「一次情報を集めるというのは、公的な統計や調査データを探してくることだろう」。そう受け取られやすいのは、記事の書き方を扱う解説の多くが「信頼できる出典を示しましょう」という話から入るためで、集めるという言葉が、既にどこかに公開されている資料を見つけることだけを指すように見えてしまいます。いざ探し始めると、自社の記事に合う調査がなかなか見つからず、どこまで遡ればよいのか迷います。
しかし、企業のオウンドメディアの記事制作を手がけてきた弊社の立場から言えるのは、探す作業とつくる作業は別物だということです。既に誰かが公開しているものを見つける工程と、社内の記録や取材をもとに自分たちの手で新しく用意する工程では、かかる時間も必要な準備も違います。他社と同じ資料をなぞらない記事にしたいなら、統計を探しに行く前に社内に残っている記録を見直しても遅くありません。
本記事では、公的統計や企業の発表から出所をたどる手順から、自分たちの手で情報をつくる4つの手段、集めたものを記事に載せるときの書き方まで、記事制作の現場の視点で順を追ってお伝えします。
- 一次情報を「探す」場合と「つくる」場合で変わる手順の違い
- 公的統計や企業発表から出所をたどる5つのステップ
- 分野ごとに押さえておきたい発表元と、検索での絞り込み方
- 社内の記録、取材、アンケート、実測という4つのつくり方の使い分け
- 集めた一次情報を記事に載せるときの書き方と注意点
一次情報の集め方は「探す」と「つくる」に分かれる
一次情報の集め方を調べている方の多くは、公的機関や企業が既に公開している資料をどう見つけるかを想定しているはずです。一方で、記事の内容に他社との差をつけたい場合に効いてくるのは、自分の手で新しくつくった一次情報のほうでした。
探す作業とつくる作業では、必要な時間も道具も、向いている場面も違います。混ぜたまま「一次情報を集めよう」と動くと、探す作業に時間を使ったのに独自性は上がらない、という結果になりがちです。

そもそも一次情報とは、誰の手も経ていない元のデータ
一次情報とは、調査や体験によって直接得られた、加工されていない情報です。国が実施した統計調査の集計結果、企業が自社で公表した決算資料、自分が実際に使って記録した内容などが該当します。
二次情報は、その一次情報を誰かが引用したり要約したりしたものです。新聞記事、業界レポート、解説ブログの多くはここに入ります。さらにその二次情報をまとめ直したものが三次情報で、検索結果でよく見かけるまとめ記事の一部はこの層にあたるでしょう。
ここで判定を間違えやすい点があります。一次情報かどうかは、媒体名ではなく誰が測ったかで決まります。省庁のサイトに載っていても、そのページが民間調査の数字を紹介しているだけなら二次情報です。逆に、個人のブログでも本人が実際に測って記録した内容であれば一次情報として扱えます。
二次情報を避けるのではなく、役割を分ける
一次情報を重視すると聞くと、二次情報を使ってはいけないように思えるかもしれません。実務での扱いは違います。二次情報は当たりをつける道具として使います。どんな調査が存在するのか、どの機関が発表しているのかを短時間で知るには、解説記事のほうが効率的だからです。
順序としては、二次情報で候補を洗い出し、そこに書かれている発表元と調査名を控え、原典を開いて内容を確認する。この流れであれば、探す速度を落とさずに、記事に載せる情報は原典から取れます。
一次情報と二次情報のどちらが上か、という話ではありません。二次情報は「どこを見ればよいか」を教えてくれるもの、一次情報は「その内容が事実かどうか」を確かめられるもの。役割が違うだけです。
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既にある一次情報を探す手順
では、実際に原典へたどり着くまでの流れを見ていきます。慣れると1件あたり数分で片づく作業ですが、順番を飛ばすと孫引き(引用の引用)が混ざる原因になります。
「市場規模の数字が欲しい」では範囲が広すぎます。「国内で該当サービスを導入している事業所の数を、直近の公的調査で確認したい」というところまで絞ると、探す先が自動的に決まってきます。この一文を書けないうちは、検索窓に何を入れても迷うでしょう。
解説記事やニュースを読み、そこに出てくる調査の名前、実施した機関名、発表年を書き出します。この段階では数字そのものをメモする必要はありません。控えるべきは、原典へ戻るための手がかりです。
控えた機関名で検索し、公式サイトの発表ページを開きます。報道発表資料や統計表がPDFで置かれている場合が多いため、本文だけでなく添付資料も確認してください。ここで初めて数字を読み取ります。
実施時期、対象者、回答数、調査方法、実施主体の4点を見ます。同じテーマでも条件が違えば数字は変わりますし、実施主体が結果によって利益を得る立場であれば、読み方に注意が要ります。
記事に載せる前提であれば、原典のURL、発表日、該当する表やページ番号を控えておきます。公開後に確認を求められたときに、探し直す手間がなくなります。
5番目を省略する方が多いのですが、記事を公開してから半年後に数字の根拠を尋ねられる場面は実際に起こります。控えておく時間は1件あたり十数秒で、後から探し直す時間とは比べものになりません。
孫引きが混ざるのは、二次情報に書かれた数字をそのまま引き、出典として「◯◯の調査によると」とだけ添えたときです。要約の過程で条件が落ちていたり、数字が丸められていたりする場合があり、原典と食い違ったまま公開されてしまいます。数字を書き写す作業は、必ず原典を開いた状態で行ってください。
分野ごとに押さえておきたい発表元
探し先をあらかじめ知っておくと、検索に費やす時間が短くなります。分野ごとに、まず当たるべき場所は決まっています。
公的統計であれば、政府統計の総合窓口であるe-Statに各府省の調査結果が集約されています。国勢調査や経済センサスといった大規模調査の集計表を、条件を指定して取り出せます。

※ 出典:総務省統計局ほか「政府統計の総合窓口(e-Stat)」
学術的な裏付けが必要な場合は、論文検索のCiNii Researchや、学協会の刊行物を収録するJ-STAGEを使います。専門用語の定義を確認したいときにも役立ちます。

※ 出典:国立情報学研究所「CiNii Research」
企業に関する数字であれば、その企業自身が出しているIR資料や決算説明資料が一次情報にあたります。新製品や調査結果の発表であればプレスリリースが原典で、PR TIMESなどの配信サービス上で全文を読めることも多いでしょう。業界全体の動向は、業界団体が公開している統計や白書が起点になります。
検索で二次情報を減らす絞り込み方
キーワードだけで検索すると解説記事が並ぶため、絞り込みの条件を足します。よく使うのは次の組み合わせです。
「site:go.jp」を付けると政府機関のドメインに限定でき、「filetype:pdf」を足せば報告書や統計表そのものに近づきます。調査結果を探しているなら、キーワードに「白書」「統計」「調査結果」「報道発表」といった語を足すと精度が上がります。検索ツールで期間を指定すれば、古い数字を掴んでしまう事故も減らせるでしょう。
もう一つ、グラフを探している場合は画像検索が早い場面があります。数字がグラフの形で公開されていることを手がかりに、掲載元のページへ飛ぶ方法です。ただし画像検索で最初に見つかるのは引用先であることが多いため、そこから発表元をたどる手順は変わりません。
調べ物に時間を取られて、記事の本数が伸びていませんか
原典まで戻る手順そのものは難しくありません。難しいのは、本業の合間にその時間を毎月確保することのほうです。Writers-hubでは、キーワードの選定から出典の確認を含む調査、構成、執筆までを担う記事制作をお引き受けしています。今の体制でどこまで社内に残すかも含めてご相談いただけます。
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自社で一次情報をつくる4つの手段
ここからは、探すのではなくつくる側の話に移ります。検索して見つかる一次情報は、当然ながら競合他社も同じように見つけられます。読者にとって他では読めない内容にするなら、自分たちの側から情報を出す必要が出てきます。
手段は大きく4つに整理できます。それぞれ着手までの早さと必要な準備が違うため、状況に合うものから始めてください。
| 社内の記録を棚卸しする | 取材する | アンケートを実施する | 自分で試して記録する | |
|---|---|---|---|---|
| 着手までの早さ | ◎ | △ | △ | ○ |
| かかる費用 | ◎ | ○ | △ | ○ |
| 他社が真似しにくいか | ○ | ◎ | ○ | ◎ |
| 記事への転用しやすさ | ○ | ◎ | ◎ | ○ |
| 事前に必要な準備 | 少ない | 多い | 多い | 中くらい |
比較表でおすすめに挙げたのは、最も早く始められるという理由からです。新しく調査を企画しなくても、社内には既に一次情報が溜まっています。
いちばん早いのは、社内にある記録の棚卸し
社内にある記録は、探す手間なく使える一次情報です。問い合わせフォームに届いた質問文、営業担当が残した商談メモ、サポート窓口に寄せられた困りごと、受注に至らなかった案件の理由。どれも自社が直接受け取った内容で、外部からは手に入りません。
- 問い合わせやチャットに届いた質問の文面
- 商談で繰り返し出てくる懸念や比較検討の相手
- サポート窓口に届く操作でのつまずき
- 受注に至らなかった案件の理由
- 自社サイトの検索窓に入力された語
- 自社で実施した施策の実測値
棚卸しのときは、件数を数えるところまでやっておくと記事で使いやすくなります。「よく聞かれます」と書くより、「直近半年の問い合わせのうち、同じ趣旨の質問が何件あった」と書けるほうが、読者は自分の状況と照らし合わせて判断できるからです。

取材とアンケートは、設計しだいで使えなくなる
取材とアンケートは独自性の高い情報を得られる手段ですが、準備を省くと記事に使えないものが出来上がります。
取材で起こりやすいのは、話を聞いた後で「面白かったが、記事のどこに入れればよいか分からない」という状態です。防ぐ方法は単純で、質問リストを作る前に、記事のどの見出しで何を語ってもらうかを決めておくこと。そのうえで、想定と違う話が出たときに拾えるよう、時間に余裕を持たせておきます。
アンケートで注意が要るのは、回答数と設問の作り方、そして回収経路です。自社の顧客リストに配れば、答えるのは既に自社を選んだ人に偏ります。その偏り自体は悪いことではなく、「自社の既存顧客に聞いた結果」として書けばよいのですが、一般論として提示してしまうと事実と違ってきます。
アンケート結果を記事に載せるときは、実施時期、回答者の属性、回答数、回収方法の4点を必ず添えてください。この4点が書かれていれば、読者は数字をどこまで一般化してよいか自分で判断できます。逆に、これらを書かないまま比率だけを出した記事は、読み手から見て検証のしようがありません。
自分で試して記録する
自社のサービスや業務で実際に試し、その過程と結果を記録する方法です。手数はかかるものの、記録した本人しか持っていない情報になるため、他社が同じ内容を書くことはできません。
記録するときのポイントは、結果だけでなく条件を残すことです。いつ、どんな環境で、何を変えて試したのか。条件が書かれていない結果は、読者にとって自分の状況に当てはめられない情報になってしまいます。うまくいかなかった試みも、条件が揃っていれば十分に価値のある記録として扱えるでしょう。
社内にデータがあると言われても、きれいに整理された数字の形では残っていません。それでも一次情報として使えるのでしょうか。
編集部
整っている必要はありません。むしろ、問い合わせの文面やメモのような生の記録のほうが、読者の言葉に近いぶん記事では使いやすい場面が多いです。まずは1つのテーマに絞って、直近3か月ぶんだけ読み返してみてください。同じ趣旨の内容が何度も出てくるはずで、その繰り返しこそが記事にすべき論点になります。
関連記事:インタビューレポートの書き方|構成の型と例文、書き出しの決め方
集めた一次情報を記事に載せるときの決まりごと
集めただけでは記事の評価は変わりません。載せ方によって、読者が確かめられる形にもなれば、ただ数字が並んだだけの状態にもなります。ここでは押さえておきたい3点を挙げます。
出典は誰が、いつ、何を調べたかまで書く
「ある調査によると」という書き方では、読者は確かめようがありません。実施した機関名、調査名、発表年を書き、可能であれば原典へのリンクを添えます。数字は貼るだけでなく、調査の条件まで書きます。
Googleも、有用で信頼性の高いコンテンツの条件として、情報源を明示することや、実際の経験に基づく内容であることに触れています。公開されている考え方に沿って書くという意味でも、出典表記は省かないほうが無難でしょう。

※ 出典:Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」
数字をそのまま貼らず、意味を自分の言葉で書く
統計の数字を引いただけの段落は、読者から見ると原典を読むのと変わりません。その数字が読者の状況にとって何を意味するのか、一文で添えてください。増えているのか減っているのか、自社の業界ではどう受け止めるべきなのか。解釈を書けないなら、その数字は記事に必要ない可能性があります。
数値の比較が複数ある場合は、表やグラフにすると読み手の負担が減ります。文章で数字を並べるほど読みにくくなるため、3つ以上の比較が出てきた時点で図表化を検討するとよいでしょう。

避けたい載せ方
一次情報を入れたつもりでも、次のような書き方になっていると効果は出ません。
- 発表元を書かずに「調査によると」とだけ添える
- 数字を並べるだけで、読者にとっての意味を書かない
- 数年前の統計を、更新の有無を確認しないまま使う
- 自社データを出す際に、期間や母数を伏せて比率だけ書く
- 記事の主張と関係のない統計を、権威づけのために置く
最後の項目は特に見落とされます。集める量ではなく、主張とつながっているかで効きます。関係のない数字が多いほど、読者は本題までたどり着けなくなってしまいます。
社内にある材料を、記事の形にする手順を残したいなら
問い合わせや商談の記録を記事に変える作業は、外部に任せきりにするより社内に手順として残したほうが続きます。Writers-hubでは、調査から執筆までの型を社内に定着させる内製化のご支援もしています。今の担当者数と本数に合う進め方をご提案しますので、まずは現状をお聞かせください。
一次情報の集め方でよくある質問
相談の場で繰り返し尋ねられる点について、制作の現場から見た答えをまとめます。
直接得られた加工前の情報が一次情報、それを誰かが引用や要約をしたものが二次情報です。判定の基準は媒体の種類ではなく、その情報を誰が直接測ったり体験したりしたかにあります。公的機関のページでも、他所の調査を紹介しているだけなら二次情報として扱ってください。
集められます。むしろ規模が小さいほど、顧客との距離が近いぶん有利な面があります。問い合わせの文面や、商談で繰り返し出る質問は、それ自体が外部の誰も持っていない記録です。新しく調査を企画するより、既にある記録を読み返すところから始めるほうが早く形になります。
何人以上なら使える、という一律の線はありません。統計として一般化した主張をするのであれば設計から専門的な検討が要りますし、そこまでを目指さない場合でも、回答数と回答者の属性を明記すれば読者が自分で判断できます。数を伏せて比率だけを出す書き方だけは避けてください。
一次情報を載せること自体が順位を保証するわけではありません。ただし、公開情報の組み替えだけで作られた記事は既存の上位記事と区別がつかず、読者にとって選ぶ理由がなくなります。一次情報は、その記事を読む理由をつくるための材料と考えるほうが実態に近いでしょう。
まとめ
一次情報の集め方は、既にあるものを探す作業と、自分たちの手でつくる作業に分けて考えると迷いが減ります。探す場合は二次情報で当たりをつけてから原典に戻り、調査の条件まで確認する。つくる場合は、社内に既にある記録の棚卸しから着手するのが最も早く始められます。
- 一次情報かどうかは媒体名ではなく、誰が直接測ったかで判定する
- 二次情報は原典へ戻るための手がかりとして使い、数字は原典から取る
- 探す際は発表元、実施時期、対象、回答数、調査方法まで確認する
- つくる場合は問い合わせや商談メモなど、社内に残っている記録から始める
- 記事に載せる際は出典と条件を書き、数字の意味を自分の言葉で添える
まずは直近3か月の問い合わせを読み返すところから試してみてください。統計を探しに行く前に、自社にしかない材料がどれだけあるかが見えてきます。合同会社Writers-hubでは、調査を含む記事制作から、社内で書ける体制づくりまで、企業ごとの状況に合わせてご支援しています。
集めた材料を、どの記事から形にするか決まっていますか
社内に材料はあるものの、どのテーマから記事にすべきか判断がつかないというご相談を多くいただきます。今あるサイトと記録を拝見したうえで、新しく書く、既存を直す、設計から見直すのどれから着手すべきかをお伝えします。








