「見積が遅いのは分かっているから、見積ソフトを入れれば片付くはず」。見積ソフトの案内には作成時間の短縮をうたう言葉が並ぶので、遅れの原因も解決策もソフトにあると思われがちです。ところが、見積の遅れで逃した仕事は、断った客が理由を言わないため、数えないと見えません。見積1件にかかる時間と、返事が遅れて決まらなかった案件を先に数え、その数が大きいときにだけ、単価表から下書きを作り、社長が確かめて金額を決める仕組みへ移ります。
本記事では、1か月分の見積の記録の付け方から、自動にする作業の順番、自分でエクセルを使って進める手順までを、定型の作業を自動にする仕組みを作る側の視点で順を追ってお伝えします。
- 見積の遅れで逃した仕事は、客が理由を言わないので、記録を付けないと数えられない
- 1か月分の見積を4列で記録すると、見積に使う時間と、遅れと決まらなかった案件の重なりが分かる
- 自動にするのは受付の返信、単価の転記、下書きの順で、値引きと現場ごとの例外は社長が決める
- 数えた損が自動にする費用より小さければ、今の作り方のままでよい
見積が遅れたときに社長から見えない損
見積が遅れたときの損は、客が何も言わずにほかの会社へ移るため、社長の手元には「決まらなかった」という結果としてしか残りません。
工事や加工を頼む客は、同じ内容で複数の会社に見積を頼むことがあります。先に見積が届いた会社と打ち合わせが進めば、後から届いた見積は比べられないまま終わります。
客が断るときの連絡に、見積が遅かったことが理由として書かれるとは限りません。「今回は見送ります」の一言で終わることもあれば、連絡そのものが来ないこともあります。遅れで逃した仕事は、決まらなかった案件の中に混ざって見えません。

とりわけ見落とされがちなのが、問い合わせに返事をしないまま数日たった案件です。社長は見積を作っている途中でも、客の側では、問い合わせが届いたかどうかも分からない日が続いています。
1か月に見積に使っている時間の数え方
見積に使っている時間は、これから1か月の見積を1件1行で記録すれば数えられます。記録する列は、受付日、見積を出した日、かかった時間、受注したかの4つです。
受付日 | 見積を出した日 | かかった時間 | 受注したか |
|---|---|---|---|
11月4日 | 11月8日 | 2時間30分 | 決まらなかった |
11月5日 | 11月6日 | 40分 | 受注した |
かかった時間には、図面や現場のメモを見て見積書を作り始めてから、送るまでの時間を書きます。単価を調べる、過去の見積を探す、計算する、書式を整えるといった作業は、すべて含めます。
現地調査と打ち合わせの時間は含めません。現地調査は自動にできない作業なので、混ぜると、自動にして減らせる時間が分からなくなります。
時間は、作り始めた時刻と送った時刻を、見積書の控えか手帳にその日のうちに書き、途中で別の仕事に移った時間は引きます。
月の合計時間を12倍すると、1年に見積に使う時間が出ます。たとえば月に20件、1件に平均2時間かかっているなら、月40時間、1年で480時間です。1日8時間で割ると、60日分にあたります。
見積の件数が季節で大きく変わる会社は、12倍した数字が実際とずれます。記録した月の件数を去年の同じ月の見積書の枚数と比べ、多い月か少ない月かを表の横に書いておきます。
見積を出すまでの日数と決まらなかった案件の重なり
見積の遅れで逃した仕事の数は、見積を出すまでの日数が長い案件と、決まらなかった案件がどれだけ重なるかで見当をつけます。
3か月分の日数と受注の書き出し
見積を出すまでの日数と受注したかは、過去の分もさかのぼって書き出せます。受付日は問い合わせのメールや電話のメモの日付で、見積を出した日は見積書を送ったメールの日付で分かるからです。
1か月分では件数が少なく、たまたまの偏りが出やすいので、直近3か月分を書き出します。件数が少ないときは、期間をさらに延ばします。かかった時間だけは後から分からないので、これからの1か月で記録します。
日数は、見積を出した日から受付日を引いて出します。エクセルなら、受付日がA列、見積を出した日がB列のとき、C列に「=B2-A2」と入れると日数が出ます。
日数の短い順に並べた重なりの見方
重なりは、表を日数の短い順に並べ替え、決まらなかった案件に印を付けて見ます。印が日数の長い下のほうの行に集まっていれば、遅れと決まらなかった案件に関連がある可能性があります。ただし、難しい案件ほど日数が長く決まりにくいこともあるので、断られた理由と案件の金額も見て判断します。印が上から下まで散らばっているなら、遅れよりも値段や見積の中身を先に疑います。
数で比べるときは、社長が「遅かった」と感じる日数で表を2つに分け、それぞれで決まらなかった割合を出します。たとえば3日以内に出した40件のうち決まらなかったのが8件、4日以上かかった20件のうち12件なら、割合は2割と6割です。

決まらなかった理由の確かめ方
決まらなかった案件を、すべて見積の遅れのせいにはできません。値段が合わなかった案件や、工事や発注そのものが取りやめになった案件も混ざるからです。
客から断りの連絡があった案件は、その言葉を表の横に書き写します。そのうえで、「ほかで決めました」と言われた案件と連絡が来なくなった案件のうち、日数が長かったものだけを、遅れで逃した見込みのある案件として数えます。
数えた結果から決める自動にする作業の順番
数えた結果は、1年に見積に使う時間と、遅れで逃した見込みのある案件の売上の2つにまとめ、自動にする費用と並べて決めます。
1年分の損の出し方
遅れで逃した見込みのある案件の売上は、3か月で数えた件数を4倍し、平均の見積金額を掛けて出します。3か月で9件なら1年で36件で、平均の見積金額が50万円なら1,800万円です。遅れずに出しても全部が決まったとは限らないので、この金額は上限として見ます。3か月を4倍した数字は概算で、季節で件数が変わる会社は直近12か月分を使います。
この売上の上限から材料費や外注費を引いた粗利の見込みと、1年に見積に使う時間を、見積ソフトの年額や、仕組みを作る費用の見積と並べます。粗利の見込みが費用に届かず、見積に使う時間も社長の仕事を圧迫していないなら、今の作り方を続けて構いません。
社長が決める所と単価表から決まる所の色分け
自動にできるのは、見積書の中で単価表から決まる所だけです。最近の見積書を1枚印刷し、2色で塗り分けると、自動にできる所の広さが分かります。
- 赤で塗る所:値引き、現場ごとの例外、図面ごとの特殊な加工、短い納期の上乗せ
- 青で塗る所:品目、単位、単価、数量と単価を掛けた金額、合計
青が多い見積書ほど、単価の転記と下書きを自動にして減る時間は大きくなります。赤が多いなら、自動にしても社長の手間はあまり減らないので、受付の返信だけを先に自動にします。
下書きまで自動にすれば、私は見積を見なくて済みますか。
編集部
青く塗った所は、社長が見なくても下書きに入るようにできます。ただ、値引きと現場ごとの例外は、客との付き合いや現場の条件を知っている社長にしか決められません。自動にした後に社長が見るのは、赤く塗った所と数量だけになります。
数えた結果ごとの自動にする作業の範囲
どこまで自動にするかは、数えた結果のどこが大きかったかで、次の4つのどれかに決まります。
数えた結果 | 自動にする作業 |
|---|---|
日数の長い案件に決まらなかった印が集まり、1件の時間は短い | 受付の返信 |
1件の時間が長く、見積書に青が多い | 受付の返信、単価の転記 |
件数が多く、社長しか作れないので見積が順番待ちになる | 受付の返信、単価の転記、下書き |
時間も重なりも小さい | 自動にしない |
自動にすると決めたら、受付の返信から始めます。受付の返信は金額に触れず、今使っているメールやフォームの設定だけで始められるからです。

下書きは、単価の転記を自動にしてからでないと作れません。単価の転記ができていないと、下書きに入れる単価がないからです。
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自分で見積を自動にする手順
自分で見積を自動にするときは、受付の返信、単価の転記、下書きの順に、今使っているメールやフォームとエクセルで進めます。
受付の自動返信の設定
受付の自動返信は、問い合わせが届いたら、受け取ったことと次に連絡する日を客に返す設定で、今使っているメールやフォームで作れます。
Gmailなら、パソコンで設定の「詳細設定」を開き、テンプレートを有効にして、返信の文面をテンプレートとして保存します。次に、問い合わせ用のアドレス宛てのメールを条件にフィルタを作り、「テンプレートを送信」を選ぶと、条件に合うメールに自動で返信されます。テンプレートを使えるのは、パソコン版のGmailだけです。
(参考:Gmail でテンプレートを作成する(Gmail ヘルプ))
ホームページの問い合わせフォームにWordPressのContact Form 7を使っているなら、フォームの編集画面の「メール」タブで「メール (2) を使用」にチェックを入れます。宛先にはフォームでメールアドレスを入れてもらう欄を指定し、返信の文面を書くと、問い合わせの通知メールが送れたときに、送った人に自動で返信されます。
自動返信の文面は、次のように書きます。
お問い合わせありがとうございます。内容を受け取りました。
見積は、受け取った日から◯日以内にメールでお送りします。
現地の確認が要る工事は、先にお電話で日程をご相談します。◯に入れる日数は、記録の表で、ほとんどの見積を出せていた日数にします。守れない日数を書くと、その日を過ぎた時点で、何も返さなかったときと同じく客を待たせることになるためです。
エクセルの見積のひな形づくり
エクセルの見積のひな形は、単価表のシートと見積のシートの2枚で作り、品目を選んで数量を入れると金額が出るようにします。
単価表のシートには、A列に品目名、B列に単位、C列に単価を、1行に1品目ずつ並べます。単価表の列の書き方や「一式」の分け方は、見積の自動化を無料のAIで試して合わない原因にまとめました。
見積のシートの5行目には、次の式を入れて、使う行まで下へコピーします。
列 | 入れるもの | 5行目の式 |
|---|---|---|
A列 | 品目名 | 単価表の品目名から選ぶ |
B列 | 数量 | 手で入れる |
C列 | 単位 | =IFERROR(VLOOKUP(A5,単価表!A:C,2,FALSE),"") |
D列 | 単価 | =IFERROR(VLOOKUP(A5,単価表!A:C,3,FALSE),"") |
E列 | 金額 | =IF(OR(B5="",D5=""),"",B5*D5) |
合計は「=SUM(E5:E30)」で出します。明細を30行目より増やすときは、合計の範囲も最後の明細の行まで延ばします。値引きの行には式を入れず、社長が金額をマイナスの数で打ち込む欄にして赤く塗ります。
A列は「データの入力規則」でリストにし、単価表の品目名から選ぶようにします。エラーメッセージの設定を「停止」にしておくと、単価表に無い名前を手で打てなくなるので、打ち間違いで単価が空欄になる行を防げます。貼り付けた値には効かないので、貼り付けたときは別に確認します。
下書きと確認の分担
下書きと確認は、社員がひな形に品目と数量を入れ、社長は赤い欄と数量だけを見て金額を決める形に分けます。
現場のメモや図面を見て、社員がA列で品目を選び、B列に数量を入れます。
単価表に無い品目は、見積の下の余白に書き出し、社長に単価を決めてもらってから単価表に1行足します。
社長は、数量が現場のメモと合っているかを見て、値引きと現場ごとの例外の欄に金額を入れます。
社長が金額を決めた見積書をPDFにして、客に送ります。
1か月後の記録の取り直し
自動にした結果は、1か月後に同じ4列で記録を取り直し、最初の1か月と比べて確かめます。比べるのは、1件にかかった時間と、見積を出すまでの日数の2つです。
決まらなかった割合は、1か月では件数が少なく偶然の差が大きいので、3か月分たまってから、件数も見て比べます。
手が回らない場合に任せる範囲
手が回らない場合に任せられるのは、単価表の整理や自動返信の設定のように、社長でなくても進められる作業です。値引きと現場ごとの例外の決め方は任せず、社長が決める所として残します。
任せるときに手元にそろえるのは、次の3つです。
- 1か月分の見積の記録の表
- 2色で塗り分けた見積書
- 仕入れ先の価格表
見積書と記録の表には客の名前や金額が載っているので、外に渡す前に、客の名前など不要な情報を伏せ、渡す相手を選び、情報の取り扱いを契約で決めます。
見積の自動化は、ソフトを選ぶ前に数えてから決めます。数えた損が小さければ、今の作り方で構いません。大きかった場合に、自社の書式に合わせた仕組みを作る時間がないときは、当社(合同会社Writers-hub)が業務効率化・自動化として、定型の作業の自動化から社内システムの開発までを個別のお見積もりで引き受けます。
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