社内インタビューは、社内報の企画のなかでも取りかかりやすい部類に入ります。取材相手は社内にいますし、日程も調整しやすい。それでも「載せたのに反応がなかった」という相談は絶えません。
原因の多くは、質問そのものにあります。採用サイトや社外向けの記事で使われている質問例をそのまま持ち込むと、読者である社員にとっては答えを知っている話ばかりが並ぶ記事になってしまいます。
本記事では、社員インタビューや社内報の制作を請けてきた立場から、社内インタビューの質問の選び方、目的別の質問例、人選の考え方、当日の進行、原稿確認と社内調整の進め方までを工程順に解説します。
- 社内インタビューと採用インタビューで質問が変わる理由
- 社内で機能しにくい質問と、その置き換え方
- 目的別に選べる社内インタビューの質問例
- 当日の進行と、話が短く終わったときの対処
- 原稿確認と社内調整でつまずかないための段取り
社内インタビューは読者が同じ会社の社員であることが前提になる
社内インタビューとは、社内報やWeb社内報、社内SNS、社内向けの掲示物に載せる目的で、自社の社員に話を聞く取材を指します。新入社員の紹介、他部署の仕事紹介、表彰者へのインタビュー、経営層のメッセージなどが代表的な企画でしょう。
工程だけを見れば、採用サイトの社員インタビューとよく似ています。人を選び、質問を用意し、話を聞き、原稿にする。順番は変わりません。決定的に違うのは読者です。
| 社内インタビュー | 採用インタビュー | 導入事例インタビュー | |
|---|---|---|---|
| 読者 | 同じ会社の社員 | 会社を知らない求職者 | 検討中の見込み客 |
| 主な目的 | 相互理解と情報共有 | 応募の後押し | 導入判断の材料提供 |
| 会社の説明 | ほぼ不要 | 必要 | 必要 |
| 読まれる条件 | 読者が知らない話がある | 自分と近い人がいる | 自社と近い課題がある |
| つまずきやすい工程 | 人選と社内調整 | 人選と本数の設計 | 相手企業の広報確認 |
採用インタビューの読者は会社を知りません。だから事業内容も社風も、丁寧に説明するほど価値が出るはずです。ところが社内インタビューの読者は、事業内容も社風も理解したうえで記事を開いています。同じ質問をしても、社内では「知っている答え」しか返ってこないという差がここから生まれます。
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読まれない社内インタビューは、社外向けの質問をそのまま使っている
社内報の相談を受けて質問票を見せてもらうと、Webで見つかる質問例集から引いてきたとわかる項目が並んでいることがあります。「入社の決め手は」「会社の魅力は」「どんな人と働きたいか」。採用の文脈では機能する質問ですが、社内では空振りしやすい部類です。
読者は同僚ですから、会社の魅力も求める人物像も、入社時の説明会や日々の朝礼で聞いています。そこへ改めて答えを載せても、新しい情報が増えません。
- 会社の魅力はどんなところですか
- どんな人と一緒に働きたいですか
- 入社の決め手を教えてください
- 仕事のやりがいは何ですか
- 今後の目標をお聞かせください
これらが悪い質問というわけではなく、社内という場では答えが予想できてしまう点が問題です。同じ意図でも、読者が答えを持っていない側へ振り直すと記事が動き出します。
「会社の魅力は」を「他部署から見て誤解されていると思うことは」に変える。「仕事のやりがいは」を「直近3か月でいちばん時間をかけた仕事は」に変える。抽象的な感想を聞く形から、本人しか知らない具体を聞く形へ寄せるだけで、返ってくる答えの密度が変わります。
質問を作るときの判断基準は、読者にとって既知か未知かの一点に絞れます。会社側がすでに全社へ伝えている情報は既知、その社員の手元にしかない情報は未知。この線で質問票を仕分けると、削る項目と足す項目が自然に決まってきます。

この切り分けは、新入社員の紹介企画のように毎月同じ型で回している企画ほど効いてきます。担当者の側では変化をつけているつもりでも、聞いている中身が会社側の情報にとどまっていると、読者から見た記事はどれも同じに見えてしまうためです。
新入社員の紹介記事を毎月出しているのですが、趣味と意気込みを載せるだけの同じような内容になってしまいます。
編集部
入社して間もない方は、社内の情報をまだ持っていません。ですから本人に会社を語らせるのではなく、外から来た人にしか見えないことを聞くほうが記事になります。前職や学生時代との違いで驚いたこと、配属初日にわからなかった社内用語、といった切り口です。読者側にも「そこは確かに説明不足だった」という気づきが残ります。
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人選は話がうまい人ではなく、読者が接点を持ちたい相手から決める
社内インタビューの人選は、広報や人事の担当者が知っている範囲から選ばれがちです。話が上手で、依頼しても断らない人。取材は進めやすいのですが、登場人物が固定されると読者の関心は下がっていきます。
判断の順番を変えて、読者が誰の話を読みたいのかから逆算してみてください。工場と本社が離れている会社であれば、本社の社員は工場の一日を知りませんし、その逆も同じです。接点が薄い相手ほど、記事にしたときの情報価値が高くなります。
- 読者の多数派から見て、接点が薄い部署や拠点にいる
- その人しか答えられない具体的な仕事の中身がある
- 直近1年の社内報に登場していない
- 掲載可否について本人と上長の合意が取れる見込みがある
- 撮影や氏名掲載の範囲を本人が受け入れられる
人選で見落とされやすいのが、露出の偏りです。特定の部署や特定の年次ばかりが続くと、載らない側は自分たちの仕事が扱われていないと受け取ります。年間の企画表に部署名を書き込み、偏りを目で確認できる状態にしておくと防げるでしょう。
関連記事:採用サイトの社員インタビューの作り方|誰を何人載せるかの決め方と記事の構成
社内インタビューの質問例を目的別に選ぶ
質問は数を用意するより、企画の目的に合う数問を深く聞くほうが記事になります。60分の取材であれば、主要な質問は5問から7問に収め、残りの時間を掘り下げに使う配分が扱いやすいはずです。
他部署の仕事を知ってもらう企画の質問例
社内報でもっとも需要があるのが、他部署が何をしているかを伝える企画です。業務内容の説明で終わらせず、判断や苦労の中身まで踏み込むと読み物になります。
- 昨日一日の時間の使い方を、朝から順に教えてください
- 部署の外からは見えにくい仕事を挙げるとしたら何ですか
- 他部署からの依頼で、いちばん助かる伝え方はどんな形ですか
- 逆に、依頼を受けたときに困る形はありますか
- 直近で判断に迷った場面と、最終的に決めた理由を教えてください
新入社員や中途入社の社員に聞く質問例
入社して日が浅い社員は、社内の常識をまだ持っていません。その視点は在籍が長い読者ほど新鮮に映ります。
- 入社前に想像していた仕事と、実際で違っていたことは何ですか
- 最初に意味がわからなかった社内用語を教えてください
- 前職や学生時代の環境と比べて、驚いた仕組みはありますか
- 配属されてから、誰にどんな形で助けられましたか
- いま知りたいけれど聞ける相手がわからないことはありますか
経営層や管理職に聞く質問例
経営層への取材は、方針の再掲になりがちな領域です。すでに全社で共有されている内容は前提として省き、その背景にある判断を聞き出す方向へ振ります。
- その方針を決めるまでに、選ばなかった案は何でしたか
- 判断が変わったきっかけになった出来事を教えてください
- 現場から上がってくる情報のうち、いま足りていないものは何ですか
- ご自身が新人だった頃、いまの社員に近い悩みはありましたか
表彰者やプロジェクト完了時の質問例
成果を称える記事は、称賛だけで終わると読者が再現できません。何をしたのかが分かる形で聞きます。
- 着手した時点で、いちばん見通しが立っていなかったのはどこですか
- 途中でやり方を変えた場面はありましたか
- 同じことをこれから始める人が、最初にやるとしたら何ですか
質問票は事前に本人へ送ります。社内の相手だからと省略されることがありますが、当日に思い出せない数字や経緯を調べてきてもらえる分、取材の密度が上がります。あわせて「この質問には答えたくない」という申し出も先に受け取れます。
ここまで整理すると、質問を決める作業そのものは半日もあれば終わります。実際に負荷がかかるのはこの先、取材の日程を押さえ、話を聞き、原稿にしていく工程のほうです。
質問は決まったのに、書く時間だけが確保できない
社内インタビューは、企画と人選までは担当者しか決められません。一方で、取材の同席、文字起こしからの構成、原稿執筆は外に出せる工程です。手が足りずに発行が遅れている状態であれば、どこまでを預けられるかを一度整理してみてください。
当日は準備、本題、掘り下げの3つに時間を分ける
社内の相手だからと打ち合わせの延長で始めると、雑談のまま終わって素材が残らないことがあります。時間の使い方を先に決めておくと安定します。
どの号のどの企画で、誰が読むのか、写真と氏名をどう載せるのかを口頭で確認します。録音の可否もここで取ります。
所属年数や担当業務など、考えずに答えられる質問から始めます。いきなり抽象的な問いを置くと、相手が構えたまま終わります。
用意した5問から7問を、時系列か話題の近い順に並べて聞いていきます。順番を入れ替えるのは構いませんが、飛ばした質問は手元で消し込みます。
数字、固有名詞、失敗の話が出たら、そこで止まって深掘りします。「そのときどう思いましたか」より「そのとき最初に誰に相談しましたか」のほうが、答えが具体的になります。
「載せてほしくない部分はありますか」「言い足りなかったことはありますか」の2問で締めます。後者から記事の柱が出てくることが少なくありません。
話が短く終わってしまう相手には、抽象度を下げた聞き直しが有効です。「やりがいは」で止まってしまったら、「直近で、やっていてよかったと思った具体的な場面はありますか」と言い換える。抽象的な問いに答えられないのは相手の問題ではなく、問いの粒度が粗いことが多いと考えています。

社内インタビューは取材より原稿確認と社内調整に時間がかかる
社外への取材と比べて、社内インタビューで工数が読みにくいのは原稿確認の工程です。取材そのものは1時間で終わっても、公開までに複数の関係者を通ることになります。
本人の確認、上長の確認、内容によっては該当部署の責任者や経営企画の確認。それぞれが別のタイミングで修正を返してくるため、修正が一度に来ず、順番に来ることで工数が膨らみます。
確認の依頼を同時に投げると、互いに矛盾する修正が返ってくることがあります。本人確認を先に終えて内容を確定させ、そのうえで上長へ回す順番にすると差し戻しが減ります。締切から逆算して、確認だけで1週間から10日を見ておくと安全でしょう。
修正の中身にも傾向があります。社内の記事では、本人が自分の発言を後から控えめに直したがる場面が多く見られます。「大変だった」を「多少苦労した」に、失敗の具体を「課題がありました」に置き換える方向です。読み物としての力は落ちますから、なぜその表現を残したいのかを説明したうえで、本人が受け入れられる範囲を一緒に探ることになります。
社内調整で先に決めておきたいのは、退職した社員の記事をどう扱うかです。Web社内報であれば非公開にするのか残すのか、紙であればバックナンバーの扱いをどうするのか。運用ルールがないまま件数が増えると、後から判断できなくなります。
続かなくなる原因は、企画のネタではなく段取りの積み残し
社内インタビューが途中で止まる理由として「ネタ切れ」が挙げられがちですが、相談を受けて経緯を追うと、原因は段取り側にあることがほとんどです。取材の依頼を出すのが発行直前になり、日程が合わず、埋め合わせの企画に差し替わり、質が下がって読まれなくなる。この順で起きています。

止めないための手当ては、派手なものではありません。年間の企画表を先に埋めること、依頼を発行の2か月前に出すこと、質問票と依頼文をテンプレートとして持っておくこと。取材が1本前倒しで進んでいる状態を保てば、誰かの都合で1本落ちても穴が開きません。
ネタの引き出しとしては、部署紹介、新入社員、表彰、プロジェクト完了報告、資格取得、社内制度の利用者、長期勤続者といった軸を年間で回す形が扱いやすいでしょう。同じ軸でも、聞く相手が変われば中身は重なりません。
社内報の発行が遅れがちで、担当者が抱えきれなくなっている
社内インタビューは、続けるほど社内の理解が進む一方で、担当者ひとりに工数が集中しやすい企画です。テンプレートの整備や執筆手順の共有まで含めて、社内で回せる形にする支援も行っています。
内製と外注は工程ごとに分けて考える
社内インタビューをすべて内製で行うか、外部に任せるかという二択で考えると判断を誤ります。工程によって、社内でなければできないものと、外に出せるものが分かれるためです。
| 全工程を内製 | 人選と確認は内製、取材と執筆は外注 | 全工程を外注 | |
|---|---|---|---|
| 企画と人選 | 社内 | 社内 | 外部(社内の事情が反映されにくい) |
| 取材と執筆 | 社内 | 外部 | 外部 |
| 社内調整 | 社内 | 社内 | 社内(結局は社内で行う) |
| 担当者の負荷 | 大きい | 中くらい | 小さい |
| 発行の安定性 | 担当者次第 | ◎ | ○ |
| 費用 | 人件費のみ | 中くらい | 大きい |
人選と社内調整は、社内の人間関係や部署間の事情を知らなければ判断できません。一方で、質問票の設計、取材の同席と進行、文字起こしからの構成、原稿の執筆は、外部でも品質を保てる工程です。負荷が集中しているのはたいていこの後半側でしょう。
全工程を外注する形も選べますが、人選と社内調整は結局社内で動くことになるため、想定したほど負荷が減らない場合があります。費用対効果で見ると、真ん中の分け方に落ち着く会社が多いように見ています。
社内インタビューでよくある質問
社内報の担当者から受けることが多い質問を、実務での判断とあわせてまとめました。
主要な質問は5問から7問で足ります。60分の取材であれば、質問を消化する時間は半分程度に収め、残りを掘り下げに使う配分が現実的です。質問数を増やすほど、一問あたりが浅くなります。
社内インタビューでは渡すほうが有利です。数字や経緯を調べてきてもらえるうえ、答えたくない項目を先に把握できます。用意された答えを超えたい場合は、当日その場で掘り下げる質問を追加してください。
質問の抽象度を下げます。「やりがいは」ではなく「直近でよかったと思った場面は」のように、思い出せば答えられる形に言い換えると、返ってくる情報量が変わります。
必要です。メモだけでは発言の言い回しが残らず、原稿の確認時に「そう言っていない」という指摘を確かめる手段もなくなります。冒頭で許可を取ってから録音してください。
語順の整理、言い淀みの削除、重複の圧縮までは通常の範囲です。話していない内容の追加や、意味が変わる言い換えは避けます。判断に迷う箇所は、原稿確認の際に本人へ理由を添えて確認するのが安全です。
細かい判断はいずれも、続けるうちに社内の基準として固まっていく類のものです。最初の数本で迷った箇所をメモに残し、次号から使える判断のルールとして書き足していくと、担当者が交代しても品質が落ちにくくなります。
次の号の社内インタビューから、進め方を変えてみたい
質問の選び方を変えるだけでも記事は変わりますが、取材と執筆の工数そのものが足りていない場合は、外に出せる工程を切り出すほうが早く進みます。現在の発行体制と、どの工程で止まっているかをお聞かせいただければ、分担の案をお出しします。
まとめ|社内インタビューは読者が知らないことを聞く企画
社内インタビューがうまくいかないとき、原因は文章の技術ではなく質問の選び方にあることが大半です。読者は同じ会社の社員ですから、会社の説明や理念の再確認を載せても新しい情報になりません。読者が答えを持っていない側から質問を組み立てる。この一点を変えるだけで、他部署の仕事の中身や判断の理由といった、社内報でしか読めない内容が記事に残るようになります。
工程としては、人選と社内調整に社内の判断が要り、取材と執筆には時間が要ります。前者を担当者が押さえ、後者の負荷を減らす形にすると、発行を止めずに続けやすくなるはずです。
合同会社Writers-hubでは、社員インタビューや社内報の記事制作を、取材の同席から執筆、社内で回せる体制づくりまで支援しています。企画は決まっているのに手が回らない、内容が毎回似てしまうといった状態であれば、現状をお聞かせください。








