体制は、オウンドメディアリクルーティングとはで扱っています。
業種別に見る進め方の違い
業種別の事例を並べると、読む人、材料、読んだ後の行動の3つの中身は、業種で次のように違います。
業種 | 読む人 | 記事の材料 | 読んだ後の行動 |
|---|---|---|---|
BtoBのIT企業 | 業務の悩みを持つ担当者 | 業務の知識、専門家の解説、製品の使い方 | 資料のダウンロード、メルマガ登録 |
製造業 | 製品を選び、使う技術者 | 技術の基礎、導入事例、納入先の現場 | 技術資料のダウンロード、問い合わせ |
小売と食品メーカー | 生活者 | 商品の使い方、レシピ、開発の話 | 商品の購入 |
採用 | 転職を考える人 | 社員の仕事と考え方 | 求人への応募 |
上司から「北欧、暮らしの道具店のような読み物のメディアを作りたい」と言われました。うちは部品メーカーですが、同じ作り方でよいでしょうか。
編集部
記事の作り込み方は参考になりますが、読む人が違います。部品を選ぶのは設計や購買の担当者なので、キーエンスのマーキング学習塾のように、製品を選ぶ前の疑問に答える記事から始めると、資料のダウンロードや相談につなげられます。
手本にする事例は、業種に加えて、読む人が自社と同じかどうかで選ぶと当てはめやすくなります。同じメーカーでも、アマノ食堂は生活者に向けたレシピの記事を出していて、ロームのTechWebとは読む人も材料も違います。

事例を自社に当てはめる4つの手順
事例を自社に当てはめるときは、次の4つの手順で、事例から読む人、材料、読んだ後の行動を取り出し、自社の中身に置き換えます。
自社に近い業種の事例の中から、読む人と読んだ後の行動が自社と同じ事例を2〜3個選びます。部品メーカーなら、生活者向けの事例より、技術者向けの事例を手本にします。
事例ごとに、読む人、材料、読んだ後の行動を1行ずつ書き出します。見るのは、トップページの説明文と、サイトの上部や記事の最後に置かれた資料や問い合わせ、商品への案内です。
営業や問い合わせの窓口が繰り返し答えている質問、技術資料、納入先や顧客の現場、社員の仕事を書き出します。材料ごとに、話せる人と、公開前に確かめる人も決めます。
資料、問い合わせ、商品のページ、求人のどれへ案内するかを1つ決めます。決めた行動に近い悩みを持つ人が読む記事から書き始めます。
事例ごとに書き出した3つのポイントは、記事を外注するときや社内で書き手を増やすときに、読む人と案内先をそろえる資料にも使えます。

社内に材料はあるのに、書く順番と書き手が決まっていませんか
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まとめ|事例は共通点を先に見て業種ごとに当てはめる
オウンドメディアの事例に共通するのは、読む人、自社にしかない材料、読んだ後の行動の3つが決まっていることです。3つの中身は業種で変わります。BtoBのIT企業と製造業は業務や技術の知識で資料や相談へ、小売と食品メーカーは使い方や開発の話で買い物へつなげています。
事例は業種ごとに分けて見て、読む人が自社と同じものを当てはめます。
私たち合同会社Writers-hubは、記事コンテンツの制作支援として、KW戦略設計、制作体制の構築、記事の指示文を作るツールの提供を行っています。
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