「見積書作成アプリを入れれば、自分が見積にかけている時間は減るはず」。アプリの名前や紹介に「かんたん作成」のような言葉が並ぶため、アプリさえ選べば見積が速くなると思われがちです。ところが、見積に時間がかかる原因の多くは、単価が社長の記憶や過去の見積書にばらばらに残っていることにあります。単価表と過去の見積を先に1か所にまとめれば、どのアプリを選んでも社員が下書きを作れ、社長は確かめるだけになります。
本記事では、過去の見積の集め方から、アプリを試すときの確認項目、社員と社長の分担までを、業務の自動化と社内システムの開発を手がける会社の視点で順を追ってお伝えします。
- 見積が遅くなる原因の多くは、単価と過去の見積がばらばらの場所に残っていることにある
- アプリで減るのは、単価が決まった後の入力と計算と書式を整える手間だ
- アプリを試す前に、過去1年の見積から単価表と3つの案件の型を作る
- アプリは、自社の書式、単価表の読み込み、インボイス制度の記載、請求書への引き継ぎの4つで選ぶ
- 社員が型を選んで数量を入れ、社長は数量と値引きだけを確かめる
社長が見積を毎回一から作る会社の手間
社長が見積を毎回一から作る会社では、似た案件の古い見積を探し、単価を思い出して書き写し、合計を計算し直す作業が、見積のたびにくり返されています。次の4つのどれかに当てはまるなら、アプリを選ぶ前に単価と過去の見積をまとめると、社長の手を離れる見積が増えます。
- 見積を作るたびに、似た案件の古い見積をメールやフォルダから探している
- 品目ごとの単価が、社長の記憶と古い見積書の中にしか無い
- 社長が現場や外出から戻るまで、客が見積を待っている
- 社員が作った見積を、社長が結局一から作り直している
見積の作業が社長1人に集まると、社長が現場に出ている日や休んだ日には、見積が1件も進みません。
見積書作成アプリを入れれば、社員にも見積を作れるようになりますか?
編集部
計算や書式を整える手間は、アプリで減ります。ただ、どの品目にいくらを付けるかを社員が決められる材料が無いままでは、社長に聞く回数は変わりません。単価と過去の見積を先にまとめておけば、社員はアプリの画面で品目を選び、数量を入れるだけで下書きを作れます。
見積を遅らせるばらばらな単価と過去の見積
見積が遅くなる原因の多くは、アプリが無いことではなく、単価と過去の見積がばらばらの場所に残っていることにあります。社長の記憶や紙の控え、メールに添付したPDF、案件ごとのExcelのファイルなどに単価が分かれていると、見積を1件作るたびに、どこを見ればよいかから探し始めることになります。
見積を作る作業を5つに分けると、アプリを入れて減る手間と減らない手間は次のとおりです。
見積を作る作業 | アプリを入れたとき |
|---|---|
似た案件の古い見積を探す | 過去の見積をアプリに入れるまでは減らない |
品目ごとの単価を思い出して確かめる | 単価をアプリに登録するまでは減らない |
品目と数量を書き込む | 登録した品目を選ぶだけになる |
合計と消費税を計算する | アプリが計算する |
書式を整えてPDFにする | アプリのひな形で整う |
アプリが速くするのは、単価が決まった後の作業です。
単価が1枚の表にまとまると、社員も社長と同じ単価を引けるようになります。社長が判断する所は、現場ごとに変わる数量と、客ごとに変わる値引きに絞られます。

単価表と過去の見積を1か所にまとめる手順
単価表と過去の見積は、次の4つの手順で1か所にまとめます。道具はExcelかGoogleスプレッドシートと、紙の控えを撮るスマートフォンがあれば足ります。かかる時間は見積と品目の数で変わり、品目を書き出す手順3がいちばん長くかかります。
直近1か月に出した見積について、客から依頼を受けた日と、見積を送った日を1件1行で書き出します。日付はメールやLINEの送受信の記録から拾え、1か月分なら30分ほどで終わります。アプリに変えた後の1か月と比べる数字なので、ほかの手順より先に残します。
過去1年に出した見積を、パソコンかクラウドの1つのフォルダに集めます。紙の控えはスマートフォンで撮り、メールで送ったPDFやExcelのファイルも同じフォルダに保存します。ファイル名の頭に日付を付けて客名と件名を続けると、似た案件を名前で探せます。1年分を集めるのは、季節によって出る品目を漏らさないためです。
集めた見積から、よく出る品目と単価を表計算の1枚に書き出します。列は、品目、単位、単価、よく付ける注記の4つです。注記の列には、社長が頭の中で当てはめてきた条件を書きます。
注記は、「標準工事に含む長さを超えた分だけ数える」のような数え方の決まりです。同じ品目に違う単価が付いていたら、いちばん新しい見積の単価を書きます。品目が50行ほどなら、半日が目安です。
過去1年の見積を件名で並べ、よく受ける案件を3つの型に分けます。型ごとに使う品目の組み合わせを、見積のひな形にします。どの型にも入らない案件は、社長が作る見積として残します。
エアコンの取り付けを請け負う会社なら、型とひな形に入れる品目は、たとえば次のようになります。数量の欄は空けておき、社員が現場のメモを見て入れます。
案件の型 | ひな形に入れる品目 |
|---|---|
新しく付ける | 取り付け工事、配管の延長、化粧カバー |
古いエアコンからの入れ替え | 取り外し工事、取り付け工事、古いエアコンの引き取り |
別の部屋への移設 | 取り外し工事、取り付け工事、配管の延長 |
単価表の列の書き方や、「一式」でまとめている品目の分け方は、見積の自動化を無料のAIで試して合わない原因にまとめました。
過去の見積が、紙とメールとExcelに分かれたままになっていませんか
過去1年の見積を集め、単価表と案件の型に書き出す作業は、見積の件数が多い会社ほど時間がかかります。当社は、定型業務のAI自動化から社内システム開発までを引き受けていて、料金は内容に合わせて個別に見積もります。
見積書作成アプリを試すときの4つの確認項目
見積書作成アプリを試すときは、手順3で作った単価表と、過去に出した見積1件を使って、4つの項目を確かめます。アプリには、スマートフォンで使うものと、パソコンのブラウザで使うクラウドのサービスがあります。社員がパソコンで下書きを作り、社長が外出先で確かめるなら、両方から同じ見積を開けるものを選びます。
無料プランか試用期間のうちに、過去に出した見積を1件選び、アプリで同じ見積を作り直して元の見積書と並べます。品目の名前と単価と合計が元と同じになり、客に送っても困らない見た目になれば、試したアプリは自社の見積に使えます。
無料プランは、作れる件数や使える人数が限られていることがあります。社員と社長の2人で使う場合の料金も、試用の間に確かめます。
自社の書式への近づけやすさ
自社の書式への近づけやすさは、今の見積書に載せている欄を、アプリの見積書にも出せるかで確かめます。見る欄は、ロゴや社印、有効期限、工事の条件を書く備考などです。書式が大きく変わると、前の見積と見比べる継続の客が、どこに何が書いてあるかを探し直すことになります。
単価表の読み込み
単価表の読み込みでは、手順3で作った単価表を、CSVファイルでアプリの品目に一括で登録できるかを確かめます。CSVは、ExcelやGoogleスプレッドシートから保存できるファイルの形式です。一括で登録できないアプリでは、品目を1件ずつ手で入れることになります。
あわせて、型ごとのひな形を保存できるかと、登録した品目をCSVで書き出せるかも見ます。書き出せれば、別のアプリに乗り換えるときも単価表を作り直さずに済みます。

インボイス制度の記載事項
インボイス制度の記載事項は、見積から作る請求書に、次の6つが載るかで確かめます。インボイスは、売り手が買い手に正しい税率と消費税額を伝える書類で、請求書や納品書などの名前を問わず、原則として6つが書かれた書類がインボイスになります。小売業や飲食店業などは、一部を省略した簡易インボイスを交付できる場合があります。
- 交付する相手の氏名または名称
- 自社の氏名または名称と登録番号
- 取引の年月日
- 取引の内容と、軽減税率の対象品目であればその旨
- 税率10%と8%のそれぞれの対象になる金額の合計と、適用する税率
- 税率10%と8%のそれぞれの消費税額
(参考:インボイス制度について(国税庁))
登録番号は、インボイス発行事業者の登録を受けると税務署から通知される番号です。アプリの設定のどこに入れれば請求書に出るかを、試用の間に確かめます。インボイスを出せるのは登録を受けた事業者だけなので、登録していない会社は、残りの3つの項目を先に確かめます。
請求書への引き継ぎ
請求書への引き継ぎでは、仕事が終わった後に、見積の品目と金額をそのまま請求書に写せるかを確かめます。引き継げないアプリでは、見積と同じ品目を請求書にもう一度打ち込むことになり、写し間違いが起きやすくなります。
とりわけ見落とされがちなのが、見積に無かった追加の作業が出たときの請求書です。引き継いだ請求書へ行を足せるかを、試用の間に1件作って見ます。会計ソフトを使っている会社は、請求書のデータを会計ソフトへ渡せるかもあわせて確かめます。
社員が下書きを作り、社長が確かめるだけにする流れ
社員が下書きを作り、社長が確かめるだけにするには、社員がひな形を選んで数量を入れ、社長は数量と値引きの2つだけを確かめる分担にします。単価は単価表で、品目の組み合わせは型で、社長が前もって決めてあるからです。
分担は次の表のように決め、紙1枚に書いて社員に渡します。
担当 | すること |
|---|---|
社員 | 依頼の内容から型を選び、ひな形に数量を入れて下書きを保存する |
社員 | 型に無い品目は金額を空けたまま、何の作業かを備考に書く |
社長 | 数量が現場のメモと合っているかと、値引きを入れるかを確かめる |
社長 | 型に当てはまらない案件の見積を、最初から作る |
社長が確かめる2つのうち数量は、現場で数えた広さや長さに数え違いが出やすい欄です。値引きは、継続の客か、ほかの仕事とまとめて受けるかといった客との付き合いで決まるので、社員には任せません。
下書きができたら、社員はアプリに保存し、社長に件名だけをチャットで送ります。社長はスマートフォンで下書きを開き、数量と値引きを確かめて、直す所があれば備考に書いて社員に戻します。社長が確かめた下書きだけを、客に送る決まりにします。

分担を変えて1か月たったら、手順1と同じ書き方で、依頼を受けた日と見積を送った日を書き出し、変える前の1か月と日数を比べます。社長が最初から作り直した見積の件数も数えておくと、単価表や型に足りない品目が見つかります。
見積をアプリに移してつまずく4つの場面
見積をアプリに移した後につまずきやすいのは、次の4つの場面です。下書きを直して済ませず、単価表か型を直すと、同じつまずきが次の見積で起きなくなります。
同じ品目の単価が見積ごとに違うとき
同じ品目の単価が見積ごとに違うときは、基本の単価を1つに決め、単価を上げていた理由を別の品目として単価表に足します。たとえば、高い所の作業で単価を上げていたなら、「高所作業」を1行足し、基本の単価は変えません。理由が別の行になっていれば、社員も現場の条件を見てその行を足せます。
型に当てはまらない案件が来たとき
型に当てはまらない案件が来たときは、社員がいちばん近い型で作れる所まで作り、分からない品目は金額を空けたまま社長に回します。同じ種類の案件が3回来たら、4つ目の型としてひな形を足します。
アプリと単価表で単価がずれてきたとき
アプリと単価表で単価がずれてきたときは、単価を書き換える場所をアプリの品目だけに決めます。単価表を読み込んだ後も表計算の単価表を直し続けると、2か所の単価が食い違い、どちらが今の単価か分からなくなります。読み込んだ後は、アプリの品目を自社の単価表として扱います。
社長が下書きを全部見直してしまうとき
社長が下書きを全部見直してしまうときは、数量と値引き以外の所を直した回数を、1か月ほど書き留めます。数量と値引き以外を直した下書きは、単価表か型のどこかが現場と合っていない印なので、下書きではなく単価表と型を直します。直す所が数量と値引きに絞られれば、社長が全部を見直す理由は無くなります。
単価表の整理に手が回らない場合
単価表の整理に手が回らない場合は、値引きの決まりと型の分け方だけを社長が決め、見積の収集から単価表づくり、アプリの設定までを任せる道があります。どの客にどこまで値引きするかは、客との付き合いを知っている社長にしか決められないからです。
任せるときに手元にそろえるものは、次の3つです。
- 直近1年分の見積書
- 仕入れ先の価格表
- 今使っている見積書のひな形
見積書には客の名前や住所が載っているので、外に渡す前に、秘密を守る約束を取り交わします。
単価表づくりとアプリの設定まで、社内で手が回らない状態ではありませんか
単価表の整理や、自社の書式に合う仕組みづくりから相談できます。当社は定型業務のAI自動化から社内システム開発までを引き受け、料金は内容に合わせて個別に見積もります。
まとめ|見積書作成アプリは単価表と過去の見積をまとめてから
見積が遅くなる原因の多くは単価と過去の見積がばらばらにあることで、先に1か所にまとめれば、どの見積書作成アプリでも社員が下書きを作り、社長は確かめるだけになります。今日から進めることは、次の4つです。
- 直近1か月の見積で、依頼を受けてから送るまでの日数を書き出す
- 過去1年の見積を1つのフォルダに集め、よく出る品目と単価を1枚の表にする
- よくある案件を3つの型に分け、型ごとのひな形を作る
- 無料プランか試用期間で過去の見積を1件作り直し、4つの項目を確かめる
やり方はこれで全部で、この手順どおりに進めれば自分でもできます。単価表の整理や自社の書式に合う仕組みづくりまで手が回らない場合は、私たち合同会社Writers-hubが見積の作業を整理し、自社に合った見積の仕組みを作ります(料金は内容に合わせて見積もります)。







