「無料のAIで作った見積が自社の書式にも単価にも合わないので、有料の見積ソフトでないと無理そう」。工事や加工の内容を伝えるだけで見積書の形をした表が数秒で返ってくるのに、そのまま使える行がほとんどないため、道具の性能が足りないと思われがちです。ところが、AIの見積が合わないのは、AIが自社の単価表も過去の見積も見ないまま、一般的な項目と金額で表を埋めているからです。先に単価表を作って渡せば、無料のAIでも自社の書式に沿った下書きは作れます。
本記事では、AIに渡す単価表と過去の見積の一覧の作り方から、頼み方の例文、下書きを確かめるときに見る所まで、順を追ってお伝えします。
- 無料のAIの見積が合わないのは、自社の単価と書式を渡していないから
- 単価表は、よく出る項目を1行1項目で、項目名・単位・単価・備考の4列にまとめる
- 金額と合計はAIに計算させず、下書きの表をExcelに貼って式で出す
- 客の氏名・住所や取引先の図面は、無料のAIに入れない
見積の自動化を無料のAIで試すと起きること
無料のAIに工事や加工の内容だけを伝えて見積を頼むと、見積書の形をした表は返ってきますが、自社の見積としては合わない所が4つ出ます。ChatGPTのような対話型のAIの無料版でも、見積ツールの無料プランでも、自社の品目と単価を渡していなければ同じです。
- 単価が、自社の単価ではなく一般的な金額になっている
- 数量が、現場の寸法ではなくAIが仮に置いた数字になっている
- 項目の名前と並びが、自社の見積書と違う
- 入れる項目に過不足があり、自社ならいつも入れる諸経費や運搬費が抜ける
とりわけ単価のずれは見落とされがちです。AIは、知らない単価を空欄にせず、それらしい金額で埋めることがあります。
AIの見積が自社の書式や単価に合わない原因
AIの見積が自社の書式や単価に合わないのは、見積を作るのに要る自社の材料が、AIに渡されていないからです。有料のAIに変えても、材料を渡さなければ同じことが起きます。
合わない所ごとに、AIが知らなかったことと、渡す材料を並べると次のとおりです。
合わない所 | AIが知らなかったこと | 渡す材料 |
|---|---|---|
単価 | 自社の項目ごとの単価 | 単価表 |
数量 | 現場の寸法や図面の数量 | 現地調査や図面のメモ |
項目の名前と並び | 自社の見積書の書式 | 過去の見積1件の項目名の列 |
入れる項目の過不足 | いつも入れる項目と値引きの決まり | 過去の見積10件の一覧 |

材料が渡せないのは、単価が社長の頭の中や、案件ごとのExcelのファイルに散らばっているときです。AIに頼むたびに単価を探す手間がかかるので、「〇〇工事の見積を作って」とだけ頼むことになります。
有料の見積ソフトを入れたほうが、早いのではないですか。
編集部
見積の件数が多く、何人もで見積を作る会社なら、有料のソフトが合う場面もあります。ただ、見積ソフトの多くも、自社の品目と単価を登録してから使います。単価表を作っておけば、無料のAIで使っても、有料のソフトに移っても、そのまま使えます。
先に作る単価表と過去の見積の一覧
無料のAIに見積の下書きを頼む前に作るのは、よく出る項目の単価表と、過去の見積10件の一覧の2つです。Excelの1つのファイルにシートを分けて入れておくと、AIに渡すときに探さずに済みます。
1行1項目の単価表
単価表は、よく出る工事や加工の項目を1行に1つずつ並べ、項目名・単位・単価・備考の4列で作ります。各列に書く内容は次のとおりです。
列 | 書く内容 | 書き方の例 |
|---|---|---|
項目名 | 見積書に載せる名前 | クロス張替え(量産品)、外径50mm以下の旋盤加工 |
単位 | 数量を数える単位 | m²、m、箇所、個、時間 |
単価 | 1単位あたりの金額 | 円で書き、全行を税抜にそろえる |
備考 | 単価が変わる条件と最低の数量 | 下地の補修は別の項目、10m²未満は最低料金 |
「一式」でまとめている項目は、中身を分けて1行ずつにします。「内装工事 一式」のままでは、数量が変わったときに、AIは金額を計算し直せません。
建設業なら、材料費と労務費を別の行にします。建設業法第20条により、建設業者は、請負契約を結ぶ際に、工事の種別ごとの材料費や労務費などの内訳と、工程ごとの作業と準備に要る日数を書いた見積書を作るよう努めなければなりません。見積書に書く材料費などの額を、通常必要と認められる額より著しく低くしてはなりません。
(参考:建設業法(e-Gov法令検索))
製造業なら、材料費・加工費・段取り費を別の行にします。段取り費は1回の生産ごとにかかるので、行を分けておけば、数量が増えたときの1個あたりの金額を出し直すようAIに頼めます。
過去の見積10件の一覧
過去の見積の一覧は、最近出した見積から10件を選び、1件1行で工事や加工の種類・数量・金額・値引きの理由を並べます。よく受ける工事や加工の種類が、ひととおり入るように選びます。
一覧には、値引きの理由の列が欠かせません。端数を切った、継続の取引先だった、といった社長の判断は、見積書の数字だけでは読み取れません。理由が書いてあれば、AIは下書きの備考に「一覧の3件目と同じ継続の取引先」のように、値引きを考える材料を書き添えられます。

無料のAIで見積の下書きを作る手順と頼み方
無料のAIで見積の下書きを作るときは、AIに入れない情報を先に決めてから、単価表と現場のメモを渡し、自社の書式の順で表にさせます。
無料のAIに入れない情報
無料のAIに入れないのは、客の氏名・住所・電話番号と、取引先から預かった図面や仕様書です。
客の個人情報は、見積の下書きには要りません。「A様」と置き換えて入力し、名前と住所は最後にExcelで入れます。本人の同意なく客の個人データをAIに入力し、その内容が回答を作る以外の目的に使われると、個人情報保護法に違反するおそれがあります。
(参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会))
取引先と秘密保持契約を結んでいるなら、図面をAIに入れることが、契約で禁じている第三者への開示に当たらないかを、契約書の秘密保持の条項で確かめます。判断がつかないときは、図面は入れず、見積に要る寸法と数量だけをメモに書き写して渡します。
単価表も、自社の大事な情報です。無料版のAIには、入力した内容をAIの学習に使うかどうかを利用者が設定で選べるものがあり、無料版と会社向けの有料版で入力した内容の扱いが違うサービスもあります。
使う前に、各サービスの利用規約と設定の画面で、入力した内容がAIの学習に使われるかと、使わない設定にできるかを確かめてください。ChatGPTを使うなら、ChatGPTに学習させない設定方法の手順で確かめられます。
下書きを作る手順
見積の下書きは、次の4つの手順で作ります。
AIの設定の画面で、入力した内容を学習に使う設定を切れるなら、切ってから始めます。
Excelで単価表のセルを選んでコピーし、AIの入力欄に貼り付けます。過去の見積から1件を選び、客の名前を消した項目名の列も、見本として貼ります。
現地調査で測った寸法、図面から拾った数量、搬入の条件などを、箇条書きのメモにして渡します。製造業なら、図面から拾った材質や寸法、数量、表面処理などを書きます。
見本と同じ項目の順で、項目名・数量・単位・単価・備考の表を作らせます。金額と合計はExcelの式で出すので、AIには計算させません。
頼み方の例文
頼み方の例文では、単価表にない項目と、数量が分からない項目を空欄にさせることが肝心です。空欄にさせておけば、単価表やメモに無い数字をAIが補うのを防げ、確かめる行を備考で見つけられます。
下に貼る「単価表」「見積書の見本」「過去の見積の一覧」「現場のメモ」だけを使って、見積書の下書きを表で作ってください。
・列は、左から「項目名」「数量」「単位」「単価」「備考」の順にしてください。
・項目の並びは、「見積書の見本」と同じ順にしてください。
・単価は、単価表の金額をそのまま使ってください。
・単価表にない項目は、単価を空欄にし、備考に「単価表にない」と書いてください。
・数量が現場のメモから分からない項目は、数量を空欄にし、備考に「数量を確認」と書いてください。
・金額と合計は計算しないでください。
・値引きは入れず、「過去の見積の一覧」に同じ条件の見積があれば、備考に一覧の何件目かと値引きの理由を書いてください。
【単価表】
(Excelからコピーした単価表を貼る)
【見積書の見本】
(過去の見積1件の項目名の列を貼る。客の名前は消す)
【過去の見積の一覧】
(10件の一覧を貼る)
【現場のメモ】
・6畳の洋室1部屋の、壁と天井のクロス張替え
・壁は約30m²、天井は約10m²
・家具は施主が先に動かす下書きが出たら、続けて「現場のメモから考えて、単価表の項目で入れ忘れているものはありますか」と聞きます。養生や廃材の処分のように、入れ忘れやすい項目を挙げさせられます。
AIの下書きを社長が確かめる3つのポイント
AIの下書きは、数量・単価・合計の3つを、現場のメモと単価表に1行ずつ照らし合わせてから、客に出す見積書にします。
下書きの表は、AIの画面からコピーしてExcelに貼ると、多くの場合はセルに分かれて入ります。分かれないときは、AIに「タブ区切りで出し直してください」と頼みます。
現場のメモと合う数量
数量は、現場のメモの寸法から社長が自分で出した数量と比べます。AIは、壁の面積から窓や扉の分を引くかどうかのような、自社の数え方を知りません。備考に「数量を確認」と出た行は、メモに寸法を書き足してから頼み直します。
単価表と同じ単価
単価は、下書きの項目名から単価表の単価を引く式を隣の列に入れて比べます。項目名がA列にあり、単価表のシートのA列に項目名、C列に単価があるなら、式は「=VLOOKUP(A2,単価表!A:C,3,FALSE)」です。AIが項目名を言い換えた行と、単価表にない項目の行は「#N/A」と出るので、1行ずつ目で追わなくても見つかります。
Excelの式で出す合計
金額は「数量×単価」の式で、合計はSUM関数で出します。AIは掛け算や足し算を間違えることがあり、行の多い見積ほど間違いに気づきにくいためです。
値引きは、備考に書かれた一覧の何件目かと値引きの理由を見て、社長が最後に決めて入れます。

見積の下書きと照らし合わせを、毎回手で繰り返していませんか
単価表から下書きを作り、単価を照らし合わせて合計を出す作業は、見積のたびに同じ手順になります。Writers-hubの業務効率化・自動化では、定型業務のAI自動化から社内システムの開発までを、個別のお見積もりで引き受けています。
見積の自動化と無料のAIのよくある質問
見積の下書きを無料のAIで作るときの、よくある3つの質問に答えます。
AIに単価を決めさせてもいい?
単価は、AIに決めさせません。単価は、材料の仕入値や、職人や機械にかかる時間、自社の利益などで決まるもので、AIはどれも知らないからです。新しい項目の単価は、社長が決めてから単価表に足します。
単価表は何項目から作ればいい?
単価表は、過去の見積10件に出てくる項目から作り始めれば足ります。全部の項目がそろうのを待つより、10件分の項目で下書きを作ってみるほうが、足りない項目が早く分かります。新しい項目は、見積を作るたびに1行ずつ足していきます。
Excelがなくても作れる?
Excelがなくても、Googleアカウントがあれば無料で使えるGoogleスプレッドシートで作れます。VLOOKUP関数とSUM関数も使えます。
見積の仕組みづくりに手が回らない場合
見積の仕組みづくりに手が回らない場合は、作る作業を外に任せる道もあります。単価表と一覧を最初に作るには、過去の見積を探して項目を書き出す時間がかかります。
単価表ができれば、無料のAIでも下書きは自分で作れます。自社の書式に合わせた見積の仕組みを作る時間がない場合は、当社(合同会社Writers-hub)が業務効率化・自動化として、定型の作業のAI自動化から社内システムの開発までを個別のお見積もりで引き受けます。







