「Web戦略を立てるなら、まず3C分析やSWOT分析を一通り埋めるところから」。マーケティングの研修や入門書では分析の型から教わることが多いため、表を埋め終えれば戦略ができあがると考えている担当者の方もいるでしょう。
しかし、企業のSEO記事の制作を、何を書くかを決める段階から支援してきた弊社の立場から言えるのは、Web戦略で先に決めるのは、Webに任せる役割とやらない施策だということです。分析の表は判断の材料で、埋め終えても明日どの施策に誰が何時間使うかは決まりません。
本記事では、Web戦略の意味から、立てる手順、Webに任せる役割の選び方、計画を実行で止めない書き方まで、Web施策を実行する側で記事を作ってきた視点で順を追ってお伝えします。
- Web戦略は、Webに任せる役割と、人と予算の配分と、やらない施策を決める計画
- 立てる順番は、目標の数字、対象の顧客と検討段階、現状、役割と手段、担当と予算
- 手段は、顧客がWebを見る検討段階と、成果が出るまで待てる期間で1〜2つに絞る
- 計画が実行で止まるのを防ぐには、担当者と月の作業時間、社内の確認の期限まで書く
Web戦略とは何を決める計画か
Web戦略とは、事業の目標を達成するために、Webサイト・検索・広告・SNSなどのWebの手段に何を任せ、どこに人と予算を割くかを決めた計画です。決める中身は、追う数字、対象の顧客、Webに任せる役割、使う手段、担当と予算の5つです。
「Webを活用して売上を伸ばす」という方針だけでは、Web戦略として使えません。方針からは、どの施策を始めてどの施策を見送るかが決まらないためです。
Web戦術との違い
Web戦術とは、Web戦略で決めた役割を果たすための具体的な実行方法です。戦略が「Webに何を任せ、何をやらないか」を決め、戦術が「任せた役割をどう実行するか」を決めます。
項目 | Web戦略 | Web戦術 |
|---|---|---|
決めること | Webに任せる役割・対象の顧客・人と予算の配分 | 役割を果たすための施策と作り方 |
例 | 依頼先を比べている法人からの問い合わせをWebで受け持つ | 料金の比べ方を解説する記事を月4本公開する |
見直す間隔の目安 | 半年から1年ごと | 月ごと・施策ごと |
戦術から先に決めると、SEO記事もSNSも広告も「効きそうだから」で始まり、どれを止めるかを判断する基準が残りません。
経営戦略・マーケティング戦略との関係
Web戦略は、経営戦略とマーケティング戦略の下に置かれる計画です。経営戦略が事業の目標を、マーケティング戦略が「誰に何をどう売るか」を決め、Web戦略はそのうちWebで受け持つ部分を決めます。
売る相手や主力の商品が社内で決まっていない段階では、Web戦略も決められません。Web戦略を任された担当者は、手順に入る前に、営業や経営層へ今期いちばん売りたい商品と相手を確かめておくと、手順の1つ目で迷わずに済みます。

Web戦略がないと何が起きるか
Web戦略がないままWeb施策を始めると、施策を止める基準も増やす基準もないため、手を付けた施策がどれも少しずつしか進まない状態になります。弊社が記事制作の相談を受けるときも、次のどれかに当てはまる状態から話が始まることがあります。
- SEO記事・SNS・広告を同時に始め、どれも担当者の空き時間で回している
- アクセス数は増えたのに、問い合わせの数が変わらない
- 制作会社や担当者が替わるたびに、サイトの方針が変わる
- 施策の成果を何の数字で判断するかが決まっていない
アクセスが増えても問い合わせが増えないのは、集めた読者が自社の顧客になりうる人かを、施策を選ぶ前に決めていないためです。たとえば法人向けのサービスで、学生が調べる用語解説の記事を増やすと、アクセス数は伸びても問い合わせにはつながりません。手順の2つ目で「誰の、どの検討段階を受け持つか」を決めるのは、読者と顧客のずれを防ぐためです。
Web戦略を立てる5つの手順
Web戦略は、目標の数字、対象の顧客と検討段階、現状、役割と手段、体制と予算の順に決めると、前の手順の答えを次の手順の判断に使えます。
事業の目標(KGI、最終的に達成したい数字)から逆算して、Webで追う数字(KPI、途中の目安の数字)を決めます。たとえば年間の受注を24件増やしたい会社で、Webからの問い合わせの4件に1件が受注になるなら、Webで追う数字は年96件の問い合わせです。受注率は業種や商談の進め方で大きく変わるため、営業の記録にある自社の数字を使います。
対象の顧客と、その顧客が課題に気づく・解決策を比べる・依頼先を比べるのどの段階でWebを見るかを決めます。法人向けの商材では、検索する担当者と決裁する上司が別の人であることが多く、担当者が上司に説明するための料金や事例もWebに置く必要があります。
Googleサーチコンソールで自社サイトに来る検索語句を、Googleアナリティクスで問い合わせまでの経路を確かめます。あわせて、対象の顧客が打ちそうな語句で検索し、上位に出る競合のページが何を載せているかを見ます。
調べた結果から、Webに任せる検討段階と、使う手段を1〜2つに絞ります。人手が限られる会社ほど、手段を増やすより1つの手段を成果が出るまで続けた方が、何が効いたかを数字で判断できます。
手段ごとの担当者、月あたりの作業時間、外注する工程と予算、計画を見直す月を決めて計画書に書き込みます。担当者と作業時間が空欄のままだと、計画は立っても実行が始まりません。
手順の3つ目で使うGoogleサーチコンソールは、自社サイトが検索結果に表示された回数や、表示されたときの検索語句をGoogleが無料で確かめられるようにしているツールです。

Webに任せる役割の選び方
Webに任せる役割は、顧客がWebを見る検討段階と、成果が出るまで待てる期間の2つで選びます。Webの手段ごとに、受け持ちやすい検討段階と、成果が出るまでの期間が違うためです。
| 受け持ちやすい段階 | 成果が出るまでの期間 | 向いている会社 | |
|---|---|---|---|
| SEO(検索からの流入) | 課題に気づく・解決策を比べる・依頼先を比べる | 数か月から1年 | 同じ悩みで検索する人が一定数いる |
| リスティング広告 | 依頼先を比べる | 出稿した日から | 1件の受注で広告費を回収できる |
| 事例・料金のページ | 依頼先を比べる | 公開した日から | 問い合わせの前に他社と比べられることが多い |
| SNS・メール | 既に接点のある人との関係を保つ | 数か月 | 投稿や配信を続ける担当者を置ける |
※ 期間は弊社が記事制作で関わってきた案件での目安です。競合の多さ、サイトの運用歴、公開する本数によって前後します。
問い合わせを今月から増やしたい会社は、リスティング広告と事例・料金のページから始めます。半年以上かけて、広告費をかけずに問い合わせの入口を増やしたい会社は、SEOを役割の中心に置きます。検索する人がまだほとんどいない新しい商材では、SEOで記事を増やしても読まれる機会が少ないため、先に広告や展示会で名前を知ってもらう手段を選びます。
SEOは成果が出るまで時間がかかるなら、広告だけで十分ではないでしょうか。
編集部
広告だけで受注の数字に届くなら、広告に絞るのも1つの選び方です。ただ、広告は出稿を止めた日から流入も止まります。記事は公開した後も検索結果に残るので、広告費を下げた月も問い合わせの入口が残ります。
SEOを選んだ場合に見落とされがちなのが、記事を作る順番です。記事は、検索数の多い語句より、依頼先を比べる段階の語句から作ります。「〇〇 費用」「〇〇 比較」のような語句で検索する人は依頼先を探している最中で、用語の意味を調べる人より問い合わせに近いためです。
SEOに任せると決めた後、どの語句から記事にするかで手が止まっていませんか
SEOキーワード戦略設計では、検索する人の検討段階ごとに語句を分け、問い合わせに近い語句から記事を作る順番を決めます。何本の記事を、どの順番で作るかまで決めてから制作に入れます。
Web戦略が実行で止まる理由
Web戦略が実行の途中で止まるのは、施策に要る作業時間と担当者を計画書に書かないまま始めた場合が多いと見ています。SEO記事を例にすると、1本を公開するまでに、語句と構成を決める、書く、社内で内容を確認する、サイトに入れるの4つの工程があります。
4つの工程のうち止まりやすいのが、社内の確認です。専門的な内容の記事では、正しさを確かめられるのが現場の責任者や技術者に限られ、本業の合間に確認するため、原稿が数週間戻らないこともあります。計画書に「SEO記事を月4本」とだけ書くと、確認に誰が何時間使うかが決まらず、確認待ちの原稿がたまっていきます。

計画書には、施策の名前と本数に加えて、次の項目を書いておきます。
- 手段ごとの担当者の名前
- 担当者が月に使える作業時間
- 社内で内容を確認する人と、確認を返す期限
- 外注する工程と、社内に残す工程
- 計画を見直す月と、そのときに見る数字
外注する場合も、目標と優先順位の判断、自社にしかない事例や数字の提供、内容の確認の3つは社内に残ります。調査・構成・執筆・入稿は外に任せられますが、判断と自社の事例まで外に出すと、どの会社のサイトにも載せられる記事になり、依頼先を比べている読者が自社を選ぶ理由が記事から消えます。
戦略は立てたのに、半年で記事の更新が止まりました。人を増やすしかないのでしょうか。
編集部
人を増やす前に、どの工程で原稿が止まっているかを確かめてみてください。書く工程でなく社内の確認で止まっているなら、確認する人と返す期限を決めるだけで再開できることがあります。
社内の確認にかかる時間を短くするには、確認する人に原稿全体を渡さず、事実を確かめてほしい箇所だけを質問の形で渡します。原稿を最初から読み直す作業が数か所の質問への回答に変わるため、本業の合間でも返しやすくなります。
記事の確認待ちで、公開の予定がずれ込んでいませんか
記事コンテンツの制作支援では、構成・執筆・入稿を外部の編集部が受け持ち、社内の方には事実を確かめる箇所だけを確認していただく形で制作を進めます。専門家の確認にかかる時間を減らしたい会社に向いています。
Web戦略に使うフレームワーク
Web戦略のフレームワークは、5つの手順のうちどこで判断材料を集めるかで選びます。よく使われる4つを、使う手順と分かることで並べると次のとおりです。
フレームワーク | 使う手順 | 分かること |
|---|---|---|
3C分析 | 自社と競合の現状を調べる | 顧客・競合・自社の3つの視点から見た現状 |
STP分析 | 対象の顧客を決める | 市場の分け方と、狙う層と、自社の立ち位置 |
カスタマージャーニーマップ | 検討段階を決める | 顧客が課題に気づいてから依頼するまでの行動と、各段階で見る情報 |
SWOT分析 | 役割と手段を絞る | 自社の強み・弱みと、外部の機会・脅威 |
フレームワークの表を埋め終えても、やらない施策は書かれていません。4つを全部埋めるより、今の手順で迷っている判断に要る1つだけを使う方が、次の手順へ早く進めます。
Web戦略についてよくある質問
Web戦略について、相談の場でよく聞かれる3つの質問に答えます。
Web戦略のうち、現状の調査、キーワードの設計、記事や広告の制作は外注できます。目標の数字と、やらない施策を決める判断は社内に残します。自社の売上や営業の状況を知っているのは社内の人だけだからです。
担当者が1人の会社ほど、Web戦略が必要です。使える時間が限られるため、手段を1つに絞る根拠がないと、SNSも記事も少しずつ手を付けて、どれも成果を判断できる量に届きません。計画書はA4用紙1枚でも足ります。
役割と配分は半年から1年ごと、施策の中身は月ごとに見直すのが目安です。SEOのように成果が出るまで数か月かかる手段を、1〜2か月の数字だけで止めると、効果が出る前に打ち切ることになります。
まとめ|Web戦略は施策を増やすより役割を絞る
Web戦略とは、Webに任せる役割と、やらない施策を決める計画です。目標の数字から逆算し、対象の顧客と検討段階を決め、手段を1〜2つに絞り、担当者と作業時間まで書くと、計画を実行に移せます。
施策の数を増やす前に、Webに任せる検討段階を1つ決めることから始めてみてください。役割が決まれば、使う手段も、やらない施策も、そこから選べます。
私たち合同会社Writers-hubは、SEO記事の制作と、何をどの順番で書くかを決めるキーワード戦略の設計を通じて、企業のWeb戦略のうち検索から問い合わせを得る部分を支援しています。
自社のWebに何を任せるか、まだ決めきれていませんか
今の問い合わせの経路と、使える人手と予算をうかがい、Webに任せる検討段階と、最初に取り組む手段を一緒に整理します。SEOに任せるかどうかを決める前の段階からご相談いただけます。







