「カスタマージャーニーをSEOに活かすには、まず顧客の行動から感情の変化まで描き込んだマップを作る必要がありそうだ」。カスタマージャーニーを調べ始めたばかりのWeb担当者がそう考えるのは、自然なことでしょう。カスタマージャーニーマップはもともと顧客体験の改善に使われてきた手法で、紹介される見本の多くに、段階ごとの感情の起伏を表す曲線が描かれているためです。
しかし、これまで多くの企業のオウンドメディアでキーワードの設計から記事の制作までを担ってきた弊社の立場から言えるのは、SEOで使うカスタマージャーニーは、段階とキーワードとページを並べた表で足りるということです。感情の曲線を丁寧に描いても、どのキーワードで記事を書き、読者を次にどのページへ送るかは決まりません。
本記事では、SEO向けのカスタマージャーニーの作り方から、キーワードを段階に振り分ける見分け方、公開後に見る指標まで、記事を企画する側の目線で順を追ってお伝えします。
- SEOで使うカスタマージャーニーは、段階ごとの検索キーワード、答えるページ、次に読ませるページを並べた表で、感情の行は省ける
- 段階は4つ前後に分け、キーワードは営業が受けた質問やサーチコンソールに出ている語句など、顧客が実際に使った言葉から集める
- キーワードの段階は、語の形でなく検索結果の上位に並ぶページの種類で決める
- 問い合わせのボタンは比較する段階と依頼先を決める段階のページに置き、ほかの記事からは1つ先の段階のページへリンクする
- 課題に気づく段階の記事は、問い合わせの件数でなく、次の段階のページへ進んだ人数で評価する
SEOで使うカスタマージャーニーとは
SEOで使うカスタマージャーニーとは、顧客が課題に気づいてから問い合わせるまでを段階に分け、段階ごとに検索されるキーワードと答えるページを並べた表です。
一般的なカスタマージャーニーマップとの違い
一般的なカスタマージャーニーマップとSEOで使う表は、横に並べる段階は同じで、縦に書き込む項目が違います。
縦に書く項目 | 一般的なカスタマージャーニーマップ | SEOで使う表 |
|---|---|---|
顧客について書くこと | 行動、思考、感情 | 検索した人が知りたいこと |
扱う接点 | 広告、店舗、SNS、営業などすべての接点 | 検索結果と自社サイトのページ |
段階ごとに埋める欄 | 各接点での不満と改善の案 | 検索キーワード、答えるページ、次に読ませるページ |
使い道 | 顧客体験の改善、部署間の認識合わせ | 書く記事と、内部リンクの行き先の決定 |
SEOで使う表では、感情の行を省いてかまいません。感情の行が役に立つのは、記事の書き出しで読者の状況に触れる文を考えるときくらいだと見ています。社内に一般的なマップがすでにあるなら、段階の分け方はそのまま使い、検索キーワードとページの行を足します。
SEOにカスタマージャーニーを使う理由
SEOにカスタマージャーニーを使うのは、問い合わせに近い段階の記事を見つけるためです。問い合わせに近い段階の記事は、キーワードを検索数の順に選ぶと抜け落ちます。検索数の多いキーワードは「〇〇とは」のように課題に気づいたばかりの人が使う言葉であることが多く、サービスを比べる人や依頼先を探す人の言葉は検索数が少なくなりがちです。
検索数の順に記事を書き進めたサイトでは、記事を4つの段階に振り分けると次の図のようになります。

SEO向けカスタマージャーニーの作り方6ステップ
SEO向けのカスタマージャーニーは、読者とゴールを決めてから、段階、キーワード、ページの順に表を埋める6つのステップで作ります。
記事を読んでほしい顧客を1人の人物像で決め、最後に取ってほしい行動を、問い合わせ、資料請求、購入のうち1つに絞ります。人物像は、営業が商談で会う担当者の役職や、よく受ける質問をもとに書くと、顧客が検索で使う言葉に近づくはずです。人物像のまとめ方はペルソナ設計シートの作り方で扱っています。
段階は、課題に気づく、解決策を調べる、比較する、依頼先を決める、の4つを基本にします。BtoBで、検索する担当者と決裁する人が別の人なら、比較すると依頼先を決めるの間に「社内で説明する」段階を足してください。
キーワードは、営業やサポートが顧客から受けた質問、Googleサーチコンソールの検索パフォーマンスに出ているクエリ(検索された語句)、キーワードツールの関連語から集めます。顧客が実際に使った言葉から集めるのは、社内でしか使わない呼び方をキーワードに選ぶ失敗を防ぐためです。
集めたキーワードで実際に検索し、上位に並ぶページの種類を見て、キーワードをどの段階に置くかを決めます。
キーワードごとに、答えるページを新しく書く記事、今ある記事、サービスページのどれにするかと、読んだ後に進んでほしいページを表に書きます。上位10件に同じページが多く重なる2つのキーワードは、検索した人の求める答えが近いため、1つのページで両方に答えるのが基本です。
公開後は、段階ごとに決めた指標を見て、答えるページと次のページの組み合わせを直します。
記事制作の外注を考えている会社の担当者を読者にすると、表は次のようになります。例に挙げたキーワードの段階は、実際には検索結果を見て決めてください。
段階 | 読者の状態 | キーワードの例 | 答えるページ | 次に読ませるページ |
|---|---|---|---|---|
課題に気づく | 記事を出しても問い合わせが増えない | オウンドメディア 成果が出ない | 原因を解説する記事 | 内製と外注を比べる記事 |
解決策を調べる | 社内で書くか外注するかを考えている | SEO記事 内製 外注 | 内製と外注を比べる記事 | 費用相場の記事 |
比較する | 外注先の候補と費用を比べている | SEO記事 外注 費用 | 費用相場の記事 | サービスページ、事例 |
依頼先を決める | 依頼する1社を決めようとしている | 記事作成代行 依頼 流れ | サービスページ、料金ページ | 問い合わせ |
段階ごとにキーワードを並べたものの、どれから書くかを決められずにいませんか
弊社のSEO対策の支援では、今のサイトの検索順位と公開済みの記事を確かめたうえで、狙うキーワードと施策の優先順位を決めます。段階ごとに書き出したキーワードがあれば、今ある記事と照らし合わせるところからご一緒します。
キーワードの段階を検索結果で見分ける方法
キーワードの段階は、キーワードに含まれる語の形より、検索したときに上位に並ぶページの種類で見分けます。「とは」が付けば課題に気づく段階、「比較」が付けば比較する段階、「費用」が付けば依頼先を決める段階と、語の形で振り分ける方法もあります。しかし、語の形と検索した人の段階が一致するとは限りません。
たとえば「SEO記事 外注 費用」は、「費用」の語から依頼先を決める段階に見えます。ところが上位に費用相場を解説する記事が並んでいれば、検索した人の多くは、依頼先を決める前に相場を知りたい段階にいるはずです。上位に並ぶページは、そのキーワードで検索した人が求める答えに近いと、Googleが判断したページだからです。

上位に多いページの種類と、振り分ける段階の対応は次の3通りです。
上位に多いページ | 振り分ける段階 | 答えるページ |
|---|---|---|
言葉の意味や原因を解説する記事 | 課題に気づく、解決策を調べる | 解説記事 |
方法やサービスを比べる記事、費用相場の記事 | 比較する | 比較記事、費用相場の記事 |
企業のサービスページ、料金ページ | 依頼先を決める | サービスページ、料金ページ |
解説記事とサービスページが混ざって並ぶキーワードは、検索した人の段階が分かれています。自社のサービスページがすでに上位にあるなら、サービスページに料金の目安や進め方の説明を足します。まだ上位に無ければ解説記事を書き、記事からサービスページへリンクするのが現実的です。
上位のページから検索した人が求める答えを読み取る手順は、検索意図の分析方法で扱っています。
段階ごとのページをつなぐ内部リンクの置き方
段階ごとのページは、各ページから1つ先の段階のページへ内部リンクを張ってつなぎます。問い合わせのボタンは、比較する段階と依頼先を決める段階のページに置きます。課題に気づいたばかりの読者は、まだ解決策を比べておらず、依頼するかを決める材料を持っていないからです。

とりわけ見落とされがちなのが、比較する段階の記事から、比べる軸を説明した解説記事へ戻るリンクです。Googleが2020年に公表した購買行動の調査では、人は購入のきっかけから購入までの間で、選択肢を広げる「探索」と候補を絞る「評価」を、決めるのに必要なだけ繰り返すと説明されています。戻るリンクがあれば、比べる途中で基本を確かめたくなった読者も、自社のサイトの中で調べ直せます。
※ 出典:Think with Google「Navigating purchase behavior & decision-making」(2020年7月)
内部リンクの張り方の基本は記事の内部リンク設計、問い合わせまでの記事の役割分担はSEOのコンバージョンを増やす手順で扱っています。
比較する段階の記事が無く、読者を送る先がサービスページしかない状態になっていませんか
弊社の記事コンテンツの制作支援では、キーワードの計画を立てるところから、編集者とライターの体制、公開前の品質確認の流れまでを一緒に作ります。段階ごとに足りない記事を書き足していく体制を、今の社内の人数に合わせてご提案します。
公開後に段階ごとに見る指標
公開後の効果は、段階ごとに違う指標で確かめます。課題に気づく段階の記事は、読んだ人がすぐに問い合わせるとは限らないため、問い合わせの件数だけで比べると、次の段階へ読者を送っている記事まで成果が無いように見えるからです。
段階ごとに見る指標と確かめる場所は、次の3通りです。
段階 | 見る指標 | 確かめる場所 |
|---|---|---|
課題に気づく、解決策を調べる | 検索結果での表示回数とクリック数、次の段階のページへ進んだ人数 | サーチコンソールの検索パフォーマンス、GA4の経路データ探索 |
比較する | 平均掲載順位、サービスページへ進んだ人数 | サーチコンソールの検索パフォーマンス、GA4の経路データ探索 |
依頼先を決める | 問い合わせや資料請求の件数 | GA4のキーイベント(旧コンバージョン) |
GA4の「探索」にある経路データ探索では、記事を始点にして、読んだ人が次に開いたページを確かめられます。サーチコンソールで、表に無いキーワードで表示されている記事を見つけたら、そのキーワードを表の当てはまる段階に書き足します。
課題に気づく段階の記事は問い合わせにつながっていないので、書くのをやめてもよいでしょうか。
編集部
問い合わせの件数だけを見れば、そう判断したくなりますね。ただ、課題に気づく段階の記事の役目は、次の段階の記事へ読者を送ることです。経路データ探索で、記事を読んだ人が次の段階のページへ進んでいれば残し、進んでいなければ記事の最後に置いたリンクの行き先を見直してください。
カスタマージャーニーとSEOのよくある質問
カスタマージャーニーをSEOに使う前に出やすい疑問は3つあります。
検索ジャーニーは、1人の人がどのキーワードをどの順番で検索するかに絞って見る考え方です。カスタマージャーニーは、検索のほかに広告や店舗、営業との接点も含めて、購入や契約を決めるまでの道のりを表します。SEOで使うカスタマージャーニーの表は、カスタマージャーニーから検索に関わる部分を取り出したもので、検索ジャーニーと重なる部分が多くなります。
記事が少ないサイトでも、表を作る意味はあります。公開した記事が少ないうちに表を作れば、比較する段階や依頼先を決める段階のページを先にそろえ、検索数の多い課題に気づく段階の記事へ後から広げる順番を選べます。表は4つの段階と、段階ごとに数個のキーワードから始めれば十分です。
カスタマージャーニーの表は、AI検索への対策にも使えます。AI検索の回答も、検索した人の質問に答えるページの情報をもとに作られるためです。段階ごとに読者の疑問を洗い出した表は、AI検索で聞かれる質問を予想する材料になります。
まとめ|カスタマージャーニーは図より表で作る
SEOで使うカスタマージャーニーは、段階ごとに検索されるキーワードと、答えるページ、次に読ませるページを並べた表です。感情の曲線を描くより先に、キーワードと記事を段階でつなぐ表を作ります。まずは4つの段階を横に並べ、営業が受けた質問とサーチコンソールに出ている検索キーワードから、段階ごとのキーワードを書き出すところから始めてください。
私たち合同会社Writers-hubは、SEOのキーワード戦略の設計から記事の制作、公開後の効果測定までを支援しています。段階ごとのキーワードの洗い出しや、今ある記事を段階に振り分けるところからご相談いただけます。
自社のキーワードと記事を、段階ごとの表に並べてみませんか
今のサイトで公開している記事と、検索から増やしたい問い合わせの内容を伺い、段階ごとに足りないページと書く順番をご提案します。相談は無料です。







