「SEOの目的は、検索で1位を取ることですよね」。社内の勉強会でこう聞かれる場面は、今でも珍しくありません。そう受け取られる理由ははっきりしていて、SEOを説明する資料の多くが検索結果の画面から話を始め、上から並んだ枠のどこを取るかという構図で全体を描くためでしょう。
しかし、事業会社のキーワード設計から記事の制作、公開後の数字の確認までを引き受けてきた弊社の立場から申し上げると、SEOの目的は自社の中だけでは決められません。検索する人がすでに抱えている用事と、自社が答えられる範囲とが重なったところにしか、目的は置けないためです。順位はその重なりを取りに行った結果として動く数字にすぎないと考えています。
本記事では、目的と手段の切り分けから、企業がSEOに取り組む5つの目的、目的を3つの層に分けて置く考え方、そして目的を実際の検索語へ翻訳する手順まで、記事を作って公開後の数字まで見てきた立場で順を追ってお伝えします。
- 検索順位がSEOの目的になれない理由と、手段との見分け方
- 企業がSEOに取り組む5つの目的と、それぞれの向き不向き
- 事業・接点・記事の3つの層に目的を分けて置く考え方
- 目的を実際に検索されている言葉へ翻訳する4つの手順
- SEOが目的に合わない4つの状況と、範囲を変えて使う方法
SEOの目的とは何を指すのか
SEOの目的とは、検索という経路を使って自社が何を得たいのかという理由を指します。検索結果で上位に表示されることは、その理由へ近づくための手段のひとつです。ここが入れ替わったまま進むと、順位は上がったのに社内では何も変わらないという、扱いに困る結果だけが残ります。
目的と手段は、達成したあとに続きがあるかどうかで見分けられます。1位を取ったあと、その1位で何をするのか。ここに答えが用意されていれば目的があり、答えが出てこなければ、順位が目的の席に座っている状態だとお考えください。
検索している人は、検索エンジンを使いたくて検索しているわけではありません。調べたい、比べたい、決めたいという用事があり、それを片付ける道具として検索窓を開いています。企業側が置ける目的は、その用事と自社が答えられる範囲とが重なった部分だけに限られます。
つまり、SEOの目的は検索する人の用事の側にしか置けません。自社が認知を広げたいと決めても、その認知につながる言葉が誰にも検索されていなければ、目的として成立しないためです。

検索エンジンが何を見て評価しているのかは、Googleが公開している手引きに基本の考え方がまとまっています。社内で施策の是非が割れたときは、一度ここへ戻ると話が早く片付くはずです。

目的が無いままでも記事は作れてしまう
目的を置く作業が後回しにされる最大の理由は、無くても手が動いてしまう点にあります。キーワードツールを開けば候補は何千と出てきますし、競合サイトの見出しを見れば書くべきことも並んでいます。目的が空欄のままでも、来月の制作計画は埋まってしまうわけです。
問題が表に出るのは、半年ほど経ってからでしょう。記事は30本たまり、いくつかは上位に入っているのに、問い合わせの数だけが動いていません。そこで初めて、誰に向けて何のために作っていたのかという問いが出てきます。作業が止まらないからこそ、抜けていることに気づけません。ここがSEOの目的という論点の厄介なところです。
企業がSEOに取り組む5つの目的
実際のご相談で挙がる目的を整理すると、大きく5つに収まります。自社に当てはまるものを探しながら読み進めてください。
広告に頼らない問い合わせの経路を作る
最も多いのがこの目的です。広告は出稿を止めた月から反応が消えますが、検索から来る流入は記事が評価されている限り続きます。広告費の変動に売上が左右される状態を抜け出したい会社が、次の経路としてSEOを選びます。ただし切り替えではなく、重ねて持つ話だと捉えたほうが現実に近いでしょう。
比較している段階で候補に残る
導入を検討する人は、発注先を決める前に必ず比べます。その比較の場に自社の名前が出ていなければ、どれだけ製品が優れていても候補に入りません。比較や選び方といった言葉で検索している人に向けて記事を置くのは、商談の前に一枚名刺を差し出しておくような役割を担います。
商談前の疑問を記事に肩代わりさせる
とりわけ見落とされがちなのが、この3つ目の使い方です。営業担当が毎回同じ質問に答えているなら、その回答を記事にしておくと、問い合わせてくる時点で相手がすでに読んでいる状態を作れます。商談の時間が、説明ではなく条件のすり合わせから始められるようになります。実際、集客より社内の説明工数を減らす目的でSEO記事を増やしている会社も見てきました。
採用の応募者に事業を理解してもらう
職種名や働き方の言葉で検索している人は、求人票だけでは会社の中身が分かりません。仕事の進め方や意思決定の様子を記事にしておくと、応募前に事業を理解した人が来ます。応募数そのものより、面接に進む確率と入社後の齟齬の少なさに効いてくる目的だと見ています。
調べられたときに自社の説明が出てくる状態を作る
社名やサービス名で検索されたとき、検索結果に自社以外の情報しか並ばない状態は、思っている以上に商談の足止めになります。取引先や応募者は必ず調べますし、そこで出てきた情報が判断材料として扱われてしまうためです。自社で説明する場を用意しておく目的は、集客の数字には出にくいものの、確実に効きます。
5つ全部を同時に目的に置かないでください。狙う検索語の性格が目的ごとに違うため、全部を並べると同じサイトの中に読者像の異なる記事が混ざり、どれも中途半端な深さで止まります。1つを主に、もう1つを従に置くところまで絞るのが実務的な落としどころです。
SEOの目的を分ける3つの層
5つのうちどれを選ぶかが決まったら、次はその目的を層に分けます。ここが本記事でいちばんお伝えしたい部分にあたります。

目的は事業と接点と記事の3つの層に分けて置きます。1つの層だけで語ろうとするから、抽象的すぎて実行に落ちないか、細かすぎて何のためか分からないかのどちらかに振れてしまいます。
層1 事業の目的
なぜ検索という経路を持つのか、という理由を置く層です。前章の5つがそのまま入ります。ここで決めるのは方向だけで、数字はまだ要りません。経営会議で説明する言葉と一致させておくと、後の予算の議論が楽になります。
層2 接点の目的
検索している人のどの段階に会いに行くかを決める層です。調べ始めたばかりの人、複数社を比べている人、条件を詰めて決めようとしている人。同じ事業目的でも、どの段階を狙うかで作る記事はまったく変わります。ここを飛ばして層1から層3へ直行すると、記事の粒がそろわなくなるでしょう。
層3 記事1本の目的
読み終えた人に次に何をしてもらうかを、記事ごとに1つだけ決める層です。資料を見てもらうのか、名前を覚えてもらうのか、別の記事へ進んでもらうのか。1本に2つ以上置くと、記事の終わり方が定まりません。
3つの層がつながっていないサイトでは、記事は増えるのに事業側の数字が動かない状態が続きます。裏を返せば、動いていないときはどの層で切れているかを見れば、次の打ち手が絞れるということです。
目的を3つも決めるのは大げさではありませんか。うちは問い合わせを増やしたい、それだけなのですが。
編集部
その一文でも記事は作れます。ただ、そこから今月どの記事を作るかは出てきません。問い合わせを増やしたいという事業の目的に、比べている段階の人に会うという接点の目的を足すと、狙う言葉が比較や費用の周辺に絞られます。さらに記事ごとに資料を見てもらうという目的を置けば、記事の締め方まで決まります。3つ決めるというより、1つの目的を実行できる細かさまで下ろす作業だとお考えください。
目的が上位表示にすり替わる理由
目的を丁寧に置いた会社でも、半年後の定例会議では順位の話しか出てこなくなります。この現象には理由があり、担当者の意識の問題ではありません。比較記事ではあまり触れられない部分ですが、構造の側に原因があります。
理由の1つ目は、順位が毎日動いて目に見える唯一の数字だという点にあります。問い合わせ数や受注金額は数か月遅れて出てくるうえ、他の施策の影響も混ざります。今週の会議で話せる材料が順位しかないなら、議題は順位になるのが自然でしょう。
2つ目は、外注の契約や社内の報告が、長く順位を基準に結ばれてきた経緯です。順位保証という形の契約が広く使われていた時期があり、その名残で「何位になったか」が成果の言い方として定着しています。
3つ目に挙げられるのは、順位なら担当者個人の努力と結び付けられるという事情です。事業の数字は本人の力の外側にある要因でも動きますが、順位は手を入れた結果として説明できます。評価される側から見れば、順位で語るほうが安全な選択になるわけです。

3つの理由はどれも、順位のほうが扱いやすいという一点に行き着きます。担当者の意識を正す話ではなく、見る数字の設計を変える話だと捉えてください。
順位を見るのをやめる必要はありません。避けたいのは、順位が上がったことを成果として報告し、そこで話を終えてしまう運用です。順位の報告には必ず、その順位が事業のどの数字につながる想定なのかを一文添えてください。添えられないキーワードは、そもそも目的と接続していない可能性があります。
目的を検索する言葉に翻訳する4手順
目的が実行に落ちない最大の原因は、目的の言葉と検索窓の言葉が違うことにあります。問い合わせを増やしたいという文は、誰も検索しません。翻訳の作業が要ります。
「リードを増やす」を、「導入を検討していて、社内の稟議を通すための材料を探している人」のように、人物と用事の形へ書き換えます。ここで人物像が書けないなら、目的がまだ社内の願望の段階にとどまっているということです。
キーワードツールより先に、社内にある一次情報を集めてください。営業が商談で繰り返し聞かれる質問、問い合わせフォームに書かれた自由記述、サポートに届く問い合わせの文面。いずれも検索する人が実際に使う語彙そのものです。ツールから先に手を付けると、業界内でしか通じない言い回しばかりを拾ってしまいます。
集めた言葉に検索需要があるかを確認します。ここで需要がほとんど無ければ、その用事は検索以外の経路で満たされていると考えてください。SEOで無理に取りに行くより、営業資料や個別の説明に回したほうが早く届きます。
最後に、その言葉で実際に検索して、上位に並んでいるページの種類を確かめます。求められているのが用語の説明なのに自社が出したいのは事例なら、その言葉では目的を果たせません。検索需要があっても目的に使えない言葉は、想像よりずっと多く存在します。
4つ目の手順を飛ばした計画が、最もよく見る失敗です。検索数の大きい言葉を並べた一覧を作り、半年かけて記事にして、上位に入ってから「この記事を読んだ人は問い合わせない」と気づくわけです。ここまで来ると、書き直しでは戻せません。
目的は決まったのに、どの言葉に会いに行くかで止まっていませんか
翻訳の手順のうち、社内にある質問を集めるところまでは自力で進められます。つまずきやすいのは、集めた言葉に検索需要があるかを確かめ、検索結果の中身と自社の答えが噛み合うかを1語ずつ見ていく工程でしょう。弊社はこの絞り込みを、狙う範囲の設計から記事の制作までひと続きで引き受けています。今の目的と、社内で挙がっている言葉の一覧をお持ちいただければ、使える語と使えない語の仕分けからご一緒できます。
目的が決まると外せる3つのもの
目的を置く価値は、やることを増やす側ではなく減らす側にあります。目的は、やることではなくやらないことを決めます。
- 検索数は大きいが、答えた先に自社の出番が無い言葉
- 本数をいくつにするかという議論(目的に合う言葉の数が上限になる)
- 順位の上下だけを確認して終わる定例会議
1つ目が最も効きます。検索数が月に1万ある言葉と、500しかない言葉。目的が無ければ前者を選びますが、500のほうが検討段階の人ばかりなら、そちらが正解になる場面は多いものです。
2つ目も実務的な効き方をします。月に何本作るかという議論は、目的に合う言葉を数え上げた時点で自動的に答えが出ます。対象が20語しかない領域で毎月10本作り続ければ、3か月目には書くことが無くなるためです。
目的別に変わる記事の作り方
同じSEO記事という言葉でも、目的が変われば書く内容も、読み終えた人に求める行動も入れ替わります。
| 問い合わせを増やす | 比較で候補に残る | 商談前の疑問を減らす | 採用 | |
|---|---|---|---|---|
| 狙う言葉 | 課題や症状の言葉 | 比較・費用・選び方 | サービス名と条件の組み合わせ | 職種名と働き方の言葉 |
| 記事の型 | 課題の解き方の解説 | 選ぶ基準を並べた比較 | 条件と手順の説明 | 仕事の中身と人の話 |
| 読後にしてほしいこと | 資料請求か問い合わせ | 名前を覚えて次に思い出す | 条件が合うか自分で判断 | 募集要項を見る |
| 手応えが出るまでの目安 | 4〜6か月 | 6か月以上 | 公開後すぐ | 3〜6か月 |
※ 期間の目安は弊社が関わってきた案件で見てきた幅で、業種・競合の数・既存サイトの評価によって前後します。
表を横に見ると、3つ目の商談前の疑問を減らす目的だけが、公開後すぐに手応えを確認できると分かります。上位表示を待たなくても、営業が商談で記事を送って使えるためです。SEOの成果は時間がかかるという前提は正しいものの、目的によっては初月から使い道があるとお伝えしておきます。
SEOが目的に向かない4つの状況
正直にお伝えすべきこともあります。検索という経路が目的に合わない場面は確かにあり、その場合は無理に記事を増やしても数字は動きません。
- 扱う商材を指す言葉がまだ世の中に無く、誰も検索していない
- 発注が紹介や入札で決まり、意思決定の途中に検索が入らない
- 3か月以内に結果を出す必要がある
- 商圏が徒歩圏に限られ、地図の検索が主な入口になっている
ただし、4つのうち1つ目と4つ目は、SEOをやらない理由ではなく範囲を変える理由です。新しい商材なら、商材名ではなく解決したい困りごとの言葉で会いに行けます。商圏が狭い場合も、地図の検索で選ばれた後に読まれる説明として記事が効きます。
一方、2つ目と3つ目は素直に別の手段を選んだほうが早いでしょう。検索を経由しない意思決定に記事は届きませんし、3か月という期間は、記事が評価されるまでの時間にほとんど足りません。
目的と目標とKPIのつなぎ方
目的が決まると、次に出てくるのが数字の話です。会議で目的と目標が混ざったときは、言葉の定義を並べ直すより、次の見分け方を使うほうが早く決着します。
書いた一文から数字を抜いてみてください。抜いても意味が残るなら、それは目的です。「比べている段階の人に候補として残る」は数字が無くても成立します。抜くと何も残らないなら、それは目標にあたります。「来年3月までに問い合わせを月30件」から数字を消すと、文そのものが消えてしまうためです。
この見分け方が効くのは、会議に出てくる文の多くが両方を混ぜた形で書かれているからでしょう。混ざった文は、数字の部分だけを議論して終わりがちになります。
追う数字の選び方と目標値の出し方については、SEOのKPIの選び方をまとめた記事で手順に沿って整理しています。目的が固まった段階で読み進めていただくと、数字の置き方まで一続きで決められるはずです。
SEOの目的についてよくある質問
ご相談の場で実際に多く出る質問にお答えします。
主となる目的は1つに絞ってください。目的ごとに狙う言葉の性格が違うため、3つ以上並べるとサイトの中で読者像がばらけます。従として2つ目を置くのは構いませんが、記事1本には必ず1つだけ当ててください。
構いません。ただし認知という言葉のままでは記事が決まらないため、誰にどの場面で思い出してほしいのかまで言い換えてください。「発注先を探し始めた担当者が、候補を3社挙げるときに名前が出る」まで下ろせば、狙う言葉が見えてきます。
途中からでも置き直せます。まず公開済みの記事を、本記事の5つの目的のどれに当たるかで仕分けしてください。どこにも当てはまらない記事が半分を超えているなら、新規制作を止めて、当てはまった記事の書き直しから手を付けるほうが早く数字が動きます。
変えて問題ありません。事業の段階が進めば、会いに行く相手も変わります。注意したいのは、変えた月に過去の記事の評価まで変えないことです。以前の目的で作った記事は、その目的の基準で判定してから残すか畳むかを決めてください。
枠組みは変わりません。変わるのは接点の取り方のほうです。検索結果の要約で用が済んでしまう調べものは増えており、そこに目的を置いていた場合は苦しくなります。比べる、決めるといった段階の用事は要約だけでは片付かないため、接点をそちらへ寄せる判断が要ります。
質問の内容は違っても、答えの入口はほぼ同じところにあります。誰のどんな用事に会いに行くかが決まっていれば、残りの判断はその基準で片付いていきます。
目的は整理できたものの、記事を作る手が足りていませんか
目的と狙う言葉が決まった後に残るのは、その言葉に答える記事を必要な本数だけ作り切る工程です。目的に合う言葉が30語あるなら、質を保ったまま30本を出し切れるかどうかで結果が変わってくるでしょう。弊社は数多くのSEO記事を制作してきた体制で、新規の制作と既存記事の書き直しの両方を引き受けています。目的と対象の言葉の一覧をお持ちいただければ、着手する順番のご提案から始められます。
まとめ|SEOの目的は検索する人の側にある
SEOの目的は、社内の会議室だけでは決まりません。検索している人がすでに抱えている用事と、自社が答えられる範囲とが重なった場所にしか置けないためです。順位は目的ではなく、その重なりを取りに行った結果です。
置くときは3つの層に分けてください。なぜ検索という経路を持つのかという事業の目的、どの段階の人に会いに行くかという接点の目的、そして読み終えた人に何をしてもらうかという記事1本の目的。この3つがつながっていれば、記事が増えても方向は散りません。そして目的の使いどころは、やることを増やす側ではなく、狙わない言葉を外す側にあります。
私たち合同会社Writers-hubは、狙う言葉の設計から記事の制作、公開後の数字の確認までをまとめて引き受けています。目的をどう言語化すればよいか決めかねている段階でも、目的は決まったのに作る手が足りない段階でも構いません。今お持ちの材料を見せていただくところから、お声がけください。








