「microCMSに変えれば、サイトの更新が今より楽になりそう」。CMSの入れ替えを検討しているご担当者から、この見通しをうかがうことがあります。ヘッドレスCMSの案内は「表示が速くなる」「攻撃を受けにくい」といった導入後の効果から始まるため、日々の入稿作業まで軽くなると受け取られやすいのでしょう。ところが機能の一覧を開くと、コンテンツAPI、画像API、Webhookと聞き慣れない名前が並び、どれが自社の更新に効くのかを判断する手がかりがありません。
しかし、これまで多くの企業サイトやオウンドメディアの原稿を書き、CMSへ入稿する側で運用に立ち会ってきた弊社の立場から言えるのは、microCMSのできることは、原稿を預かってAPIで配るところまでだということです。画面をどう見せるかは含まれません。線引きを先に押さえておけば、機能一覧のどこを読むべきかが決まります。表示側の作り方を制作会社と固めてから、プランを選ぶ順番で進める会社もあります。
本記事では、microCMSでできること7つと、できない範囲、WordPressとの違い、料金プランの差から導入の進め方まで、コンテンツを作って入れる側の視点で順を追ってお伝えします。
- できること7つと、更新作業のどこを担うのか
- 表示側や制作会社に残る5つの工程
- WordPressと分かれる4点と、乗り換えの判断条件
- プランごとの上限と、無料プランで止まる境目
- 更新できる範囲が案件で変わる理由
microCMSとは何をするツールか
microCMSは、株式会社microCMSが開発している日本製のヘッドレスCMSです。ヘッドレスが指すのは、コンテンツを見せる画面(ヘッド)を持たないという意味で、備えているのは管理画面での入稿と、データを外部へ渡すAPIだけになります。
WordPressのような従来型のCMSは、記事を書く管理画面と、読者に見せるページの生成が一つのソフトウェアに収まっています。テーマを選べば見た目が決まり、公開ボタンを押せばページができあがる仕組みです。microCMSは後半を持ちません。入稿されたデータはJSON形式で返ってくるだけで、どう並べて見せるかは受け取る側が決めます。

そのため表示側のWebサイトは、Next.jsやAstro、Nuxtなどのフレームワークで別に作ることになります。検討の入口はここです。
CMSの分け方を先に整理したい場合はCMSの種類は3つの軸で分かれるもご覧ください。
関連記事:コンテンツマーケティングの基礎知識を総まとめ|やり方から成果につなげる方法まで徹底解説
microCMSでできること7つ
機能は、コンテンツを受け取る側(管理画面)と渡す側(API)に分かれます。運用で触れる順に並べます。

自社に合わせた入力欄の設計
お知らせや事例といったデータの入れ物を「API」という単位で作り、そこに入力欄(フィールド)を並べます。テキスト、リッチエディタ、画像、日時、セレクト、数字などから選べ、著者やカテゴリを別のAPIから参照させる欄も置けます。入力欄の形を先に決められる点が、白紙のエディタとの違いです。
コンテンツAPIでの取り出し
入稿されたデータは、コンテンツAPIからJSON形式で返ってきます。取得件数、並び順、絞り込み条件、取り出すフィールドをURLのパラメータで指定できるため、「公開済みの事例を新しい順に6件、タイトルと画像だけ」という取り方が1回で済みます。
複数の配信先への同時反映
1つのコンテンツを、コーポレートサイト、アプリ、サイネージなど複数の場所から同じAPIで読めます。お知らせをWebとアプリの両方へ手で入れ直している会社なら、入稿の手間はそのまま半分になるでしょう。
公開日時の予約と公開前の画面確認
公開日時と公開終了日時を指定できるので、担当者が深夜に操作する必要はありません。ただし公開前の確認には注意が要ります。microCMSのプレビューは、コンテンツIDと下書き取得用のキーを付けたURLを管理画面から開く仕組みで、下書きを受け取って表示する処理は表示側に実装しておく必要があるのです。制作時に依頼する項目でしょう。
画像のURL指定での加工
アップロードした画像は、URLにパラメータを足すだけで幅や高さの変更、切り抜き、形式の変換ができます。一覧では横400ピクセル、詳細では横1200ピクセルと出し分ける場合も、元の画像を1つ入れておけば足ります。
更新の権限と承認の流れの分離
レビュー機能を使えば、書いた人と公開する人を分けられます。差し戻しは管理画面で完結するため、原稿をメールに貼り付けて回す形から抜けられるでしょう。Businessプラン以降では、操作範囲を決めるロール(権限管理)と、「法務確認中」のような状態を足すカスタムステータスも使えます。
更新をきっかけにした表示側の作り直し
コンテンツが更新されたときに、指定したURLへ通知を送るWebhookを設定できます。VercelやNetlifyのようなホスティングと組み合わせれば、入稿と同時にページが作り直されて公開され、手作業でビルドし直す必要はありません。
APIを作るときは、記事のように複数件を並べる形と、会社概要のように1件だけ持つ形のどちらかを選びます。返ってくるJSONの構造が違うため、あとから切り替えると表示側の受け取り方まで直すことになります。
関連記事:無料CMSはどこまで無料か|2つの型の違いと用途別の選び方
microCMSでできないこと
できることの裏側も、同じ密度で見ておく必要があります。導入後に「思っていたのと違った」となる原因は、たいていこちら側にあるためです。
- 表示するページのデザインと実装
- テーマやプラグインを入れて機能を足す仕組み
- 問い合わせフォーム、会員登録、決済の機能
- 表記ゆれを吸収するサイト内検索の作り込み
- 入稿する原稿そのものの執筆
一番上が、判断を分ける中心です。microCMSを契約しても、そこにサイトはできあがりません。画面をつくる工程は必ず別に残ります。社内にフロントエンドを書ける人がいるか、制作会社と継続的に組めるかを先に確かめてください。
2番目も見落としやすいでしょう。WordPressなら「関連記事を出したい」と思えばプラグインを探しますが、microCMSでは表示側のコードとして書きます。裏を返せば、プラグイン同士の相性で表示が崩れる事故は起きません。
そして最後の項目。CMSをどれに替えても、何を書くかを決めて文章にする工程は残ります。更新が止まったサイトのご相談で、原因が管理画面だったことはほとんどありません。
CMSは決まりそうなのに、記事を書く人だけ社内に残っていませんか
表示側を作る会社は見つかった、管理画面の設計も相談できる、けれども毎月の記事や事例を誰が書くのかだけ決まらない。弊社では取材と構成から原稿までを引き受け、入力欄にそのまま入れられる形でお渡ししています。
関連記事:CMSおすすめ12選を目的別に比較|選び方と運用で差がつく判断軸
WordPressとの違いは4点
検討の場面では、たいてい比較相手にWordPressが挙がります。両者の差は機能の多い少ないではなく、担当範囲の切り方にあります。
- 管理画面とサイトが分かれ、プラグインの更新作業が無くなる
- 入力欄を絞り込め、更新担当がレイアウトを崩さない
- 同じ内容をWebとアプリなど複数の場所へ同時に配れる
- サイトの表示部分を作る費用と時間が別途かかる
- 新しいページ種別を足すたびに表示側の実装が要る
- 表示側を触れる担当がいなくなると、更新以外が止まる
1つ目は表示側の作り方で、WordPressはテーマ選びから、microCMSはコードを書くところから始まります。2つ目は更新画面の自由度。ブロックエディタは何でも置ける代わりに崩れやすく、microCMSは決めた欄しか置けない代わりに崩れません。
3つ目はセキュリティの守り方で、WordPressは本体とプラグインを更新し続けて守り、microCMSは管理画面とサイトを分けて外から見える範囲を減らします。どちらが安全かではなく、誰が手をかけ続けるかの違いです。4つ目は費用で、WordPressはサーバー代が中心、microCMSは月額の利用料に表示側の制作費が乗ります。より広くはCMSとWordPressの違いを整理もご覧ください。
料金プランで変わるできること
microCMSは無料でも使えますが、プランで機能と上限が変わります。とくに転送量と権限管理は、途中で切り替えが必要になりやすい項目でしょう。
| Hobby | Team | Business | Enterprise | |
|---|---|---|---|---|
| 月額(税抜) | 0円 | 4,900円〜 | 75,000円〜 | 見積もり |
| メンバー数 | 3人 | 3人(追加可) | 20人(追加可) | 50人〜 |
| API数 | 5個 | 10個(追加可) | 30個(追加可) | 50個 |
| コンテンツ数 | 10,000件 | 20,000件 | 50,000件 | 100,000件 |
| データ転送量 | 20GB/月 | 200GB/月 | 1TB/月 | 1TB〜/月 |
| CSVエクスポート | × | ○ | ○ | ○ |
| 権限管理・IP制限 | × | × | ○ | ○ |
| 技術サポート | × | × | ○ | ○ |
※ 金額と上限は2025年6月10日改定のプラン内容で、表示は税抜です。メンバーとAPIの追加は1人1,200円、1個2,000円の従量課金となります。

Teamに印を付けたのは、中小規模の企業サイトで最初に検討する選択肢になるためです。Businessへ上がる判断は、権限管理と技術サポートが要るかで分かれます。関わるメンバーが5名を超え、公開前に法務や広報の確認を挟むなら検討する段階でしょう。
Hobbyプランは、データ転送量が月20GBを超えるとAPIが止まります。翌月1日にリセットされるまで表示側がコンテンツを取得できないため、公開中のサイトを無料プランのままにするのは避けてください。
案件ごとに「できること」が違う理由
ここまでは、製品としてのmicroCMSができることを見てきました。ただ実務でつまずくのは、もう一段手前です。同じmicroCMSでも、更新できる範囲は案件ごとに違います。
理由は、入力欄の設計を制作の最初に決めてしまうからです。同じ「お知らせ」でも、リッチエディタを1つ置く設計と、見出し、本文、画像、キャプションを別々の欄に分ける設計では、公開後にできることが変わります。前者は書く人によって見た目がばらつき、後者は表示が安定する代わりに、用意した欄の外に出る変更ができません。
入力欄は細かく分けたほうが、あとで自由に直せるのでしょうか。
編集部
細かく分けると表示は崩れにくくなりますが、用意した欄の外に出る変更はできなくなります。判断の材料は、公開してから1年で何を差し替える予定かです。お知らせと事例を月に数本足すだけなら、欄は少なくて足ります。ページの構成そのものを変えるなら、パーツを並べ替えられる繰り返しの欄を先に用意しておいたほうが、あとの依頼は減るでしょう。
そこでおすすめしたいのが、設計を決める打ち合わせの前に、差し替える内容を書き出しておくことです。「代表メッセージは年1回」「事例は月2本」「募集要項は不定期」という粒度で構いません。

比較記事ではあまり語られませんが、microCMSの評価が案件ごとに割れる原因の多くはここにあります。最初の設計が「自社にとってのできること」を決めているのです。
管理画面を整えたあと、埋める記事の用意はできていますか
入力欄を作り込んでも、公開から数か月で更新が止まるサイトがあります。理由の多くは機能ではなく、書く人と載せる内容を決める人が社内に残っていないことです。弊社では検索から人が訪れる記事の設計と執筆を引き受けています。
向く条件と導入の進め方
向き不向きは、機能表よりも社内の体制で決まります。次のうち、いくつ当てはまるか確認してください。
- 表示側を作るエンジニア、または継続して組める制作会社がいる
- 同じ内容をWebとアプリなど複数の場所に出す予定がある
- 更新するのはお知らせ、事例、記事といった型の決まったもの
- 更新する人と、デザインを直す人を分けたい
- プラグインの更新作業を社内から無くしたい
3つ以上当てはまれば、候補として検討する価値があります。とくに1つ目は他より重く見てください。表示側を触れる相手が社内にも社外にもいない場合は、更新はできても改修が止まります。
条件を確かめたら、次の順で進めると手戻りが少なくなります。プランを決めるのは最後です。
社内のエンジニアが担うのか、制作会社に依頼するのかを先に確かめます。ここが決まらないうちは、機能を比べても判断材料になりません。
公開後1年で変える内容を、お知らせ、事例、採用情報、料金表の単位で書き出します。そのまま入力欄の設計図になります。
更新を担当する予定の人に、試作した欄へ1本入稿してもらいます。入力の重さは触るまで分かりません。
月間のアクセス数と画像の量から転送量を、確認に関わる人数からメンバー数を見積もります。
microCMSのよくある質問
検討の段階でよくいただく質問をまとめました。
使えます。Hobbyプランが月額0円で、メンバー3名、API5個、コンテンツ10,000件まで。ただし転送量が月20GBを超えるとAPIが止まるため、公開中のサイトには向きません。
違います。ソースコードは公開されておらず、利用料を払って使うサービスです。自社サーバーに入れて動かす形ではないため、サーバーの用意やバージョン更新は発生しません。
できます。ただし記事データを移すだけでは終わらず、表示側のページを作り直す作業が伴います。テーマとプラグインの機能をどこまで再現するかを先に決めてください。
入力欄が整っていれば更新できます。管理画面は日本語で、入稿画面はフォームに近い形です。判断が分かれるのは、用意された欄の外に出る変更が必要になったときでしょう。
1つのコンテンツを複数のサイトへ配ることはできます。ただし管理の単位となるサービスはプランごとに1つのため、管理画面を分けたい場合はその数だけ契約が必要です。
ここまでで、候補に残すかの材料はひととおり揃ったはずです。
表示側の話は進んだのに、載せる中身の担当が決まっていませんか
CMSの候補は絞れた、それでも公開後に誰が何を書くのかだけ空欄のまま。その段階でしたら、更新する対象の洗い出しから整理します。
まとめ|できることはコンテンツを配るところまで
microCMSでできることは、入力欄を自社で設計し、入稿された内容をAPIで複数の場所へ配るところまでです。予約公開、画像の加工、権限の分離と、管理する側の機能はひととおり揃っています。
一方で、表示するページを作る工程と、載せる中身を書く工程は残ります。選ぶ基準は機能の数ではなく、残る工程を誰が担うかです。表示側を任せられる相手がいて、更新の型が決まっていれば有力な候補になるでしょう。
私たち合同会社Writers-hubは、CMSの入れ替えを進める企業の記事と原稿を制作しています。管理画面が整ってから中身が足りないと気づきやすいため、入力欄の設計と並行して計画から手を付けることをおすすめしています。








