「社員インタビューを増やしても応募が増えないのは、記事の書き方や見せ方に魅力が足りないからだろう」。採用インタビューは会社の魅力を伝える場だと説明されることが多く、協力してくれそうな社員から順に1本ずつ企画していく進め方も社内で定着しているため、原因は記事1本の出来にあると考えられがちです。そのため、次は話の上手な社員に頼むべきか、写真や構成を変えるべきか、どこから直せばよいのか迷うことになります。
しかし、採用インタビューの取材と執筆を請け負ってきた弊社の立場から言えるのは、求職者は会社の魅力を探しに来ているのではなく、応募して大丈夫かどうかを確かめに来ている、ということです。だとすれば、揃えるべきは記事の本数ではなく、職種と年次と入社経路の組み合わせになります。3職種を新卒と中途の両方で募集しているなら、確かめたいことの違う読者が6通り訪れている計算です。
本記事では、求職者の不安から逆算する人選と質問の作り方から、本音が出やすい当日の進め方、原稿確認と公開後の更新まで、記事制作会社の視点で順を追ってお伝えします。
- 採用インタビューを1本ずつではなく並びで設計する理由
- 求職者がインタビューで確かめようとしている4つのこと
- 打ち消したい誤解から質問を逆算する組み立て方
- 本音が出ない当日の座組みと、その直し方
- 内製と外注の線引き、公開後の更新の回し方
採用インタビューは1本ずつではなく、並びで設計する
社員インタビューは、1本ごとに企画されることが少なくありません。協力してくれそうな社員に声をかけ、話を聞き、記事にして公開し、また次の人を探す。この進め方でも本数は積み上がりますが、求職者から見た一覧は少しずつ偏っていきます。
偏りは人選の順番から生まれます。最初に声がかかるのは、たいてい人事や広報にとって頼みやすい社員です。協力的で、話がまとまっていて、社歴も長い。ところが求職者が探しているのは、自分がこれから就くポジションに、いま就いている人のほうです。
一覧ページは、読みやすさより探しやすさで評価される
インタビュー一覧は、記事の入口であると同時に選別の場でもあります。求職者は写真と名前を眺め、職種と年次を確認し、自分に重なる人を1人だけ選んで開きます。すべてに目を通す人はほとんどいません。
そのため、一覧に必要なのは記事タイトルの巧みさよりも、開く前に「誰の話か」が判別できる情報になります。職種、入社年次、勤務地、新卒か中途か。この4点が一覧に出ているだけで、離脱の理由がひとつ減ります。
裏を返すと、顔写真とキャッチコピーだけが並んだ一覧は、求職者に総当たりを強いる作りだといえます。デザインとしては整って見えるため、社内では問題として挙がりにくい部分でもあるでしょう。
揃えるべきは本数ではなく、組み合わせ
何本作れば十分か、という質問をよく受けます。答えは本数そのものではありません。募集職種の数と採用チャネルの数を掛けた分が必要になります。3職種を新卒と中途の両方で募集しているなら、最低でも6通りの読者がサイトを訪れています。
揃える軸 | なぜ必要か |
|---|---|
職種 | 応募先の仕事内容を具体的に想像するため |
入社年次 | 入社後1年目と5年目で確かめたいことが違うため |
入社経路 | 新卒と中途では入社前の不安の中身が異なるため |
勤務地・部署 | 配属先によって働き方が変わる会社では前提が変わるため |
すべてを一度に揃える必要はありません。ただし優先順位は、採用したい人数が多い職種からではなく、採れていない職種からつけたほうが効きます。すでに応募が集まっている職種の記事を増やしても、増えるのは母集団ではなく比較検討の材料だけです。

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求職者がインタビューで確かめているのは、不安が外れるかどうか
採用インタビューは、会社の魅力を伝える場だと説明されることが多いものです。実際に求職者が記事を開く動機は、もう少し後ろ向きなところにあります。応募しても大丈夫かどうかの確認に来ている、と考えたほうが実態に近いでしょう。
言い換えると、求職者は不安が外れたかどうかで応募を決めています。魅力を足すより、懸念をひとつ消すほうが行動につながる場面は珍しくありません。
記事で確かめられている4つのこと
寄せられる相談や、実際の取材で出てくる質問を整理すると、確認事項はおおむね次の4つに収まります。
確かめたいこと | 求職者の内心 | 記事で答えられる材料 |
|---|---|---|
仕事の中身 | 入社後に何をするのか具体的に見えない | 1日の流れ、直近で担当した案件の規模 |
一緒に働く人 | 相談できる相手がいるのか分からない | 配属直後に誰に何を聞いていたか |
成長と評価 | 何ができるようになると評価されるのか | 1年目と現在で任される範囲がどう変わったか |
続けられるか | 生活が回るのか、離職率が高くないか | 繁忙期の実際、残業や休みの取り方の実情 |
この4つのうち、多くの採用サイトが厚く書いているのは1つ目だけです。3つ目と4つ目は答えにくいため、抽象的な表現でまとめられがちですが、応募をためらわせているのはむしろ後半の2つでしょう。
良い話だけを並べると、かえって信じられなくなる
「風通しがよい」「チームの仲がよい」といった記述が全員分に並んでいる採用サイトは、読み手から見ると差が消えます。全員が同じことを言っている状態は、本人の言葉ではなく会社の意向が透けて見える状態でもあります。
苦労した話や、入社前の想像と違った点をひとつ入れておくと、それ以外の肯定的な記述の信頼度が上がります。打ち明けてよい失敗の範囲を、取材前に会社側で決めておくと、社員も安心して話せるでしょう。
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話を聞く相手は、読者に近い人から決める
人選の基準は、社内で評価が高い人でも、話が上手な人でもありません。読者と経歴が近く、読者がこれから通る道をすでに通った人です。
- 募集職種と同じ、または直近まで同じ職種にいた
- 入社経路が読者と同じ(新卒採用の記事なら新卒入社)
- 入社から2年から5年程度で、入社前の記憶が残っている
- 配属直後の失敗や戸惑いを言葉にできる
- 顔写真と実名の掲載に同意が得られる
3つ目の条件は見落とされやすい部分です。社歴が15年を超えると、入社前に何を不安に思っていたかを正確に思い出せなくなります。求職者と同じ目線で語れる期間には限りがある、と考えたほうが実態に近いでしょう。
一方、次に挙げる相手は、記事にしても効きにくくなります。
- 役員や部門長のみ(求職者が自分と重ねられない)
- 全員が同じ部署(配属の幅が伝わらない)
- 退職や異動が近い社員(公開直後に差し替えが必要になる)
- 話す内容を事前に会社が全て決めた社員(発言が広報文になる)
依頼するときは、掲載先、公開時期、所要時間、写真の有無、原稿確認の段取りをまとめて伝えます。社員にとってインタビューは通常業務ではないため、引き受ける判断に必要な情報を1通で渡すと、日程調整の往復が減ります。
関連記事:インタビューの質問|良い質問と悪い質問を分ける5つの差と種類別の使い分け
質問は、打ち消したい誤解から逆算して作る
質問リストを先に作ると、どうしても網羅的になります。数を増やしても記事が良くなるとは限らず、当日は時間切れで浅い答えが並ぶだけになりがちです。
順番を入れ替えます。まず、その職種の応募をためらわせている誤解を1つから3つ書き出す。次に、その誤解を打ち消せる事実を決める。最後に、その事実を本人の言葉で語ってもらうための質問を作ります。誤解を先に決めれば、質問は自然に絞り込めます。

誤解と質問の対応例
たとえば未経験可の求人で、応募が伸びない職種があるとします。よくある誤解と、そこから逆算した質問は次のようになります。
打ち消したい誤解 | 質問の例 |
|---|---|
未経験だと入社後に放置される | 入社して最初の1か月、誰に何を教わりましたか |
若手には裁量がない | いま自分の判断で決めていることを1つ挙げるとしたら何ですか |
忙しくて続かない | 直近で一番忙しかった時期は、何時ごろまで働いていましたか |
評価の基準が曖昧 | 1年目と比べて、任される範囲はどう変わりましたか |
質問文が具体的であるほど、答えも具体的になります。「やりがいは何ですか」と聞けば、誰にでも言える答えしか返ってきません。時期や場面を指定した質問には、その人にしか答えられない内容が返ってきます。
答えが浅いときの聞き直し方
準備をしても、当日そのまま深い話になるとは限りません。返答が一般論で止まったときは、質問を変えるより先に、相手の答えを一度こちらの言葉で要約して返します。
そのうえで、時点か場面のどちらかを1つ指定して聞き直します。「入社を決めた当時は、他社と何を比べていましたか」のように時期を置くと、抽象的なまま答えることが難しくなります。同じ論点について、事実を聞く質問と理由を聞く質問を組にしておくと、掘り直す先を探さずに済むでしょう。
採用インタビュー記事ができるまでの工程
取材そのものは1時間ほどで終わります。公開までの日数を決めているのは、その前後にある調整と確認の工程です。
募集職種、入社経路、想定する年次を一文で書きます。ここが決まらないまま人選に進むと、社内の都合で対象者が決まってしまいます。
応募をためらわせている誤解を書き出し、打ち消せる事実と質問に落とします。論点は3つまでに絞ると、60分の枠に収まります。
本人の承諾だけでなく、業務時間内で対応してよいかを上長にも確認します。ここを飛ばすと、当日の直前に日程が崩れます。
録音の許可を取り、時間配分を最初に共有します。写真は話が終わりきる前に撮る時間を確保しておくと、表情が硬くなりません。
原稿を本人と広報に見てもらいます。修正できる範囲と締切を伝えてから出すと、戻りが遅れにくくなります。
記事単体で終わらせず、職種と年次が一覧で判別できる形に並べ直します。
工程3と工程5は、相手の返事を待つ時間です。自社の作業スピードでは短縮できません。公開日から逆算して、依頼を出す時期を先に決めておくほうが、結果として全体は早く終わります。
6工程のうち、社内で回せるのはどこまでですか
人選と依頼までは自社で進め、当日の取材と執筆だけを外に出す。採用インタビューでは、この分け方がよく選ばれます。どこを任せるかは、社内で手が止まっている工程から逆算して決められます。
本音が出ないのは、質問ではなく当日の座組みが原因
「社員が当たり障りのないことしか話してくれない」という相談は、質問の作り方の問題として持ち込まれることが多いものです。実際には、当日の場の作り方が原因になっている場合が目立ちます。
インタビューに上長が同席していると、社員の発言は評価される場での発言に変わります。同席者が1人増えるだけで、話す内容は変わります。撮影スタッフを含めた人数も、同じ理由で少ないほうが望ましいでしょう。
同席が必要なのは、事業内容に機密が絡む場合や、対象者が入社直後で不安が強い場合に限られます。それ以外は、聞き手と本人の2名に絞ったほうが、記事に使える発言は増えます。
質問票を事前に渡すと、答えを用意されてしまいませんか。
編集部
論点は渡して、質問文そのものは渡さない形をおすすめしています。何を聞かれるか分からないままだと、当日は思い出す時間で枠が埋まります。反対に質問文まで渡すと、読み上げに近い受け答えになりやすい。「入社を決めた理由と、1年目の失敗について伺います」程度の粒度が、準備と自然さの両方が成り立つ範囲だと考えています。
場所の選び方にも差が出ます。会議室は録音の条件としては良い一方、社員にとっては評価面談を連想させる場所でもあります。普段働いている席の近くや、実際の作業現場で話を聞くと、周囲の様子が写真の材料になり、話も具体的になりやすいでしょう。
原稿確認で記事が一般論に戻るのを防ぐ
苦労して引き出した具体的な発言が、原稿確認の過程で削られていく。採用インタビューでもっとも起きやすい後戻りです。
本人が読むと自分の発言が気恥ずかしくなり、上長が読むと部署の体面が気になり、広報が読むと全社の統一感が気になります。それぞれの修正は正当で、合計すると角が取れた文章だけが残ります。
原稿を出す前に、修正できる範囲を書き添えておきます。事実誤認と数字の誤り、社外に出せない固有名詞は修正の対象。言い回しや語尾の好み、発言の削除は編集側で判断する。この線引きを最初に共有しておくだけで、差し戻しの往復はかなり減ります。
削除の依頼が来たときは、理由を1つだけ確認します。事実として誤っているのか、公開したくない内容なのか、単に照れくささからなのか。3つ目であれば、表現を和らげる代替案を添えて残す判断もできます。削除を受けるか差し替えるかを、その場で決められる担当者を1人置いておくと、確認の期間そのものが短くなります。
内製と外注、どこで線を引くか
採用インタビューを社内で作るか、外部に任せるかは、予算より先に「継続できる本数」で判断したほうが実態に合います。1本目は社内の熱量で作れても、10本目まで同じ品質で続くかどうかは別の問題です。
| 初期費用 | 品質の安定 | 継続のしやすさ | 向いている状況 | |
|---|---|---|---|---|
| すべて内製 | ◎ | △ | △ | 広報に取材経験があり、年2、3本で足りる |
| 取材と執筆を外注 | △ | ◎ | ◎ | 職種ごとに揃えたい、更新を続けたい |
| 全工程を外注 | × | ◎ | ○ | 立ち上げ期で社内に担当者がいない |
実務でもっとも多く選ばれているのは、真ん中の分け方でしょう。人選と依頼は社内のほうが早く、取材と執筆は外部のほうが安定します。社内に残すべきは、誰に話を聞くかを決める判断で、ここを外に出すと記事の狙いがぼやけます。
内製で続ける場合は、質問設計と原稿確認の型を最初に作っておきます。担当者が代わっても同じ手順で回せる状態にしておかないと、引き継ぎのたびに品質が振れ幅を持ちます。
社内に残す工程と、外に出す工程を分けてみませんか
何本必要か、どの職種から着手するか、社内の誰が原稿確認を担うか。制作を始める前の切り分けからご相談いただけます。すでに数本公開している場合は、既存記事の並びを見たうえで次の一手をお出しします。
公開したあとに効き続けさせる
採用インタビューは、公開した時点が到達点ではありません。掲載されている社員の状況が変われば、記事の意味も変わります。
登場した社員が辞めた記事は、逆の材料になります。求職者は社員名を検索し、SNSや転職情報から在籍状況を推測することがあります。四半期に一度、掲載中の社員が在籍しているかを確認する運用を決めておくと安全です。
差し替えの判断は、退職の事実だけで決める必要はありません。異動して職種が変わった場合は、記事に現在の所属を注記して残す方法もあります。削除するか注記するかを、公開時にあらかじめ決めておくと、後から判断に迷いません。

作った記事は採用サイトの中だけで使うものでもありません。求人媒体の会社紹介欄、会社説明会の資料、内定者へのフォロー資料。同じ取材から複数の用途に展開すると、1本あたりの制作費に対する回収の幅が広がります。二次利用の予定がある場合は、撮影と掲載の同意を取る段階で利用範囲を明記しておくと、後から取り直す手間を避けられます。
効果の見方については、記事ごとのページビューだけを追っても判断がつきません。エントリーフォームに到達する前にどの記事を見ていたか、応募者が面接でどの記事に言及したか。定量と定性の両方を拾っておくと、次にどの職種の記事を作るかの根拠になります。
採用インタビューについてよくある質問
採用担当や広報の方から実際に寄せられることの多い質問をまとめました。
募集職種の数と採用経路の数を掛けた分が目安です。3職種を新卒と中途で募集しているなら6通りの読者がいるため、まずは採れていない職種から1本ずつ揃えます。同じ職種を増やすのは、その後で構いません。
業務時間内に実施する場合、謝礼を伴わないのが一般的です。ただし休日の撮影を依頼する場合や、退職者に協力を求める場合は扱いが変わります。実施前に人事と経理で方針を決めておくと、当日の説明に迷いません。
後ろ姿や手元の写真、イラストへの差し替えで対応できます。掲載範囲は本人の同意が前提であり、無理に説得すると当日の発言まで慎重になりかねません。写真の可否は依頼の段階で確認しておくのが確実です。
記事を先に作るほうが手戻りが少なくなります。質問設計と人選は共通で使え、記事の取材で出た発言をもとに動画の構成を組めるためです。動画から始めると、長い発言を記事に落とし込む作業が後から増えるため、順序としては効率がよくありません。
内容の見直しは年1回、在籍状況の確認は四半期に1回を目安にしてください。組織変更や制度改定があった場合は、その都度該当箇所を確認します。記事の日付を表示している場合、古いままだと更新が止まっている印象を与えます。
載せられますが、読者が探している情報にたどり着くまでの距離が長くなります。一問一答は臨場感が出る一方、見出しだけでは内容を判断できません。求職者が一覧から選んで読む採用サイトでは、論点ごとに見出しを立てた構成のほうが向いています。
まとめ
採用インタビューは、1本ずつの出来よりも、一覧に何が並んでいるかで成果が変わります。求職者は自分に近い1人を探して開くため、揃えるべきは本数ではなく、職種と入社経路と年次の組み合わせでした。
質問は網羅ではなく、応募をためらわせている誤解から逆算して作ります。当日は同席者を絞り、原稿確認では修正できる範囲を先に伝える。公開後は在籍状況の確認と差し替えの基準を決めておけば、記事は採用が続く限り働き続けます。
合同会社Writers-hubでは、採用インタビューの人選と質問設計から、取材、執筆、原稿確認の進行までをお手伝いしています。すでに数本公開している場合でも、次にどの職種から着手するかの整理からご相談いただけます。
関連記事:雑誌のインタビュー記事の作り方|ページ数から逆算する構成とレイアウト
次の1本は、どの職種から作りますか
募集職種と現在の掲載状況を伺えれば、どこが足りていないかと、何本目までを先に揃えるべきかをお伝えします。取材の経験がある社内担当がいない段階でも進められます。








