「消したい文字に線を引いておけば、後ろは詰めてもらえるはず」。Wordやメールでは文字を消すと後ろの文字が自動で前に寄るため、校正紙やPDFに赤字を入れるときも同じだと考える方は多いでしょう。
しかし、弊社はこれまで多くの記事の校正で、赤字を入れる側と受ける側の両方を務めてきました。その経験から言えるのは、削除の赤字には「詰める」か「空ける」かまで書くということです。印刷物やデザインの修正では、消した後の空きを詰めるか残すかを、作業する人が赤字を読んで決めます。線を引いただけの赤字では、字下げや表の中のように空きを残すべき箇所と見分けがつきません。
本記事では、トルツメの意味から、校正紙への書き方、トルアキとの使い分け、詰めた後に確かめる箇所まで、原稿の校正を日々行う制作会社の視点で順を追ってお伝えします。
- トルツメは「文字を削除し、空いた部分を詰める」指示で、JISでは「トル」だけでも同じ意味になる
- 赤字は、消す文字に斜線を引き、余白へ引き出した線の先に「トルツメ」と書く
- 空きを残したいときは「トルアキ」か「トルママ」と書き分ける
- 詰めると後ろの改行位置がずれるため、再校では段落の終わりまで確かめる
トルツメの意味と読み方
トルツメは「とるつめ」と読み、不要な文字や記号を削除して、空いた部分を詰めるよう求める校正の指示です。「取る」と「詰める」を続けた言葉で、印刷物やデザインの修正で使われます。
印刷校正記号を定めたJIS規格「JIS Z 8208:2007」では、文字を削除して詰めるときは引出し線の先に「トル」と書くと定めています。そのうえで、詰めることをはっきり伝えるために「トルツメ」と書いてもよいとしています。「トル」と「トルツメ」は、JISではどちらも削除した後を詰める指示です。

※ 出典:日本規格協会「JIS Z 8208:2007 印刷校正記号」。JISは使うかどうかを各社が決める規格のため、出版社や印刷会社が独自の校正ルールを定めている場合は、そちらに合わせます。

トルツメの赤字の書き方
トルツメの赤字は、消す文字に線を引き、その線から余白へ引き出した線の先に「トルツメ」と書きます。
1文字を消すときは、その文字に斜線を1本引きます。2文字以上を消すときは、両端の文字に斜線を引き、間の文字を中心線で消します。
斜線から、近くの余白へ短く線を引き出します。引出し線は、同じ行のほかの文字にも、ほかの赤字の引出し線にも掛からない位置へ引くのが基本です。横組みの句読点を消すときは、引出し線を出さずに、その下の行間に書いてもかまいません。
引出し線の先に「トルツメ」または「トル」と書きます。消す文字の真上には書かず、余白に書きます。
校正紙への赤字は、JISでは原則として赤色で書きます。補足の指示を書くときや、赤だけでは修正が紛らわしい箇所では、赤以外の色を使ってもよいとされています。

トルツメとトルアキの違い
トルツメとトルアキの違いは、削除した後の空きを詰めるか、消した文字と同じ大きさの空きとして残すかです。JISでは、空きを残すときは引出し線の先に「トルアキ」と書き、「トルママ」と書いてもよいとしています。
赤字 | 削除した後の空き | 使う場面 |
|---|---|---|
トル | 詰める | JISの基本の書き方 |
トルツメ | 詰める | 詰めることをはっきり伝えたいとき |
トルアキ | 消した文字と同じ大きさで残す | 字下げや表の中など、ほかの文字の位置を動かしたくないとき |
トルママ | トルアキと同じ | トルアキの代わりに書く |
トルアキを使うのは、行頭の1字下げを保ったまま文字だけを消したいときや、表のマスの中でほかの行と文字の位置を揃えておきたいときです。本文の途中で文字を消すときは、ほとんどの場合トルツメになります。
「トル」と「トルツメ」が同じ意味なら、短い「トル」だけ書けば十分ですか?
編集部
JISの上では「トル」だけで十分です。ただ、赤字を受け取る人がJISの定義どおりに読むとは限りません。「トル」を見て空けるのか詰めるのかを問い合わせてくる人もいるので、詰めてほしい箇所に「トルツメ」と書いておけば、確認のやりとりが1回減ります。
トルツメの後に確かめる改行位置
トルツメで文字を詰めると、後ろの文字が前へ送られるため、赤字の箇所から段落の終わりまで改行位置が変わることがあります。1行に入る文字数が決まっている紙面では、1文字消すと次の行の先頭の文字が前の行の末尾へ移り、それが段落の最後の行まで続くためです。
段落の最後の行に数文字しか無かった場合は、詰めた結果その行が無くなり、段落が1行短くなります。すると、その下にある見出しや図の位置、ページの最後の行が次のページへ送られるかどうかまで変わります。

とりわけ見落とされがちなのが、赤字を入れた行から離れたページの末尾で起きる変化です。赤字の反映後は、次の3点を確かめます。
- 赤字の箇所から段落の終わりまで、改行位置が意図しない所で変わっていないか
- 段落の行数が変わり、見出しや図、ページの最後の行の位置が動いていないか
- 数字や英単語、人名が2行に分かれていないか
再校(赤字を反映した2回目の校正紙の確認)で赤字を入れた文字だけを見ると、上の3つの変化を見逃します。
赤字を入れるたびに、段落の終わりまで読み直す時間が取れていますか
記事の執筆から、赤字の反映と再校の確認までを、編集の工程ごとにお引き受けします。社内に残す確認と社外に任せる作業の分け方から一緒に決めます。
PDFやWebデザインでのトルツメの伝え方
PDFやWebデザインの画面でトルツメを伝えるときも、消す箇所に印を付けたうえで、詰めるか空けるかを文字で書き添えます。
PDFでは、注釈の取り消し線を消す文字に引き、その注釈のコメント欄に「トルツメ」と書きます。Wordの変更履歴で文字を消した場合は、後ろの文字が自動で詰まるため、空きを残したいときだけ「空きは残す」と書き添えれば十分です。
Webページのデザインの修正で「トルツメ」と書くと、文章や画像、ボタンなどの要素を消し、下にある要素を上へ寄せて空白を残さない指示として使われることが多くあります。要素を消した後も空白を残したいときは「トルママ」と書き、空白の高さも指定します。
トルツメについてよくある質問
トルツメについては、英語での言い方と、似た赤字との違いを尋ねられることがあります。
英語の校正で同じ指示にあたるのは「delete and close up」です。削除の記号と、間を詰める記号を組み合わせて書きます。
「ツメ」だけの赤字は、文字を消さずに字間や行間の空きを詰める指示として使われます。文字の削除を伴うトルツメとは別の指示です。
JISでは、修正を取りやめる文字の傍らに「イキ」と書きます。「イキ」と書かれた文字は、赤字を入れる前の校正紙の状態のまま残すという意味です。
まとめ|トルツメは詰めるか空けるかを書き分ける
トルツメは、文字を削除して空いた部分を詰める指示で、JISでは「トル」だけでも同じ意味になります。空きを残すときは「トルアキ」か「トルママ」と書き、消す印だけで終えず、詰めるか空けるかを必ず文字で書くことで、作業する人が迷わずに済みます。
詰めた後は後ろの改行位置がずれるため、再校では赤字の行から段落の終わりまでを確かめます。私たち合同会社Writers-hubは、記事の制作で、赤字を入れる側と受ける側の両方の校正を続けてきました。
赤字の書き方が、書く人によって違っていませんか
記事ごとに赤字の書き方が人によって違い、反映のたびに問い合わせが起きている場合は、今の校正の流れをうかがい、赤字の決まりと確認の分担を一緒に整えます。







