「キャッチコピーは一行の言葉なのだから、一行を考えればいい」。新商品のキャッチコピーを作るとき、白紙に向かって短い言い回しを探し始めるのは自然な流れです。広告やチラシで目にするキャッチコピーは完成した一行だけで、その一行を書く前に集めた材料は見えないため、作業も一行から始めるものに思えるのです。ところが言い回しを並べ替えるほど、どこかで見たような案ばかりが増えていきます。
しかし、これまで多くの記事のタイトルや見出しを作ってきた弊社の立場から言えるのは、キャッチコピーも長い説明文を先に書いて削るほうが早いということです。説明文には他社が書けない数字や事実が入り、削った後の一行にも数字や事実が残ります。
本記事では、書く前に決めることから、説明文を一行に削る手順、言い回しの型、案の絞り方まで、記事のタイトルを作ってきた制作会社の視点で順を追ってお伝えします。
- キャッチコピーを書く前に、誰に・どの場面で・何を約束するか・約束の根拠の4つを決める
- 4つを100〜200字の説明文に書き、他社が言えない語を残して一行に削る
- 数字や問いかけなどの言い回しの型は、説明文で印を付けた語に当てて案を増やす
- 一行から削った条件は、キャッチコピーのすぐ下の文に書く
- 思いつかないときに足りないのは言い回しでなく材料で、客の言葉を集め直すと書ける
キャッチコピーを書く前に決める4つのこと
キャッチコピーを書き始める前に決めるのは、誰に向けた言葉か、どの場面で読まれるか、何を約束するか、約束の根拠の4つです。4つのうち1つでも空いたまま書き始めると、浮かんだ言い回しのどれを選ぶかの基準がなくなります。
- 誰に:読んでほしい人と、その人がいま困っていること
- どの場面で:載せる媒体と、読む人がそのとき何をしているか
- 何を約束するか:読んだ人が商品やサービスを使った後に得られること
- 約束の根拠:数字、時刻、作り方、仕入れ先など、自社について言える事実
4つのうち取り違えやすいのが、特徴と約束です。特徴は商品が持っているもの、約束は読んだ人が得られることを指します。特徴だけを書くと、読む人は自分に何の得があるかを自分で考えなければなりません。
たとえば朝7時に開くクリーニング店なら、「朝7時開店」は店の特徴にあたります。通勤途中の会社員への約束は「出勤前に預けられる」です。
説明文を一行に削る5つの手順
キャッチコピーは、4つの材料を100〜200字の説明文に書き、他社が言えない語に印を付けてから、案を書いて字数まで削る順で作ります。一行を直接探すと、手元の材料が業種で共通の言い回しだけになり、他社と似た案しか出ないためです。

5つの手順のうち時間をかけたいのは、他社が言えない語に印を付ける手順です。印を付けた語が、後で書くすべての案の材料になります。
誰に、どの場面で、何を約束するか、約束の根拠を、省略せずに100〜200字の文章にします。箇条書きでなく文章にするのは、「〜だから〜できる」という材料どうしのつながりまで書き出せるからです。
説明文の中から、数字、時刻、場所、作り方、客から言われた言葉に印を付けます。「丁寧」「高品質」のように同業のどの会社も書ける語には、印を付けません。
どの案にも印を付けた語を1つ以上入れ、言い回しを変えて書きます。案を増やす方法は、下の見出しで紹介する言い回しの型を1つずつ当てることです。
載せる場所で読める長さになるまで、印の付いていない語から削ります。Google広告のレスポンシブ検索広告なら、見出しの欄に入る日本語は全角15文字までです。Google広告のヘルプに、見出しは半角30文字までで、全角1文字は半角2文字分と数えると明記されています。
案を声に出して読み、つかえる箇所や同じ音が続く箇所を直します。読点の位置を1つ動かすだけで、区切りが聞き取りやすくなる案も少なくありません。
案を20〜30とするのは、印を付けた語と言い回しの型を1つずつ組み合わせた数だからです。印を付けた語が5つ、型が5つなら、組み合わせは25通りになります。
一行の言葉を作るのに、先に100字以上の文章を書くのは遠回りではありませんか。
編集部
書く量は増えます。ただ、一行を直接探すと、浮かんだ案がよいかを決める基準がありません。説明文があれば、削った後の一行に約束が残っているかで判断できるので、案を選ぶ段階で迷う時間が短くなります。
説明文から一行を削った例
駅前で朝7時から開いているクリーニング店が、通勤途中の会社員に向けたチラシを作るなら、説明文から削った一行は「朝7時に預けて、夜7時に受け取る。」になります。一行に残したのは、説明文で印を付けた語のうち、会社員の出勤と帰宅の時刻に重なる「朝7時」と「19時」です。
説明文:駅から会社へ向かう会社員に向けたチラシです。店は朝7時に開き、午前10時までに預かったワイシャツは、その日の19時から受け取れます。出勤前に預けて帰りに受け取れば、休日にクリーニング店へ行く用事がなくなります。
印を付けた語:朝7時、午前10時まで、19時、出勤前、帰り、休日
削った一行:朝7時に預けて、夜7時に受け取る。
削った一行には、「午前10時までに預ければ」という条件が入っていません。一行から削った条件は、キャッチコピーのすぐ下の文に書きます。チラシなら、見出しのすぐ下に「午前10時までのお預かりで、当日19時からお渡し」と添えます。条件を書かずに一行だけを載せると、昼に預けた客はその日の夜に受け取れず、チラシの約束と違うと感じるでしょう。
取引先の企業に向けたWebサイトの一行も、同じ手順で削れます。図面を受け取ってから3営業日でアルミの試作部品を1個から発送する加工会社なら、機械メーカーの設計担当者に向けた一行は「図面から3営業日で、試作部品を1個から。」です。3営業日で発送できるのがアルミの部品に限られるなら、材質の条件は最初の画面の一行のすぐ下に書きます。
一行に縮めるときに使う言い回しの型
言い回しの型は、白紙から案をひねり出す道具でなく、説明文で印を付けた語から案を増やす道具です。同じ「朝7時」でも、数字として見せるか、読み手の朝の場面として見せるかで、別の案になります。
型 | 当てる語 | クリーニング店の案 |
|---|---|---|
数字で言う | 朝7時、19時 | 朝7時に預けて、夜7時に受け取る。 |
使う場面を描く | 出勤前、帰り | 出勤前に預けて、帰りに受け取る。 |
読み手を名指しする | 出勤前 | この駅から出勤する方の、朝のクリーニング店。 |
問いかける | 休日 | 休日の午前を、クリーニング店に使っていませんか。 |
対にして並べる | 出勤前、帰り | 預けるのは行き、受け取るのは帰り。 |
5つの型のうち、問いかける型の案だけは約束を言い切っていません。問いかける型は、読み手が自分の困りごとに気づいていないときに使い、答えの約束はすぐ下の文で言い切ります。

名作と呼ばれるキャッチコピーを型ごとに読み解いた例を見たいときは、キャッチコピーとは?作り方の手順と名作事例に学ぶ、伝わる言葉の型が参考になるでしょう。
作った案から1本に絞る方法
20〜30案から1本に絞るときは、説明文の約束が抜けた案、他社の名前に入れ替えても通じる案、根拠を示せない言葉を含む案を外します。残った2〜3案を販売の担当者や実際の客に見せ、最後の1本を選びます。

説明文の約束が残っているか
説明文の約束が残っているかを確かめる方法は、案だけを読んだ人が「自分は何を得られるか」を言えるかを見ることです。語の響きがよくても約束が抜けた案は、読んだ人に説明文と別のことを期待させるため外しましょう。
他社の名前でも通じないか
案の中の店名や商品名を同業の他社の名前に入れ替えて読み、それでも意味が通る案は外します。他社の名前でも通じる言葉は、読んだ人が自社を思い出す手がかりになりません。
根拠を示せる言葉だけか
「No.1」「業界初」「最安」のように、調べた結果がなければ書けない言葉は、調査の結果を示せない限り使いません。一般の消費者に向けた広告では、「顧客満足度No.1」などの表示が合理的な根拠に基づかず事実と異なる場合、景品表示法の不当表示として問題になります。消費者庁が2024年9月に公表した資料にも、No.1表示についての景品表示法上の考え方が示されています。

※ 出典:消費者庁「「No.1表示に関する実態調査報告書」の公表について」(2024年9月26日)
化粧品や健康食品では、効き目をうたう言葉が、医薬品医療機器等法(薬機法)の広告の規制の対象になる点にも注意が必要です。
客に近い人に2〜3案を見せる
約束が残っているか、他社の名前でも通じないか、根拠を示せる言葉だけかを確かめた後、残った2〜3案は販売の担当者や実際の客に見せて選びます。「どれが好きか」と聞くと、答えは語の響きで決まりがちです。「何を約束している言葉に読めたか」と聞き、説明文の約束と同じ答えが返ってきた案を選びます。
Web広告やWebサイトのように数字が取れる場所なら、残った2案を同じ期間に出し、クリック率や問い合わせの数を比べて選ぶこともできます。
キャッチコピーが思いつかないときの原因と対処
キャッチコピーが思いつかない原因の多くは、言い回しでなく、説明文に書く材料の不足です。説明文を書こうとして次のどれかに当てはまるなら、言い回しを考え直す前に材料を集め直してください。
- 約束が3つ以上あり、1つに絞れていない
- 根拠が「高品質」「丁寧」のように、同業のどの会社も書ける言葉になっている
- 「誰に」が「すべてのお客様」になっている
材料が足りないときは、客が実際に使った言葉を集めます。集める先は、問い合わせのメール、口コミ、アンケートの自由記述、販売の担当者が客から聞いた話です。自社が強みだと考えている点と客が選んだ理由が違っていれば、約束には客が選んだ理由を使います。
Webサイトに載せるキャッチコピーなら、検索キーワードも客の言葉の材料です。Google Search Consoleの検索パフォーマンスのレポートには、自社のサイトが検索結果に表示されたときの検索語句が並びます。検索キーワードは、検索した人が自分の悩みを自分の言葉で打ち込んだものだからです。
客が選んだ理由を、Webサイトの記事でも伝えられていますか
キャッチコピーの材料に集めた客の言葉や作り方の事実は、Webサイトの記事でくわしく書くと、検索してきた人が約束の根拠を確かめられます。弊社が支援するのは、キーワードの選定から公開まで、御社の強みを記事にする制作体制づくりです。
キャッチコピーの作り方でよくある質問
キャッチフレーズや会社のキャッチコピーも本記事の手順で作れ、生成AIは案を書く手順で使えます。
キャッチフレーズも、本記事の手順で作れます。実務では2つの言葉を区別せずに使う場面も多く、分ける場合は、広告ごとに書き替える一行をキャッチコピー、長い期間くり返し使って覚えてもらう言葉をキャッチフレーズと呼ぶことが多いようです。くり返し使う言葉にするなら、声に出して読む手順に時間をかけ、客が口に出して言いやすいかを確かめてください。
会社のキャッチコピーも同じ手順で作れます。違うのは、誰に何を約束するかを決める段階に、経営者と、営業や採用など客や応募者に接する部署の人を入れる点です。会社の言葉は名刺、Webサイト、採用の資料まで長く使われ、後から変えると作り直す物が多いためです。長く使う言葉は、他社が同じ言葉を商標登録していないかを、独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営するJ-PlatPatの商標検索で確かめてから使います。
生成AIは、印を付けた語で案を書く手順で使ってかまいません。説明文を渡し、「この説明文をもとに、数字で言う型で10案出してください」のように型を指定して頼むと、説明文の事実を使った案が出ます。商品名だけを渡した場合に並ぶのは、同じ業種でよく使われる言い回しの案です。生成AIの案には「No.1」のような根拠の要る言葉が入ることがあるため、根拠を示せる言葉だけかの確認は省かないでください。
まとめ|キャッチコピーは長い説明文を削って作る
キャッチコピーは、長い説明文を先に書き、他社が言えない語を残して削って作ります。まずは、誰に・どの場面で・何を約束するか・約束の根拠の4つを、100〜200字の文章に書き出してみてください。一行から削った条件は、キャッチコピーのすぐ下の文に書き足します。
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決めたキャッチコピーの約束を、サイトのどのページで説明するか決まっていますか
キャッチコピーを読んで興味を持った人が、次に約束の根拠を探すのはWebサイトの見出しや本文です。今のサイトのURLをお知らせいただければ、キャッチコピーの約束を受けるページと、足りない説明を一緒に洗い出します。







