「一番検索されている語で1位を取れれば、集客の悩みはひとまず片付く」。キーワード調査ツールに自社のテーマを入れると、三桁の数字が並ぶ列のなかに、検索数だけ数万回と桁違いの語が一つ二つ混ざっています。画面上では検索数しか比較できないため、その語を取ることが最短距離に見える。ビッグワードへの関心は、たいていこの見え方から始まります。
しかし、検索数の大きさと取りやすさは別の軸で決まります。弊社はこれまで、順位が伸び悩んだオウンドメディアの立て直しを数多く引き受けてきました。その現場で繰り返し確かめてきたのは、ビッグワードは1本の記事で取る語ではなく、分解した記事群で後から回収する語だということです。実際に上位のページを開いてみると、その語を説明しきった大作ではなく、配下に細かい記事を何十本も抱えた入口ページである場合がほとんどでした。
本記事では、ビッグワードの見分け方から、記事群への分解のしかた、上位に入った後の役割の置き方まで、記事の制作を請け負う側が実際に踏んでいる順番でお伝えします。
- ビッグワード、ミドルワード、スモールワードの分け方と、分ける目的
- 検索数ではなく上位10件の顔ぶれで難易度を判定する3つの項目
- 記事1本を厚く書いてもビッグワードが取れない構造上のデメリット
- ビッグワードを回収するまでの5つの手順と、待つべき期間の目安
- 上位に入った後に見る指標と、追わない判断の線引き
SEOにおけるビッグワードとは
ビッグワードは、検索される回数が多く、意味の範囲が広いキーワードを指します。「SEO」「転職」「保険」のように単語ひとつで成り立っているものが多く、業界の名前やサービスのカテゴリ名がそのまま当てはまります。反対に、語をつなげて意味を絞り込んだ「SEO対策の費用相場」のような組み合わせは、スモールワードと呼ばれてきました。
呼び分けの目的は、分類そのものにはありません。語の大きさを分けるのは、どこから書き始めるかを決めるためです。区分の表を覚えただけで手が止まってしまうのは、目的が抜けているからでしょう。
ミドルワードとスモールワードとの違い
3つの区分は、検索数と語の長さ、そして上位に並ぶサイトの種類で見分けます。
| 月間検索数の目安 | 語の形 | 上位に並びやすいサイト | |
|---|---|---|---|
| ビッグワード | 1万回以上 | 単語ひとつ | 大手メディア、公的機関、業界最大手 |
| ミドルワード | 1000〜1万回 | 2語の組み合わせ | 専門メディア、比較サイト |
| スモールワード | 1000回未満 | 3語以上の組み合わせ | 個別企業のブログ、個人サイト |
※ 検索数の区切りは業界で慣例的に使われている目安で、公式に定められた基準ではありません。市場の大きさによって1桁前後ずれます。
境界の数字にこだわる必要はありません。実務で意味を持つのは、自社が今いる位置から見て、その語が手を伸ばせば届くのか、それとも積み上げないと届かないのかという判断だけです。同じ「1万回」でも、法律や医療のように公的機関が上位を占める分野と、業務用の道具のように企業サイトが混ざる分野では、届くまでの距離がまるで違ってきます。
ロングテールという言葉との混同
相談の場でよく混ざるのが、スモールワードとロングテールの区別です。ロングテールは語の大きさを表す区分ではなく、検索数の小さいキーワードを数多く集めて全体の流入をつくる考え方を指します。
つまりスモールワードは語そのもので、ロングテールはその語の使い方にあたります。スモールワードを1本だけ書いた状態は、ロングテールとは呼べません。ここを混同すると、「ロングテールをやっている」と言いながら、実際には関連のない記事が数本並んでいるだけの状態になりがちです。
ビッグワードの判定は検索数より上位の顔ぶれ
検索数の目安を覚えても、目の前の語を狙うかどうかは決まりません。判断の材料は検索結果そのものにあります。
難易度を決めるのは検索数ではなく、上位10件の顔ぶれです。同じ月間1万回の語でも、上位が省庁と大手メディアだけで埋まっている語と、中小企業のブログが3件混ざっている語では、着手の可否が正反対になります。

同じ検索数でも難易度が変わる理由
検索結果は、そのキーワードに対してGoogleが「どういう性格のページを置きたいか」の答え合わせになっています。個別企業のサイトが1件も入っていない語は、記事の中身を磨いても入り込む余地がほとんど残されていません。そこに並んでいるのは、被リンクの量やサイトの規模で圧倒的に上にいる相手だからです。
逆に、上位に1件でも自社と同じ規模の企業サイトが混ざっていれば、そこは入れる席がある語だと読み取れます。
自社で判定するときの3つの確認項目
検索結果を開いて、次の3点を数えてみてください。
- 上位10件のうち、自社と同じ規模の企業サイトが何件あるか
- 上位10件のうち、記事ページではなくトップページやカテゴリページが何件あるか
- 上位10件の記事が、いつ更新されたものか
1つ目が0件なら、その語は今の段階で狙う語ではありません。2つ目が多い語は、記事1本ではなくサイト全体の評価で順位が決まっている語で、後述する分解の作業が前提になります。3つ目で更新が数年前のまま止まった記事が並んでいれば、内容の鮮度だけで割り込める可能性が出てきます。
検索数が多い語は、とりあえず一度書いて様子を見る形でも問題ないでしょうか。
編集部
書いてみる価値はありますが、順位を判断材料にするのは避けてください。上位に個別企業が1件も入っていない語は、記事の出来に関係なく圏外のままになります。その結果を見て「記事の品質が足りない」と結論づけてしまうと、改善の方向がずれてしまうのです。まず席があるかどうかを確かめてから、書く順番を決めてください。
ビッグワードで上位を取る3つのメリット
難易度の話が続きましたが、取れたときに戻ってくるものは大きいです。狙う価値がどこにあるのかを整理しておきます。
アクセス数の伸び幅
月間1万回の語で3位に入れば、クリック率の水準から考えて月に数百から千単位の訪問が積み上がります。スモールワードを何十本重ねて到達する流入量に、1ページで届いてしまう場合もあるでしょう。
社名やサービス名での検索の増加
広い語で名前が目に入る回数が増えると、後から社名やサービス名で直接検索される件数が動きはじめます。検討の初期に一度見た会社を、比較の段階で思い出して指名で調べる流れです。この動きは広告を止めた後も残るため、資産として数えてよいでしょう。
関連する語がまとめて上がる仕組み
広い語で評価されたページは、その語を含む組み合わせでも順位が付きやすくなります。「SEO」で上位にあるページが「SEOとは」や「SEOの意味」でも表示される、という重なり方です。狙って取った1語の周辺に、狙っていなかった語がまとめて付いてくる。この点はあまり語られません。
ビッグワードが記事1本では取れない理由
ビッグワードの最大のデメリットは、競合が多いことそのものではありません。ここが本記事のいちばんの要点です。多くの会社が、ビッグワードに対して2万字の長い記事を1本ぶつけて、半年後に順位が動かないまま終わります。
1ページの文字数を増やす方向で対処すると、どの検索意図にも浅く触れただけの記事になります。網羅したつもりで、実は一つも深く答えていない状態です。
原因は書き手の力量ではなく、ビッグワードという語の構造にあります。順位は本数ではなく構造で動きます。
1ページで複数の検索意図を受ける難しさ
「SEO」と打ち込む人のなかには、言葉の意味を知りたい人、自分で作業したい人、外注先を探している人、最新の動向を追っている人が同時にいます。1ページで全員に応えようとすると、どの層にとっても物足りない分量に落ち着きます。
ここで見落とされがちなのが、Googleは1ページの網羅性ではなくサイト単位のまとまりを見ているという点です。Google検索セントラルの「有用で信頼性が高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」にも、そのサイトが対象のテーマについて十分な専門性を示せているかを自己点検する項目が挙げられています。

※ 出典:Google検索セントラル「有用で信頼性が高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」
上位を取れているページに共通する形
実際にビッグワードの上位を取っているページを開いて構造を見ると、共通点が見つかります。上位に並ぶのは1本の大作ではなく、配下を抱えた入口ページです。
そのページ自体は定義と全体像を簡潔に示すだけで、詳しい説明は配下の個別ページに渡しています。読者は入口で自分の関心を見つけ、内部リンクをたどって深い説明にたどり着く。この形が成立しているサイトが、結果として広い語を持っていきます。

つまり、ビッグワードで必要になるのは1本の記事ではなく、入口ページと配下の記事群という2階建ての作りです。解説記事ではあまり踏み込まれない部分ですが、ここを理解しないまま長文化を続けても順位は変わりません。
スモールワードを量産しても届かない理由
「まずスモールワードから対策しましょう」という助言は、方向としては正しいものです。ただ、そのまま受け取って月に10本のスモールワード記事を書き続けても、ビッグワードの順位はほとんど動かない場合があります。
理由は単純で、どのスモールワードでもよいわけではないからです。効くのは、その語を分解して出てきたスモールワードだけです。
分解して出た語と思いついた語の違い
社内で出したネタ、書きやすいテーマ、担当者が詳しい分野。こうした基準で選んだスモールワードは、1本ずつ見れば悪くありません。それでも入口ページの評価には積み上がりません。入口ページと意味のつながりが薄く、内部リンクを張る理由が見つからないからです。
判定の目安は一つで足ります。
その記事から入口ページへ内部リンクを張ったとき、文脈として自然に張れるか。張る理由が思いつかない語は、ビッグワードの回収には効きません。
この基準で自社の既存記事を見直すと、本数の半分以上が入口ページと無関係だったというケースは珍しくありません。書いた本数の割に順位が動かないサイトは、たいていここでつまずいています。

分解の作業そのものは、検索結果の画面と自社に届いている問い合わせの記録があれば進められます。手間がかかるのは本数ではなく、どこで語を切るかの判断のほうでしょう。切り方が粗いと配下の記事どうしが内容で重なり、細かすぎると1本あたりの検索数がゼロに近づきます。
狙っている語を、どこまで細かく分ければいいのか迷っていませんか
分解の粗さは、後の本数と期間に直接跳ね返ってきます。弊社では狙う語の検索結果を1件ずつ確認したうえで、入口ページと配下記事の役割を割り振った設計図をお渡ししています。
ビッグワードを回収するまでの進め方
ここまでの整理を、実際の手順に落とし込みます。順番を入れ替えると回り道になるため、上から進めてください。
複数のビッグワードを同時に追うと、配下の記事がどちらにも寄らず中途半端になります。事業の中心にある1語だけを選びます。
URL、サイトの種類、ページの種類、最終更新日を表にします。自社と同じ規模の企業が1件もない語なら、ここで別の語に切り替える判断もあり得ます。
検索結果の下部に出る関連キーワード、上位ページの見出し、営業が実際に受ける質問を材料に、配下の記事テーマを洗い出します。本数そのものに閾値があるわけではありませんが、配下が20本を下回るうちは順位がほとんど動かないという実感があります。
入口ページを先に完成させる必要はありません。配下の記事を書きながら、各記事から入口ページへ、入口ページから各記事へ、双方向のリンクを通していきます。
配下が20本を超えたあたりで、入口ページを案内役として書き直します。全部を説明する構成ではなく、読者の関心ごとに行き先を示す構成に変えるのがねらいです。
期間の見通しも先に決めておきたいところです。
配下の記事を月に4本から8本出す前提で、入口ページの順位が動きはじめるまで半年前後、上位10件に入るまで1年から1年半を見込む案件が多くありました。
※ 期間は既存サイトの被リンク数、記事の本数、競合の入れ替わりで大きく変わります。着手前に自社の条件で見積もり直してください。
上位に入っても問い合わせが増えない理由
ビッグワードで3位に入ったのに問い合わせが増えない、という相談は定期的に届きます。数字の読み方を変えないまま評価すると、成功した施策を失敗と判定してしまいます。
理由は読者の検討段階にあります。広い語で検索している人は、まだ何を買うかを決めていません。「SEO」と打ち込む人の多くは、業者を探しているのではなく言葉の意味や全体像を知ろうとしています。
とりわけ見落とされがちなのが、入口ページに問い合わせ数を背負わせてしまう設計です。入口ページの役割は次の2つに置くのが実務的です。
- 配下の記事へ読者を送り込む
- 社名やサービス名を覚えてもらい、後の指名検索につなげる
- 問い合わせや資料請求を直接取る
- 単体で売上への貢献を測る
配下の記事のほうが検討段階の近い読者を集めるため、問い合わせはそちらで発生します。入口ページで見るのは、配下ページへの遷移率と、社名での検索件数の推移。この2つが伸びていれば、投資は回収に向かっていると判断してよいでしょう。
記事群を出し続ける体制のほうが先に詰まっていませんか
分解の設計ができても、配下20本以上を継続して出す工程が止まれば順位は動きません。弊社はキーワードの割り振りから執筆、入稿までを引き受け、社内に残す作業を編集確認だけに絞る形で伴走しています。
ビッグワードを追わない判断の線引き
ここで、その道で記事を作ってきた立場から本音を言えば、ビッグワードを追わないほうがよい会社は確実にあります。取れれば大きいという話と、自社が取るべきかという話は別です。
次の条件に当てはまるなら、いったん見送る判断が合理的です。
- 商圏が特定の市区町村に限られ、全国の検索から集めても来店や訪問につながらない
- 商材の単価が低く、流入が増えても粗利が制作費を上回らない
- 配下の記事を1年以上出し続ける人員か外注の予算が確保できていない
- 半年から1年半という期間を待てず、四半期ごとに成果を求められている
見送る場合でも、やることが無くなるわけではありません。ミドルワードとスモールワードで問い合わせの発生する語を先に取り切り、事業が回り始めてから広い語に手を伸ばす順番のほうが、資金の面では安全です。
反対に、次の条件がそろっていれば着手の判断はしやすくなります。
- 既存サイトに一定の被リンクがあり、上位10件と規模の差が開きすぎていない
- 市場が全国に広がっており、認知の拡大がそのまま商談数に効く
- 商材の単価が高く、1件の受注で制作費を回収できる
- 記事を出し続ける体制が社内か外部にすでにある
ビッグワードについてよくある質問
最後に、相談の場で実際に聞かれる質問をまとめます。
月間1万回以上が慣例的な目安です。ただし公式な基準ではなく、市場の大きさで1桁ずれます。数字よりも、上位10件に自社と同じ規模の企業サイトが入っているかで判断してください。
取れる場合があります。上位10件に企業サイトが混ざっていて、その記事の更新が数年前で止まっている語なら、内容の鮮度と配下の記事数で割り込む余地が残っています。上位が公的機関と大手メディアだけの語は、被リンクの差が先に効くため見送りが無難です。
文字数で決めるものではありません。定義と全体像を示し、配下の記事へ案内できていれば足ります。むしろ長く書きすぎると、読者が配下の記事へ進まないまま離脱します。
ビッグワードは語の大きさの区分、ロングテールは検索数の小さい語を数多く集める考え方です。対立する概念ではなく、ロングテールの積み上げがビッグワードの回収につながる関係にあります。
代わりにはなりません。広い語の広告は1クリックの単価が高く、検討前の読者が多いため費用対効果が合いにくいです。ただし、どの組み合わせで検索されているかを短期間で集めるには有効で、分解する語を決める材料として使えます。
まとめ|ビッグワードは狙う語でなく回収する語
ビッグワードで順位が動かないとき、原因を記事の品質に置くと打ち手が長文化に向かってしまいます。そこではありません。ビッグワードは狙って取る語ではなく、分解した記事群で回収する語です。
やることは3つに絞れます。上位10件の顔ぶれを数えて席があるかを確かめる。その語を20本以上の下位テーマに分解する。配下から書いて内部リンクで束ね、最後に入口ページを案内役として作り直す。順番を守るだけで、同じ制作費でも到達点が変わります。
私たち合同会社Writers-hubは、狙う語の選定から配下記事の割り振り、執筆と入稿までを引き受けています。自社で書ける体制づくりの支援も含め、どこから手を付けるかの判断からご一緒できます。
今狙っている語に、そもそも席があるのか確かめたい方へ
検索結果の顔ぶれを見れば、その語が今年の目標に入れられる語かどうかは短時間で判断できます。狙っている語と現在の記事本数をお知らせいただければ、分解の粗い案までお返しします。








