「この語はビッグキーワードなので、うちでは狙えません」。狙う語を決める打ち合わせで、検索回数の欄を見ながらそう結論が出る場面に何度も立ち会ってきました。キーワード調査ツールの画面は回数の大きい順に並ぶため、数字の大きさがそのまま難易度の順番として読まれやすいのです。
しかし、弊社はこれまで多くの企業サイトで、狙う語の設計から記事制作までを引き受けてきました。その経験から言えるのは、難易度を決めるのは検索回数ではなく上位10件の顔ぶれだということです。月1万回の語でも、上位に事業会社の自社サイトが3件混ざっていれば手は届きます。月3,000回しかない語でも、上位10件が全部大手の比較サイトなら、記事を何本足しても順位は動きません。
本記事では、ビッグキーワードの定義とスモールキーワードとの違いから、上位10件の顔ぶれで参入できるかを見分ける手順、そしてスモールキーワードから順に積み上げる進め方まで、記事制作会社の視点でお伝えします。
- ビッグキーワードとミドル・スモールキーワードの分け方の目安
- 検索回数が同じでも難易度が大きく変わる理由
- 上位10件のドメインを4つの型に分けて参入できるかを判断する手順
- 着手前に確かめたい3つの落とし穴と、その見つけ方
- スモールキーワードから代表ページへ積み上げる順番
ビッグキーワードとは検索回数の多い語
ビッグキーワードは、検索される回数が多いキーワードを指す呼び方です。「SEO」「転職」「保険」のように、1語か2語で構成される一般的な言葉が該当します。月間の検索回数が1万回以上のものを目安として挙げることが多く、ミドルキーワード、スモールキーワードと三段に分けて語られてきました。
ただし、この境界に公式の定義はありません。ビッグキーワードは検索回数で分けた呼び方にすぎず、分類そのものに意味があるわけではないとお考えください。回数の桁が違えば取り方が変わる、という実務上の区別にあたります。
ミドルキーワードとスモールキーワードとの違い
三つの分け方を、検索回数と語の数、検索する人の状態で並べると違いが見えてきます。
| ビッグキーワード | ミドルキーワード | スモールキーワード* | |
|---|---|---|---|
| 月間検索回数の目安 | 1万回以上 | 1,000〜1万回 | 1,000回未満 |
| 語の数 | 1〜2語 | 2〜3語 | 3語以上 |
| 検索する人の状態 | 調べ始めた段階 | 比べている段階 | 決める直前の段階 |
| 記事1本で答えられるか | × | △ | ○ |
| 着手する順番 | 後 | 中 | 先 |
※ 回数の区切りは業界で使われている目安で、公式に定められた基準ではありません。業種によって1万回に届く語の数は大きく変わります。
回数の区切りそのものは覚えなくて構いません。実務で効いてくるのは最下段の「着手する順番」です。スモールキーワードは答えが1つに定まるため記事1本で完結し、ビッグキーワードは検索する人の目的が幅広いため1本では収まりません。この差が、記事を出す順番を決める根拠になります。
ロングテールキーワードは分け方の軸が違う
ここで混同されやすいのがロングテールキーワードです。スモールキーワードの言い換えとして使われる場面もありますが、本来は別の軸を指す言葉になります。
ロングテールは、検索需要を回数の多い順に並べたときにできる尾の部分、つまり検索回数の小さい多数のキーワードをまとめて呼んだものです。1語ずつを指す言葉ではありません。対してビッグ・ミドル・スモールは、1つの語を回数で格付けした呼び方になります。

軸が違うため、「ロングテールを狙う」と「スモールキーワードを狙う」は同じ意味にはなりません。前者は小さい語を数多く集めて合計の訪問数をつくる進め方を指し、後者は語1つの選び方を指します。社内で話が噛み合わないときは、どちらの意味で使っているかを先に確認すると早く済みます。
ビッグキーワードで上位に入る3つの利点
ここからは、ビッグキーワードで上位に入ったときに何が起きるかを整理します。利点は3つに分かれ、いずれも規模の大きさに由来するものです。
訪問数の桁が変わる
月1万回検索される語で1位に入れば、その語だけで月に数千件の訪問が生まれます。スモールキーワードの記事を数十本積み上げて届く数に、1本で届く計算になります。
ここで見落とされがちなのが、訪問数の増え方が段階的ではないという点です。11位から10位に上がった瞬間に、検索結果の1ページ目へ入ることで流入が一段跳ね上がります。順位1つ分の差が、小さい語では数件、ビッグキーワードでは数百件の違いとして表れる。同じ「1つ上がった」でも意味が違ってきます。
※ 訪問数の見積もりは検索結果の表示形式や季節変動で上下するため、確定値ではなく桁の感覚として扱ってください。
社名を知らない層に届く
スモールキーワードで検索する人は、すでに課題も選択肢もある程度絞れている状態です。対してビッグキーワードで検索する人は、何を選ぶべきかを考え始めた段階にいます。
つまりビッグキーワードの上位は、まだ自社を知らない層と最初に接する場所になります。そこに情報を置けているかどうかが、その後の社名での検索量に影響してくるはずです。
被リンクと言及が集まりやすくなる
上位に入った記事は、同じ分野の記事を書く人の目に触れます。引用元として紹介されたり、社外の資料で参照されたりする機会も増えていきます。
ビッグキーワードで上位に入ると被リンクが集まりやすくなり、サイト全体の評価が上がります。その評価が次のビッグキーワードで効いてくるため、この循環に入れるかどうかが2本目以降の速さを分けます。
ただし循環に入るまでが長い、という点も先にお伝えしておきます。
難易度を決めるのは検索回数ではなく顔ぶれ
ここが本記事のいちばんの要点です。
同じ月1万回の語でも、上位に入る難しさは語によってまるで違います。回数は「どれだけの人が検索するか」を表す数字であって、「そこに誰がいるか」は教えてくれません。実際に順位を取り合う相手は、検索結果の1ページ目に今並んでいる10件です。

上位に並ぶドメインの型の見分け方
上位10件を開いて、それぞれが何のサイトかを数えてください。大きく4つの型に分かれます。
| 何が起きているか | 記事での参入 | |
|---|---|---|
| 大手メディアと比較サイトで10件 | 広告収入を目的に専任の人員で運用されている | × |
| 公的機関や公式ドメインが上位 | 制度や規格の一次情報が求められている | × |
| 事業会社の自社サイトが3件以上 | 記事の内容で順位が動く状態にある | ○ |
| 地図や動画、商品一覧が上半分 | 記事を読む目的では検索されていない | △ |
数えるのは、3行目に当たる「事業会社が自分の商売のために運営しているサイト」が何件あるかです。上位10件に事業会社のサイトが1件もない語は、記事の質では動きません。広告収入で成り立つメディアは、1つの語に何十時間でも人を割けます。同じ土俵に、片手間の更新では並べないのです。
4行目は、検索結果の作りそのものが記事向きでない場合を指します。上半分が地図や商品の一覧で埋まっていれば、1位の記事に回るクリックはごくわずかしかありません。順位を取ることと訪問が増えることが切り離される場面にあたります。
顔ぶれは半年ほどで入れ替わる
この判定は一度で終わりません。顔ぶれは半年から1年の間隔で入れ替わっていきます。
比較記事ではほとんど語られませんが、去年「無理」と判断した語が今は空いている、という入れ替わりは実際によく起こります。大手メディアが方針転換で更新を止めれば順位は落ちますし、Googleの評価基準が更新されれば上位の構成ごと変わることもあるでしょう。狙う語の一覧は作りっぱなしにせず、半年ごとに上位10件を見直してください。
狙う語の一覧を、上位10件の顔ぶれまで見て決めていますか
検索回数の一覧を作るところまでは自社でも進められますが、語ごとに上位10件を開いて参入できるかを判定する作業は、本数が増えるほど手が止まります。弊社では狙う語の候補に対して顔ぶれの内訳を1語ずつ確認し、今の状態で取りに行ける語と半年後に見直す語に分けたうえでお渡ししています。
ビッグキーワードを調べる5つの手順
顔ぶれを見る前に、そもそもどの語が自社にとってのビッグキーワードなのかを押さえる必要があります。手順を5つに分けます。
自社が扱う商材やサービスの呼び方から、余計な修飾を落として短くします。「中小企業向け勤怠管理システム」なら「勤怠管理」まで削った形が、その事業のビッグキーワードの候補にあたります。
Googleキーワードプランナーで候補語を入力すると、月間の平均検索回数が確認できます。無料で使えるラッコキーワードでも、関連語と回数の一覧を取得できます。表示される数値はツールごとに異なるため、1つに絞って記録してください。
ツールが返す関連語には、ビッグキーワードの下にあるミドル・スモールキーワードが含まれます。この段階で30語から50語の一覧を作っておくと、後の記事計画がそのまま組めます。
候補語をシークレットウィンドウで検索し、上位10件のドメインを書き出して型ごとに数えます。前章の表に当てはめ、参入できる語と見送る語に分けます。
すでに記事があるサイトなら、Google Search Consoleの検索パフォーマンスで対象語の平均掲載順位を見てください。11位から20位に入っている語があれば、新しく書くより既存記事を見直すほうが早く動きます。
有料のツールを揃えなくても、3番までは無料の範囲で進められます。最初の一覧づくりで迷うのは、ツールの選定ではなく1番目の削り方です。事業の言葉を削りすぎると自社と関係のない語になり、残しすぎるとビッグキーワードになりません。ここは社内で複数の案を出し、上位10件の顔ぶれまで見比べて決めてください。
着手前に確かめたい3つの落とし穴
参入できる顔ぶれだと判定できても、そのまま着手して空振りになる場合があります。確かめたい点を3つ挙げます。
検索結果の上半分に自社が置けない枠が並ぶ
近年の検索結果では、AIによる概要や広告枠、地図、動画が上部を占める語が増えました。ビッグキーワードは検索する人の目的が幅広いため、こうした枠が出やすい位置にあります。
1位に入っても、画面を開いた人の目が最初に届く場所に自社の記事がない。この状態は順位の数字からは見えません。確かめ方は簡単で、シークレットウィンドウで検索し、画面をスクロールせずに自社の順位に相当する位置が見えるかを見るだけです。
順位だけを目標に置くと、この落とし穴に気づけません。ビッグキーワードを狙うときは、順位と同時にGoogle Search Consoleの表示回数とクリック率を記録してください。順位が上がっているのにクリック率が下がる場合、検索結果の構成が変わった可能性があります。
検索する人の目的が混ざっている
「SEO」で検索する人の中には、意味を知りたい人、自分でやる方法を探す人、外注先を探す人が同時にいます。1本の記事で全員に答えようとすると、どの目的に対しても浅い記事になってしまいます。
目的が混ざっている語は、全部を1本の記事に詰め込むしかないのでしょうか。
編集部
詰め込まないほうが結果は出ます。目的ごとに記事を分けて書き、ビッグキーワードで狙うページはその入口として、それぞれの記事へ案内する役目に絞ってください。上位に並ぶ記事をよく見ていただくと、網羅的に見えて実は入口の役目に徹し、詳細は別ページへ渡している構成が多いことに気づきます。全部を1本に収めた記事は、どの目的の人にも途中で離脱されやすくなります。
上位に入っても問い合わせに結びつかない
上位に入ることと問い合わせが増えることは別の話です。「SEOとは」で1位を取っても、その場で発注する人はほとんどいません。調べ始めた段階の人が読む語だからです。
だからこそ、ビッグキーワードは問い合わせ件数の目標とは別の指標で管理してください。見るのは訪問数、社名での検索回数、そして関連ページへの遷移です。問い合わせは、遷移先にあたるスモールキーワードの記事で受け取る形にします。
次のような組み立て方をすると、途中で計画が止まりやすくなります。
- ビッグキーワードの記事1本に問い合わせ件数の目標を置く
- 上位に入るまでの期間を3か月で見積もる
- 上位10件を確認せず、検索回数の大きい順から着手する
- 記事を書く前に、サイト内の関連ページを整理しない
裏を返せば、指標と期間の見積もりを先に直しておけば、着手後に慌てる場面は減っていきます。
スモールキーワードから積み上げる進め方
では、参入できると判定した語にどう着手するか。ここには順番があります。

進め方を5つの段階に分けます。段階ごとに上位10件の顔ぶれを見直す必要はなく、次の段階へ上がるタイミングで確認すれば足ります。
前章で作った30語から50語の一覧から、答えが1つに定まる語だけを抜き出します。「勤怠管理システム比較」より「勤怠管理システム有給休暇管理」のように、条件が絞れている語を選びます。
1本で読者の疑問が尽きる語から着手します。上位に入るまでの期間が短く、記事の作り方を社内で固めるのにも向いています。
同じ分野の記事が5本以上そろった段階で、互いに関係する記事を本文中からリンクでつなぎます。読者が次に知りたい内容へ移れる並び順を意識してください。
スモールキーワードの記事を3本から5本ずつまとめて説明できる語を見つけ、そこを束ねる記事にします。各記事へのリンクはこのページから張ります。
束ねる記事がそろってから、ビッグキーワードを狙う代表ページを作ります。すでに書いた記事が細部の答えを持っているため、代表ページは全体の見取り図と各記事への案内に絞れます。
この5番目が、順番として最も誤解されやすいところです。代表ページは最初に作らず、最後に整えます。
理由は2つあります。1つは評価材料の問題で、支える記事がないうちに代表ページを公開しても、サイト内から集まるリンクがなく、その語では評価されません。もう1つは実務的な理由で、周辺の記事を10本書いたあとには、読者がどこで詰まるかが具体的に見えてきます。代表ページに何を書くべきかは、先に書いた記事の中に答えが落ちている。この順番を守ると、代表ページの書き直し回数が減ります。
内部リンクの張り方については、Googleが公開している基本の手引きにも、関連するページを結んで検索エンジンがサイト内の関係を把握できるようにする考え方が説明されています。

※ 出典:Google 検索セントラル「SEO スターター ガイド」
期間の目安をお伝えすると、スモールキーワードの記事が上位に入り始めるまでが2か月から4か月、ミドルキーワードで3か月から半年、代表ページがビッグキーワードで上位に入るのは着手から1年以上かかる案件が多いと見ています。
※ 期間はサイトの規模、被リンクの状況、公開する本数によって大きく変わります。着手時点の判断材料としてのみお使いください。
スモールキーワードの記事を積む工程が、月の途中で止まっていませんか
代表ページに届くまでには、答えが定まる語の記事を数十本そろえる必要があります。1本ずつの難易度は高くありませんが、月の本数が落ちると内部リンクで束ねる段階まで進みません。弊社では狙う語の一覧をもとに公開の順番を組み、執筆から内部リンクの設置までをまとめて引き受けています。
ビッグキーワードを維持する難しさと対処
上位に入った後の話も先にお伝えします。取るまでの計画は立てても、維持の工数を見込んでいない例が多いためです。
ビッグキーワードで上位に入ると、同じ語を狙う他社がその記事を見に来ます。広告収入で運営するメディアは、順位を取り戻すためにまとまった時間を投じられる。半年後に内容の厚みで抜かれる展開は、珍しくありません。
代表ページには、見直す間隔をあらかじめ決めて割り当ててください。3か月ごとに上位10件の内容と自社の記事を比べ、触れていない論点があれば追記します。この作業を計画に入れずに次の語へ進むと、1年かけて取った順位が半年で戻ります。
もう1つ、維持の面で効くのが周辺記事の更新です。代表ページだけを見直しても、束ねている記事の情報が古ければサイト全体の評価は上がりません。順位が落ちたときに代表ページの本文から疑うのは、順序としては後になります。まず周辺記事の更新が止まっていないかを確かめてください。
ビッグキーワードについてよくある質問
最後に、ご相談の場でよく挙がる質問をまとめます。
目安として月1万回以上と語られますが、公式な基準はありません。業種によって最も大きい語が月3,000回しかない場合もあり、自社の分野で回数が最大の語を基準に考えたほうが実務では使えます。
狙えますが、着手は後にしてください。立ち上げ直後は被リンクもサイト内の関連ページもない状態で、代表ページを公開しても評価される材料がありません。答えが定まるスモールキーワードから始め、1年以上の計画で組んでください。
本数では決まりません。同じ30本でも、同じ分野で内部リンクがつながった30本と、分野が散らばった30本では結果が違います。本数より、狙う語の周辺をどこまで埋められたかで判断してください。
勧められません。順位の操作を目的としたリンクの売買は、Googleが公開しているスパムに関するポリシーで違反として挙げられています。措置を受けてからの回復には月単位の時間がかかります。
書き直して構いません。ただし見出しの構成ごと入れ替えると順位が下がる場合があるため、まず不足している論点の追記から始め、1か月ほど順位の動きを見てから次の変更に進んでください。
被リンクの扱いについては、公式の方針が日本語で公開されています。社外へリンクの依頼を出す前に、一度目を通しておくと社内の判断がそろいます。

※ 出典:Google 検索セントラル「スパムに関するポリシー」
まとめ|回数の大きさより上位10件の顔ぶれ
ビッグキーワードは、検索回数が多いキーワードを指す呼び方です。月1万回以上という目安が使われますが、その数字は「どれだけの人が検索するか」しか表していません。
上位に入る難しさを決めるのは、検索結果の1ページ目に今並んでいる10件です。大手メディアと比較サイトで埋まっていれば記事の質では動かず、事業会社の自社サイトが3件混ざっていれば手が届きます。回数の大きさではなく、上位の顔ぶれで狙う語を決めます。
進め方にも順番があります。答えが1つに定まるスモールキーワードの記事から書き、5本そろった段階で内部リンクでつなぎ、ミドルキーワードの記事で束ね、代表ページは最後に整える。そして取った後には、3か月ごとに見直す工数を計画へ入れておく。この順番を守るかどうかで、同じ本数の記事から得られる順位は変わってきます。
私たち合同会社Writers-hubは、企業サイトやオウンドメディアで狙う語の設計と記事制作をあわせて引き受けてきました。狙いたい語が今のサイトで取りに行ける範囲にあるのか判断がつかない、記事を出しているのに大きい語へ届かないという段階でしたら、狙う語の一覧を見るところからご相談ください。
狙いたい大きい語に、今のサイトから何本で届くか見えていますか
ビッグキーワードに届くまでの本数と期間は、今あるページがどの語で評価されているかによって変わります。弊社ではまず公開済みの記事の順位を確認し、周辺の語をどこまで埋められているかを見たうえで、次に書くべき語と代表ページを作る時期をお伝えしています。まだ検討の途中でも構いません。








