「権威性を出すなら、受賞歴や『No.1』をできるだけ多く並べればよさそう」。競合のサイトに受賞のロゴや「満足度No.1」が並んでいると、同じだけ並べないと見劣りすると感じるからです。ところが、消費者庁の調査では、「医師の90%が推奨」という表示を見た消費者の約5割が、医師の知見による専門的な根拠や裏付けがあると受け取っていました。権威性は、読者が根拠を確かめられる情報から載せます。
本記事では、権威性を示す情報の種類と確かめ方から、載せる前の手順、やりすぎになる表示の線引きまで、記事コンテンツの制作を支援する会社の視点で順を追ってお伝えします。
- 権威性は、資格や受賞、導入実績のうち、発行元や時点を読者が確かめられる情報から載せる
- 載せる情報には、誰が、いつ、何を基準に認めたかを書き添える
- 根拠を示せないNo.1や、専門分野の合わない医師の推奨は、景品表示法の不当表示として問題になることがある
- 自社が依頼した推薦や口コミは、広告だと分かる形で載せる
マーケティングにおける権威性の意味
マーケティングにおける権威性とは、資格や受賞、取引の実績のように第三者に認められた事実が、読者が商品やサービスを選ぶ判断材料になることです。認めた側がいて初めて成り立つので、自社が名乗るだけでは権威性になりません。
権威性が購入の判断に影響する理由
権威性が購入の判断に影響するのは、人が情報をすべて比べる代わりに、信頼できる専門家に従うという近道で決めることがあるからです。『影響力の武器』の著者ロバート・チャルディーニ氏は、人が判断の近道にする7つの原理の1つに権威を挙げています。
チャルディーニ氏の説得の原理を紹介するInfluence At Workの説明には、診療室に資格の証書を掲げた理学療法士のほうが、患者に運動の計画を守ってもらいやすかったという例があります。同じページには、相手に何かを頼む前に、自分が信頼できる専門家である理由を示すことが大切だと書かれています。
マーケティングに当てはめると、権威性を示す情報は、読者が問い合わせを決める前に目に入る場所に置きます。
SEOでいう権威性との違い
SEOでいう権威性は、Googleが役に立つコンテンツを見分ける観点として挙げるE-E-A-Tの1つで、マーケティングの権威性とは判断する相手が違います。
比べること | マーケティングの権威性 | SEOの権威性 |
|---|---|---|
判断する相手 | 商品やサービスを選ぶ読者 | Googleの検索のシステム |
働く場面 | 問い合わせや購入を決めるとき | 役に立つコンテンツを見分けるとき |
載せる情報の例 | 資格、受賞、導入実績、推薦 | 著者の経歴、運営者の情報、他のサイトからの評判 |
Googleの有用で信頼性の高いコンテンツの作成によると、E-E-A-T自体はランキングに直接影響する要因ではなく、4つの中で最も重要なのは信頼性です。E-E-A-Tの4つの要素の違いは、EATの記事で紹介しています。
権威性を示す情報と確かめ方
権威性を示す情報は主に次の6種類で、どれも読者が根拠を確かめられる形にして載せます。
情報の種類 | 読者が確かめる方法 | 一緒に書くこと |
|---|---|---|
資格・免許・許認可 | 国や団体の登録簿、許可番号の検索 | 正式な名前、登録番号、持っている人 |
受賞・認定 | 主催者が公表する受賞の一覧 | 賞の正式な名前、主催者、受賞した年と部門 |
メディア掲載・登壇 | 掲載された記事や番組、イベントのページ | 媒体の名前、掲載日、記事広告かどうか |
導入実績・取引先 | 取引先が公表している事例や社名 | 数えた時点、1件の数え方、掲載の許可 |
監修・推薦 | 監修者や推薦者の経歴のページ | 名前、専門分野、確かめた内容 |
顧客の声・評価 | 口コミの掲載元、調査の方法の説明 | 誰に、いつ、何を聞いたか |
資格や受賞は、発行元や主催者の公表で読者が確かめられるので、自社の数え方で決まる導入実績や顧客の声より根拠を示しやすい情報です。載せる順番は、発行元で確かめられる情報が先です。

掲載料を払って載せた記事広告を「メディア掲載」として取材記事と並べると、読者は媒体が選んで取り上げたと受け取ります。記事広告は、記事広告だと分かる書き方で別に載せます。
取引先のロゴを並べたいのですが、取引があれば載せてよいですか?
編集部
取引があることは事実なので、載せる理由にはなります。ただ、社名やロゴを公表するかどうかは取引先が決めることなので、掲載の許可を得てから載せます。許可が出た取引先だけを並べるときは「一部を掲載」と書き添えると、読者が取引先の数を取り違えません。
権威性を載せる前の4つの手順
権威性を示す情報は、次の4つの手順で根拠をそろえてから載せます。
社内にある資格、受賞、メディア掲載、取引の実績を、根拠の資料と一緒に書き出します。資格なら登録証、受賞なら主催者の発表、取引の実績なら契約の一覧が根拠の資料です。
根拠の資料が見つからない情報は、載せる候補から外します。「業界初」「No.1」のように他社と比べる表現は、比べた相手と調べた時点を示せるものだけを残します。
残った情報に、いつの時点か、何を基準に数えたかを書き添えます。「導入実績〇社」と書くなら、数えた日と、有料の契約だけを数えたのかといった1件の数え方まで書くと、読者が数字の意味を取り違えません。
読者が問い合わせや申し込みを決める直前に見るページに置きます。サービスのページの料金の近くや、営業資料の提案の前などです。
No.1表示などの根拠になった調査の内容について、消費者庁はNo.1表示に関する実態調査報告書で、一般消費者が確かめられるようにすることが望ましいとしています。例に挙げられているのは、表示物に調査の方法の概要を書き、直接書くのが難しいときはQRコードなどで確かめられるようにする方法です。

手順を決めただけでは、記事や資料を書く人が替わったときに、根拠のない数字が紛れ込むのを防げません。書く人全員が同じ手順で確かめられるように、決まりと確認の流れを先に作っておきます。
根拠を確かめてから載せる決まりを、記事を書く全員で守れていますか
記事コンテンツの制作支援では、編集者・ライター・監修者のチーム編成、レギュレーションの策定、品質管理フローの構築を行います。根拠のない数字や肩書を記事に載せないといった決まりを、書く人が替わっても守れる形にしたいときにご相談ください。
権威性のやりすぎに当たる4つの表示
権威性がやりすぎになるのは、表示を見た読者が受け取る中身を、実際の根拠で裏付けられないときです。故意でなく誤って載せた表示でも、景品表示法の優良誤認表示に当たれば規制されると、消費者庁の優良誤認表示の説明に書かれています。

根拠を示せないNo.1の表示
根拠を示せない「No.1」は、景品表示法が禁じる優良誤認表示に当たるおそれがあります。景品表示法第5条第1号が禁じているのは、商品やサービスの品質などを、実際のものや競争相手のものよりも著しく優良だと示す表示です。
消費者庁は、表示が優良誤認に当たるかを判断するために、事業者に合理的な根拠を示す資料の提出を求められます。期間内に資料を出せないときや、出した資料が根拠と認められないときは、措置命令との関係では不当表示とみなされるのです。
No.1表示に関する実態調査報告書は、「顧客満足度No.1」のような表示の根拠が合理的と認められるには、次の4つをすべて満たす必要があるとしています。
- 比べる商品やサービスを適切に選んでいる
- 調査する相手を適切に選んでいる
- 調査を公平な方法で行っている
- 表示の内容と調査の結果が対応している
実際の利用者に聞かず、Webサイトを見せた印象だけを聞く調査は、「顧客満足度No.1」の根拠になりません。イメージ調査の結果だと注記しても、表示と調査の結果が対応していないことは変わらないとされています。
専門家の推奨に見せる表示
「医師の90%が推奨」のように専門家が勧めていると示す表示も、No.1表示と同じ考え方で根拠が問われる対象です。同じ報告書では、回答した医師の専門分野が、商品を評価するのに必要な知見と対応していない例が、問題になる例に挙げられています。
報告書の意識調査では、「医師の90%が推奨」という表示を見た消費者の約5割が、医師の知見による専門的な根拠や裏付けがあると答えました。読者が専門家の判断を信じて選ぶからこそ、推奨した人の専門分野と商品が合っているかを、載せる前に確かめます。
医薬品や化粧品、医療機器などの広告では、医師などの専門家が推薦していると示すこと自体が、原則として認められていません。厚生労働省の医薬品等適正広告基準は、医薬関係者や病院、薬局などが推薦している、または使っていると示す広告を行ってはならないとしています。公衆衛生のために公的な機関が指定している事実を広告する必要がある場合などは例外です。
広告を第三者の感想に見せる表示
自社が依頼して書いてもらった推薦や口コミを、第三者の自発的な感想のように見せる表示は、ステルスマーケティングとして景品表示法の規制の対象になります。消費者庁のステルスマーケティングの説明によると、2023年10月1日から、広告であるのに消費者が広告だと分からない表示は景品表示法違反になりました。
企業がインフルエンサーなどの第三者に依頼や指示をした投稿も、企業の広告に含まれます。規制の対象は広告主の事業者で、依頼を受けて投稿した人ではありません。ステマが禁じられる理由と防ぎ方は、ステマは何が悪いかの記事で紹介しています。
架空の著者や資格の表示
記事の著者に、実在しない名前や持っていない資格を載せることは、Googleが欺瞞行為の一種としている行為です。Googleの有用で信頼性の高いコンテンツの作成は、AIで作った顔写真や架空の名前、虚偽の資格情報で、人間の専門家が書いたように見せることを、プロフィールの捏造の例に挙げています。
同じページには、どのような形の欺瞞も、ユーザーとGoogleの自動品質システムの両方にとってページを信頼できないものにすると書かれています。著者や監修者の欄に載せるのは、実在する人の名前と、確かめられる経歴だけです。
実績が少ない会社が示せる権威性
受賞や資格が少ない会社でも、読者が確かめられる事実を具体的に書けば、権威性を示せます。大きな賞が無くても、その分野の知識と経験を確かめられる形で示せば、読者が専門家かどうかを判断する材料になります。
今ある事実から載せられる権威性は、次の4つです。
- 許可番号や登録番号
- 担当者が持っている資格の正式な名前
- 担当者がその分野の仕事を続けてきた年数
- 記事や資料で判断に使った資料の名前とリンク
建設業の許可番号や宅地建物取引業の免許証番号は、国土交通省の建設業者・宅建業者の検索システムで、読者が確かめられます。業種で決まった許可や登録がある会社が、番号を会社概要とサービスのページの両方に載せると、読者は問い合わせの前に確かめられます。
とりわけ見落とされがちなのが、記事や資料の本文そのものです。何を確かめ、どの資料を使って判断したかを書いた記事では、肩書を並べなくても、書き手がその分野を知っていることを読者が中身から確かめられます。
権威性のマーケティングでよくある質問
権威性をマーケティングに使うときに迷いやすい2つの質問に答えます。
有名人を起用すれば権威性は上がる?
有名人を起用しても、その人が商品の分野の専門家でなければ、専門家に認められたという根拠にはなりません。有名人に依頼してSNSで紹介してもらう投稿は、企業の広告に含まれるので、広告だと分かる形で載せます。
調査会社のNo.1調査なら載せてよい?
調査会社に頼んだ調査でも、合理的な根拠と認められる4つの条件を満たしていなければ、表示の根拠になりません。消費者庁の実態調査では、話を聞いた広告主の多くが、アンケートの質問項目や比べた競合の商品といった、調査の基本的な内容を把握していませんでした。
適法だと強調して不適切な調査を勧める調査会社もあったと、報告書に書かれています。調査を頼んだときは、比べた相手と調査した相手、質問の文面を受け取り、4つの条件を満たすかを自社で確かめてから載せます。
まとめ|権威性は確かめられる根拠から載せる
マーケティングで権威性を示すときに先に載せるのは、資格や受賞、導入実績のうち、読者が発行元や時点を確かめられる情報です。載せる情報には、誰が、いつ、何を基準に認めたかを書き添えます。根拠を示せないNo.1、専門分野の合わない専門家の推奨、依頼したことを隠した推薦は、景品表示法の問題になるやりすぎの表示です。
今日から進めることは、次の3つです。
- 自社のサイトと資料に載せている資格、受賞、実績、推薦を書き出す
- 根拠の資料を示せないものと、時点や数え方が書かれていないものに印を付ける
- 印を付けたものは、根拠をそろえて書き添えるか、載せるのをやめる
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