「オウンドメディアを始めるなら、有名な企業のメディアを一覧で見て、デザインや記事の作り方をまねればよさそう」。企画を社内で通すときは、誰もが知る会社の例を挙げると話が早いため、知名度の高い順に並んだ一覧から参考を選びがちです。ところが、オウンドメディアは、見込み客を集めるのか、採用につなげるのかといった目的によって、記事の題材も、読み終えた人に用意する入口も違います。参考になるのは、有名なメディアではなく、自社と目的が同じメディアです。
本記事では、目的別に分けた10のオウンドメディアの一覧から、自社のメディアの方向を決める手順まで、企業の記事づくりを支援する会社の視点で順を追ってお伝えします。
- オウンドメディアは、記事を読んだ人に何をしてもらうかという目的で4つに分けると比べやすくなります
- 同じ目的のメディアは、資料のダウンロード、会員登録、求人の案内など、記事の後に置く入口が似ています
- 参考にするときは、デザインより先に「このメディアについて」のページと記事の後の入口を読みます
- 自社の方向は、目的を1つに決め、自社にしかない材料と、入口と見る数字を決めてから書き始めます
目的別に分けたオウンドメディアの4つの種類
オウンドメディアは、記事を読んだ人に何をしてもらうかで、次の4つの種類に分けられます。種類ごとに、主な読者と、記事の後に用意する入口が違います。
種類 | 主な読者 | 記事の後に用意する入口の例 | 一覧で紹介するメディア |
|---|---|---|---|
見込み客を集めるメディア | 製品を使う仕事の担当者 | 資料のダウンロード、問い合わせ、部品の購入 | SmartHR Mag.、イチから学ぶ機械要素、ミスミの技術情報 |
商品を使う場面を伝えるメディア | 商品を使う生活者 | 会員登録、買いもの | Lidea、VEGEDAY、北欧、暮らしの道具店 |
会社の考えを伝えるメディア | 取引先や株主を含む幅広い人 | 本、動画、ポッドキャスト | サイボウズ式、トヨタイムズ |
採用につなげるメディア | 応募を考える人 | 求人の一覧、職種ごとの採用の案内 | mercan、ZOZO TECH BLOG |
一覧に載せたメディアは、公式サイトで運営会社を確かめたものです。成功ポイントは、公式サイトの「このメディアについて」のページや、記事とメニューの並べ方から確かめられることに絞りました。

目的のほかに、形態やサイトの構成でもオウンドメディアの種類を分けられます。軸ごとの分け方は、オウンドメディアの種類を3つの軸で整理した記事にまとめています。
見込み客を集めるBtoBのオウンドメディア
見込み客を集めるBtoBのオウンドメディアは、自社の製品を使う仕事で担当者が調べる疑問に答え、記事の近くに資料や相談の入口を置いています。製品を探し始める前の担当者にも、検索から記事を読んでもらえる作りです。
SmartHRの「SmartHR Mag.」
SmartHR Mag.は、人と組織のためのバックオフィスシステム「SmartHR」を提供する株式会社SmartHRが運営するメディアです。人事・労務の最新情報や法改正、人材マネジメントの実践事例、SmartHRを使うお客さまの声を載せています。
成功ポイントは、年末調整や法改正への対応のように担当者が毎年調べる業務を、社会保険労務士や弁護士などの専門家が解説していることです。SmartHR Mag.についてのページには、メールマガジンの読者から記事のテーマのリクエストを受け付けると書かれています。記事と同じサイトで「SmartHRのご紹介」などの資料も配り、記事を読んだ担当者が製品を調べる入口にしています。
キーエンスの「イチから学ぶ機械要素」
イチから学ぶ機械要素は、センサや測定器を扱うキーエンスが運営する、ねじや歯車、ばねなどの機械要素の基礎を学べるサイトです。用語集と公式集もあり、ページの上部に資料のダウンロードと相談の入口を置いています。
成功ポイントは、部品ごとの章の最後に、寸法の測り方のページを置いていることです。「ねじの寸法を測定する」のページは、マイクロメーターによる測定とゲージによる検査を説明し、続けて画像寸法測定器による測り方を紹介しています。基礎を学びに来た設計者が、読み進めるうちにキーエンスの測定器を知る順番になっていて、ページの中から画像寸法測定器の製品ページへ進めます。
ミスミの「技術情報」
ミスミの技術情報は、FA・金型部品や工具を販売するミスミが、通販サイト「MISUMI-VONA」の中で公開している技術の解説ページです。数学や材料、加工の基礎から、規格や工場に関する法令までを扱っています。
成功ポイントは、「実務の知識」を、企画から構想設計、詳細設計、機械加工、組立、検査へと、ものづくりの工程の順に並べていることです。グループの機械設計会社の技術士による連載なども載せており、部品を選ぶ前の設計の段階から通販サイトを開いてもらえる作りだと見ています。
商品を使う場面を伝えるオウンドメディア
商品を使う場面を伝えるオウンドメディアは、洗濯や料理、服選びのように、生活者が商品を使う場面の疑問と楽しみ方を記事にしています。Lideaは会員登録、北欧、暮らしの道具店は買いものの入口を、記事と同じサイトに置いています。
ライオンの「Lidea」
Lideaは、LIONとideaを組み合わせた名前の、ライオン株式会社が運営する生活情報Webメディアです。お洗濯やお掃除、歯とお口の健康など、ライオンの製品を使う暮らしの場面でカテゴリーを分けています。
成功ポイントは、製品の担当者や専門家に聞く記事と、会員登録をする理由を用意していることです。記事にコメントや「いいね!」をするとポイントがたまり、ためたポイントでプレゼントに応募できます。記事の更新情報は、希望した会員にメールマガジンで届くため、一度読んだ人に次の記事を知らせる仕組みにもなっています。
カゴメの「VEGEDAY」
VEGEDAYは、カゴメが運営する、野菜をもっと楽しみ、好きになってもらうための情報を届けるメディアです。野菜の基本を「栄養を知る」「選ぶ・保存する」「調理する」「楽しむ・育てる」に分け、プロが教えるレシピも載せています。
成功ポイントは、「ブロッコリー茹で方&茹で時間」「ピーマンの保存方法」のように、料理の途中で調べる疑問を記事の題名にしていることです。野菜のQ&Aでは、アク抜きや茹で時間、保存の方法に答えています。
クラシコムの「北欧、暮らしの道具店」
北欧、暮らしの道具店は、株式会社クラシコムが運営する通販サイトです。2007年にビンテージの北欧食器の専門ECとして始まり、今は商品の販売に加えて、記事やオリジナルのドキュメンタリー、ドラマ、ポッドキャスト、劇場映画まで届けています。
成功ポイントは、サイトのメニューに「買いもの」と「コンテンツ」を並べ、商品と読みものを1つのサイトに置いていることです。たとえば2026年10月14日には、新しく作ったブーツの紹介記事と、スタッフが同じブーツを試着したレビューの記事を同じ日に公開しました。
自社の商品で同じ作りを試すなら、お客様が商品を使う場面を書き出し、場面の名前をそのままカテゴリーの名前にします。Lideaの「お洗濯」「お掃除」のように、読者が自分の困りごとから記事を探せるようになります。
会社の考えを伝えるオウンドメディア
会社の考えを伝えるオウンドメディアは、製品の機能より、会社がめざす社会や経営の判断を、自社の言葉で伝えています。読者は取引先や株主、これから働く人まで幅広く、記事は本や動画、ポッドキャストにも広がっています。
サイボウズの「サイボウズ式」
サイボウズ式は、グループウェアを開発するサイボウズ株式会社が2012年に立ち上げたオウンドメディアです。「チームワークあふれる社会」をつくるという会社の考えを伝えるために、会社や組織のあり方、働き方や生き方の記事を出しています。
成功ポイントは、グループウェアの機能でなく、チームワークや働き方のテーマで記事を書き、本や動画、イベントに広げていることです。サイボウズ式ブックスでは書籍を作っており、自社の製品kintoneの導入の話をまとめた『そして、チームは変わった。』は、PDFか郵送で無料で受け取れます。会社の考えを伝えるメディアでも、製品を使う人の話へ進む入口を持っています。
トヨタ自動車の「トヨタイムズ」
トヨタイムズは、トヨタ自動車が運営するオウンドメディアです。クルマの時代からモビリティの時代への変化を伝えるメディアとして、経営やスポーツ、クルマ、技術の記事とニュース、ポッドキャストを出しています。
成功ポイントは、決算や株主総会、労使協議会のように、新聞やテレビが報じる話題を、自社のメディアで直接伝えていることです。2024年4月17日には、トヨタイムズから派生したスポーツ専門のオウンドメディア「トヨタイムズスポーツ」を立ち上げたと、トヨタの公式企業サイトで発表しました。関心の違う読者に向けて、話題ごとに別のメディアを立ち上げる広げ方もあります。
採用につなげるオウンドメディア
採用につなげるオウンドメディアは、社員の仕事と会社の今を記事にし、記事の近くに求人や職種ごとの採用の案内を置いています。応募を考える人は、働く人と仕事の中身を知ったうえで応募を決められます。
メルカリの「mercan」
mercanは、株式会社メルカリが2016年5月26日に創刊した、採用を目的としたオウンドメディアです。メルカリで働く人を軸に、チームの紹介や社内の出来ごとを発信しています。
成功ポイントは、メディアを採用サイトの中に置き、エンジニアリングやコーポレートなどの職種ごとに記事を探せるようにしていることです。mercanについてのページには、メンバーが何を考え、何に取り組むのかを課題も含めて誠実に届け、未来の仲間集めに貢献したいという編集部の考えが書かれています。記事のメニューには、募集中の求人一覧へのリンクもあります。
ZOZOの「ZOZO TECH BLOG」
ZOZO TECH BLOGは、株式会社ZOZOのテックブログです。ZOZOTOWNなどのサービスを支えるシステムの開発と運用の記事を、担当するエンジニア自身が書いています。
成功ポイントは、記事の冒頭で、書き手が所属する部署と普段の担当を名乗っていることです。ブログの「リンク」の欄には、「ZOZOのiOSエンジニアに興味をお持ちの方へ」のような職種ごとの案内も置いています。
採用のメディアを始めるときは、記事の題材より先に、書き手か取材を受ける社員を決めます。mercanは働く人を軸に記事を作り、ZOZO TECH BLOGはエンジニアが自分の担当を名乗って書いているためです。
一覧のメディアを参考にするときの見方
一覧のメディアを参考にするときは、トップページのデザインより先に、「このメディアについて」のページと、記事の後や周りに置いた入口を読みます。メディアの目的と読者は、説明のページと入口から読み取れるためです。
たとえば、mercanの説明のページには「採用を目的とした」と書かれ、SmartHR Mag.の説明のページはメールマガジンへの登録を呼びかけています。目的が分かれば、まねる所とまねない所を分けられます。
サイボウズ式のように働き方の記事を出せば、うちの製品の問い合わせも増えますか?
編集部
働き方の記事は、会社の考えを知ってもらうのに役立ちます。ただ、サイボウズ式は会社の考えを伝えるメディアで、記事の後に置いているのは本や動画です。問い合わせを増やしたいなら、SmartHR Mag.のように、製品を使う仕事の疑問に答える記事と資料の入口から見るほうが近いはずです。
目的が違うメディアをまねると、記事の題材と、成果として見る数字がずれます。種類ごとの題材と見る数字の例は、次のとおりです。
種類 | 記事の題材 | 見る数字の例 |
|---|---|---|
見込み客を集めるメディア | 製品を使う仕事の疑問 | 資料のダウンロード数、問い合わせ数 |
商品を使う場面を伝えるメディア | 商品を使う場面の疑問と楽しみ方 | 会員登録数、購入数 |
会社の考えを伝えるメディア | 会社の考えと経営の判断 | 社名での検索数、記事の共有数 |
採用につなげるメディア | 社員の仕事と会社の今 | 応募数、面接で記事に触れた応募者の数 |
採用のメディアをまねて社員の記事を増やしても、資料のダウンロード数を見る会社では成果に数えられません。

自社のオウンドメディアの方向を決める4つの手順
自社のオウンドメディアの方向は、次の4つの手順で決めます。目的を先に1つに絞ると、比べる相手と書く材料が決まります。
一覧の4つの種類から、最初に取り組む目的を1つ選びます。2つ以上に当てはまるときは、記事を読んだ人に最初にしてほしい行動で順番を付けます。
一覧から同じ目的のメディアを2〜3つ選び、「このメディアについて」のページと記事の後の入口を読みます。読者、記事の題材、入口の3つを書き出すと、自社の計画と見比べられます。
営業やサポートの担当者がお客様から受ける質問と、社員が持つ製品や工程の知識を書き出します。一覧のメディアも、専門家の解説や製品の担当者の話、社員が名乗って書く記事のように、各社にしかない人と知識で書いています。
記事の後に置く入口と、毎月見る数字を決めます。見込み客を集めるなら資料のダウンロード数、採用につなげるなら応募数のように、目的に合う数字を選びます。
書き出した材料が少ないときは、目的を変えるより先に、材料を集める方法を決めます。営業の担当者が受けた質問を毎週1つずつ記録するだけでも、見込み客を集める記事の題材がたまっていきます。

材料と数字が決まれば、どの記事から書くかを決める段階に進めます。
目的は決まっても、どの検索語から書くかで迷っていませんか
記事コンテンツの制作支援のKW戦略設計では、検索意図を読み、勝てるKWから優先して攻めるロードマップを作ります。料金は公開しておらず、オンライン30分の無料相談で見積もります。
オウンドメディアの一覧についてよくある質問
オウンドメディアの一覧を自社の方向決めに使うときによく出る、3つの質問に答えます。
中小企業でも一覧のようなメディアを作れる?
中小企業でも、一覧のメディアと同じ目的のメディアは作れます。まねるのは会社の規模ではなく、目的と記事の後の入口です。営業がお客様から受ける質問に1本ずつ答える記事なら、少ない人数でも始められます。少人数で始めるときの体制は、中小企業のオウンドメディアの記事で扱っています。
BtoBの会社がBtoCの事例を見ても役に立つ?
BtoBの会社がBtoCのメディアから学べるのは、題名の付け方やカテゴリーの分け方です。VEGEDAYが料理の途中で調べる疑問を題名にしているように、BtoBでも製品を使う作業の途中で調べる疑問を題名にできます。記事の後の入口と見る数字は、目的が同じBtoBのメディアに合わせます。
一覧のメディアのデザインをまねてもいい?
一覧のメディアから取り入れてよいのは、カテゴリーの分け方や入口の置き場所といった作りの考え方です。ロゴや写真、記事の文章は各社のものなので、そのまま使いません。デザインは、自社の読者が記事を読むときの端末や場面に合わせて決めます。
まとめ|オウンドメディアの一覧は目的別に見て自社に当てはめる
オウンドメディアの一覧は、有名な順でなく、記事を読んだ人に何をしてもらうかという目的で4つに分けて見ると、自社の参考になるメディアを選べます。参考になるのは、自社と目的が同じメディアです。参考にするメディアが決まったら、「このメディアについて」のページと記事の後の入口を読み、目的と読者、題材を自社と見比べます。自社の方向は、目的を1つに決め、自社にしかない材料と、入口と見る数字を決めてから書き始めます。
私たち合同会社Writers-hubは、記事コンテンツの制作支援として、KW戦略設計と制作体制の構築を行い、自社と取引先のサイトで毎日公開している運用の記事の指示文を作るツールを、お客様が回せる形でお渡ししています。
参考にするメディアが決まった後、記事を出し続ける体制はできていますか
記事コンテンツの制作支援の制作体制の構築では、編集者・ライター・監修者のチーム編成、レギュレーション策定、品質管理フローを作ります。記事の指示文を作るツールをお渡しする場合も、公開前の確認はお客様が行います。料金は公開しておらず、オンライン30分の無料相談で見積もります。







