「来期のSEOは、流入を前年の1.5倍で」。期の計画を作る時期になると、この種の数字が先に決まってしまうことがあります。売上や人員の計画が前年比で組み立てられている会社ほど、同じ物差しをSEOにも当てるのが自然に見えるためでしょう。そして半年後にその数字を見返したとき、届いていても届いていなくても、次に何を変えればよいのかが出てこない、というご相談を受けます。
しかし、キーワードの設計から記事の制作、公開後の数字の確認までを事業会社と一緒に進めてきた弊社の立場から申し上げると、SEOの目標は1つの数字にまとめた時点で使えなくなるのです。経営に報告するための数字と、現場が毎週見て手を動かすための数字とでは、動く速さも、外れたときの読み方も違います。
本記事では、目的や指標との切り分けから、目標値の積み上げ方、届かなかったときの原因の絞り込み、経営層への説明の順序まで、記事制作と運用の両方に関わってきた立場で順を追ってお伝えします。
- 目的・目標・KPIが、それぞれ担っている役割の違い
- 経営に約束する目標と、現場が毎週動かす目標の分け方
- 検索需要の上限から目標値を積み上げる4つの手順
- 立ち上げ期・伸長期・安定期で入れ替わる目標の置き方
- 目標に届かなかったときに、原因を4つに絞り込む見方
SEOの目標と目的とKPIの違い
SEOの目標とは、検索経由で得たい成果を、数字と期限のセットで表したものを指します。「来年3月までに、自然検索からの問い合わせを月30件」。ここまで書けて、ようやく目標と呼べる状態になります。数字しかない、あるいは期限しかない状態は、まだ方針の段階にとどまっているとお考えください。
ここで一度、並べて使われることの多い3つの言葉を整理しておきます。
目的は、なぜSEOに取り組むのかという理由(広告以外に問い合わせの経路を持ちたい、など)。目標は、いつまでにどこまで到達するかという到達点。KPIは、その到達点に向かっているかを途中で確かめるための数字です。3つは上から順に決まり、逆からは決まりません。
順番が逆になると、指標の議論から始まってしまいます。どの数字を追うかを最初に話し合う会議は、一見すると前に進んでいるようでいて、そもそも何のために検索から人を集めるのかが共有されていないため、指標を足す方向にしか結論が出ません。
目的と目標が混ざると何が起きるか
目的が抜けたまま数字だけが置かれると、達成しても社内で何が良くなったのかを説明できなくなります。流入が1.5倍になった、それで事業は何が変わったのか。この問いに答えられない報告は、翌期の予算を取る場面で弱くなるものです。
逆に、目的だけがあって数字がない状態も動きません。「認知を広げたい」だけでは、今月どの記事を作るべきかが決まらないためです。目的は方向を、目標は距離と期限を担います。両方がそろって初めて、週次の作業に落ちていきます。
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SEOの目標を2つに分ける考え方
ここからが、本記事でいちばんお伝えしたい部分です。SEOの目標を1つの数字にまとめようとすると、ほぼ確実に扱いづらくなります。性格の違う2種類を、別の数字として持つほうがうまくいきます。

分け方の軸は単純で、その数字を今週の自分の行動で動かせるかどうかです。動かせないものは約束する側へ、動かせるものは運用する側へ置きます。
経営に約束する目標
自然検索経由のコンバージョン数、商談の件数、受注金額。この層に置く数字は、事業側の会話で使われる言葉と一致している必要があります。経営会議で「表示回数が伸びました」と言っても議論が噛み合わないのは、その数字が事業の言葉になっていないためです。
見る周期は四半期から半期が扱いやすいでしょう。SEOは手を入れてから結果が出るまでに時間差があり、月単位で上下させても判断材料になりません。
現場が毎週動かす目標
公開した記事の本数、書き直した記事の本数、対象キーワードの表示回数、10位以内に入っているキーワードの数。この層は、担当者が今週動かせる数字だけで構成します。
動かす側の目標には、自分の行動の量を表す数字(公開本数・改善した記事数)と、その結果として先に動く数字(表示回数・掲載順位)の両方を入れておくと、手は動いているのに何も変わらない状態を早めに見つけられます。
とりわけ見落とされがちなのが、動かす側の目標は達成しても報告する必要がない、という点です。ここを経営に報告し始めた瞬間に、数字が守りに入ります。
2つを1つにまとめたときの弊害
よく起きるのが、コンバージョン数のような遅い数字を、そのまま担当者個人の月次目標に据えてしまうケースです。担当者が今月どれだけ丁寧に記事を作っても、その結果が表に出るのは数か月先になります。評価される期間と成果が出る期間がずれているため、短期で数字が動く施策へ寄っていきます。
約束する目標と動かす目標は、別の数字として持ちます。この分け方をしておくだけで、月次の会議で話す内容が「なぜ届かなかったのか」から「今週何を作るか」へ移ります。
目標を2つ持つと、管理する表が二重になって面倒ではありませんか。
編集部
はい、最初のひと月は手間が増えます。ただ増えるのは表の数であって、見る回数ではありません。約束する側は四半期に1回だけ開き、週次の会議では動かす側しか見ない。この運用にすると、むしろ毎週の議題が短くなります。二重に見えるのは、両方を毎月報告しようとしたときだけです。
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目標に置ける指標と置けない指標
2つに分けたうえで、それぞれに何を置くかを決めます。ここで毎回議論になるのが、検索順位の扱いでしょう。
検索順位は、動かす側の目標になら置けます。ただし条件があり、対象を自分たちで選んだ十数個のキーワードに限ること、そして順位そのものではなく「10位以内に入っている数」のように束で数えることです。個別の順位は日々揺れるため、1語ずつ追いかけると判断が振り回されます。
約束する側の目標に検索順位を置くのは避けてください。順位が上がっても問い合わせが増えない状況は珍しくなく、そうなったときに「目標は達成したが成果はゼロ」という報告になります。経営から見て意味のある数字だけを、約束する側に残してください。
指標そのものの選び方と、それぞれの数字が何を意味するかについては、SEOのKPIの選び方をまとめた記事で詳しく整理しています。目標の器を決めたあと、中身の指標を選ぶ段階で合わせてお読みいただくと早いはずです。
関連記事:SEOの仕組みとは?順位が決まる3段階と自社で動かせる範囲を解説
SEOの目標値を出す4つの手順
器と指標が決まったら、具体的な数字を入れます。ここで前年比や他社の事例から引っ張ってくると、根拠のない数字になってしまいます。順序は、事業の数字から下ろし、検索需要の上限で頭を押さえる、という往復です。
年間の受注目標のうち、検索経由でまかないたい割合を決めます。たとえば年間120件の新規受注のうち、3割を検索経由で取りたいのであれば、必要なコンバージョン数は商談化率と受注率から逆に割り戻して求めます。ここで出るのは、あくまで「欲しい数字」です。
次に、その数字が物理的に届く範囲にあるかを確かめます。対象にするキーワード群の月間検索数を合計し、それが検索需要の天井になります。合計が月3,000回しかない領域で、月500件の問い合わせを目標に置くことはできません。この突き合わせを飛ばすと、初めから届かない数字を1年追い続けることになります。
検索需要のうち自社がどれだけクリックを取れるかと、訪問した人のうち何人が問い合わせるかを掛けます。クリック率は順位と検索語の種類で大きく変わるため、一般的な目安表ではなく、自社のサーチコンソールで似た種類のキーワードの実績値を平均して使ってください。コンバージョン率も同様に、記事ページからの実績値を使います。サービスページの数字を流用すると、必ず過大な目標になります。
年間の数字を12で割らないでください。記事は公開してから評価されるまでに時間差があり、前半は仕込み、後半に効いてくる形になります。前半は動かす側の目標(公開本数・表示回数)を厚く、後半にかけて約束する側の数字を上げる配分にします。あわせて、どうなったら目標を置き直すかの条件をこの時点で決めておきます。
目標値は願望からではなく、検索需要の上限から積み上げます。2つ目の手順を飛ばした目標は、努力の量では埋まりません。

クリック率や表示回数の定義は、サーチコンソールの公式ヘルプで確認できます。社内で数字の解釈がずれているときは、一度ここに戻ると早く片付きます。

事業フェーズ別の目標の置き方
同じ手順を踏んでも、サイトが今どの段階にあるかで、主役に置く目標は入れ替わります。立ち上げたばかりのサイトにコンバージョン数を約束させても、判断材料が集まりません。
| 立ち上げ期(0〜6か月) | 伸長期(6〜18か月) | 安定期(18か月〜) | |
|---|---|---|---|
| 主役に置く目標 | 公開本数と表示回数 | 10位以内のキーワード数と流入数 | コンバージョン数と単価 |
| 見る周期 | 月次 | 月次と四半期 | 四半期 |
| 判断できるまでの期間 | 3〜6か月 | 3か月 | 1か月 |
| よくある失敗 | 早すぎる成果判定 | 本数を増やし続けて質が落ちる | 新規制作を止めて順位が下がる |
表の右へ行くほど、判断までの時間が短くなる点に注目してください。データが貯まるほど予測の精度が上がるためです。逆に立ち上げ期は、3か月で成果が出ないという理由で施策を止めてしまう判断が、最ももったいない失敗になります。
目標を外したときの切り分け方
目標設計の解説であまり触れられないのが、外れたあとの扱いです。実務では、達成したかどうかより、外れた理由を特定できるかどうかのほうが効きます。
目標は当てるためではなく、外れた理由を特定するために分解します。分解する層は4つで、上から順に見ていきます。

1つ目は検索需要です。表示回数そのものが想定より小さいなら、選んだキーワードの領域が狭すぎたか、季節の影響を読み違えています。打ち手は記事の改善ではなく、対象領域の見直しになります。
2つ目は掲載順位。表示回数は出ているのに順位が上がらない場合、競合との情報量や信頼性の差が原因であることが多く、新規制作より既存記事の書き直しが効きます。
3つ目はクリック率です。順位は取れているのに流入が伸びないなら、検索結果に出ているタイトルと説明文が、検索した人の知りたいことと噛み合っていません。ここは比較的短期間で手を入れられる層になります。
そして4つ目がコンバージョン率。流入は目標どおりなのに問い合わせが増えないなら、原因は記事ではなく、記事から申し込みまでの流れの側にあります。記事を増やしても解決しません。
4層のどこで止まっているかで打ち手がまったく変わるため、未達の会議では「何が足りなかったか」ではなく「どの層で止まったか」から話し始めてください。会議の時間が半分になります。
どの層で止まっているかは分かったものの、直す手が足りていませんか
原因が掲載順位の層にあると判明したあと、必要になるのは分析ではなく既存記事を書き直す時間です。対象が30本を超えたあたりから、社内のリソースだけでは追いつかなくなるでしょう。弊社は数多くのSEO記事を制作してきた体制で、新規の制作と既存記事の書き直しの両方をお引き受けしています。未達だった指標の一覧をお持ちいただければ、着手の順番からご提案します。
経営層に目標を説明する順序
社内で目標を通すときは、数字そのものより説明の順序で結果が変わります。
①事業のどの数字に効かせるのか ②その領域の検索需要の上限はどこか ③上限から逆算するといくつになるか ④届かなかったときに何を見直すか。この順で話すと、数字の大小ではなく前提の妥当性が議題になります。とくに④を最初に伝えておくと、未達の報告が責任の話に流れにくくなります。
裏を返せば、③だけを持って行く説明が最も通りにくい形です。数字の根拠を聞かれた時点で、②に戻って話し直すことになるためでしょう。
SEOの目標設定で避けたい型
最後に、相談の場で実際によく見かける置き方を挙げます。どれも一見すると筋が通って見えるものばかりです。
- 前年比だけで決めた目標(検索需要の上限と突き合わせていない)
- 競合サイトの数字をそのまま置いた目標(サイトの規模と歴史が違う)
- 指標を10個以上並べた目標(どれが主役か決まらず、全部が観測値になる)
- 期限のない目標(いつ判定するかが決まらず、永遠に途中経過になる)
- 一度決めたまま1年見直さない目標(検索需要も競合も動いている)
このうち最もよく見るのは、最後の見直しの欠如です。決め方が丁寧でも、半年後の前提が変わっていれば数字は合わなくなります。四半期に一度、前提のほうを点検する時間を先に予定へ入れておいてください。
SEOの目標についてよくある質問
ご相談の場で実際に多く出る質問にお答えします。
約束する側は1年、動かす側は四半期が扱いやすい長さです。SEOは公開から評価が固まるまでに数か月かかるため、半年未満の約束は判断材料が足りないまま期限を迎えます。逆に動かす側を1年で置くと、途中の軌道修正ができません。
最初の3か月は数値目標を置かず、公開本数だけを目標にしてください。自社のクリック率もコンバージョン率も分からない状態で逆算しても、仮定の上に仮定を積むことになります。3か月ほど記事が貯まれば、自社の実績値で計算し直せるようになります。
先に4つの層のどこで止まっているかを確かめてください。検索需要の層で止まっているなら、修正すべきは目標値です。ほかの3層で止まっているなら、目標ではなく打ち手を変える場面でしょう。原因を見ずに数字だけ下げると、次も同じ理由で届きません。
動かす側の目標であれば置けます。ただし1語ごとの順位ではなく、選んだキーワード群のうち10位以内に入っている数として数えてください。個別の順位は日ごとに揺れるため、週次の判断には使いづらい数字です。
枠組みは変わりませんが、クリック率を固定値で置かないでください。表示回数が伸びてもクリックが伸びない動きが出ている領域があり、過去の実績値をそのまま使うと計算が合わなくなります。四半期ごとに自社の実績でクリック率を置き直す運用にしておけば、変化を数字として拾えます。
共通しているのは、目標そのものより、判定の前提をどこまで先に決めてあるかという点でしょう。
目標は置いたものの、そこへ届く記事の設計がまだ決まっていませんか
検索需要の上限を数える作業は、対象にするキーワードの範囲を決める作業と同じものです。ここが決まっていないと、目標値の根拠も、毎月何本作るかの判断も置けません。弊社はキーワードの設計から記事の制作までを一続きでお引き受けしています。今お持ちの目標と現在の数字を伺いながら、届く範囲にあるかの確認から一緒に進められます。
まとめ|約束する目標と動かす目標の二本立て
SEOの目標は、1つの数字に役割を詰め込むと動かなくなります。経営に約束する数字は四半期で見る遅い数字、現場が動かす数字は今週の行動で変えられる数字。この2つを別に持つところから始めてください。
数値の出し方は、事業側から下ろした希望と、検索需要の上限から積み上げた現実を突き合わせる往復です。そして置いた目標は、当てるためではなく分解するために使います。検索需要、掲載順位、クリック率、コンバージョン率の4層のどこで止まったかが分かれば、次の月に何をするかはその場で決まります。目標の数字より、外れたときに何を見るかを先に決めます。
私たち合同会社Writers-hubは、狙うキーワードの設計から記事の制作、公開後の数字の確認までをまとめてお引き受けしています。目標の数字に根拠が置けていない、あるいは目標は決まったのに作る手が足りない。どちらの段階からでもご相談いただけますので、今の数字を見せていただくところからお声がけください。








