「業務自動化を始めるなら、まずは評判のいいツールを選ぶところから」。自動化ツールの紹介ページには「データ入力を自動化」「請求書づくりを自動化」と機能が並ぶので、合うツールを入れれば手作業が減るように見えます。ところが、手を付ける作業の順番を決めるのはツールの機能ではなく、社内で同じ情報を何回打ち直しているかです。回数の多い転記(同じ情報の打ち直し)から1つずつつなげば、大きなシステムを入れなくても手作業は減らせます。
本記事では、記事の制作から毎日の公開までをAIとプログラムで動かしている制作会社の視点で、社内に残る転記の確かめ方から、1週間の数え方、最初につなぐ転記の決め方、ツールを試すときに確かめることまで、順を追ってお伝えします。
- 6つの項目に〇×を付けると、社内に転記の手作業が残っているかが分かる
- 転記は1週間、元の場所、写す先、1回の時間、回数を表に書き、回数×時間の大きい順に並べる
- 最初につなぐのは情報がデータで届く転記で、紙やFAXの転記は入口をデータに変えるところから始める
- 入力フォームと表計算を組み合わせると、受けた注文や問い合わせが1つの表にたまる
- ツールは1つの作業だけで2週間試し、試す前の1週間の時間と比べる
手作業が残っているかを確かめる6つの項目
社内に転記の手作業が残っているかは、次の6つの項目に〇×を付けると分かります。
- FAXや電話で受けた注文を、受注表に打ち直している
- 同じ客の名前や住所を、見積書と請求書と顧客台帳にそれぞれ入れている
- 毎月同じ形の集計表を、元の表から数字を拾って作っている
- メールに添付された注文書や申込書を開き、別の表に写している
- 紙の申込書や日報に書かれた中身を、後でパソコンに入れ直している
- 担当者ごとの別々のファイルを、月末に1つのファイルへまとめ直している
〇が1つだけでも、毎日何十回とある転記なら、月に1回の集計より多くの時間を取っているかもしれません。どこから手を付けるかは、〇の数ではなく転記の回数と時間で決めます。
紙・FAX・別々のファイルが転記を生む理由
紙やFAX、別々のファイルが転記を生むのは、情報が置かれた場所ごとに、次の作業で使える形へ人が書き写す必要があるからです。FAXで届いた注文1件を例にすると、受注表と請求書と顧客台帳に入れるまでに、同じ客の名前を3回打つことになります。

転記が手作業のまま続く理由の1つは、転記が受注や請求の作業の途中に挟まっていて、作業の一覧に名前が出てこないことです。「受注処理」とまとめて呼ぶ作業の中に、注文書を見て打ち込む数分が何十回入っていても、外からは受注の仕事にしか見えません。
もう1つの理由は、転記をなくすには受注から請求までをまとめて扱う大きなシステムが要る、と思われていることです。入れる費用と手間が見合わないと考え、手作業のまま続けている会社もあるでしょう。
転記をなくすなら、受注から請求までまとめて扱えるシステムを入れるしかないのではないですか。
編集部
受注から請求までを1つのシステムにまとめれば、転記はまとめて減ります。ただ、業務の流れをシステムに合わせ直す手間がかかり、全部の作業を一度に変えることになるでしょう。入力フォームと表計算を組み合わせるだけでも、注文が最初から1つの表にたまる形は作れるので、回数の多い転記から1つずつ変えていけます。
同じ情報の転記を1週間数える表の作り方
転記を数える表は、転記が起きた作業ごとに、元の情報がある場所、写す先、1回の時間、1週間の回数を書き、回数×時間の大きい順に並べる表です。思い浮かぶ面倒な作業と、実際に時間を取っている作業は、数えてみると違うことがあります。
例として3つの作業を書き入れると、表は次のようになります。
転記が起きる作業 | 元の情報がある場所 | 写す先 | 1回の時間 | 1週間の回数 | 回数×時間 |
|---|---|---|---|---|---|
FAXの注文の入力 | FAXの注文書 | 受注表 | 3分 | 60回 | 180分 |
請求書の作成 | 受注表 | 請求書の雛形 | 5分 | 20回 | 100分 |
月末の売上の集計 | 担当者ごとの売上の表 | 集計表 | 120分 | 月1回 | 30分 |
見落とされがちなのが、1回が数分で終わる毎日の転記です。月末の集計は1回に2時間かかるので目立ちますが、1週間あたりに直すと30分ほどです。1回3分の注文の入力は、週5日、1日に12回あれば1週間で180分になり、表の1位に来ます。
表を作ってから最初につなぐ候補を選ぶまでの手順は、次の4つです。社長が手を動かすのは1日目と1週間後で、合わせて1時間ほどで済みます。
手作業が残っているかを確かめる6つの項目に〇×を付け、〇が付いた作業を表の1列目に書きます。作業の名前は、担当者が普段呼んでいる言い方で書くと、記録を頼むときに話が通じます。5分ほどで終わる作業です。
表計算のファイルか紙に、作業、元の情報がある場所、写す先、1回の時間、1週間の回数、回数×時間の6列を作ります。〇を付けた作業の担当者に表を渡し、転記をするたびに回数の欄へ正の字を1本足してもらいます。1回の時間は、最初の1回だけ時計で測れば十分です。表を渡すまでの目安は15分ほどです。
担当者には、表に無い転記に気付いたら行を足し、同じように書いてもらいます。月末や月初にしか起きない作業は1週間の間に出てこないので、先月を思い出して1回の時間を書き、回数の欄に「月1回」と書きます。
1週間たったら、行ごとに回数と1回の時間を掛け、大きい順に並べ替えます。月1回の作業は、1回の時間を4で割って1週間あたりにします。上から3つに印を付けるまでの目安は30分ほどです。
印を付けた3つのうち、どれから始めるかは、元の情報がどんな形で届くかで決めます。

回数の多い転記から順につなぐ方法
回数の多い転記をつなぐとは、最初に入力した情報が、人が打ち直さなくても次の表や書類に入る形にすることです。印を付けた転記のうち、元の情報が最初からデータで届くものを先にし、紙やFAXで届くものは入口をデータに変えてから取りかかります。
6つの項目ごとに、つないだ後の形と、要らなくなる作業を並べると次のとおりです。
〇が付いた項目 | つないだ後の形 | 要らなくなる作業 |
|---|---|---|
FAXや電話の注文 | 受けた人か客がフォームに入れ、受注表にたまる | 注文書を見て受注表に打ち込む作業 |
見積書・請求書・顧客台帳 | 客の情報を1つの表に1回入れ、書類はその表から作る | 書類ごとに名前と住所を入れ直す作業 |
毎月の集計表 | 元の表から関数で集計表ができる | 数字を拾って足し直す作業 |
メールの添付 | 送る人がフォームに入れ、表にたまる | 添付を開いて写す作業 |
紙の申込書や日報 | 書く人が最初からフォームか表に入れる | 紙を見て入れ直す作業 |
担当者ごとのファイル | 全員が1つの表に書く | 月末にファイルを集めて貼り合わせる作業 |
つないだ後にどれだけ時間が変わったかは、同じ表でもう一度1週間数えると比べられます。
データで届く転記のつなぎ方
元の情報がWebフォームやメール、表計算のファイルで届く転記は、すでにデータになっていて、届く先を1つの表にまとめるだけでつなげるので、最初に手を付けます。受けた注文や問い合わせを1つの表にためる手順は、次の5つです。
今使っている受注表や顧客台帳の列を書き出します。受けた日、客の名前、連絡先、商品、数量、届け先のように、請求書を作るときに見ている項目がそろっているかも確かめます。
入力フォームのサービスで、書き出した列と同じ順に質問を並べます。商品名のように答えが決まっている質問は選択式にすると、同じ商品が別の書き方で入るのを防げます。
Googleフォームなら、「回答」タブの「概要」で右上のその他アイコンを押し、「回答の送信先を選択」から新しいスプレッドシートか既存のスプレッドシートを選びます。Microsoft FormsとExcelの組み合わせでも、フォームの回答をExcelのブックにためられます。
客にはフォームのURLを送り、電話で受けた注文は、受けた人がその場でフォームに入れます。メールで注文をくれる客には、次からフォームで送ってもらうよう案内します。
請求書は表にたまった行から作り、月末の集計は表計算の関数で出します。
回答がたまる表には客の名前や連絡先が入るので、表を見られる人は担当者に絞ります。Googleフォームでは、フォームの共同編集者は新しく作った回答の表を自動で見られるようになり、後からフォームの権限を変えても表の権限は変わりません。人を外すときは、フォームと表の両方で権限を直します。

転記をつないだ後に、議事録やレポートの作成までAIで自動にする使い方は、生成AIを業務に組み込む3つの実践パターンにまとめました。
紙とFAXで届く転記のつなぎ方
紙とFAXで届く転記は、写す先をつなぐ前に、情報の入口をデータに変えるところから始めます。紙のままでは、どこかで人が読んで打ち込む作業が残るからです。入口の変え方は、紙やFAXを書く人が誰かで、次の3つに分かれます。
- 取引先が送るFAXの注文:回数の多い取引先から1社ずつ、フォームか決まった形の表計算のファイルで送ってもらえないかを相談する
- 店頭や現場で客が書く申込書:申込書にフォームのQRコードを載せ、スマートフォンで入れてもらう
- 社内で書く日報や伝票:書く人が最初から表かフォームに入れる
取引先や客の中には、紙やFAXのほうが慣れている人もいます。頼むときは今の注文書と同じ項目のフォームにし、紙やFAXでの受付もしばらく残すと、相手の手間を増やさずに切り替えられます。
FAXを紙に出さずにPDFで受け取るだけでは、転記は減りません。PDFの中の文字は画像のままなので、表に入れるには人が読んで打ち込む必要があります。紙の文字を読み取ってデータにするOCRを使っても、手書きの数字の読み違いを人が確かめる手間は残ります。
入口がデータに変わった後は、データで届く転記と同じ手順で、写す先を1つの表にまとめます。
表の上位に来た転記を、社内でつなげる人はいますか
数えた表の上位の転記を、どの順でどうつなぐかの整理から、小さな自動化の仕組みづくりまで当社が行います。料金は作業の内容に合わせて見積もります。
自動化ツールを試す2週間に確かめること
自動化ツールを試すときは、表の1位の作業1つだけで2週間使い、試す前の1週間と比べます。いくつもの作業で同時に試すと、どの作業で時間が減り、どの作業で設定に時間を取られたのかが分からなくなるためです。2週間にするのは、最初の数日に設定と操作に慣れる時間が入るからです。
試している2週間に確かめることは、次の5つです。
- 時間:その作業の1回の時間と1週間の回数を、試す前と同じ測り方で記録する
- 手直し:設定や、ツールが入れた誤りを直すのにかかった時間も、試した期間の時間に足す
- 代わりの人:担当者が休んだ日に、ほかの人が同じ手順で使えるかを試す
- 費用:月々の費用と、使う人数が増えたときの費用を、ツールの料金のページで確かめる
- 書き出し:やめるときに、たまった情報を表計算のファイルで書き出せるかを確かめる
試した2週間の時間は、2で割って1週間あたりにしてから、試す前の1週間と比べます。減った時間が月々の費用に見合うかは、表の数字を見て社長が決めましょう。時間が減らなかったときは、ツールを替える前に、入口がまだ紙やFAXのままになっていないかを確かめます。
仕組みを作る人が社内にいないときの頼み方
数えた表を見ても仕組みを作る人が社内にいない場合は、どの転記から減らすかを社長が決め、整理と仕組みづくりを任せます。取引先や客に注文の出し方を変えてもらうかは、取引の事情を知っている社長にしか決められないからです。
頼む前にそろえておくものは、次の3つです。
- 1週間の転記を数えた表
- FAXの注文書や申込書など、元の情報の見本
- 今使っている受注表や顧客台帳の列の一覧
見本を渡すときは、客の名前、連絡先、届け先など客が誰か分かる情報と、金額を消しておきます。頼む相手には、見積の前に次の3つを聞いておくと、仕組みが止まったまま社内の誰も直せない状態を避けられます。
- 始め方:数えた表を見て、どの転記からつなぐかを一緒に決めるところから始めるか
- 社内での直し方:作った仕組みを社内で直せるか、手順の資料が残るか
- 止まったとき:仕組みが動かなくなったときに、誰がいつまでに直し、費用はどうなるか
数えた表はあっても、仕組みを作る人が社内にいない場合は
1週間の転記の表をもとに、作業の整理から小さな自動化の仕組みづくりまでを当社が行います。定型業務のAI自動化から社内システム開発まで扱い、料金は作業の内容に合わせて個別に見積もります。
まとめ|業務自動化はツールより先に転記の回数で決める
業務自動化は、ツールの機能から選ばず、社内で同じ情報を何回打ち直しているかを数えて、回数の多い転記から1つずつつなぎます。今日から始めることは、次の4つです。
- 6つの項目に〇×を付け、〇が付いた作業を表に書く
- 担当者に1週間、転記の回数と1回の時間を記録してもらう
- 回数×時間の大きい順に並べ、情報がデータで届く転記から入力フォームと表でつなぐ
- ツールは1つの作業だけで2週間試し、試す前の1週間と時間を比べる
どの転記から減らすかは、この記事の数え方で自分で決められます。数えた結果を見ても仕組みを作る人が社内にいない場合は、私たち合同会社Writers-hubが、作業の整理から小さな自動化の仕組みづくりまで行います(料金は作業の内容に合わせて見積もります)。







