「SNS運用代行に頼めば、あとは毎月のレポートを見るだけで済みそう」。代行会社の案内には「丸投げOK」「企画から分析まで一括対応」といった言葉が並ぶため、社内の手間はほとんどなくなると考える方も多いでしょう。確かに、投稿を作って出す作業の大半は外部に任せられます。
しかし、これまで企業のオウンドメディア記事を外部の制作会社として数多く手がけてきた弊社の立場から言えるのは、発信を外に任せたときに成果を分けるのは、依頼先の腕よりも社内に残す仕事の決め方だということです。材料を出す・承認する・数値で判断する仕事は外に出しきれません。
本記事では、SNS運用代行で依頼できる業務と費用相場から、依頼先の比べ方、契約前に確かめたい法律上の注意点まで、発信の外注を支援する制作会社の視点で順を追ってお伝えします。
- 投稿作成だけなら月5万円前後から、運用一式なら月20万円以上かかる理由
- 代行会社・フリーランス・内製のうち、自社に合う依頼先の見分け方
- 代行を頼んでも社内に残る3つの仕事と、その分担の決め方
- ステマ規制とフリーランス法で、発注した会社が負う責任
SNS運用代行で依頼できる業務の範囲
SNS運用代行とは、企業のSNSアカウントの運用を外部の会社や個人に任せるサービスです。依頼できる範囲は、投稿作業だけの契約から、戦略づくりや広告運用まで含む契約まで幅があります。
業務 | 主な内容 |
|---|---|
戦略設計 | 目的と狙う顧客層、使うSNS、追う数値の決定 |
アカウント設計 | プロフィール文やアイコン、投稿の方針づくり |
投稿の企画と制作 | 投稿カレンダー、画像・動画・文章の制作、撮影 |
投稿とコメント対応 | 予約投稿、コメントやDMへの返信 |
分析とレポート | 反応の集計、月次レポート、次月の改善案 |
広告とキャンペーン | SNS広告の出稿、プレゼント企画、インフルエンサーの起用 |
見積もりで金額の差が大きく出るのは、表の下の2行が含まれるかどうかです。同じ「運用代行」という名前でも、中身が制作と投稿だけの契約もあります。
見積もりを取るときは、6つの業務のどれが含まれるかを1つずつ確かめてください。業務ごとに有無をそろえてからでないと、金額を並べても比べたことになりません。

SNS運用代行の費用相場と料金の決まり方
費用は、前の章の業務のうちどこまで任せるかでほぼ決まります。依頼の範囲ごとの月額の目安は次のとおりです。
依頼の範囲 | 月額の目安 | 含まれることが多い業務 |
|---|---|---|
投稿作成・投稿代行 | 5万〜20万円程度 | 画像と文章の制作、予約投稿 |
運用一式 | 20万〜50万円程度 | 企画、制作、投稿、コメント対応、月次レポート |
広告・キャンペーン込み | 50万円以上 | 運用一式に加え、広告運用やキャンペーンの企画 |
※ 各社が公開している料金表と見積もりの幅から見た目安です。月の投稿本数、動画や撮影の有無、運用するSNSの数、コメント対応の範囲で変わります。
月額とは別に、アカウント設計や戦略づくりを初期費用として請求する会社もあります。また、SNS広告の出稿費は代行費とは別にかかり、運用手数料を広告費の2割前後とする料金体系がよく見られます。
料金の決め方は、月額固定、投稿本数ごとの単価、フォロワー数などに応じた成果報酬の3つに分かれるのが一般的です。成果報酬型は、目的と関係の薄い数値を増やす施策に偏らないか、何を成果と数えるかを契約前に確かめましょう。
見積もりは月額で比べず、1か月の投稿本数、そのうち動画の本数、撮影の有無、レポートに改善案が付くかの4点をそろえてから比べてください。
予算に収まらないときは、依頼する業務を減らすより、社内で担える作業を切り出すほうが投稿の質を保てます。たとえば、写真を社内で撮って渡せば撮影費が外れます。ストーリーズのような短い日常の投稿を社内に残し、フィード投稿と分析だけを任せる分け方もあります。
代行会社・フリーランス・内製の違い
依頼先は、複数のSNSに対応する総合型の代行会社、1つのSNSに絞った特化型の代行会社、フリーランスの3つに分かれます。社内で運用し続ける内製も含めて比べると、次のとおりです。
| 総合型の代行会社 | 特化型の代行会社 | フリーランス | 内製 | |
|---|---|---|---|---|
| 任せられる範囲 | ◎ 戦略から広告まで | ○ 1つのSNSを深く | △ 制作と投稿が中心 | △ 担当者のスキル次第 |
| 費用 | △ 運用一式で月20万円以上が中心 | ○ SNSを絞る分だけ抑えやすい | ◎ 月数万円から | ◎ 外部費用はかからない |
| 担当が抜けたときの継続 | ◎ 社内で引き継ぎがある | ○ 社内で引き継ぎがある | △ 本人の都合で止まる | △ 異動や退職で止まる |
| 向いている会社 | 目的から設計し直したい | 使うSNSが決まっている | 作業の手数を補いたい | 発信に割ける人員がいる |
初めて外部に任せる会社には、総合型の代行会社で目的と投稿の方針を固める進め方が合います。使うSNSと投稿の型が決まった後で、特化型の代行会社やフリーランスに切り替える会社もあります。
費用だけを見るとフリーランスが有利に見えます。ただ、担当者が1人のため、体調や他の案件の都合で投稿が止まったときに代わりがいません。マーケティング業務全体の外注を検討している方は、マーケティング外注のメリットと費用相場もあわせてご覧ください。
SNS運用代行のメリットと注意点
外部に任せると社内の作業時間は減りますが、失うものもあります。主なメリットと注意点を並べると次のとおりです。
2つ目の注意点は、契約の形で小さくできます。月次レポートを受け取るだけでなく、翌月の企画を決める打ち合わせに社内の担当者が同席する形にすれば、投稿の作り方を社内でも見て覚えられるからです。
3つ目の確認と修正の手間は、運用開始の前に使ってはいけない表現や自社の呼び方を1枚の文書にまとめて渡すと減らせます。
SNS運用を代行しても社内に残る3つの仕事
代行会社の案内にある「丸投げOK」は、作業の大半を任せられるという意味では正しい表現です。ただ、記事制作を外部から請け負ってきた立場から本音を言えば、発信を外に任せても、次の3つは発注した会社にしかできません。

投稿の材料を出す
新商品の仕様、現場の写真、お客様の声、社員の人柄が分かるエピソード。投稿の材料になる情報は、代行会社の手元にはありません。
材料が届かない月は、季節のあいさつや業界の一般論で投稿本数を埋めることになります。記事制作でも事情は同じで、取材や資料の提供が止まった月は、どの制作会社が書いても一般論の記事になるのです。
材料を月に何件、誰が出すかは契約前に決めておく必要があります。SNSの投稿は時間がたつとタイムラインから流れますが、同じ材料を記事にすれば検索から読まれ続けます。使い分けはオウンドメディアとSNSの違いと使い分けで解説しています。
投稿を確認して承認する
代行会社が作った投稿は、公開前に社内で確認します。承認が遅れると予約投稿が止まり、季節の話題や時事に合わせた投稿は出す意味を失います。
承認する人を1人に決め、受け取ってから何営業日以内に返すかを取り決めておきましょう。確認する観点も、事実の誤りと、社として出してよい表現かの2点に絞ると、差し戻しの回数が減るはずです。
数値を見て続けるか決める
月次レポートの数値を見て、方針を変えるか続けるかを決めるのは発注した会社です。とりわけ見落とされがちなのが、フォロワー数だけを追うと目的からずれていく点です。
プレゼント企画で増えたフォロワーは、景品が目当てで商品を買わない人が混ざりやすくなります。認知が目的ならリーチ数や保存数、集客が目的ならサイトへの移動数や問い合わせ数というように、追う数値は目的から決めてください。
社内の担当者をどこまで置くべきか、次のような相談をよく受けます。
代行会社に全部任せるつもりで予算を取りました。それでも社内に担当者は必要でしょうか。
編集部
必要です。ただ、投稿を作る人ではなく、材料を集めて承認する窓口役で構いません。窓口役に割ける時間を先に代行会社へ伝えると、その時間で回る投稿本数と役割分担で見積もりを組んでもらえます。
材料を社内から集め、SNSの投稿と検索から読まれる記事の両方に使う体制は、代行会社を決める前でも整えられます。
投稿の材料を、社内から毎月集める仕組みができていますか
Writers-hubは、社内の担当者への取材から記事の制作・公開までを回す体制づくりを支援しています。SNSで発信する材料を、検索から読まれ続ける記事としても残したい方はご覧ください。
SNS運用代行会社の選び方
同じ条件で見積もりを取ったら、次の5つの項目で比べます。どれも、契約後に「聞いていなかった」となりやすい項目です。
- 自社と同じ業種、または同じ目的(採用・集客・認知)で運用した実績がある
- 月の投稿本数、動画の本数、レポートの中身が見積書に書かれている
- 投稿の確認と承認の流れ、修正できる回数が決まっている
- 炎上やクレームが起きたときの連絡手順と、代行会社が対応する範囲が書かれている
- 解約するときに、アカウントの権限・投稿素材・分析データを引き渡す条件が書かれている
実績は、担当したアカウント名を公開できない会社もあります。その場合は、業種と運用した期間、何を変えてどの数値が動いたかを打ち合わせで聞くと、自社の目的に近い経験があるかを判断できるでしょう。
アカウントは自社の名義で作り、代行会社には権限を付けて入ってもらう形が基本です。Instagramを運営するMetaのビジネス管理ツールのように、パスワードを渡さずに作業の権限だけを付けられる仕組みがあるSNSでは、そちらを使ってください。
依頼から運用開始までの流れ
問い合わせから最初の投稿までは、次の5つの手順で進みます。最初の手順を飛ばすと、各社の提案がばらばらになり比べられません。
採用・集客・認知のどれが目的かと、材料を出して承認する担当者を決めます。
目的、使うSNS、月の投稿本数、窓口役に割ける時間を同じ文面で伝えます。
選び方の章の5項目と、自社の担当になる人の経験を確かめてから契約します。
プロフィール、投稿の型、使ってはいけない表現、承認の期限を文書にまとめます。
月次レポートで数値を追い、3か月を区切りに投稿の型や本数を続けるか決めます。
見直しの区切りを3か月にするのは、1か月では投稿の本数が少なく、反応の差が偶然か傾向かを見分けにくいからです。最低契約期間もこの区切りに合わせて確かめておくと、方針を変えたいときに動きやすくなります。
契約前に確認したい法律とルール
代行会社に任せても、法律上の責任が発注した会社に残る場面が2つあります。
ステマ規制の対象は広告主
2023年10月1日から、広告であるのに広告と分からない表示、いわゆるステルスマーケティングは景品表示法の規制対象になりました。規制されるのは商品やサービスを提供する広告主で、依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は対象外と消費者庁のページに明記されています。

つまり、代行会社を通してインフルエンサーに投稿を頼んだ場合も、責任を問われるのは発注した自社です。投稿に広告であることを示す表記を入れるルールは、代行会社任せにせず契約前に取り決めておきましょう。

フリーランスへの発注は条件の明示が必要
2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法では、フリーランスに業務を委託する事業者に、取引条件を明示する義務が課されています。業務の内容、報酬の額、支払期日などを、書面や電子メールで示す必要があります。
※ 出典:公正取引委員会「フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組」(2026年9月時点)
ここまでの2つを踏まえ、発注する側が避けたい進め方を挙げます。
- アカウントのパスワードを代行会社や個人にそのまま渡す
- 依頼する業務と報酬を、打ち合わせの口頭だけで決める
- インフルエンサー起用時の広告表記を、依頼先の判断に任せる
- 解約後の投稿や素材の扱いを決めずに契約する
SNS運用代行に関するよくある質問
依頼を検討している方から寄せられやすい質問に答えます。
できます。1つのSNSから契約できる会社が多く、InstagramやTikTokなど特定のSNSに絞った代行会社もあります。
3か月や6か月などの最低契約期間を設けている会社が多く見られます。見積もりの段階で、最低契約期間と途中解約の条件を確かめましょう。
目的と広告を使うかどうかで変わります。広告を使わない運用では、投稿への反応から方針を見直すまでに3か月程度を1つの区切りにすると、偶然の反応と傾向を見分けやすくなります。
契約書の定めによります。解約後も投稿や素材を使い続けたい場合は、著作権の譲渡か利用許諾の範囲を契約書に書いてもらいましょう。
依頼はできます。ただし、材料を出して投稿を承認する窓口役は社内に必要です。窓口役が決まらないまま始めると、投稿の中身が一般論に寄りやすくなります。
まとめ|SNS運用代行は任せる範囲を先に決める
SNS運用代行の費用は、投稿作成だけなら月5万円前後から、運用一式なら月20万円以上が目安です。金額の差は、依頼する業務の範囲、投稿と動画の本数、撮影の有無で生まれます。
依頼先を比べる前に、材料を出す人、承認する人、追う数値を社内で決めることが、見積もりをそろえる最初の作業になります。3つが決まれば、依頼先に任せる範囲と、払うべき金額の上限も見えてくるはずです。
私たち合同会社Writers-hubは、SNSの運用代行ではなく、企業の発信のもとになる記事の制作と、その制作体制づくりを支援しています。SNSとあわせて、検索から読まれる記事の発信も外部に任せるかを検討している方は、現在の体制をお聞かせください。
SNSと記事の発信を、社内と外部でどう分けるか決めたい方へ
社内の窓口役に割ける時間と、いま発信している媒体をうかがい、社内で担う仕事と外部に任せる仕事の分け方を一緒に整理します。







